2010年04月20日

『アイの物語』英語版

『アイの物語』英語版『THE STORIES OF IBIS』が、4月20日よりアメリカで発売されています。
(というか、発売されているはず……まだ現物を見ていないので)

THE STORIES OF IBIS
http://www.haikasoru.com/the-stories-of-ibis/

 この「HAIKASORU」というのは、日本のSFやファンタジーを英語圏に翻訳出版している叢書で、これまでにも、神林長平『戦闘妖精・雪風』、乙一『ZOO』、小川一水『時砂の王』、野尻抱介『太陽の簒奪者』、宮部みゆき『ブレイブ・ストーリー』『英雄の書』、高見広春『バトル・ロワイアル』、桜坂洋『All You Need Is Kill 』『スラム・オンライン』などが訳されています。
 ちなみに「HAIKASORU」という名前は、フィリップ・K・ディックのSF『高い城の男』に由来します。「High Castle 」の発音をローマ字表記したのだそうです。(だったら「TAKAISHIRO」でもいいんじゃないかって気がしますが……)

 ネット上では、宣伝の意味で、第1話「宇宙をぼくの手の上に」が公開されています。

http://wordswithoutborders.org/article/from-the-stories-of-ibis/

 訳者は日本人の方です。ざっと見ただけですが、けっこう忠実に訳してあるようです。


I could believe any other story. A sentient warship destroying four Federation battleships, a hyperdimensional vortex swallowing up planets, the vicious shape-shifting mechanoid reaper, the existence of the great Sower who scattered the seeds of intelligent life throughout the galaxy—for all that I could suspend my disbelief. But Shawn killing someone . . .
(原文:他の話なら信じられる。連邦軍戦艦四隻を撃破する生体宇宙船や、惑星を呑みこむ超次元のデルタ渦動、何にでも変身できる凶悪なメカノイド・リーパー、銀河全域に知的生命の種をばらまいた偉大な〈播種者〉の存在なら、いくらでも受け入れられる。しかし、ショウンが誰かを殺したなんて……。)

Before sitting down on the cushion I put out for him, the detective took a slow turn around the center of the room, eyeing various things with a penetrating look. "Hmm . . ." he murmured. It was probably a habit that came with the job, but I couldn't help shrinking in embarrassment. The bookshelves stuffed with science fiction novels, the piles of manga stacked on the floor, the model of the Enterprise hanging from the ceiling, the computer taking up most of the small table, a half-finished drawing, and the toy figures arranged along the top of the monitor were hardly the kinds of things found in a single woman's room.
(原文:私が出した座布団に腰を下ろす前に、刑事は「ほう……」と言いながら部屋の中央でゆっくりと一回転し、室内のあらゆるものを鋭い目つきで観察した。職業柄、というやつだろうが、私はすっかり恐縮してしまった。SFの文庫本がぎっしり詰まった本棚、床に積み上げられたマンガ、天井から吊り下げられたエンタープライズ号のプラモデル、小さなテーブルを占拠しているパソコンと、描きかけのイラスト、モニターの上に並べられたお菓子のオマケのフィギュアなど、女の一人暮らしとは思えない部屋だからだ。)

But I now knew that was an impossible dream. With the developments in space travel all but stalled in real life, I couldn't believe that the age in which civilians could take a casual trip to space would come before I died of decrepitude. Traveling to another planetary system at speeds surpassing the speed of light was physically impossible, and the probability of an interplanetary visitor attempting first contact virtually nil. The human race would likely continue to be bound by earth's gravity, only to die in obscurity without having learned of the existence of multitudes of intelligent species.
(原文: 現実の宇宙開発は停滞していて、私が老衰で死ぬ前に民間人が気軽に宇宙旅行に出かけられる時代が来るとは思えない。ましてや光の速度を超えて他の恒星系に行くなど物理的に不可能だ。異星人がコンタクトしてくる確率も、ゼロではないけども限りなく小さい。おそらく人類という種は地球の重力に縛られ続け、他のたくさんの知的種族の存在も知らないまま、ひとつの星の上で孤独に朽ち果てていくのだろう。)

 いやあ、自分の文章が英語になってるって、感無量でありますな。「アイの物語」の中のTAIの会話はどう訳されてるんですかね。興味津々。
 あと、著者略歴欄にある僕の小説の英訳題。

“February at the Edge of Time ”
“God Never Keeps Silent”
“The Unseen Sorrow of Winter”
“Day of Judgment”

 おお、英語にすると何かかっこいいじゃん!

 この他にも『シュレディンガーのチョコパフェ』の韓国版の話も進んでたはずなんだけど、こっちはすでに発売されてるんだかどうなんだか……ハングルなんてさっぱり分からないから、検索のしようがありせん。「シュレディンガー」とか「チョコパフェ」ってどう表記するのか。そもそも韓国にチョコパフェってあるのか?
 あと、短編「メデューサの呪文」がフランスに訳されるという話もありましたっけ。

 まあ、こういうのってロイヤリティも部数も少ないので、そんなに金にはならないんですけどね。それでも自分の小説が海外の人に読んでもらえるのは嬉しいです。


タグ :SF

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この記事へのコメント
『アイの物語』は、できれば世界中の人に読んでもらいたい名作ですからね。
英訳されたことについては我が事のように嬉しいです。
Posted by ポコイダー at 2010年04月20日 22:32
슈뢰딩거의 초콜릿 파르페

これじゃないかと思います。
直訳すると(というか、音をそのまま読むと)
シュレディンガ の チョコ パフェ

になってますから。
Posted by 韓国暮らしの男 at 2010年04月21日 00:06
(ひょっとしてダブり投稿したかもしれません。もしそうだったらこちらを残してくださいませ)

・・・ありましたよ韓国版(@∀@)

슈뢰딩거의 초콜릿 파르페=シュレディンガーのチョコレートパフェ
http://book.naver.com/bookdb/book_detail.nhn?bid=6237617

naver
http://www.naver.com/
で야마모토 히로시 =山本弘を検索したら書籍紹介にすぐ出てきます。

しかし韓国のブックデザインはあんまりよくありません。 携帯電話とかMP3プレイヤーとかのデザイン、webデザインなんかではけっこういいのがあるのに、なんでだろうなあ・・・

슈뢰딩거의 초콜릿 파르페でnaver検索すると、読者の書評も出てきました。以下は自動翻訳ですが、

>シュレーディンガーのチョコレートパフェと呼ばれるSF小説の短編集を読んでいます。日本SF小説だから星新一の短編や星界の紋章のような「宇宙のエルフ」みたいなのかと思ったが...そうでなくていいですね。 :]ライトノベル分野のジャンル小説の裾野が広いのがうれしいです。 - 14:40 #
>ああ。このシュレーディンガーのチョコレートパフェは本当に面白いですね。あなたの人生の物語のようなテーマを扱ってもカジュアルでエンターテイメントという感じ。むしろ秋葉原オタク恋愛云々 この部類は少ない。永久保存作に決定。 - 14:57 #

・・・だそうですよ(@∀@)

そうそう、「例の話」はおめでとうございます。おくればせながらさっき気づきました。まさにニュー・シネマ・パラダイス(@∀@)
Posted by 九郎政宗 at 2010年04月21日 01:50
>韓国暮らしの男さん
>九郎正宗さん

 ありがとうございます。さっそく検索してみました。
 僕もあのカバーデザインには不満なんですよ。何で橋本さんのをそのまま使ってくれなかったかなあ。あれ、すごく気に入ってるんですが。

 検索してみて気がついたんですが、韓国には日本のライトノベルがずいぶん訳されてるんですね。アニメ化された『灼眼のシャナ』『バカとテストと召喚獣』あたりは当然としても、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』まで出てるのには驚きました。

http://www.manaworld.com/mart7/mall.php?cat=002009000&p=1

『とある魔術の禁書目録』や『とらドラ!』はベストセラーに入っているそうです。

http://blog.goo.ne.jp/dalpaengi/e/c6fc417ccdd6d0b1d30c981a0ba76b78

 何でも韓国には国産のファンタジーやSFが少ないもんで、日本作品の需要が大きいらしいんですよね。
 アニメやマンガもそうだけど、このままどんどん日本文化を輸出すれば、親日派の韓国人が増えて平和につながるんじゃないかと思うんですが(^^;)。
Posted by 山本弘山本弘 at 2010年04月21日 10:51
はじめまして。
パクといいます。韓国人です。
ちなみにいいますとシュレディンガーのチョコレートパフェの韓国語版の訳者です。
自分的には今まで翻訳した本の中で一番気に入った作品なので(読み返してみて後悔するところもありますが)、ネットで評判とかごっそり検索してたところ、偶然ここまで流れてきました。
作家先生に興味をもってもらえるなんて、自分の力量とは関係ないんですが、とりあえずなんだかすごく光栄です。
Posted by パク at 2010年05月13日 16:42
朴さま
「アイの物語」の韓国語訳というお話は無理でしょうか。
The Stories Of IBISの英語版を読み、誠実な翻訳だと感じましたが、文化的な差異が原因なのか情に訴えかける部分が少なく、詩音が来た日などの名作が凡作になってしまっております。誠に無念です。
世界で一番共感を得られるのは韓国の読者以外にないのではありませんか?
私は韓国の皆さんに是非この本を読んで戴きたい。そして語り合いたいです。
Posted by Eleea at 2010年06月11日 00:19
ひじめまして。
googleで韓国語にシュレディンガーのチョコパフェを探していてこのページを見つけりました。
この本を私が昨日に図書館で取り上げて最初にはこの本を借りてみることが若干ためらわれてありますが、本の短編を一つ一つ読んでいて感銘をうけてありました。
こんなにいい本を韓国で見ることが可能してくたさってありがとうございます。

p.s - 韓国も多いファンタジーの小説があります。ただ大部分は量産形のファンタジーとしてその内容が制限しています。しかし日本に出版させているイ・ヨンドさんとジョン・ミンヒさんの著作は端然秀でていると考えています。
Posted by linia at 2010年12月14日 07:54
>liniaさん

 ありがとうございます。外国の方から感想がいただけるとは感激です。
『MM9』も韓国語版が出る予定なので、お読みいただけると嬉しいです。
Posted by 山本弘山本弘 at 2010年12月26日 19:16
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