2008年09月23日

9月14日(日)日本のアニメの危機を語る

 この日はと学会例会。 会員が都内某所に集まって、各自が発見した物件を発表し合うのである。
 オタレシピとか上野トランプとかケサランパサラン栽培とかセルフ救霊カードとかミク落語とかニュートリノ紙芝居とか脳波マウスとかインドのスーパーヒーローとかロイ・フォッカー英雄伝とか台湾版絶望先生とかエヌ氏の発明とか金正日4体セットとか乳よ母よ妹よとか昆虫料理とか萌え書道とか9.11バカニュースとか、毎度のことながら、「こんなものが本当にあるんだ!?」「こんなの作る奴いるんだ!?」と驚き感心するものばかり。 (いずれまた『と学会白書』シリーズで単行本になると思うので、それまでお待ちを)
 僕が紹介したのは、前に紹介したKEKで見つけた反相対論本と、こういう本。

 子供は自分が母親の胎内にいた時のことを覚えている、それどころか胎児はすでに母親の言葉が分かるし、母親のへそから外を覗くこともできるというのだ(笑)。
 ちなみに、証言している子供の多くは、3~4歳ぐらい。うちの子もそうだったけど、わけの分からんタワゴトを喋り出す頃だ。そんなの本気にする方がどうかしている。
 他にも、逆行催眠によって、自分が精子だった頃を思い出した人や、卵子だった頃を思い出した人の証言も。 精子にもみんな魂があるのなら、一回の射精ごとに何億という魂があの世に消えてゆくわけである。
 当然、前世の記憶の話なんかも出てくるんだが、確率から言うと、人間の前世のほとんどは精子ということにならないか?

 毎回、と学会会員でない人もゲストとして参加する。この日のゲストの1人は声優の飯塚昭三さん。思わず「タンクーダ好きでした!」とミーハーしてしまう。

 この日の晩は、と学会有志による合宿である。安い旅館の1フロアを借り切って、深夜までビデオを見たりダベったりという企画。例会では時間が短すぎてできないネタも披露できるのが嬉しい。
 この夜の僕のネタは、

「手書きMADの興隆と日本のアニメ界の危機について」

 ちょっと前まで、MADと言えば本編映像を編集したものが主流だったのだが、最近は自分で(しかもたいてい1人で)アニメを手書きし、TVアニメのOPやEDを模倣する「手書きMAD」が増えてきている。
 以前は『あずまんが大王』や『カウボーイ・ビバップ』のOPのような作画枚数の少ないもの、模倣しやすいものが選ばれることが多かった(『エヴァンゲリオン』のOPも、カット数は多いけど止め絵が多いから、意外に枚数は少ない) 。
 しかし、最近はむしろ、『らき☆すた』『ハルヒ』『バッカーノ!』『ソウルイーター』など、作画枚数の多い、ぬるぬる動き回るOPEDに挑戦するのが、一種のステイタスとなってきている。
 たぶん爆発のきっかけになったのは「はる☆すた」あたりだろうが、「ニニンがニンタマ伝」や「まこにゃんダンス」なんて、初めて見た時は腰が抜けたもんだ。
 最近の傑作は、

「ジョジョの奇妙な冒険でしょでしょ」
「アイドルマスター 菊池真 パンツじゃないから恥ずかしくない誕生日PV」
「グレンラガンをミクレンリンでwith東方」
「マクロスF【射手座】」

 あたりだろうか。枚数は少ないけど、「はてなようせい」のOPを捏造したやつなんかも、けっこう好きだ。(いちいちリンク貼らないので、自分で検索してみてほしい)

 さて、こうした手書きMADは大変に面白いのだが、反面、僕は強い危惧を覚えている。
 ご存知のように、アニメーターというのは3K職業である。低賃金やきびしい労働条件で苦しんでいる人が多い。
 それでも人がアニメーターを目指すのは、アニメが好きで好きでたまらないからだろう。そして、アニメを作るには本職のアニメーターになるしかなかった。だからみんな、苦労するのが分かっていて、アニメーターの道を選んだ。
 今までは。
 だが、もう違う。プロのアニメーターにならなくても、個人でもすごいアニメが創れて、それを全国に(それどころか全世界に)配信できる時代になった。それが傑作であれば、賞賛の声もダイレクトに返ってくる。何十万回も再生され、何万もマイリストに登録される。 これは作者にとってたまらないだろう。
 だいたい、アニメーターになったって、自分の好きな作品や好きなキャラクターを描けるわけではない。地味な仕事やつまらない仕事も多いはずだ。

 だったらわざわざ低賃金で働かなくても、別に本職を持って、余暇にこつこつと個人でアニメ作った方がいいんじゃないの? 自分の好きなキャラクターを思う存分動かせるんだし。

「それにみんなが気がついたらヤバいんじゃない?」
 と言っていた人がいたけど、もう遅い。たぶん、すでにアニメーター志望者の多くはそれに気がついているはずだ。
 これから「本職のアニメーターになりたい」と思う人間なんか現われるだろうか?
 新しいアニメーターのなり手がいなくなる。それどころか、今のアニメーターもどんどん辞めていくと予想される。日本のアニメ界の危機である。
 これをどう食い止めればいいか、僕には分からない。いや、そもそも食い止めるべきなのか。
 これからは新海誠みたいな個人作家が続出し、それを動画サイトでただで見られるのが当たり前になって、商業アニメが廃れてゆくのかもしれない。あるいはすべて海外に下請けに出すようになるとか。
 大変なことだとは思う。しかし、それが時代の潮流だとしたら、どうしようもない。


タグ :MAD

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この記事へのコメント
しゅぎゅこちらでは,初めまして山本弘先生

そうは,言ってもプロになりたいという人はいるのではないんじゃないのでしょうか?

実際,絵の動きのリアリズムや止め絵などのタイミングは,プロのアニメーターから引き継ぐモノがあります。

例えば,沖浦洋之さんなんかは,谷口守泰
さんに始まり色々と人々の修行の果てにあそこまで極限に近い作画技術を作れたんじゃないですか?

後,コミニケーションという立場で考えないと個人でアニメ作ろうとするのは無謀じゃないですか?

アニメは昔から集団作業で作るものですから

例に出しますとコミケでプロ以上の個人漫画て賞賛されてそれで日本の商業漫画は危機に陥ったというものです。

まあ,人材はいりますからねアニメは・・・・・・・・
Posted by ダーク・ディグラー at 2009年01月20日 19:12
前回のMAD問題に続いて今更ですがコメントしておきます。

本職の余暇で作ったアニメを動画サイトで売り込んでいく、というのは山本さんが考えているほど甘くはありません。そもそも趣味で作ったアニメを趣味の為にある動画サイトで成功することは厳しいということを山本さんは分かっているのでしょうか?大体好きなものを思い切り作ったところで優れた作品が生まれるというのはとんだ勘違いです。

例えば、『ロード・オブ・ザ・リング』で知られるピーター・ジャクソンの処女作である『バッド・テイスト』は新聞社のアルバイトで稼いだ給料をつぎ込んで5年かけて完成させた、今からは想像できないおバカでグロい映画ですが、それが優れた作品になりえたのは単に好きなものを撮り続けたわけではなく、元々映画に対する抜きん出た才能を持っていたことと、限られた予算と的確なスケジュール管理が成立していたからです。要するに生まれながらの素質ときちんとした自己管理によって名作が生まれるのです。これは新海誠氏の作品と同様です。

仕事の合間を縫って趣味で作ったものを商業的な目的で売り込むのは自殺行為です。好きなものを作っている以上、周りの人々の求めているものに合わせて作っていかなければならない。そんなことを考えずに売り込もうとするのでは危険です。

それに、アニメーターという仕事は確かに賃金面や労働条件等において厳しいのですが、その過酷さを除けば今日の仕事、または僕がこれまでやってきた完成間近の工事現場の明け渡しのための清掃作業やピッキング作業とあまり違わないのです。そもそも僕たちは自分の生活の為に仕事しているので、大半の人たちが自分の好みで仕事しているわけではない。これはアニメーターも同じです。

山本さんは好きなものを仕事にして食っていけば良い、と考えているつもりでしょうが、それは甘いです。難しいのです。あなたは今のアニメ業界に憂いを持っているそうですが、僕に言わせれば馬鹿にしているとしか思えません。全く理解していない。

こんな幼稚なことを言えるのは、山本さんが一日に何時間もニコニコ動画を見ているという、粗悪な違法投稿動画をずっと楽しんでいて、今のアニメに全く思い入れがないからです。ニコニコ中毒なあなたにアニメ業界を憂う資格はない。ぼやいたことを言うならば二度とアニメを見るべきではありません。
Posted by hiro at 2012年05月24日 17:42
>hiroさん

 僕の文章をちゃんと読まれましたか?

>大体好きなものを思い切り作ったところで優れた作品が生まれるというのはとんだ勘違いです。

 勘違いされているのはあなたの方です。僕は「好きなものを思い切り作ったところで優れた作品が生まれる」などと言ってはおりません。
 実際、アマチュアの作るアニメのほとんどは駄作だというのは、30年以上前のまだ8ミリ・フィルムの時代から、上映会を回って自主制作アニメをさんざん見てきましたからよく知っています。
 でも、その中にも、数は少ないけども、すごい傑作がいくつもあるんですよ。
 中には個人制作アニメからプロの道に進む人もいます。最近だと『イブの時間』の吉浦康裕監督などがそうですよね。
 もちろん、プロの道に進まずに、あくまで趣味で作り続ける人が大半です。「仕事の合間を縫って趣味で作ったものを商業的な目的で売り込むのは自殺行為です」というあなたの主張は、ですから二重に間違っています。

 あなたは僕がアニメ業界をバカにしていると言われますが、あなたはアマチュア・アニメをバカにしていませんか? いったいどれぐらいアマチュア・アニメを見ておられますか?  吉浦監督の「水のコトバ」はご覧になりましたか? 「百々(どど)」は? 「フミコの告白」は?

 僕が「今のアニメに全く思い入れがない」というのも、ひどい決めつけですね。このブログを読まれれば、僕がどれだけたくさんアニメを見ているかお分かりになるはずなんですが。プロの作るアニメも好きだし、アマチュア・アニメも好きなんですよ。
 思い入れがあるからこそ将来を憂えてるんじゃないですか。
Posted by 山本弘山本弘 at 2012年05月28日 10:21
 長文失礼します。

 ずいぶん前の記事に、レスが付いてるなあ……と思ってたら、こういう事を言い出す人がいらっしゃるとは。
 言いたいことは分からんでもないけど、言ってる事が所々おかしいですね。
 ピーター・ジャクソンの処女作「バッド・テイスト」を例に挙げ、

>要するに生まれながらの素質ときちんとした自己管理によって名作が生まれるのです。

 これは確かにそうでしょう。しかし、世の中にはちゃんとした技術を会得しておらず、プロを目指す事もなく、名作にする事を第一目的とせず、それでも作品を作り続ける人はいくらでもいます。そして、そうやってできた作品が人気を得て、支持されるってな例もまたあります。

 アマチュア作品ってのは、九割九分が「駄作」。なんせ見る人を楽しませる事は二の次、作った本人(たち)が「作る」という行為そのものが目的であり重要。だからほとんどの人にとっては理解できず、面白いと思える物でもない。
 しかしスタージョンを持ち出さずとも、数多くの駄作の中には、ほんの少しだけ名作・傑作が存在してるのもまた事実。
 更に、そのわずかな名作・傑作には、必ずしも見られる機会が訪れるとは限らず。その他大勢の駄作は言うまでもなく。

 ニコ動やその他動画サイトにアマチュア作品がUPされる事は、それら知られざる傑作が世に出て、多くの人の目に触れる機会を大いに増やしたわけであり、実に結構な事ではありますまいか。

 更に言うと、「判断基準」を変えると、一概に傑作・駄作と決められないもの。
 例えば、「作画は駄目駄目だけど、ストーリーや演出は良いもの」とか、「作画に関してのみ言えば非常に優れている」とか、「全体的にトホホな出来だけどコンセプトは悪くない」とか。
 そういった作品は商業作でもあるわけで、アマチュア作品にも当然そういうものはあるでしょう。否、アマチュアだからこそ、商業の縛りにとらわれない、自由な作品ができるとも言えるわけで。
 
 商業では見られない、作られそうにない作品を、アマチュアが作り、それを見たい人が見る。これのどこが良くないのか? もしアマチュア作品が見るに堪えない駄作「しかない」と考えているんなら、まさにアマチュアの方々と、その作品を莫迦にしてる以外の何物でもなし。

 ついでに、多くはアマチュアのままでプロにならず、仕事の合間に作り続ける人がほとんどだというのに。なんで自殺行為とか危険とか言い出すのか。

 山本氏が言っておられるのは

「アマチュアでも、今じゃこんな高いクオリティのものを作ってしまえる。好きなように個人で高クオリティのアニメを作れる昨今、今後はわざわざプロのアニメーターを目指す人がいなくなるんじゃないか?」

ってな意味での憂いであり、アマチュアが趣味で制作したものを商業的な目的で売り込むのは危険とか、そういう意味じゃなかろうに。

 つーかこれ、ニコ動や各動画サイト、及びそこにUPされてる動画が気に食わないため、ニコ動を擁護してる(ように見える)山本氏の文章にケチをつけてるだけじゃあなかろうか。
 違法動画云々に関しても、現実では公式に動画配信されてるのを知らない、あるいは知ってても認めたくないため、わざわざ過去のこの記事にこういう事を書き込んだとしたら、正直疑問。
 ニコ動嫌いなのは結構ですが、それにかこつけてアマチュア作品や制作者たち、それに山本氏の意見にケチをつけるのは、全国のアマチュア作品制作者一同、その作品のファン一同に対し、失礼だと思います。

 更にいうなら、どんなにアマチュア時には支持されたり人気があったところで、プロになれるわけでもないし、仮になれても、プロとしてやってけるとは限らない。一体どちらが「理解してない」のでしょうか。

 しかし、山本氏に「今のアニメに全く思い入れがない」って言うとはなあ(苦笑)。
 じゃあ、まどマギに関しなんであそこまで熱く語ってたのか。「Dororonえん魔くん メ〜ラめら」とか「花咲くいろは」とか「ハートキャッチプリキュア」に関して熱く語ってるエントリを読んだら、昨今の作品に思い入れが無い……とは思えんのですが。

 などと書いてみたら、石川直哉氏の「くっつきぼし」をまだちゃんと見てないのを思い出してしまった。
 過去作の自主製作アニメ「どっちもメイド」みたいなめちゃくちゃな作風のも好きだけど、「くっつきぼし」のようなテイストも大好物なので、楽しみなのです。
Posted by 塩田多弾砲 at 2012年05月29日 15:37
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