2009年11月25日

小松左京コレクション『すぺるむ・さぴえんすの冒険』

『すぺるむ・さぴえんすの冒険』小松左京コレクション(ボクラノSF)
 福音館書店 1890円


 解説を書かせていただきました。
 収録作品は以下の通り。なお、収録作品を選んだのは僕ではありません。

「夜が明けたら」
「お召し」
「すぺるむ・さぴえんすの冒険」
「牛の首」
「お糸」
「結晶星団」

 個人的には「お糸」がものすごく好きです。パラレルワールドものの傑作。この魅力的な世界をぜひ多くの読者に知っていただきたいと思います。
「夜が明けたら」は、初めて読んだ時、ものすごく怖かった作品。なぜこんなことが起きたのかという説明が何もないところが、不安でたまりません。
「牛の首」は、今や有名になった都市伝説のルーツ。

 以下に僕が書いた解説文の一部を引用。「本はあとがきから読む」という読者のために、「読んだら必ず本編を読みたくなるあとがき」を目指しました。対象年齢は10代の若い読者です。


   偉大なSFの巨人

 小松左京さんは間違いなく日本で最高のSF作家です。
 一九三一年生まれ。雑誌記者やラジオの漫才台本の作者などの職業を経て、一九六二年、『SFマガジン』一〇月号に掲載された「易仙逃里記」でプロ作家としてデビューされました。代表的な長編には、『日本アパッチ族』『エスパイ』『復活の日』『明日泥棒』『果しなき流れの果に』『見知らぬ明日』『継ぐのは誰か』『こちらニッポン…』『さよならジュピター』『首都消失』『虚無回廊』などがあります。一九七三年の『日本沈没』は大ベストセラーになり、二度も映画化されました。短篇はデビューから二〇年間に約二五〇本も発表されており、同じぐらいの数のショートショートもあります。
 その作品傾向もバラエティに富んでいます。現代日本を襲う異常事態を描いた『日本沈没』『首都消失』のような社会派SFや、『果しなき流れの果に』『さよならジュピター』『虚無回廊』のような壮大なスケールの本格SFがあるかと思えば、爆笑のドタバタ・コメディやパロディや社会風刺、ぞっとするホラーやサスペンス、軽いオチのついたショートショート、しんみりした人情話、子供向けのSF童話、大人向けのエロチックな小説……小松さんが書いていないジャンルを探す方が難しいぐらいです。しかも苦手なジャンルというものがないのか、どんな話もとても上手いのです。小説だけでなく、エッセイやノンフィクションもたくさん書かれています。
 僕の場合、小学校高学年の時に、父が買ってきた小説誌に載っていた、「子供たちの旅」や「模型の時代」といった短篇SFを読んだのが最初です。特に「模型の時代」は、人々がプラモデル作りに熱中している未来世界を描いたコメディで、子供心に「こんな面白いものを書く人がいるんだ」と感心したものです。それ以来、多くの作品を読んできて(それでも膨大な全作品の三分の一ぐらいでしかないのですが)、いろいろな影響を受けました。
 今では僕もSF作家です。しかし、最初の長編の出版から二〇年以上になるのに、作品の数でも質でも、この巨人の足元にも及びません。この先も当分、小松さんを上回るSF作家は現われないのではないかと思います。
 その小松さんの短篇の中から、ここに紹介するのはたった六作品です。本当はこの何倍もの数の傑作がひしめいているのですが、一冊の本に載せられる分量には限りがあるので、しかたありません。いわば“小松左京入門編”として、その才能の一端を味わっていただきたいと思います。
(以下略)



タグ :SF

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この記事へのコメント
初めてコメントさせて頂きます。
「地球移動作戦」大変面白く読ませて頂きました。
「模型の時代」は松本零士先生がマンガ化されてましたね。懐かしいです。
Posted by めすくりん人 at 2009年11月26日 12:35
高校時代に小松作品を読みまくっていた者です。

『すぺるむ・さぴえんすの冒険』の収録作、及び、山本先生が「あとがき」で例に挙げられた作品もほぼ全て読んでいますが、どれも衝撃的でワクワクしながら読んだ思い出があります。
他には、「毒蛇」と「知恵の木の実」の二編が、なぜか強く印象に残っています。
今の若い方たちにもぜひ小松ワールドの素晴らしさを知ってもらいたいですね。

それから、私は山本先生の御作品の中では「アイの物語」が特に好きなのですが、人工知能というものに対して抱いていた陳腐な既成概念を一掃させられ、それこそ小松作品に匹敵する衝撃を覚えました。傑作だと思います。
Posted by ポコイダー at 2009年11月28日 01:24
空中都市008、見てましたよ。
牛の首…うっ。
Posted by 理力不足 at 2009年12月03日 17:57
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