2009年07月18日

二人の偉大な超常現象研究家の死

 もうご存知の方も多いだろうが、7月3日、と学会の創設時からのメンバーである志水一夫氏が亡くなられた。享年55歳。

 ガンが発見されて入院されたのが5月下旬。僕は6月5日、トンデモ大賞の前日に、病院に見舞いに訪れた。
 その時、志水氏はベッドに横たわってはいたものの、意識も喋り方もとてもしっかりしておられた。
「すいませんねえ。『トランスフォーマー・ザ・ムービー』のビデオ、借りっぱなしになっちゃってまして」
 と言われたので、ちょっとびっくり。15年ぐらい前に貸したまま戻ってこないんで、てっきり忘れられているものと思っていた。
「いえいえ、そんなの気にしなくていいですから。早く良くなってください」
 などと会話したのを覚えている。
 翌日のトンデモ本大賞の楽屋では、「志水さん、元気そうだったよ」「あれならすぐに退院できるんじゃないかな」と、みんなに報告したものだ。

 それから1ヶ月も経たないうちの、突然の死である。
 先日の中里融司さんもそうだけど、人間って本当にあっけなく死んでしまうものだ。

 志水さんの最大の功績というと、やはり 『UFOの嘘』(データハウス・1990)だろうか。
 UFO番組やUFO本なんてどうせ嘘っぱちだろう……と思っていても、それを実際に検証した人はほとんどいなかった。志水氏は、矢追純一氏をはじめとする自称「UFO研究家」たちのいいかげんさや、UFO番組のデタラメさを暴露した。
 翌年に出た『大予言の嘘』(データハウス・1991)でも、予言や占いというものがいかに根拠がなく、当たらないものであるかを検証してみせた。
 だが、その一方で志水氏は、霊や超能力の存在を信じる、いわゆるビリーバーであった。
 ある人から、「あなたは超常現象の存在を信じるのか?」と訊ねられ、こう答えていた。
「『信じるのか』という質問はおかしい。私は空気が存在するのと同じように、超常現象が存在することを知っています。『あなたは空気の存在を信じるのか?』などと質問する人はいないでしょう?」
 それほどのビリーバーであるのに、志水氏は通俗的なオカルト情報を批判し続けた。矛盾しているように思われるかもしれないが、本物の超常現象研究家・UFO研究家には、こうした懐疑的な人が少なくないのである。すでに亡くなられた高梨純一氏などもそうで、UFOの存在を信じているにもかかわらず、UFO写真のトリックを暴き、MJ-12文書の嘘を暴き、矢追純一UFOスペシャルのデタラメさを非難していた。
 僕も皆神龍太郎氏も超常現象の存在を信じてはいないが、それでも志水氏とは良き友人であり続けた。
 ビリーバーと懐疑主義者は相反する概念ではない。両者は歩み寄れるし、一人の中で両立することも可能だ――それを志水氏は自らの人生で示してみせた。

 偶然だが、同じ日にアメリカのUFO研究家ジョン・キールも亡くなっていた。
 キールの『モスマンの黙示』(国書刊行会)を初めて読んだ時は、興奮したものである。有名なモスマン事件を扱ったものなのだが、そこいらのUFO本とはまるで違う。モスマンを安易に宇宙生物にしたりしないのだ。
 UFOは異星人の宇宙船なんかじゃない。そんなのは一部の研究家やマスコミが宣伝している概念にすぎない。UFOとは、何かもっと高度で、理解不能で、異様なものなのだ……というのがキールのスタンスだった。
『モスマンの黙示』の中では、事件を調査するキールの周囲に、次々と不気味な現象が頻発する。異星人説なんかでは説明のつかない不思議なシンクロニシティ。その語り口の上手さの絶妙なこと。そんじょそこらのホラー小説よりもぞくぞくくるし、エキサイティングだ。まあ、キールの創作も多く混じってるんだろうが、嘘でもこんなに面白けりゃ許せてしまう。
 僕の『神は沈黙せず』も、かなりキール的世界観の影響を受けている。
 この一冊でキールのファンになり、『ジャドウ』とか『失われた惑星文明』とか『UFO超地球人説』とかを古本屋で探して読みふけったものだ。
 なお、『モスマンの黙示』は2002年に『プロフェシー』という題で映画化され、その日本公開に合わせて『プロフェシー』という題でソニー・マガジンズから新訳が出ている。おすすめである。

 キールの死が奇しくも志水氏と同じ日だと知った時には、その奇妙な偶然の一致に、「いかにもキールらしい」と思ったものである。


タグ :超常現象


この記事へのコメント
志水さんのUFOの嘘は私にとって、目を開かせてくれた一冊でした。
悲しいです。
Posted by ろぼ at 2009年07月18日 19:18
志水さんは、超常現象の楽しみ方を、豊穣な世界を教えてくれた恩人でした。
ご冥福をお祈りします。

やや、不謹慎かも知れませんが、
数々の自称超能力や霊媒のインチキを暴いた手品師で、遺言に(エジソンの?)霊界通信機にメッセージを送ると残した方はいませんでしたっけ?
Posted by sasico at 2009年07月28日 00:13
 私は『大予言の嘘』に特にお世話になりました。
 うちの親父は昔、五島勉に衝撃を受け、幼い私が『ノストラダムスの大予言』を読んでしまうと、絶望して自殺するんじゃないかと考え、本を隠したんだそうです。活字を全く疑わない真面目な親父…。もっとも私は中学ぐらいに『超古代史の真相』なんかを読み始め、トンデモ説には免疫がつき始めてたんですが。『UFOの嘘』も『大予言の嘘』も発売してすぐ買いました。
 親父にかなり前から『大予言~』は貸してるんですが、まだ読んでないんだろうな~


おおぅ! 今さら気付いたんですが『超古代~』も志水さんが訳してたんですね。改めてご冥福をお祈りします。
Posted by ギルス at 2009年07月28日 16:48
今亡くなったことを知り、驚いています。
と学会の本の第一作から読み続けているファンです。志水一夫さんのような方がおられなければ、今でも、いい加減な超常現象やインチキテレビ番組に騙されていたかも知れません。
健全な批判精神を与えて下さった志水さんの御偉業に敬意を払います。
Posted by T.M. at 2009年08月23日 04:05
志水さん懐かしいです。
すごいフェミニストだったから、私なんかだったら、もうすぐにもブチ切れようというくらいにめちゃ性格ドブス、性格不細工な女のわがままにまで対応しようとしておられた姿勢には、頭が下がります。とてもまねができるものではない。
オタク臭さもありつつ、ただのおたくとは違う。
御冥福をお祈りいたします。
Posted by at 2011年02月14日 10:00
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