2009年06月21日

作家が死ぬということ

 僕のマイミクで、ライトノベル・架空戦記・時代小説作家の中里融司さんが、18日朝、大腸ガンで亡くなられた。52歳。僕よりひとつ歳下である。

 コミケでお会いするぐらいの関係で、作品も数冊しか読んだことがないのだが、普段からmixi日記はよく読ませてもらっていた。 同じ職業だけに、日記の内容は共感することが多く、身近に感じていた。
 当然、病気で入院されたことは知っていたが、数日に一度、日記をアップしているぐらいだから、たいしたことはないのだろうと思っていた。
 いきなり亡くなるなんて思ってもいなかったから、ショックが大きい。

 最後の日記は6月11日。亡くなられる1週間前である。
 入院していたが一時期帰宅し、マンガ(『ヤングアニマル』連載の『砂漠の獅子』)のシナリオを書いて送信した……てなことが書いてある。
「シンケンジャーが面白い」てなことも。
 入院中も病床で原稿を書いていたり、ゲラチェックをやられていたようだ。最後まで作家だったのだなあ。

 最後の日記を読み直して、僕が何に一番ぐっときたかというと、送ったシナリオが「第7回」だということ。
 つまりこのマンガは、もう永遠に完結することはないのである。(マンガ家が独自に描き続けるかもしれないが、それはもう中里さんの「原作」ではあるまい)

 僕にとって、これは悪夢である。
 今、『地球移動作戦』の最終回の原稿をひいこら言いながら書いている。来月は『去年はいい年になるだろう』の最終回である。
 僕が今、急死したら、これらの作品はラスト目前で完結せずに終わってしまうことになる。
 それは嫌だ。ものすごく嫌だ。
 物語は、書きはじめたからには、きちんと終わらせなくてはならない。それは続きを読みたがっている読者に対する責任であるし、作家自身に対しての義務でもある。 ゴール直前で倒れるなんて耐えられない。
 きっと、病院のベッドで最後まで「原稿、原稿……」とうなっていることだろう。
 それはもう、化けて出たくなるぐらい悔しいに違いない。
 実際、『トリニティ・ブラッド』完結直前に亡くなった吉田直氏の例もあり、そういうことがないとは言えない。吉田さん、悔しかっただろうなあ。

 だからきっと、中里さんも無念だったに違いない。
 もっと書きたいものがいっぱいあっただろうに、彼の頭の中にはいろんな構想があっただろうに、それはもう誰にも知られることはないのである。

 だから僕は「安らかにお眠りください」とは言えない。
 同じ作家として、彼の心中を思うと、「安らかに」なんて言えるわけがない。
 安らかに死ねてたまるか。
 きっと連載やシリーズを抱えた作家はみんな、完結させられない無念、構想を具体化できなかった無念を胸に、死んでゆくのだと思う。


タグ :作家

同じカテゴリー(日常)の記事画像
SF大会2日目:手塚治虫自筆絵コンテに驚愕
SF大会1日目:マンガの中から美女出現
この夏のお仕事
メイド(だけじゃないけど)喫茶めぐり
ポメラの使い心地
VOWネタ
同じカテゴリー(日常)の記事
 退院しました (2016-04-15 22:07)
 【お知らせ】と学会、引退しました (2014-04-30 17:41)
 三点リーダはなぜ必要なのか (2014-02-04 17:09)
 物書きやってるとこういうことってちょくちょくあるのよ (2013-09-19 20:01)
 「簡素化」してはいけないこともある。 (2012-01-14 17:40)
 SF大会2日目:手塚治虫自筆絵コンテに驚愕 (2010-08-12 17:40)

この記事へのコメント
突然のコメント失礼致します。
失礼ながら、相互リンクしていただきたくて、コメントさせていただきました。
http://sirube-note.com/writer/

もしよろしければ、こちらのページから相互リンク登録していただけましたら幸いです。
http://sirube-note.com/writer/link/register/
今後ともよろしくお願い致します。
pKuVG5qZ
Posted by sirube at 2009年06月21日 17:40
物語作りの端くれに係わっている者として全く他人事ではないので、胸が掻きむしられる思いです。
また、公に作品を残す立場ではない一般の人々も、やり残しを感じずに亡くなられる方は小数なのだと思います。
先月私の母も急逝しましたが、去年やっと初孫に会わせてあげられたばかりで、今年の夏休みに、また行くと話していた矢先でした。
Posted by ろぼ at 2009年06月21日 18:31
読者の立場からすると、未完のまま作者が亡くなれてしまうと、その作品世界自体が滅びてしまったような気持ちになってしまいます。
グインサーガは20年以上読み続けていたので、栗本薫先生の死は本当に残念でした。
もう、あの“中原世界”の群雄たちに会えないのかと考えると…。
中里先生の作品は「狂科学ハンターREI」からファンになって、最近は時代小説の同行屋シリーズが好きでした。
栗本先生、中里先生のご冥福をお祈りします。
私は人類が火星に到達するのをこの目に見るまで生き続けるつもりなので、山本先生はそれ以上に長生きしてください。
Posted by hora at 2009年06月21日 18:51
ヤマグチノボル先生の訃報を聞いてこの記事の事を思い出してしまいました……。
ヤマグチノボル先生……。まだ働き盛りなのに末期がんだなんて……。さぞや無念だったでしょうなぁ……。
妖魔夜行の世界だったら紀文堂があるのに……って、紀文堂も文ちゃんも燃えてしまってましたね……。はぁ……。
なんとも悲しい気持ちです……。
Posted by ドードー at 2013年04月13日 23:27
>ドードーさん

 私も、「ゼロの使い魔」等未完のまま、僅か41年でお亡くなりになったヤマグチさんの無念を想わずにいられません。「結末はすでに出来上がっています」「お待たせしてすみません」と、(引用は正確ではありません)意欲全開でいらしたのに…

>妖魔夜行の世界だったら紀文堂があるのに……

 私は「幽霊になって、会いにきてくれるといいんだけどね」を思い出しました、何故か。
Posted by toorisugari at 2013年04月15日 19:26
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。