2017年06月06日

盗作されました〔3〕

 僕が最も腹が立ったのは、シリアで亡くなられたジャーナリストの山本美香さんに関するくだりです。彼女は反政府軍によって謀殺されたという陰謀説が、当時、ネットで流れていたのです。

「その陰謀説は僕も当時、目にしましたが、四つの大きな欠点があります」早口でまくしたてます。「第一に、そんな説を唱えているのは、怪しげな陰謀論者のサイトです。信頼できる専門家の主張ではありません。第二に、山本さんが首だけでなく、頭や腰、太腿なども撃たれていることを無視しています。負傷してうつ伏せに倒れたところを、近寄ってきた兵士にとどめを刺されたと考えるのが妥当です。第三に、正面から近づいてきた政府軍と思われる兵士が発砲してきたことは、同行していた同僚の佐藤和孝さんも証言しています。第四に、反政府軍が自分たちのことを取材してくれているジャーナリストを殺す動機がありません。げんに山本さんと行動をともにしていた佐藤さんは、とっさに逃げ出して無事だったんですから、つじつまが合っていません」
「でも──」
「第五に!」武人くんは強い口調で遮りました。「9・11とか東日本大震災とかもそうですけど、名探偵気取りで幼稚な陰謀説を唱えて、人の死をゲームのように弄ぶ者を、僕は心底から軽蔑します」

──『幽霊なんて怖くない』5章

「そんなことありません。ジャーナリストの山本さん殺害事件では『山本美香って単なるアホだろ』というスレッドが立ち、多くの人が山本さんをあざ笑っていました。これこそまさにジャーナリズムの危機です。しかも、怪しげな陰謀論まで持ち上がりました。しかし、その陰謀論では4つの大きな欠点がありました。第一にそんな説を唱えているのは怪しげな陰謀論者のサイトです。信頼できる専門家の主張ではありません。第二に、山本さんが首だけでなく、腰や太腿なども撃たれていることを無視しています。負傷してうつ伏せに倒れたところを、近寄ってきた兵士にとどめをさされたと考えるのが妥当です。第三に、正面から近づいてきてた政府軍と思われる兵士が発砲していることは同行していた同僚の佐藤和孝さんも証言しています。第四に、反政府軍が自分達を取材しているジャーナリストを殺す動機がありません。げんに山本さんと行動をともにしていた佐藤さんは、とっさに逃げ出して無事だったんですから、つじつまがあっていません」
「あのー……」
「第五に!」強い口調で中さんを遮ります。「他の事件もそうですけど、名偵気取りで幼稚な陰謀説を唱えて、人の死をゲームのように弄ぶ者を、僕は心底から軽蔑します」

https://kakuyomu.jp/works/1177354054881698267/episodes/1177354054881698291

 あきれたことに、@ichinoseyayoiはこうした陰謀論を否定する僕に対して、屁理屈をこねて反論しているのです。

「私はその事件について全く詳しくないのですが、それでもあなたが言ってる事には欠点があると思います。第一に怪しげなサイトだろうがそこが唱えているという事とそれが事実であるかということは関係ありません。誰がいったかということも重要な要素ではありますが、それが事実か陰謀なのかというのはそれで判断することではありません。朝日新聞の言うことだから、産経新聞の言うことだから、赤旗がいうことだから、幸福の科学がいうことだからという理由だけで判断してるネトウヨパヨクと一緒です。
 第二に政府軍と思われる兵士でも首を後ろから撃つことが出来たという話ですが、もちろん出来るでしょう。ただ、近寄ってきた兵士によってとどめをさされたと考えるのが〝妥当〟という話はどこから出てきたのでしょうか。同行していた佐藤さんも当時の戦闘状況はわからないという話をしていたと思いますし、司法解剖でもどれぐらいの距離から撃たれたかはわからない、ただ至近距離だと皮膚が焼けるから至近距離ではないという程度の情報しか私は知りません。政府軍による犯行とも断定できません。そもそもこの問題は政府軍と思われる兵士達は本当に道端でたまたま出会った政府軍なのかという問題です。
(後略)
https://kakuyomu.jp/works/1177354054881698267/episodes/1177354054881698291#end

 @ichinoseyayoiの主張はきわめて幼稚です。合理的で筋の通った説があるにもかかわらず、こういう解釈もあるこう解釈もできると、何の証拠もない仮説を次々と並べたてて、妥当な解釈を帳消しにしようとするのです。もっと可能性の高い合理的な解釈を受け入れることを拒否し、可能性の低い陰謀説をいつまでも擁護し続ける。それはまさに陰謀論者がよく使う論法そのものです。
 それに反論するのは一言で十分です。「オッカムの剃刀を知らんのか」と。

(前略)『山本美香って単なるアホだろ』というスレッドにそんなに多くの人が集まりそこで多くの人が山本さんをあざ笑っていたのなら私はその人達を軽蔑します。しかし、本当にそれほど多くの悪意が書き込まれたのでしょうか。アホ扱いした人間が逆に非難されるようなレスはなかったでしょうか。どんな事件でも必ず現れる極少数の被害者をあざ笑う人達や陰謀論を引き合いに出し、そんな人が大勢いるかのように話を盛って、大勢の山本美香さんをあざ笑う人たちなんかと自分は違う、本職のジャーナリストが政府軍がやったと言ってるんだから政府軍が悪いんだ、自分は4つも大きな欠点を見つけ出すほどすごい人間なんだということがいいたいがために山本さんの死をゲームのように弄ぶ人間がいるとは思えませんが、もしいたら私は心底から軽蔑します」

 @ichinoseyayoiは「山本美香って単なるアホだろ」というスレッドに、実際には被害者を嘲笑うような発言が多くないのに、「そんな人が大勢いるかのように話を盛って」いたと、僕を嘘つき呼ばわりしています。
 実際には、僕はこう書いています。

「そのスレッドの発言者たちは、亡くなった山本さんをさんざん嘲笑っていました。“独りよがりな正義感で情勢不安定な国行って殺されてりゃ世話ないよな”とか“はっきり言って、どうでもいい。ニュースの価値はゼロだ”とか“山本っておばさん粋狂な人なんだな”とか……実におぞましい、非人間的な暴言が並んでいました」
──『幽霊なんて怖くない』5章

 そう、僕はそのスレッドの中の発言数がどれぐらいだったか、具体的に書いていないのです。「そんな人が大勢いるかのように話を盛って」なんかいません。
 そのスレッドは実在し、今でも読めますから、誰でも検証できます。2012年当時、僕が読んだのは、30番代あたりまでです。

山本美香って単なるアホだろ
http://ikura.2ch.net/test/read.cgi/news5/1345939045/


 このように、事件発生直後、暴言が数十件も並んでいたのは事実です。その後、事件発生後1年以上して、最初の頃のような暴言は少なくなりますが、それでも山本美香さんを非難する声が多数ありました。それに対し、「アホ扱いした人間が逆に非難されるようなレス」は、全体のごく一部にすぎませんでした。
「話を盛って」るのは、いったいどっちなんでしょうか?
 当時、僕はこのスレッドを読んで猛烈にむかつきました。作中で埋火くんが口にした「人の死をゲームのように弄ぶ者を、僕は心底から軽蔑します」というのは、偽らざる僕の本音です。
 @ichinoseyayoiは僕も参考にした『山本美香という生き方』(新潮文庫)という本を読んでいるようです。なら当然、山本美香さんという人がどんな立派な女性であったかを知っているはずです。死の直前、山本さんと行動をともにしていて、危うく難を逃れた佐藤和孝さんは、山本さんと公私ともに親しい人であったことも。
 山本美香さんはもちろん、佐藤和孝さんも、架空のキャラクターではありません。実在する人間です。泣き、笑い、苦悩する、魂を持った人間です。愛する人が目の前で殺された、そんな悲劇的な体験をした人を思いやるのは、人として当然のことでしょう。
 @ichinoseyayoiは僕に反論できてさぞや楽しいかもしれません。「自分は4つも大きな欠点を見つけ出すほどすごい人間なんだということがいいたい」というのは、まさに@ichinoseyayoi自身がやっていることにしか見えないんですが、彼は自分でそれに気がついていないようです。
 彼がやっているのは、「名偵気取りで幼稚な陰謀説を唱えて、人の死をゲームのように弄ぶ」行為そのものです。亡くなった山本美香さんも、愛する人を失った佐藤和孝さんも、彼にとっては単なるゲームのコマにすぎないのです。
 だから僕は、そんな彼を心底から軽蔑します。


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