2015年12月12日

新作『怪奇探偵リジー&クリスタル』

『怪奇探偵リジー&クリスタル』
角川書店 12月26日発売 1944円

 第二次世界大戦直前の一九三八年。ロサンゼルスのダウンタウンに探偵事務所を構える私立探偵エリザベス・コルト(通称リジー)と助手の少女クリスタル。二人の元に舞いこむのは、猟奇的な殺人事件や超常現象など、常識はずれの奇怪な事件ばかり。だが、そんな事件に立ち向かう二人も、ただの人間ではなかった!

 こんな話を思いついたきっかけは、戦前戦中のアメリカのホラー映画やモンスター映画、パルプ雑誌などについて調べているうち、こうした懐かしいB級作品の香りを現代に蘇らせられないかと考えたことです。科学が進歩し、コンピュータやインターネットが普及した現代に、こうした話は似合わない。だったらいっそ、ああいう映画や雑誌が実際に作られていた時代を舞台にした方が面白いと。
 また、『事件記者コルチャック』や『狼女の香り』、最近だと『ドクター・フー』や『秘密情報部トーチウッド』といった海外の一話完結式の怪奇・SFドラマが好きなもので、以前からああいう話をやってみたかったということあります。もちろん、先行作品とはかぶらないように、2人のヒロインは非常にユニークな設定にしています。各話のストーリーにしても、「こんなの山本弘でないと書けない」と言ってもらえるようなものばかりだと自負しております。
 ホラーあり、サスペンスあり、SFあり、ミステリあり。スプラッタもあれば笑いもあり、時にはしんみりとさせる。そんな自由奔放でにぎやかな世界が『リジー&クリスタル』なのです。


●第一話 まっぷたつの美女
 リジーの探偵事務所を訪れた美女が、奇妙な相談を持ちかける。恋人が猟奇的な表紙を売り物にしているパルプ雑誌を買い集めているのが不安だというのだ。リジーに説得されて帰っていったが、数日後、まさにパルプ雑誌の表紙を模したかのような残酷な殺人事件が起きる。

 リジーとクリスタルの人物紹介を兼ねた第一話は、この小説を書くきっかけになった、30年代アメリカで流行していたパルプ小説誌をネタにした話。作中に登場する雑誌はすべて実在のもの。この時代のアメリカでは、こんな雑誌が山ほど出てたんです。


●第二話 二千七百秒の牢獄 
 一九三二年、ユニバーサル映画が製作していたものの、さる事情で未完成に終わった密林映画『豹人の女王』。6年後、そのフィルムをめぐって、ユニバーサルの創始者カール・レムリの身に奇怪な現象が起き、リジーもそれに巻きこまれる。フィルムに潜むアフリカの邪神ニャーマトウ。クリスタルはリジーたちを救うため、名特撮マン、ジョン・P・フルトンに助けを求める。

 ジョン・P・フルトンは実在の人物。『透明人間』(33)や『フランケンシュタインの花嫁』(35)の特撮技術は、今見ても素晴らしいです。
 彼に興味を抱くうち、「もしフルトンが恐竜の出てくる特撮映画を作っていたら」と思いつき、その映画の内容を妄想するうちにでき上がったエピソード。『豹人の女王』は完全に架空の映画なんですが、いかにもこの時代に作られていそうなものを考えました。

●第三話 ペンドラゴンの瓶
 一八八〇年、コロラドの田舎町を訪れたカーニバルで、少年が目撃した正体不明の「ペンドラゴンの瓶」。一九三八年、カリフォルニアの山中で起きた謎の獣による惨殺事件。そして一六一七年、イングランドの錬金術師ペンドラゴンが美しい娘ベスを殺害した事件──三世紀の時をまたいで、事件がひとつの線となって結びつく。

 ヒントになったのはレイ・ブラッドベリの「瓶」という短編。何が入っているのか分からない奇妙なガラス瓶をめぐる話です。
 これ以上は何を書いてもネタバレになりそうなのでやめておきます。話が転がってゆく様をお楽しみください。

●第四話 軽はずみな旅行者
 とあるダイナーで、リジーはギャングのカジンスキーと話している男を目にする。数日後、ルークと名乗るその男が探偵事務所を訪れ、カジンスキーに奪われたアタッシェケースを取り戻してくれと依頼する。彼はあるアイテムを手に入れるために二十一世紀末からこの時代にやってきたタイムトラベラーで、アタッシェケースを取り返さないと歴史が決定的に歪んでしまうというのだ。

「怪奇探偵」というタイトルから受けるであろうイメージから大きくはずれた、コミカルなSF話。まあ、『コルチャック』にもロボットや宇宙人が出てくる話がありましたからね。こういう話もアリなのが『リジー&クリスタル』なのです。
 特に後半、SFファンなら大喜びする趣向を盛りこんでおります。

●第五話 異空の凶獣
 かつてクリスタルの母が取り組んでいた四次元空間の実験。科学者ウィッシュボーンがその実験を再開させたところ、地球に隣接する異空間の惑星から、透明な肉食生物ドロウルがこちらの世界に侵入してきた。人間に知られることなく凶行を重ねるドロウル。その姿が見えるのはクリスタルだけなのだ。

 クリスタルと異次元生物の死闘を描くサスペンス編。これもSFファンなら、A・E・ヴァン・ヴォクトの「黒い破壊者」を連想するでしょう。(クァールは透明じゃないですけど)




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この記事へのコメント
おお、ついに発売ですか!26日が楽しみです!!
Posted by ドードー at 2015年12月12日 20:10
表紙を見ただけでワクワクします。
寺田克也さんでしょうか?
Posted by これは面白そうだ(^^♪ at 2015年12月12日 21:19
 予約しました!
 発売日はまさに冬コミ(今年の)直前ですね。(山本さんのブースはどこですか?)
Posted by toorisugari at 2015年12月14日 17:45
電ノコで裸美女を切断って、パルプ雑誌の表紙が凄すぎですがな…!

たしか、こうした画は犯罪を助長するとして、全面禁止にした途端、ア●リカの治安は悪化してしまったんでしたっけ。

近時読んだ「死のテレビ実験」という本の著者は、「素人」の「過激なドラマ」を描いたドキュメント番組「リアルドラマ」が、人間の堪忍袋の緒の耐久度を弱めたり、怒りの導火線を短くするのではないかと心配していました。

個人的には、アメ●カの治安が悪いのは、誰でも銃を携帯できるのが一番の原因の様に思えるのですが…
Posted by nns at 2015年12月20日 20:48
ついさっき読み終わりましたが面白かったです!2巻も読みたくなりましたので編集部にハガキを送ることにします。
それにしてもリジーさんもクリスタルさんに負けないくらいハードな過去の持ち主でしたね……。泣けましたよ。
Posted by ドードー at 2015年12月26日 23:25
> これは面白そうだ(^^♪ さん

 はい、そうです。寺田克也さんです。いいでしょ?

>toorisugariさん

 水曜日の東メ‐36bです。

>nnsさん

 1954年に定められたコミックス・コードによって、コミックスの残酷表現や性的表現ががちがちに規制されたのは事実です。でも、犯罪はその後も増加の一途。つまり表現を規制しても犯罪は減らないことは、アメリカの歴史が証明してるんです。

>ドードーさん

 ありがとうございます。続編が書けるかどうかは、売り上げと読者の反響しだいです。
Posted by 山本弘山本弘 at 2015年12月27日 18:09
読みました
めちゃくちゃ面白かったです!!
本当に読みながら海外ドラマを見てるかのような素晴らしい体験でした。
現在三周目に入ってます
どれも素晴らしいのですが、なんといっても第四話がたまりません♪

一話読んだ時は最後まで一気に読むって勢いだったのですが、四話読了後、我慢できずに本閉じてDVD引っ張り出しちゃいました(笑)

これは二巻以降もぜひ読みたいです!
期待しています!!
Posted by ジョナ at 2015年12月30日 23:50
私はカドカワ連載は全然見てなかった不熱心な読者なのですが、ああ、楽しかった。本好きな人はどんどん買って欲しい。造本も素晴らしいです。装丁デザインも手触りもいいなあ。本文インキが大豆インキだから昔の石油インキ時代の「新しい本のいい匂い」はしないけど、五感に満ちる、本を手に入れる歓び。
エド・マクベインや都筑道夫の短編集を読んだ時と同じ気持ちになりました。読者は客だから常に良い気なもので、なんか面白い本を読みたいと思ってるだけですが、こっちの思惑を超えて力を込めた作品をプレゼントしてくれる作家がいるんだという、多分本好きを本好きにしてしまう気持ちです。
こんな良い本を作ってくれてありがとうございます。
Posted by 高柳香 at 2016年01月06日 13:04
>ジョナさん
>高柳香さん

 ありがとうございます。
 僕としてはまだまだ続きを書きたいんですが、続編が出せるかどうかは編集部の判断しだいなので……応援をよろしくお願いします。
Posted by 山本弘山本弘 at 2016年01月15日 18:15
 第四話の「パール」とは、物ではなく出来事のことですか?
 初歩的なことな上にネタバレにもなりかねない質問で申し訳ないのですが、確認したかったのでコメントしました。
Posted by toorisugari at 2016年03月30日 09:59
>toorisugariさんへ

 そうです。
 実は某有名な書評家の方も、「パール」の意味が分からなくて困惑されてたと聞いています。むしろこっちが困惑してます。あんなにヒント出してたに。
Posted by 山本弘山本弘 at 2016年04月15日 21:16
>山本さん

 やはりそうでしたか、ご返答有難うございます。
 しかし書評家の方でも疑問を持たれた方がいるとなると、意外にわからない方もそれなりにいらっしゃるのでしょうか。仰られる通りヒントどころか時代背景等の要素もあるのですが。
Posted by toorisugari at 2016年04月15日 22:39
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