2015年11月23日
それは僕が書いたんじゃありません
僕に関するデマが流れることは前から何度もあったんだけど、先月、またデマが流れた。
このブログを僕が匿名で書いたというのである。
王様は裸だ! と叫ぶ勇気 ~伊藤計劃『ハーモニー』の崩壊~
読んでみて、なるほど、いかにも僕が書きそうな文章だなと思った(笑)。
この人などもそう考えているらしい。
『ハーモニー』『虐殺器官』を批判する匿名記事を読んでいて気づいたこと
なんかいかにも推理っぽいことを書いてるけど、まったく見当はずれの迷推理。僕はこんなブログ書きません。
第一に、僕はそもそも『ハーモニー』も『虐殺器官』も読んでない。
なぜ読んでないかというと、僕は天邪鬼なもんで、まわりが「すごい」とか「傑作だ」と盛り上がってると、逆に読む気をなくすんである(笑)。ダン・シモンズの『ハイペリオン』を読んでないのもそう。評判になればなるほど読みたくなくなる。それよりも、あまり注目されないけど自分なりに面白いと思う本を見つけるのが好きなのだ。アーネスト・クライン『ゲームウォーズ』みたいに。
ビブリオバトル・チャンプ本『ゲームウォーズ』
第二に、この人とは意見が違う。たとえば「The Indifference Engine」は読んでるけど、「アイデアから構成からテッド・チャン「顔の美醜について」にそっくり」とは思わなかった。アイデアが同じでもストーリーが違えば別の作品だ、というのが僕の持論である。そうでなかったら、『地球移動作戦』なんて書くか(笑)。
(もっとも、「顔の美醜について」が「あなたの人生の物語」より優れているという点については同意する。「顔の美醜について」はもっと評価されるべきだと思う)
第三に、確かに僕は現役の日本SF作家を批判することは避けている。問題が起きそうだから。
でも故人、それも亡くなって何年にもなる人に対しては躊躇しない。以前からこのブログをお読みの方なら、僕が栗本薫氏についてどう書いていたか、ご記憶のはずだ。
フィクションにおける嘘はどこまで許される?(後編)
クリプトムネジアの恐怖・1
だから僕がもし伊藤計劃氏を批判しようと思ったら、堂々と実名でやる。匿名になんかしない。
そもそも僕はパソコン通信の時代から、ずっと「山本弘」というハンドルで通している。別ハンドル使ったことなんか一度もない。
なぜかというと、僕は自分が信じられないから。
人間は匿名になるとどんなおぞましい発言でも平気でやる。げんに今もネットにはそんな発言があふれている。僕は自分がそんな風に暴走しない自信がない。だから自分に枷をはめるため、決して匿名は使わないと決めている。
まあ、これぐらいのデマだったら些細なことで、笑って許せた。僕は10月27日のツイッターでこう書いた。
https://twitter.com/hirorin0015/status/658912910110928896
>このブログの作者が僕じゃないかという憶測が流れてる。違いますよ! 僕は『ハーモニー』読んでないから。
これでこの件は収まったと思っていた。ところが、後になって調べ直してみたら、笑いごとじゃないことが起きていたことが分かった。検索していたら、こんな意見が見つかったのである。
>これ、絶対に「山本弘の文章を模倣して書いた」というのが分かる極めて悪質な文章。読む人間が読めば、氏の使う文章の特徴的な言い回しがモロに出てて、あいた口がふさがらない。
実は僕の書いた前述のツイッターにも、他の人からこんなリツイートが来ていたのだ。
>この記事、言葉使いや文章構成があまりにも山本先生っぽいんですよね…「僕はひっくり返った。」とか、と学会本で何度も目にした言い回しですし。これは誰かが「山本弘は人気作を匿名でしか批判できない卑怯な奴」という印象を広めるために意図的に似せてるんでしょうか?
僕はすぐに「そんな陰謀論は唱えたくないです。このブログの作者に失礼だから」と答えたんだけど、どうも他にも陰謀論を唱えてた人がいたようなのだ。つまり、僕に関するデマは収束したけど、その代わり、ブログの作者に対するデマが生まれたらしいのである。
僕一人がデマを流されるならともかく、無関係な人までとばっちりくらって「極めて悪質な文章」なんて書かれるとは、きわめて不愉快である。
だいたいこの文章、本当に僕に似せて書いてるように見えるのか? 内容はともかく、文体が違うだろ。
僕はこんな頻繁に段落を変えません!
僕の文章を読んでいたら、1行のみの段落というのがほとんどないことに気づくはず。何行もある段落がいくつも続いていて、その合間に、ぽつっと1行のみの段落が入る(上の「なぜかというと、僕は自分が信じられないから」なんかがそれ)。
これは僕は眉村卓氏の小説から学んだ技法で、長い段落の中に「だが」とか「しかし」とかいう短い段落が入ると、とても効果的なんである。僕の文章を真似するんなら、段落の長さなんていういちばん目立つ部分を真似しなきゃいかんだろ。つーか、何でわざわざ僕のふりをする必要がある?
だから僕は、このブログの作者が、わざと僕の文章に似せたなんて思わない。「極めて悪質な文章」なんていうのは、それこそ悪質な誹謗中傷である。迷推理を披露した方々、反省してほしい。
このブログを僕が匿名で書いたというのである。
王様は裸だ! と叫ぶ勇気 ~伊藤計劃『ハーモニー』の崩壊~
読んでみて、なるほど、いかにも僕が書きそうな文章だなと思った(笑)。
この人などもそう考えているらしい。
『ハーモニー』『虐殺器官』を批判する匿名記事を読んでいて気づいたこと
なんかいかにも推理っぽいことを書いてるけど、まったく見当はずれの迷推理。僕はこんなブログ書きません。
第一に、僕はそもそも『ハーモニー』も『虐殺器官』も読んでない。
なぜ読んでないかというと、僕は天邪鬼なもんで、まわりが「すごい」とか「傑作だ」と盛り上がってると、逆に読む気をなくすんである(笑)。ダン・シモンズの『ハイペリオン』を読んでないのもそう。評判になればなるほど読みたくなくなる。それよりも、あまり注目されないけど自分なりに面白いと思う本を見つけるのが好きなのだ。アーネスト・クライン『ゲームウォーズ』みたいに。
ビブリオバトル・チャンプ本『ゲームウォーズ』
第二に、この人とは意見が違う。たとえば「The Indifference Engine」は読んでるけど、「アイデアから構成からテッド・チャン「顔の美醜について」にそっくり」とは思わなかった。アイデアが同じでもストーリーが違えば別の作品だ、というのが僕の持論である。そうでなかったら、『地球移動作戦』なんて書くか(笑)。
(もっとも、「顔の美醜について」が「あなたの人生の物語」より優れているという点については同意する。「顔の美醜について」はもっと評価されるべきだと思う)
第三に、確かに僕は現役の日本SF作家を批判することは避けている。問題が起きそうだから。
でも故人、それも亡くなって何年にもなる人に対しては躊躇しない。以前からこのブログをお読みの方なら、僕が栗本薫氏についてどう書いていたか、ご記憶のはずだ。
フィクションにおける嘘はどこまで許される?(後編)
クリプトムネジアの恐怖・1
だから僕がもし伊藤計劃氏を批判しようと思ったら、堂々と実名でやる。匿名になんかしない。
そもそも僕はパソコン通信の時代から、ずっと「山本弘」というハンドルで通している。別ハンドル使ったことなんか一度もない。
なぜかというと、僕は自分が信じられないから。
人間は匿名になるとどんなおぞましい発言でも平気でやる。げんに今もネットにはそんな発言があふれている。僕は自分がそんな風に暴走しない自信がない。だから自分に枷をはめるため、決して匿名は使わないと決めている。
まあ、これぐらいのデマだったら些細なことで、笑って許せた。僕は10月27日のツイッターでこう書いた。
https://twitter.com/hirorin0015/status/658912910110928896
>このブログの作者が僕じゃないかという憶測が流れてる。違いますよ! 僕は『ハーモニー』読んでないから。
これでこの件は収まったと思っていた。ところが、後になって調べ直してみたら、笑いごとじゃないことが起きていたことが分かった。検索していたら、こんな意見が見つかったのである。
>これ、絶対に「山本弘の文章を模倣して書いた」というのが分かる極めて悪質な文章。読む人間が読めば、氏の使う文章の特徴的な言い回しがモロに出てて、あいた口がふさがらない。
実は僕の書いた前述のツイッターにも、他の人からこんなリツイートが来ていたのだ。
>この記事、言葉使いや文章構成があまりにも山本先生っぽいんですよね…「僕はひっくり返った。」とか、と学会本で何度も目にした言い回しですし。これは誰かが「山本弘は人気作を匿名でしか批判できない卑怯な奴」という印象を広めるために意図的に似せてるんでしょうか?
僕はすぐに「そんな陰謀論は唱えたくないです。このブログの作者に失礼だから」と答えたんだけど、どうも他にも陰謀論を唱えてた人がいたようなのだ。つまり、僕に関するデマは収束したけど、その代わり、ブログの作者に対するデマが生まれたらしいのである。
僕一人がデマを流されるならともかく、無関係な人までとばっちりくらって「極めて悪質な文章」なんて書かれるとは、きわめて不愉快である。
だいたいこの文章、本当に僕に似せて書いてるように見えるのか? 内容はともかく、文体が違うだろ。
僕はこんな頻繁に段落を変えません!
僕の文章を読んでいたら、1行のみの段落というのがほとんどないことに気づくはず。何行もある段落がいくつも続いていて、その合間に、ぽつっと1行のみの段落が入る(上の「なぜかというと、僕は自分が信じられないから」なんかがそれ)。
これは僕は眉村卓氏の小説から学んだ技法で、長い段落の中に「だが」とか「しかし」とかいう短い段落が入ると、とても効果的なんである。僕の文章を真似するんなら、段落の長さなんていういちばん目立つ部分を真似しなきゃいかんだろ。つーか、何でわざわざ僕のふりをする必要がある?
だから僕は、このブログの作者が、わざと僕の文章に似せたなんて思わない。「極めて悪質な文章」なんていうのは、それこそ悪質な誹謗中傷である。迷推理を披露した方々、反省してほしい。
Posted by 山本弘 at 19:25│Comments(9)
│作家の日常
この記事へのコメント
しかしまあ、そのブログの人も気の毒ですねぇ。
せっかく自分で読んで感じて考えて書いたであろう感想がそんな曲がった読まれ方をされるなんて。
迷探偵の迷推理で感想が殺されてしまった殺感想事件ですねぇ。これは。
本当に、とんだ迷探偵がいたものですね。
せっかく自分で読んで感じて考えて書いたであろう感想がそんな曲がった読まれ方をされるなんて。
迷探偵の迷推理で感想が殺されてしまった殺感想事件ですねぇ。これは。
本当に、とんだ迷探偵がいたものですね。
Posted by ドードー at 2015年11月23日 21:49
別のエントリでこの話に触れた方がいたので、件の「はてな匿名ダイアリー」は読んでいました。確かに山本先生の文章に似ている気もしましたが、読み進むうちに「これは別人だろう」と思いました。なりすまし云々という見方があるようですが、私は違うんじゃないかと感じます。まねしていると言うより、知らず知らずのうちに山本先生の文章に影響を受けてるんじゃないかと感じましたが。
伊藤計劃氏の作品はずいぶんと評価が高いので虐殺器官もハーモニーも読みましたが、私はどちらの作品もそれほど面白いとは思いませんでした。虐殺器官については小松左京氏の論評が、まさに的を射ていると思います。才能がある方だったのでしょうが、夭折したことで過大評価されているように思います。作品に登場するいろいろなギミックは面白いと思いましたが。
伊藤計劃氏の作品については、いつか山本先生の感想も聞いてみたいですね。
伊藤計劃氏の作品はずいぶんと評価が高いので虐殺器官もハーモニーも読みましたが、私はどちらの作品もそれほど面白いとは思いませんでした。虐殺器官については小松左京氏の論評が、まさに的を射ていると思います。才能がある方だったのでしょうが、夭折したことで過大評価されているように思います。作品に登場するいろいろなギミックは面白いと思いましたが。
伊藤計劃氏の作品については、いつか山本先生の感想も聞いてみたいですね。
Posted by カルスト at 2015年11月24日 21:30
>でも故人、それも亡くなって何年にもなる人に対しては躊躇しない。
死んで反論出来ない相手だけを狙って批判する山本弘のゲスっぷりに笑いが止まらない
「山本弘は同業者が死んでからでしか批判できない卑怯な奴」ですなw
死んで反論出来ない相手だけを狙って批判する山本弘のゲスっぷりに笑いが止まらない
「山本弘は同業者が死んでからでしか批判できない卑怯な奴」ですなw
Posted by 同業者のファン at 2015年11月25日 07:11
私も、「超絶プラモ道」 の著者 はぬまあん氏が、山本先生の変名ではないか?と最初の内思っていたことがありました。
「虐殺器官」を読まれていないとは意外でした。
(恐らく)山本先生好みの話の上に、「ハイペリオン」程長くもないんですけどね。
あと前回の著作権の話ですが、政府が2次創作などに配慮すると繰り返し明言する一方、此方のように民間の団体は懸念を表明し続けていますが。
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20151125_732191.html
「虐殺器官」を読まれていないとは意外でした。
(恐らく)山本先生好みの話の上に、「ハイペリオン」程長くもないんですけどね。
あと前回の著作権の話ですが、政府が2次創作などに配慮すると繰り返し明言する一方、此方のように民間の団体は懸念を表明し続けていますが。
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20151125_732191.html
Posted by 名無し at 2015年11月25日 18:29
虐殺器官の設定は、確かにちょっと唐突感がありますね。
私はLINK先で言及されている(多分)メデューサの呪文を先に読んでいたので、すんなり受け入れ、楽しんで読めました。
メデューサの呪文は、一番好きなSFです。
私はLINK先で言及されている(多分)メデューサの呪文を先に読んでいたので、すんなり受け入れ、楽しんで読めました。
メデューサの呪文は、一番好きなSFです。
Posted by 水笛 at 2015年11月26日 22:42
…ツイッターで散々お書きになられていましたよね。
批判の文章というものは、案外口調が似通ってくるものなのかもしれません。
批判の文章というものは、案外口調が似通ってくるものなのかもしれません。
Posted by toorisugari at 2015年11月30日 12:12
作者さんが山本先生の書かれた「と学会」の本を読んでその文体が頭にあったんじゃないか?と思います。今頃は作者さんが山本先生に申し訳なく思っているんじゃないでしょうか。まあ内容的には同館の部分の多い内容の文章でした。
Posted by ジャラル at 2015年12月03日 22:27
>同業者のファンさん
存命の同業者を批判して仕事上のトラブルが起きるのを防ぐことを「ゲス」と言われるとは夢にも思いませんでしたわ(笑)。
ということは、ゲスではないあなたは、普段から炎上なんか気にすることなく、同業者を(どんなお仕事をされているのかは知りませんが)歯に衣着せずに批判されておられるのでしょうね。すごいですね。
存命の同業者を批判して仕事上のトラブルが起きるのを防ぐことを「ゲス」と言われるとは夢にも思いませんでしたわ(笑)。
ということは、ゲスではないあなたは、普段から炎上なんか気にすることなく、同業者を(どんなお仕事をされているのかは知りませんが)歯に衣着せずに批判されておられるのでしょうね。すごいですね。
Posted by 山本弘
at 2015年12月12日 17:52

>山本先生
同業者のファンさんは「山本先生と同業者」、つまり自分は小説家だと言いたいんじゃないですかね。
だとしたら自分だって本名もしくはペンネームを名乗らず「同業者のファン」なんて名乗ってるんですからゲスですよねぇ。
まあ、個人的にふと思ったことですが。
同業者のファンさんは「山本先生と同業者」、つまり自分は小説家だと言いたいんじゃないですかね。
だとしたら自分だって本名もしくはペンネームを名乗らず「同業者のファン」なんて名乗ってるんですからゲスですよねぇ。
まあ、個人的にふと思ったことですが。
Posted by ドードー at 2015年12月12日 18:10
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