2009年06月11日

「ファフロッキーズ」じゃありませんから

 日本でもファフロツキーズ現象が起きたと話題になっている。空からオタマジャクシや魚が降ってきたというのだ。

msn産経ニュース(6月8日)
msn産経ニュース(6月9日)
msn産経ニュース(6月11日)

 ニュースや新聞の報道を見る限り、確かに奇現象ではあるものの、昔から数多くの報告がある典型的なファフロツキーズで、その意味ではあまり目新しくはない。
 ファフロツキーズについては、『神は沈黙せず』の中でかなりのページを割いて解説したので、今さら語るのはやめておく。知りたい方は読むように(笑)。


 さて、今回の騒動で気になったことがひとつ。
 グーグルで検索してみると――

●ファフロツキーズ 234件

●ファフロッキーズ 6320件

 ガビーン! 「ファフロッキーズ」の方が多い!?
 しかもグーグル、「ファフロツキーズ」と入力したら「もしかして『ファフロッキーズ』」って訊いてきやがるし!
 スペルはFafrotskiesである。「Falls From The Skies」(空からの落下物)の略。 命名者は有名な超常現象研究家のアイヴァン・T・サンダースンだ。彼はオーパーツ(OOPARTS = Out Of Place Artifacts)という言葉も発明している。こういう変な略し方が好きなのかもしれない。
 このスペルをよく見てほしい。もしかしたら「ts」は「ツ」ではなく「ス」と発音する可能性もある。つまり「ファフロツキーズ」もしくは「ファフロスキーズ」である。
 でも、「ファフロッキーズ」にはならんだろう、どう見ても。

 何で僕がこれにこだわるかというと、「ファフロツキーズ」という表記を日本に広めたのは、たぶん僕だからである。
 もう10年近く前になるが、『神は沈黙せず』の執筆をはじめてた頃、魚や蛙が空から降ってくるという現象を出そうとして、それをどう呼ぶべきか悩んだ。 日本語の資料(日本人の書いた超常現象本や、海外の超常現象本の翻訳)をかたっぱしから調べたけど、名前が見つからない。
 そこで、あるメーリングリスト(と学会ではない)で、「魚や蛙が空から降ってくるという現象を指す言葉はないのでしょうか?」と質問してみた。
 そうしたら、海外では「Fafrotskies」と呼んでいる……と教えてくださったのが植木不等式氏である。

 スペルは分かったけど、悩んだのがこの発音。当時、海外のサイトを調べたものの、スペルは載っていてもどう発音するのかが分からない。
 英語に詳しい人に相談したりして、たぶん「tskies」は「ツキーズ」と表記するのが妥当なんじゃないか……と判断して、『神は沈黙せず』の中で「ファフロツキーズ」という表記を使用したわけである。
 つまり、『神は沈黙せず』以前に、日本の書籍で「ファフロツキーズ」と表記した例は(皆無とは断言できないが)ほとんどなかったはずなのだ。

 じゃあ、「ファフロッキーズ」と変な表記をはじめたのは誰なのか……と調べてみると、どうもこの「超常現象最前線」というサイトの記述(2000年1月16日)がいちばん古いようだ。

空からの落下物
http://www.fitweb.or.jp/~entity/kaiki/rakkabutu.html

 このサイトの作者は誤って、Fafrotskiesの命名者をチャールズ・フォートだと書いている。「ファフロッキーズ チャールズ・フォート」で検索すると、このページをコピペしたらしい文章が多数見つかる。
 ちなみにこの「超常現象最前線」の作者は飛鳥昭雄の信奉者で、このサイトの記述の多くは飛鳥本が元ネタである。このページの最後に書かれている大気プラズマうんぬんというのも、もろに飛鳥説である。
 だから「ファフロッキーズ」という表記も、もしかしたら飛鳥氏の本のどれかに出てくるのかもしれない……と思うのだが、ちょっと飛鳥氏の著書は数が多すぎて、調べようにもどこから手をつけていいものやら。

 さらに検索してみて分かったのが、「ファフロッキーズ」と表記しているページの多くが、つい最近、石川県にオタマジャクシが降ってきたニュースが報じられてから書かれたものだということ。
「空からの落下物」というキーワードはもちろん、「ファフロッキーズ」で検索しても、この「超常現象最前線」の記事が最初にヒットする。正しく「ファフロツキーズ」で検索しようとしても、グーグルがお節介にも「ファフロッキーズ」の間違いでしょ?と言ってくる。
 そのため、今度の事件で初めて「ファフロッキーズ」もしくは「ファフロツキーズ」という言葉を耳にした人が、興味を抱いて検索してみて、「超常現象最前線」を読んでしまう。その結果、誤った記述がどんどん広まっているらしいのである。
 当然、それといっしょに「大気プラズマ説」などというトンデモ説も広まっているわけだ。

 ちなみに僕の知り合いが今回の事件で、テレビ局から電話取材を受けたのだが、その際、「プラズマが原因の可能性はありますか?」と質問されたそうだ(笑)。テレビ局のスタッフまで「超常現象最前線」に(さらにその元になっている飛鳥説に)汚染されているらしい。
 もちろんその人は「それはないと思います」ときっぱり答えたそうだ。

 昔から超常現象大好きな僕は、この際、声を大にして言う。
「ファフロッキーズ」じゃありませんから!
 命名者はチャールズ・フォートじゃありませんから!
 飛鳥昭雄の言ってることを信じちゃだめですから!
(笑)


タグ :超常現象

同じカテゴリー(事件)の記事画像
「イルミナティカード」でテレビに出たのはいいけれど……
鬼怒川決壊をめぐるデマ・3
鬼怒川水害をめぐるデマ・2
鬼怒川水害をめぐるデマ・1
お前の行為はアイコンに恥じないものなのか?
彼らは調べようとしない・2
同じカテゴリー(事件)の記事
 「イルミナティカード」でテレビに出たのはいいけれど…… (2016-08-06 20:52)
 「保育園落ちた」陰謀論 (2016-03-16 15:42)
 鬼怒川決壊をめぐるデマ・3 (2015-09-15 17:58)
 鬼怒川水害をめぐるデマ・2 (2015-09-14 20:53)
 鬼怒川水害をめぐるデマ・1 (2015-09-14 19:43)
 お前の行為はアイコンに恥じないものなのか? (2015-07-13 19:36)

この記事へのトラックバック
▼「ファフロッキーズ」じゃありませんから (山本弘のSF秘密基地BLOG) ht
北陸地方、午後はくもりのちおたまじゃくし、ところにより雷魚となるでしょう【[間歇日記]世界Aの始末書】at 2009年06月12日 21:15
資料写真: 記者はこういう女の子に空から降ってきてほしいです → amazonで詳細情報を確認 石川県など東北北陸各県で相次いでいる“オタマジャクシが突然空から落ちてくる”事件...
オタマジャクシ謎の落下─「空から降ってくる女の子」の原料だった!【bogusnews】at 2009年06月14日 10:16
この記事へのコメント
今フジテレビの夕方のニュースで安藤優子さんまで「ファフロッキーズ」って言ってましたね。しかも「Falls From The Skies」の略だと紹介していながら。
Posted by まっけん at 2009年06月11日 17:56
「ファフ“ロツキー”ズ」だから、「ここは“ロッキー”の書き間違いに違いない」と考えたんでしょうかね?
あと、意識してないと結構“ロツキー”って言い辛いと思うので、そう言う事もあるかもしれません。
Posted by Rick at 2009年06月12日 11:44
確認した限り、東京の民放各局はファロッキーズと認識してますね。
もうどうにもなりません><
Posted by ろぼ at 2009年06月12日 17:06
元が英語だからねー、英語っぽく読んだ方がいいんじゃね?ツキーとかロシア語っぽい。

fafrot-skiesと読めばファフロットスカイズ
tを読まなければファフロスカイズ
個人的には「〜スカイズ」と呼ばれた方が「ああ、空からへんちくりんな物が落ちてきそう」って感じるけどね。
tを読まない「ファフロスカイズ」がおすすめかな?w

アメリカ人に読ませても十人十色の読み方が出てきそうな単語だけどね

オーパーツにしろパーツって言葉を入れてるから「ああ、なんか部品かなんかなんだな」ってわかるし
Posted by 通りすがり at 2009年06月14日 11:09
更に状況は進行し

ぐーぐるせんせーは曰く

>もしかして: ファフロッキーズ

Posted by ねむい at 2009年06月20日 14:26
 みなさま、ご報告ありがとうございます。
 その後、かなり状況が改善し、6月20日18時現在、

ファフロツキーズ 29,700 件
ファフロッキーズ 18,500 件

 と逆転しました。
 もっとも、いまだにグーグルは「もしかして: ファフロッキーズ 」と出ますが……。

 ちなみに、この嘘ニュースには笑いました。GJです!

>オタマジャクシ謎の落下─「空から降ってくる女の子」の原料だった!
http://bogusne.ws/article/121426827.html
Posted by 山本弘山本弘 at 2009年06月20日 18:35
もういいじゃんファフロッキーズで。
作ったもん勝ち
Posted by NO-MU at 2009年08月01日 22:42
僕が9年前にその記事を書いたときに、表記の仕方に迷いまして、確か海外の翻訳ものの超常現象本(忘れた)からその表記を見つけてひっぱってきたんですよね。
当時は「神は沈黙せず」が出版される以前で、この現象に対する表記がネット上にもまったく見当たらなかった。
そんで、海外にせっかくこういう呼び名があるなら、いっそ俺が記事を書いて、この呼び名を浸透させてやろう。
そうすれば後で記事を書く人が少しでも楽になるだろうって親切心で使い始めたんですけど。
まさか間違っていたとはね。
その後、山白朝子さんが短編集で「鳥とファフロッキーズ現象」という作品を発表されて、グーグル検索で俺の記事と山白さんの作品名がちょこんと検出されたときは、俺は喜びましたよ。
よしよしゆっくりだけど確実に浸透しつつあるなとほくそ笑んでたんですけど。
山白先生、俺のせいかどうか知りませんけど本当にすいません。
あと飛鳥昭雄先生はこの命名にいっさいかかわっていません(笑)
もちろんプラズマ説も唱えていません。俺が勝手に飛鳥説をもとに書いただけで、飛鳥先生に罪はありません(笑)
責めるなら俺だけにしてください(笑)
Posted by NO-MU at 2009年08月01日 23:44
>NO-MUさん

 了解しました。
Posted by 山本弘山本弘 at 2009年08月03日 16:09
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。