2015年04月08日

『ニセ科学を10倍楽しむ本』文庫化

 2010年に楽工社から出版された『ニセ科学を10倍楽しむ本』が、筑摩書房から文庫になりました。

ちくま文庫 950円+税

 5年前に自分のホームページに書いた文章から、そのまま引用します。

------------------------
「ニセ科学っていったい何?」

 大阪大学の物理学者・菊池誠さんは、ニセ科学について、「科学をよそおってはいるが、科学ではないもの」と定義しています。
「波動」「アルファ波」「フォトン」「マイナスイオン」などなど、一見科学的に見える言葉を使ったり、もっともらしい実験をやってみせたりして、科学的なように見せかけているものの、実はぜんぜん科学的ではないもの――それがニセ科学です。
 ニセ科学は、あるはずのないことを「ある」と言い、できるはずのないことを「できる」と言います。正しいことを「まちがいだ」と言い、本当のことを「ウソだ」と言います。「水は字が読める」とか、「水だけで自動車が走る」とか、「進化論は間違っている」とか、「アポロは月に行っていない」とか。

「そんなバカバカしい話を信じているのは、ごく一部の人だけじゃないの?」 

 いいえ、ちがいます。今の世界にはたくさんのニセ科学がはびこっていて、中には何百万人、何千万人もの人が信じてしまっているものがあるのです。
 たとえば中高校生から40代までの日本人1000人を対象に行なわれた調査では、「アポロは月に行っていない」と信じている人が18.5パーセントもいるという結果が出ています。
 9.11テロの真犯人がアメリカ政府だと信じている人は、アメリカ人の15パーセントもいます。
 進化論を信じていないアメリカ人は44パーセントもいます。
 有名な芸能人や、政治家、学校の先生などがニセ科学を信じてしまっている場合もよくあります。科学者の中にもニセ科学をとなえる人がいます。
 あなただって、この本に出てくるニセ科学のいくつかを、すでに信じているかもしれません。血液型性格判断とか地震雲とか『ゲーム脳』とか『買ってはいけない』 とかを。

「でも、おかしな考えをただ信じているだけなら、害はないんじゃないの?」

 そうでしょうか?
 ニセ科学の中には、高い商品を売りつけるもの、健康に害があるもの、人を不安にさせるもの、危険な考えを吹きこむものがあるのです。そうしたことを信じてしまうと、お金を損したり、病気になったり、怪しい宗教や危険な政治思想ににハマったりします。時には死んでしまう場合だってあります。
 それだけではありません。「アポロは月に行っていない」とか「相対性理論は間違っている」といった主張は、偉業をなしとげた人たちをウソつきや無能よばわりしています。そうした説を無責任に人にしゃべったり、ブログに書きこむことで、あなたはそうした人たちの名誉を傷つける行為に加担しているのです。

「そんなもの、禁止してしまえばいいじゃない」

 いいえ。言論の自由というものがあります。名誉毀損やウソの宣伝の場合を別にすれば、ただ単にまちがっているという理由で言論を禁止することはできません。
 犯罪をこの世からなくすことができないのと同じで、ニセ科学をこの世からなくすことはできません。何十年も前に生まれたニセ科学が今でも生き残っている一方、新しいニセ科学が次から次に生まれてくるのですから。せいぜい、ひっかからないように、自分で用心するしかないのです。

「どうすればニセ科学にだまされずにすむの?」

 いちばんいいのは、ニセ科学に興味を持つことです。ニセ科学とはどういうものか、どんな種類があってどんなふうにまちがっているのかをあらかじめ知っておけば、そうしたものに出会ったときに、「あっ、これはニセ科学じゃないか?」とピンとくるでしょう。
 この本のタイトルを『ニセ科学を10倍楽しむ本』としたのは、多くの人にニセ科学に興味を持っていただきたいからです。「ニセ科学なんて興味ないよ」と無視して、本当のことを知ろうとしなければ、かえってニセ科学にだまされてしまいます。

「でも、科学の話なんてむずかしいんじゃない?」

 ご心配なく。かたくるしい書き方をさけ、中学生の夕帆ちゃんという女の子を主役に、中学1年生ぐらいの学力でも理解できるような楽しい読み物にしましたから。
 ニセ科学そのものはデタラメでも、それがどうデタラメなのかを知るのは、きっとあなたの役に立つはすです。


第1章 水は字が読める?
 夕帆ちゃんの通う中学の先生が、「水は字が読める」「〈ありがとう〉と書いた紙を容器に貼るときれいな結晶ができる」なんて、おかしなことを言いはじめた。
 同じことを教えている先生は日本中におおぜいいるという。これは大問題だ! パパは学校に出かけていって、先生と話をする。

第2章 ゲームをやりすぎると「ゲーム脳」になる?
 田舎からやってきたおばあちゃんが、夕帆ちゃんがテレビゲームを1日1時間やっていると知って心配する。
「それは大変! ゲームのやりすぎよ! ゲーム脳になっちゃうわ!」
 学校の先生や親たちも信じているという「ゲーム脳」。それっていったいどういうもの? 本当にゲームが有害だという証拠はあるの?

第3章 有害食品、買ってはいけない?
 また輸入食品から基準値を超える残留農薬が発見されたというニュース。それを見て夕帆ちゃんのママはひどく心配する。
「基準値の2倍だなんて、すごく危険じゃない」
 本当に残留農薬や食品添加物ってそんなに危険なんだろうか。実は「危険だ」「危険だ」と騒ぐ声にだまされていないか?

第4章 血液型で性格がわかる?
 友達の青葉ちゃんが夕帆ちゃんの家に遊びに来た。
「AB型の人は二面性がある」
「B型って性格がひねくれてる」
 などと決めつける青葉ちゃん。
 今や日本人の多くが信じている血液型性格判断。でも、根拠はあるんだろうか。そもそも言い出したのはいったい誰?

第5章 動物や雲が地震を予知する?
 夕帆ちゃんの友達の勇馬くんの飼っている犬が、地震の前日になぜか騒いだという。
 動物が地震を予知するというのは本当だろうか? そして地震の前に発生すると言われる「地震雲」の正体は?

第6章 2012年、地球は滅亡する?
 2012年に地球が大災害に見舞われるという映画を観てきた夕帆ちゃんと勇馬くん。帰りに書店に寄ると、タイトルに「2012年」「アセンション」「フォトンベルト」などとついた本がいっぱい並んでいた。
 天文学者によれば、2012年に地球はフォトンベルトというものに突入するのだそうだ。それほんと?

第7章 アポロは月に行っていない?
 夕帆ちゃんの友達の流菜ちゃんが、インターネットで見つけた話をする。
「アポロが本当は月に行ってないって知ってた?」
 アポロ11号の月面着陸はアメリカのでっち上げで、その証拠もいっぱいあるというのだ。
 興味を持った夕帆ちゃんは、この問題について調べて、夏休みのレポートを書く。ウソをついているのはいったい誰?

第8章 こんなにあるぞ、ニセ科学

 世の中にはまだまだニセ科学がいっぱいある。マイナスイオン、ゲルマニウムブレスレット、フリーエネルギー、ホメオパシー、反相対論、911陰謀説、インテリジェント・デザイン論……だまされないようにしなくっちゃ!

エピローグ うたがう心を大切に

--------------------

 ご覧のように、この5年間で古くなってしまった話題もあります。特に第6章。2012年、過ぎちゃいましたしね(笑)。
 全面的に書き直そうかとも思ったんですが、そうなると第6章はまるごと削らなくちゃいけない。また『水からの伝言』や『ゲーム脳の恐怖』のブームなども、また同じようなことが起きないよう、特に若い人たちの参考になるよう、本の形できちんと残しておくことに意義があると思いました。
 そこで文庫版は、楽工社版をほぼそのままの形で再録しつつ、各章末に、この5年間に起きた変化について追加情報を入れることにしました。第1章では「江戸しぐさ」、第2章では「非実在青少年」問題、第3章では2014年の上海福喜食品の食品偽装事件、第5章では2011年の東日本大震災……といった具合です。

 文庫化にあたって、イラストも一新しています。表紙もかわいいですけど、各章扉の絵もいいんですよ。


 書店で見かけたら、ぜひお手に取ってください。


タグ :PRニセ科学

同じカテゴリー(PR)の記事画像
新刊『世界が終わる前に BISビブリオバトル部』
コミケ直前情報:2015年冬コミの新刊
新作『怪奇探偵リジー&クリスタル』
『「新」怪奇現象41の真相』
新刊『トワイライト・テールズ 夏と少女と怪獣と』
SF⇔人文「SF作家の思考をたどろうフェア」
同じカテゴリー(PR)の記事
 カクヨムに投稿をはじめました (2016-06-06 17:57)
 また『幻解!超常ファイル』に出ます。 (2016-06-06 14:38)
 僕たちの好きだった80年代アニメPart2 (2016-06-06 13:55)
 『BISビブリオバトル部』文庫化&特設ページ (2016-05-12 21:56)
 トークイベント:僕たちの好きだった80年代アニメ (2016-05-12 21:26)
 イベント:人工知能は人類を滅ぼす!? 今、本気で語る「AI(アイ)の物語」 (2016-04-15 22:38)

この記事へのコメント
文庫化おめでとうございます。

以前の単行本も持っているのですが、
追記内容が気になるので文庫版も購入予定です。
私には小学生の子供がいるのですが、
中高生くらいになったらこの本と「14歳のリスク学」、
「超能力番組を10倍楽しむ本」を読ませたいと思っています。

悲しいですが今の世の中、疑う心が大切ですね。
純真無垢なまま大学に入ったり社会人になると
色々な詐欺やインチキ宗教に簡単に騙されてしまいそうで心配です。
親の務めとして社会に出る前の最低限の武装として
こういった知識を教えておきたいです。
善意にしろ悪意にしろ間違った知識を広める人もいるんだよ、と。

「超能力番組を10倍楽しむ本」の文庫化や続編も期待しています。
Posted by みと at 2015年04月09日 10:56
>ご覧のように、この5年間で古くなってしまった話題もあります。特に第6章。2012年、過ぎちゃいましたしね(笑)。


でもこういうトンデモ説って復活したりしぶとく生き残ったりするんですよね。まるで妖怪みたいに。
先日、コンビニの本棚に「ノストラダムスの世界終末の予言云々」という何とも往生際の悪い本を見ましたし……。
妖魔夜行だと話のネタになるんですけどねぇ……。
Posted by ドードー at 2015年04月09日 20:10
毎回興味深く読ませていただいてます

唐突で失礼ですが、山本先生は占いについてどうお考えですか?
占いは非科学的なるものの最たるものですが、考え方を変えれば、経験則や確立などの科学的要素も含みます
歴史的に占い「甲骨占い」や「ご神託」によって政策や戦いをやってた歴史もあります。TVで毎朝占いを流しているのはいかがに感じていますか?

科学と非科学的歴史と伝統は共存できるものでしょうか?
Posted by 越後人 at 2015年04月18日 09:41
ほかはともかく、進化論は間違っているのではないでしょうか?
間違っていないにしても、ミッシングリンク等、100%の、きちんとした説明ができない個所もありますし。
私も、個人的に「なぜ、中途半端な長さのキリンの首の化石が発見されないのか?」は気になります。
で、細かいようですが、100%の正解ではない以上、どこかが間違っているということになりますし。

だからと言って、聖書の神様がチリから人間をつくったとは言いませんけれどもね。もちろん。
Posted by なべ at 2015年04月25日 16:54
>越後人さん

 僕の宗教や迷信についての見解は、『14歳からのリスク学』の第1章で触れていますのでお読みください。「神社にお参りするのは合理的」という部分を。

>なべさん

 失礼ですが、『ニセ科学を10倍楽しむ本』をお読みのうえでそういう感想を抱かれているのでしょうか? 進化論が正しい根拠はちゃんと挙げていますが。キリンの反回神経の構造が不合理で、知性を持つ存在によって設計されたものではありえないことも。
 あと、この本の中で紹介したリチャード・ドーキンス『進化の存在証明』(早川書房)、ナイルズ・エルドリッジ『進化論裁判』(平河出版社)、マイクル・シャーマー『なぜ人はニセ科学を信じるのか』(早川書房)といった本をお読みになることをおすすめします。

>100%の正解ではない以上、どこかが間違っているということになりますし。

 その考えは間違いですね。まだ科学では完全に分かっていないことなんてたくさんあります。「100%の正解」なんてものを求めたら、すべての科学が間違っていることになります。
 たとえばキリンのミッシング・リンクはまだ発見されていないだけかもしれません(すべての化石が見つかっているわけではありませんから)。げんに魚類と両生類、爬虫類と鳥類、猿と人類のミッシング・リンクは見つかっているのですから、なぜキリンだけを根拠に進化を否定されるのか、わけが分かりません。
Posted by 山本弘山本弘 at 2015年05月11日 15:42
山本先生、お久しぶりです。

「水伝」とか「ゲー無能」とか「アポロ陰謀論」などは、今やさすがに懐かしの話題ですが、血液型性格診断や食の安全は、いまだに根強いですね。
バケツ1杯一生食べて影響が出るかもしれない保存料を恐れて、日持ちが悪くなった物を食べて腹を壊していたら世話は無いとしか言いようがないと思えるのですが。
実際今年の正月、スーパーで購入した蒲鉾が、実質3日しか保たないなど、さすがに洒落にない状況になりつつあります。

あと、特に具体的根拠もなしに「日本では凶悪な犯罪が増え続けている」「日本人のモラルは低下の一途をたどっている」などの言動は、マイノリティー攻撃ではないものの、一種のヘイトスピーチになるのではないかと思えるのですが。
Posted by nns at 2015年05月11日 18:31
>「なぜ、中途半端な長さのキリンの首の化石が発見されないのか?」

それは、

過去にいた生物(特に陸上のもの)の全てが化石になる訳ではなく、
全ての化石がヒトに発見される訳ではない(地中深くにあったり、発見される前に風化してしまったり)

と言うだけ、ですよ

むしろ、そう言った、
「飛び飛びの断片的な証拠から、繋がりを推測出来る」
という事実は、
進化論の方がずっとすっきりと説明出来ると思いますが
Posted by だぁく・はんど at 2015年05月11日 22:23
どれが良いとか悪いとかは無いけど 性格傾向には絶対関係ある 。心理学やるとまず「血液型は無関係」って習うけど 単にエビデンスが無いだけ 。生活知、経験則みたいなのが後々正しかったことも多々あるわけで コロコロ言う事変える学会よりも、自分の経験を信じるね
Posted by NEETもどき at 2015年06月18日 00:27
血液型と性格には明らかに関連性はある。しかし、それらの知識を「否定」や「排除」などネガティブな方向に利用しようとする意識レベルの低い人間がいるから問題視されるのだ。

確かに影響はあるとしても、生きてきた中での経験などである程度進歩することが人間にはあるのだから、血液型で先入観に満ちた対応をするのは間違った行為である。

どれが良いとか悪いとかは無いけど 性格傾向には絶対関係ある 。心理学やるとまず「血液型は無関係」って習うけど 単にエビデンスが無いだけ 。生活知、経験則みたいなのが後々正しかったことも多々あるわけで コロコロ言う事変える学会よりも、自分の経験を信じるね

心理学は科学的に間違った学問。心理学者は霊感占い師と同じ。心理学は偏差値が低く、家庭環境が悪くて性格が暗くなった人がやってるもの。
Posted by NEETもどき at 2015年06月18日 00:31
 このコメント欄に書きこまれている某氏へ。

 何度も何度もしつこくコピペを貼りつける行為をおやめください。何度やっても読まずに削除しますから無駄ですよ。
Posted by 山本弘山本弘 at 2015年10月12日 12:16
Caduoppai さんのコメントは意味不明だったので削除させていただきました。
Posted by 山本弘山本弘 at 2015年10月12日 12:34
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。