2015年01月09日

ビブリオバトル・チャンプ本『ゲームウォーズ』

 先月26日のLiveWire「ビブリオバトルをやってみよう」は成功でした。応援を頼んだ鋼鉄サンボくんや、阪大の菊池誠先生、神戸大学の学生さんらの協力もあり、ビブリオバトルの実演が盛り上がりました。
 紹介されたのは次の4冊。

小田雅弘『模型歳時記』(トイズプレス)
吉川浩満『理不尽な進化 遺伝子と運のあいだ』(朝日出版社)
高野秀行『幻獣ムベンベを追え』(集英社)
アーネスト・クライン『ゲームウォーズ』(SBクリエイティブ)

 どれも面白そうだ!
 僕が投票したのは、鋼鉄サンボくんが持ってきた『模型歳時記』。いやー、『理不尽な進化』『幻獣ムベンベを追え』も前から評判は聞いていて、読もうと思ってはいたんですけどね、やっぱりストリームベースの小田さんのエッセイ集ときたら、読むしかないでしょ!
 結果は僅差で、僕の紹介した『ゲームウォーズ』がチャンプ本になりました。本当はもっと大差つけて勝つつもりでいたんだけどなあ。

 というわけで、チャンプ本になった記念に、『ゲームウォーズ』の内容を紹介いたします。できるだけビブリオバトルの雰囲気を出すために、会場で喋った内容を可能な限り思い出して再現してみました。

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 どうも、今日は勝ちに来ました!
 というのも、この本はすごく面白い! 読み終わって何日も興奮が収まらなかった。そんなすごい本なんです。冷静に紹介してなんかいられない。エキサイトさせていただきます。
 アーネスト・クライン『ゲームウォーズ』。近未来を舞台にしたSFです。
 時は2041年。〈オアシス〉というバーチャル・ゲームが全世界に普及しています。単なるゲームじゃなく、すでにインターネットはほとんど〈オアシス〉と一体化しています。たとえば学校教育なんかも〈オアシス〉が使われている。生徒は自分の家にいながら、仮想空間の学校に通って勉強ができる。そういう時代なんです。
 そんな時、〈オアシス〉の開発者である天才プログラマーのハリデーという男が亡くなります。彼は死の直前に遺言を残していて、その映像が全世界に流れます。その遺言というのは──
「私の資産、総額2400億ドルを1人の人物に譲る」
 彼は〈オアシス〉のどこかに〈卵〉を隠した。いわゆる「イースター・エッグ」というやつですね。それを手に入れた者が遺産を受け継ぐことができるんです。

 さあ、このあたりでもう、頭の中に『ONE PIECE』のOPのナレーションが流れてきて(笑)、盛り上がってくるわけですが。
 当然、世界中の人間が〈卵〉探しに熱中します。〈卵〉を手に入れるためには3つの鍵が必要で、まずその鍵を見つけなくちゃいけないんですが、それがなかなか見つからない
 というのも、〈オアシス〉の世界はとんでもなく広いんです。何千というワールドがあって、それぞれに何十もの惑星がある。行き当たりばったりに探したって見つかるわけがない。ハリデーの遺したヒントを解かなくちゃいけないんです。
 ここで重要なのが、ハリデーは1972年生まれだという設定。つまり1980年代に少年時代と青年時代を過ごした。おまけに、がちがちのオタクです。
 だもんで、ハリデーの遺した謎を解くためには、80年代サブカルチャー──ビデオゲーム、TRPG、映画、ドラマ、音楽、アニメとかに関する膨大な知識が要求されるんです。

 ここに登場するのが主人公のウェイドという少年、高校生です。かわいそうな身の上なんですよ。両親を早くに亡くして、おばさんに引き取られてるんですけど、貧乏だからトレーラー・ハウスに住んでる。社会の最下層の人間です。でも、オタクなんです。ゲームに課金とかできないから、〈オアシス〉の中でも、ただで遊べる古いゲームばかりプレイしてる。
 そのウェイドが、あるきっかけで、最初の鍵を発見するんです。たちまちネットの世界で有名人になってしまいまして、〈卵〉の争奪戦に巻きこまれます。
 当然、悪役も出てきます。IOIという世界的大企業が、ハリデーの資産と〈オアシス〉の乗っ取りを企んで、〈卵〉を先に手に入れようと卑劣な工作を仕掛けてきます。目的のためなら平然と人殺しもするような、ほんとに悪い連中なんです。
 ウェイドは頼りになる仲間とともに、現実世界でIOIの陰謀から逃れながら、仮想空間で宝を探します。もちろんバトルもありますし、ヒロインとのロマンスもあります。だからこれはSFなんですけど、『宝島』のような、財宝をめぐる昔ながらのアドベンチャーでもあるんですね。
 で、やっぱりこの小説の魅力は、山のように詰めこまれた70年代や80年代のゲームや映画に関するトリビアです。それが謎を解く鍵になってる。たとえば最初の鍵のありかですけど、『ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ』の初期のモジュールの中にヒントが隠されてたりします。
 ネタバレになるから詳しくは話せないんですが、下巻の展開をちょっとだけ。
 クライマックス。ゲーム世界の命運をかけた一大決戦。IOIの軍団がたてこもる〈オアシス〉の中の惑星に、IOIに立ち向かう世界中のゲーマーが集結してる。その戦場に主人公が赴くんですよ。巨大ロボットに乗って。その巨大ロボットというのが──

 レオパルドンです!

 いや、ほんと。ブレスレットに向かって「チェンジ・マーベラー!」と叫ぶと、ちゃんとマーベラーに変形するんですよ。
 その最終決戦がまた、とんでもないことになってるんですけど、それは読んでのお楽しみということにしておきます。
 この小説、すでに映画化が決定してまして、監督を探してるところなんだそうですけど、でも、これを映像化しようとしたら……

 東映と東宝と円谷プロとダイナミックプロとサンライズにどんだけ版権料払わなあかんのかなと(笑)。

 でも、見たい! このクライマックス・シーンはぜひ映像化してほしい! そんな夢の詰まった作品です。

【質疑応答】
Q.私は80年代のサブカルに詳しくないんですが、楽しめますか?
A.作中にいちいち「これはこういうもので」という解説が入りますんで、理解するのに支障はないと思います。僕も正直、音楽関係のことはぜんぜん分からないんですけど、それでも楽しめましたから。

Q.主人公の冒険は仮想世界の中がメインなんですか?
A.現実の世界でIOIの魔の手から逃れながら、並行してゲーム世界での冒険も繰り広げます。現実世界とゲーム世界の比率が半々ぐらいですかね。

Q.仮想空間に入るのは、やっぱり脳にジャックインとかして?
A.いえ、インプラントとかは必要なくて、基本的にヘッドマウントディスプレイとグローブを使用します。現代の延長線上の技術ですね。

Q.サイバーパンクなんですか?
A.サイバーではあるけどパンクじゃないですね。




【補足】
 何で主人公がレオパルドンを持ってるかというと、そのひとつ前のミッションで、クリヤーするとご褒美に好きな巨大ロボットを一台もらえるんですよ。
 ガンダムやマジンガーやエヴァンゲリオンがずらっと並ぶ中、主人公が迷わず選んだのがレオパルドン! 素晴らしすぎます。

 下は台湾のSharksDenというイラストレーターが描いたファンアート。公式のイラストじゃありません。

http://sharksden.deviantart.com/art/Ready-Player-One-423782453

 冗談抜きで、こんなシーンがあるんですよ!

 ちなみに映画の監督はクリストファー・ノーランがオファーされてるらしいんだけど……うーん、ノーランじゃ何か違うかも。



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この記事へのコメント
山本さん、明けましておめでとうございます!今年も宜しくお願い致しますm(_ _)m

ビブリオバトル、TRPGよろしく広まることを期待しています。(この記事は思い出しながら書いた、と仰りましたが、録音などはなされなかったのですか。当日の様子をDVDにしてコミケで出していただけると有り難いですがいかがでしょうか)
Posted by toorisugari at 2015年01月09日 20:30
 あけまして、おめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

>ゲームウォーズ

 ……よ、読みたい!
 最近、某マーベルユニバースでもレオパルドンが登場しましたが、なんて素敵な。
 ウェイド君とは、いいオタク話が出来そうである。超合金魂のレオパルドンをプレゼントしてあげたいなあ。

 仮想現実って、ある意味「何でもあり」だけど、こんな良い意味でハチャメチャでデタラメで無茶苦茶なシチュエーションでも、再現しようと思ったらできるんですよね。
 ファンアートもスゴイなあ。ガンダムvs機龍メカゴジラなんて、日本人でもなかなか思いつかんぞ。
 映画化するんなら、自分もぜひ見たいです。著作権クリアだけでホント大変だろうけど。

 しかし、こういうスゴくて面白い本の存在を知ってるのみならず、それを「他者に読みたいと思わせる」って技術。羨ましいです。
 今年は自分も、こういうスキルを少しでも身に付けたいものです。
Posted by 塩田多弾砲 at 2015年01月09日 21:49
これは昨年私も読みました。あまり大きく紹介されていない本ですが、1970年前後に生まれた世代にはドンピシャな設定ですよね。
これでもかと出てくるサブカルネタも面白かったですが、ストーリーも面白かった。レトロネタをサイバースペース内で再現とか、夢ですよね。映画も楽しみですが、監督探しの段階じゃぁまだ先かなぁ。
Posted by むぃ at 2015年01月12日 21:09
> ちなみに映画の監督はクリストファー・ノーランがオファーされてるらしいんだけど……うーん、ノーランじゃ何か違うかも。

同感。
ギレルモ・デル・トロさんでしょ。
そもそも、クリストファー・ノーランが監督した映画って、おもしろいと思ったことがないんですけど。
バットマンとかも前のオモチャっぽいほうが好きです。
Posted by kirin at 2015年01月13日 12:43
レオパルドンはマーベルコミックのスパイダーマンにも出てましたね(多元宇宙のスパイダーマンが全員で力を合わせる内容)。まあスパイダーマンを先に行かせる為に犠牲になると言う日本的な最後でしたが(笑)。
Posted by ジャラル at 2015年01月16日 12:29
 過去のエントリに失礼します。
「ゲーム・ウォーズ」、読みました。
 ……なんというか、これが映像化されるんなら、


「日本もやらなきゃだめだろ!」

「っていうか、なんで日本じゃこんなに読まれてねーんだよ! 読めよ! 特に80年代を過ごしたオタクは!」

……という事を、まずは言いたく思います。


 つーか、この作品。
 「80年代に生まれた作品群」と「それらを愛するギーク」への愛情があふれていると、読んでて感じました。アーケードゲーム、ビデオゲームはもちろんの事、TRPGのD&Dなどもちゃんとフォローしてるのはさすが。
 最初に連想したのは、ガイナックスのダイコンフィルムの、あのゴチャゴチャした絵面、でしょうか。
 つーか、MMDのこの動画↓を連想してしまいました。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm20127108


 しっかし、オアシスってスゴク魅力的な世界ですねー。自分だったら、入り浸って出てこれないかも。
 つーか、様々なエリアや惑星があるんなら、当然日本の、秋葉原を再現したようなとこもありそう。そこで、今は無き80~90年代のゲームや同人誌なども再現してたら……などと、ダイトウとショウトウに怒られそうな事を妄想してしまいました。
 ただ、こういう形で、過去の作品を全て見る事が出来る、それも無料で……ってな世界は、ほんとに羨ましいです。

 クライマックス、本当にレオパルドン出てきましたね。で、さらにそこから「○○○○○ンvs○○○○ラ」という組み合わせのバトルが見られたとは、これまた意表を突かれました。
 きっとガンターたちの中には、マッハバロンやザボーガーを操って戦った奴もいたに違いない。シクサーズが使ったかもしれんけど。
「シュガーラッシュ」とか「ピクセル」とかあるんだから、本作もどういう映画になるか、楽しみにして待ちたく。
 そして、このような傑作を知る事が出来た幸運と、教えて頂いた山本さんに対し感謝したく思います。ありがとうございました。

 うーむ、こういう系統の作品の日本版も、ちょっと見てみたい気が。
Posted by 塩田多弾砲 at 2015年07月17日 02:21
監督はスピルバーグに決まったそうですね。
個人的に「ジェームズ・ハリデー」のモデルの一人だと思ってたのでニヤニヤしてしまいました。
Posted by Rick=TKN at 2016年01月22日 21:46
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