2014年11月25日

『楽園追放-Expelled from Paradise-』

 先日、梅田ブルク7で観てきた。

http://rakuen-tsuiho.com/

 いやー、面白かった!
 監督・水島精二、脚本・虚淵玄だから、ハズレではないだろうと思ってたけど、期待以上の面白さだった。
 どのへんがいいのか、詳しく紹介するとネタバレになるから曖昧に書くけど、とにかくSFがよく分かってるんである。

 肉体を捨てて電脳空間で生きている人類、AIの進化、外宇宙への進出などなど、古今東西のいろんなSFの要素をうまくまとめ、きっちりとオリジナリティあふれるSF作品に仕上げている。基本設定を聞いて僕が最初に連想したのは『地球移動作戦』の劇中劇『セカンド・アース』だけど、実際に観てみたら、むしろ『アイの物語』が混じってるかも? と感じた。
『翠星のガルガンティア』でも思ったが、SFガジェットを表面的に使っているだけではなく、その扱い方が手馴れているのだ。「SFが好きなんだなあ」というのがよく分かるんである。
 設定や展開もよく考え抜かれていて、ツッコミどころがほとんどない。なぜヒロインが大人の女性ではなく少女の姿なのかということまで、きっちり説明されてるのには参った。今の日本のアニメでは、そこはお約束としてスルーされるところなのに。
 観てて気になったのは、L1やL3はラグランジュ安定点じゃないってことぐらいか。(まあ、それを言ったらファースト『ガンダム』もおかしいんだけどね)
 特にラスト近く、ディンゴがフロンティアセッターに投げかける言葉は、SF者なら感動すること間違いなし。うんうん、そうだよなあ。

 かと言って、非SFファンは置いてけぼりかというと、そんなこともない。難しいのは導入部分だけ。美少女アンジェラ(声・釘宮理恵)がロボットに乗ってバトルを繰り広げるアクション&萌えアニメとしても、素直に楽しめるんである。
 特にクライマックスのバトルが大迫力。絶望的な状況からの逆転。圧倒的な戦力差のある敵に、機体性能の差+策略で立ち向かうというシチュエーションが燃える。
 あと、メカデザインがいい。主役メカであるアーハンもかっこいいんだけど、フロンティアセッターの操る古くさい作業用ロボットのデザインが、すごくもっともらしくて感心する。

 あと、些細なことなんだけど、最初のシーンに出てくる軽薄なナンパ男の声が古谷徹だとか、クライマックスに出てくるチョイ役の三人の女性キャラの声が林原めぐみと高山みなみと三石琴乃だとか、変なところが豪華。
 いやあ、下手な俳優とか起用するより、こういうサービスの方がよっぽど嬉しいよね。

 世間では、虚淵脚本だというだけで、『まどか☆マギカ』みたいな鬱展開だと思いこんでる人も多いみたいだけど、そんなことはない。ラストには大きなカタルシスがあるし、希望を感じさせる話になっている。 幸せな気分で映画館を出られるので、ご安心を。
 僕はてっきり『まどマギ』が人気が出たから虚淵氏に脚本の依頼が行ったもんだと勘違いしてたんだけど、実は『まどマギ』の放映前からあった企画だそうだ。

 もうひとつ僕が勘違いしていたこと。
 フルCGアニメなのにキャラクターの表情がものすごくセルアニメ的で自然なので、かなり手描きの絵が混じってるんだと思っていた。特に戦闘中にアンジェラが絶叫するカットとかは、表情がCGだとは思えなかったのだ。しかし、プログラムを読むと、手描きの部分はほとんどないらしい。
 うーむ、セルルックCGってここまで来てたのか。『SHIROBAKO』で、いずれ手描きのアニメはなくなるかも……と言ってたけど、こんなの見せつけられたら納得するなあ。
 もちろん、手描きアニメを手がけてきた監督や演出家の経験の集積があるからこそ、CGを使いこなせるんだろうけど。

 人類の未来だけじゃなく、アニメの未来も見せてくれた。

 しかし、この映画、上映館数が少ないんだよね。大阪では1館だけ、東京でも2館というのは、なんとももったいない。


タグ :アニメ映画

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この記事へのコメント
う~ん…申し訳ないですが、自分はダメです。
『まど☆マギ』映画の前篇を観て、しばらく不眠に悩まされて以降、どうも虚淵氏アレルギーとも言える状態で…
『鎧武』ですら、一応三話まで観て、以降全く観れなくなったぐらいですし…。

自分が抱えてる「発達障害」というヤツの影響なのでしょうが、我ながら厄介な性格だな、と思ってます。
冬の『ドライブ×鎧武』はどうしようかと、未だに迷っている所です。
一応『鎧武』パートの脚本は、虚淵さんでは無い様ですが…。
Posted by 大海笑 at 2014年11月25日 23:01
>しかし、プログラムを読むと、手描きの部分はほとんどないらしい。

公式によると、アンジェラの作画は4カットだけだそうです。しかも……
https://twitter.com/Akitsuki_dash/status/535952158286282754
>冒頭の顔ドアップ、後半の方のドアップの髪の毛のみ(顔はCG)、あとは逆さになって髪の生え際が見える2カットです。

表情づけではなく、頭髪の表現でアニメーターの力が必要になっていたとは意外でした。

ごぞんじかもしれませんが、手描きとCGの関係といえば、技術プロモ企画「アニメ(ーター)見本市」の2作目も面白かったです。
http://animatorexpo.com/hillclimbgirl/
Posted by 十一郎 at 2014年11月26日 18:38
 自分も見てきました。
 ウロブチ脚本だからダークな作風なのか……と、ちょっと期待してたとこがありましたが。おっしゃる通り、幸せな気分でラストシーンを見られましたね。
 スタッフロールが終わった後、あの歌を歌いながら宇宙の果てを目指す彼の姿は、「マップス」の「歌う流星」を連想しました。
 
 当初はくぎゅ目当てで見に行った自分ですが、自分の中の埋もれまくった、SF魂的なものにも火をつけてくれたような気分を覚えましたね。で、もちろん「くぎゅ(の演じるアンジェラ)カワイイ!」という視点で見ても、十分に魅力的。
 しかし、16歳くらいなのかー。どうせならあともう2~3年ほど早めにしても(待てコラ)。

 パンフが売り切れで買い損ねてしまいましたが、DVDやブルーレイが出たらぜひもっかい見たいところです。
Posted by 塩田多弾砲 at 2014年11月26日 20:40
>大海笑さん
ご安心を。私も虚淵氏は受け付けませんから。というか、「仮面ライダー鎧武」で大嫌いになりましたから。
確かに特撮は初めてだったかもしれませんが、CMの前後で主張がコロコロ変わるキャラクターとか、鬱展開以前に作劇の基本ができてないように思いましたもの。
ひょっとしたらアニメでは監督とか周囲のスタッフに恵まれていたから「まどマギ」とかは成功していたのかもしれないかと感じました。
(アニメは一人で作るものじゃないと虚淵氏自身も言ってますし)
もっともそんな特撮初挑戦の脚本家をわざわざ連れてきて、いきなりメインに据えた武部プロデューサーが一番悪いように思いますがね。
Posted by ドードー at 2014年11月27日 07:03
断っておきますが、私は虚淵氏の脚本が好きな人たちの存在まで否定する気はありませんけどね。
「まどマギ」はそんなに悪くはないとは思ってますし、「鎧武」の出来に大いに幻滅しただけです。
現に私の友人に「まどマギ」も「鎧武」も好きで虚淵氏のファンという男もいますから。
(もっとも好きな理由が、キャラが惨たらしくたくさん死んだ!あんな残酷なシーンをやるなんて虚淵さんシビれる〜だそうでしたが……)
まあ、楽しめたのなら勝ち組でしょう。あの感性はうらやましくないものの、「鎧武」をも楽しんだという彼が少しうらやましくはありました。
この映画、水島監督たちは頑張られたようですし、キャラデザも良さそうですね。少し興味が出てきました。
Posted by ドードー at 2014年11月27日 22:15
プロの声優さんをご指名でキャスティングしたそうで安心して見てられますね。何でも元の脚本はもっと長くて声優さんを集めての読み合わせで時間を測ってセリフやシーンを削ったそうです。これは声優さんをキャスティングしないとできませんね。
Posted by ジャラル at 2014年12月01日 12:18
山本先生のコメントを読んで、今日見てきました。
いや、面白かったですねえ。
虚淵氏の作品はそれほど見てないのですが(なんと、まどかマギカを見逃しているのです)、サイコパス第1期の終盤には少々不満を感じまていたので、期待半分、不安半分で見に行ったのですが杞憂でした。
ラストに三者三様の「その後」が出てきましたが、ディーヴァのトップが言うことも理解できるんですよね。昔だったらまるっきり賛同できなかったでしょうけど、ディーヴァという閉じた世界を守るためにはもっともな理屈だと思いました。まあ、正しいとも思いませんけど。アンジェラの未来も(おそらく)それほど明るくはないはず。結局、フロンティアセッターの選択が一番主人公らしい感じがしました。まあ、彼の前途も多難ではあるのですが。
しかし、ディーヴァのトップ3人(?)の内2人が仏教関連の外見というのも面白かったですね。あと、モーションアドバイザーとして板野一郎さんの名前があったのもうれしかったです。後半の戦闘シーンのクォリティが高かったのも納得です。
12月は見たい映画が多くてどれから見に行こうかと思ってたんですが、我ながらいい選択だったと思います。さて、次はパトレイバー、その次は寄生獣かな?ヤマト2199も外せませんから、結構忙しくなりそうです。
Posted by カルスト at 2014年12月02日 19:57
人類の未来より、アニメの未来の方が衝撃的ですか!
わたしもそうです
Posted by Sasico at 2014年12月03日 16:47
インターステラーはご覧になりましたか?久々の本格王道SF映画で面白かったですよ。長すぎですけど。
Posted by 正刈草雄 at 2014年12月04日 20:55
虚淵シナリオで鬱展開でないものがあるとはしんじられない!PC版「phantom」の時から彼の商業作品には目を通しているけど、彼の作風は「いかにロジカルに登場人物を絶命させるか」に特化しているはずですが?
もっとも彼が「監修」をしたPC/PS2版「デモンベイン」は例外ですが。
Posted by はじめまして at 2014年12月06日 21:24
お題とは関係ありませんが
『プロジェクトぴあの』読みました。
『地球移動作戦』で名前が出てからずっと気になっていた彼女。
とっても面白かったです!
いまでも宇宙空間を飛び続けてるんでしょうね。
Posted by すらきち at 2014年12月07日 20:17
魔法少女まどか☆マギカの鬱展開は、そういう脚本の発注だったみたいですね。DVD or Blu-rayのコメンタリーで本人がそうおっしゃってました。
ですので、虚淵玄=鬱展開 というのは誤った認識なのかもしれません。
そういう注文を受けながら、きっちりといい話に仕上げてくるあたりは、プロの仕事という感じで、すごいなぁと感心させられました。
Posted by 夕七 at 2014年12月11日 09:31
>ドードー様

有り難うございます。
そうでしたか。『鎧武』は、余り良い出来では無かったのですね。
果たして、今週末公開の映画だけでも観るべきか否か…
一応、公開後のネット評を観た上で、自分の体調と相談して判断したい、と思います。

自分は、名作の誉れ高い『まど☆マギ』の時点でくじけてしまい、
以降、鬱展開、及び虚淵氏の作品に対する苦手意識が強いまま、現在に至っておりますが、
(恥ずかしい話、『ヤマノススメ』の富士山編を観ただけで、しばらく鬱になったぐらいで…)
果たして、現状のままで良いのか?という気持ちもありますので、
そんなに面白いのであれば、来年以降『楽園追放』の視聴にチャレンジしてみようか、と思ったりしています。
予定は未定ですが。

それにしても…あるいはこれは、私個人の主観なのかも知れませんが…
どうも最近、妙に「残酷なシーン」「陰鬱な展開」を売り物にした作品が多い気がします。
そのテの展開が苦手な者としては、一作でも多く、ほのぼのとした作品が作られる事を願うばかりです。
『きんいろモザイク』『のんのんびより』の第二期が、今から待ち遠しくて仕方ありません。

乱筆乱文、誠に失礼致しました。
Posted by 大海笑 at 2014年12月11日 18:50
 『翠星のガルガンティア』の存在を霞ませる虚淵ブランドの信頼性よ…(^^;
 『翠ガル』は監督のカラーも強いとはいえ、いい海洋冒険ものにして再接触ものでしたが。それでいて得意の反復モチーフは虚淵色。
 確かに『鎧武』はこれまで仮面ライダーへのオマージュを『ヴェドゴニア』『ブラスレイター』等で捧げてきた虚淵氏にしては…の感はありましたが。でも期待が大きすぎたという意味であって、ニチアサ的には十分元をとれたなぁ。
Posted by 魔道化マミった at 2014年12月12日 22:26
すいません、完全に私の認識ミスでした。
彼はもうPCゲーム時代/Fate zeroの虚淵ではなかった。
そういえばまどかの新編も最終的には鬱ではなかった。
修羅の国の某メイトで入手したおまけつき限定版を観たら、このように確信できました。
山元さんのいうとおり、きちんとおたくの世界では自明のことにまで説得的な説明を与えている。
実にすごい人だと思いました。この人、実は学者/教育者の適正がある?
Posted by はじめまして at 2014年12月15日 20:49
 書きこみを禁止していた奴が2人も書きこんできたので、どっちも削除しました。
 1人はこいつ。やっぱり自分のアニメ評を喋りたいだけらしい。
http://hirorin.otaden.jp/e308840.html

 もう1人はこいつ。まだ『まどマギ』陰謀論を信じこんでる。
http://hirorin.otaden.jp/e247394.html

 自分のブログででも書けよ、そういうことは。もう来るな。
Posted by 山本弘山本弘 at 2014年12月21日 16:58
>大海笑様

 横からすみません。ただちょっと気になったので。

 あなたの事情や嗜好に関し、どうこう言うつもりはありませんが。

>それにしても…あるいはこれは、私個人の主観なのかも知れませんが…
>どうも最近、妙に「残酷なシーン」「陰鬱な展開」を売り物にした作品が多い気がします。
>そのテの展開が苦手な者としては、一作でも多く、ほのぼのとした作品が作られる事を願うばかりです。
>『きんいろモザイク』『のんのんびより』の第二期が、今から待ち遠しくて仕方ありません。

 それはちと、ワガママではないでしょうか。

 逆に言えば、きんモザなどのような作風の作品に関し語ってるところに、
「きんモザ? 観た事ないし内容もろくに知らないけど、自分はああいう中身の無い薄っぺらい作品は苦手」
「最近はああいう生ぬるい作品が多くなったように思える。そういうのを苦手な自分としては、もっと真面目で中身のある作品が多く作られる事を望む」
 と、こういう事を書き込んでいるようなものです。

 あなたに悪気は無いのでしょうし、自分もきんモザやのんのんびより、およびそういったほのぼの日常系はスゴク好きです。加えて、残酷系や鬱展開のものは、あまり好きではありません。
 が、自分がそうだからと、自分の好ましくない・知らない作品を語ってる場に、必要でもないのにやってきて、「自分はこれは苦手だ、嫌いだ」などとは発言しません。なぜならそれは、「自分の好みを押し付け、(作品を好んでいる)人を不快にする」行為だからです。
 
 作風の好き嫌いに関しては何も言いませんが、自身の好みを以て、他者を不愉快にさせるような発言は慎んだ方がよろしいかと思われます。
Posted by 塩田多弾砲 at 2014年12月22日 04:33
 すみません。楽園追放は見てません。レンタルで
見ようかなと思う。

 虚淵関係でいくと今年うわっと思ったのが
「アルドノア・ゼロ」前半ラストが衝撃的。
正直いって王道といいながらやばい。
人を殺さなくてもなんでこんなにハラハラ
させるのか。後半がどうなるのか楽しみ。
この作品は喰霊ゼロに関わりがある
あおきえい氏と高山カツヒコ氏も絡むので
単に虚淵だからでないような気がするが。

> 大海笑さん

>どうも最近、妙に「残酷なシーン」「陰鬱な展開」を売り物にし>た作品が多い気がします。

 ニコニコ動画で確認している限り、結構目立つのかな。
今年ですと「極黒のブリュンヒルデ」「東京喰種」「テラフォー
マーズ」ヤングジャンプ原作者がヤバイ。「アカメが斬る」や
「結城友奈は勇者である」もヤバイ、アニメでいうと後半戦
は要注意。

 のほほんだと今年は「ソニア二」「ご注文はうさぎですか」
「犬神さんと猫山さん」「普通の女子高生が【ろこどる】
やってみた」

 探せば結構ありますよ。その前に精神が
耐えられるかどうかにかかりますが。
Posted by てっき at 2014年12月22日 23:40
>塩田多弾砲様

失礼致しました。恥ずかしながら、そこまで考えが及びませんでした。
おっしゃる通りです。今後は肝に銘じて、発言の場をわきまえたい、と思います。

また、自分の場合「抽象的な批判」というのが、非常に理解し辛いので、
分かり易く説明して頂き、本当に助かりました。
誠に有り難うございました。

>てっき様

成程。どちらの傾向の作品も豊作だったのですね。不勉強でした(汗)。

『ごちうさ』は、友人がやたらとハマッておりましたが、自分は今一つでした。
明日、その友人と会うので、『幸腹グラフィティ』の感想を聞いて、視聴を検討したいと思います。
今年も、心が荒れない範囲で、色々視聴して行きたいです。
Posted by 大海笑 at 2015年01月09日 21:00
「もう来るな」と言ったのに、例の『まどマギ』陰謀論の奴がまた書きこんでたんでブロックしました。
 まだ自分の妄想を事実だと確信していて、僕を嘘つきだと非難しています。もうどうしようもないですね……。
Posted by 山本弘山本弘 at 2015年03月08日 10:59
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