2014年10月25日

『SHIROBAKO』2話が神回だった

 今期のアニメ、『ログ・ホライズン』二期と『ビルドファイターズトライ』はどちらも前作からの安定した面白さで楽しめるし、作画の美しさでは『神撃のバハムート』、ギャグでは『繰繰れ! コックリさん』が一番かと思う。
 しかし、個人的にイチオシしたいアニメは『SHIROBAKO』だ。

http://shirobako-anime.com/

 TVアニメ『えくそだすっ!』を制作しているプロダクションが舞台。これまで、アニメの世界を描いたアニメはいくつかあったけど、この番組はとにかくリアリティが素晴らしい。
 もちろん現実そのままじゃなく、いろいろアレンジされてはいるんだろうけど、「ああ、実際にこうやって作ってるんだろうな」とか「番組の裏側ではこういうトラブルもあるんだろうな」とか納得させられるんである。
 第一話からすでに、原画マンが逃げたり作画監督が倒れたり(もちろんアニメの中でですよ。念のため)というピンチの連続で、スケジュールがかなり苦しくなってきており、『えくそだすっ!』がちゃんと最後まで放映できるか危うい状況。それでも制作進行のヒロイン・あおいやスタッフたちのがんばりで危機を乗りきってゆく。まさに綱渡りで、そんじょそこらのバトルアニメやサスペンスアニメよりはらはらさせられる(笑)。

 特に先日放映された2話『あるぴんはいます!』にはノックアウトされた。
 まず、Aパートのアフレコのシーンがいい。あるぴん役の声優・茅菜夢衣役の茅野愛衣(ややこしいな)の演技にも感心するけど、BGMを「感情につける」「シチュエーションにつける」という意味がすごくよく分かる。
 そこからが大変。アフレコに立ち会った監督が、あるぴんの解釈が違うと言い出し、彼女の過去の設定(それも最初からあったんじゃなく、今思いついたばかりの)を語りだして、ついにはスケジュールがせっぱ詰まっているにもかかわらず、作画リテイクを言い出す。
 ここの檜山修之の演技がまたいいんだわ。昔は勇者王だったのに、最近は三枚目も板についていて、この回でも「いてよーし! みたいな」とか「お姉さんだったわけだー」というあたりがおかしくて、何度も聴き直しちゃったよ。
 この監督、以前に別のアニメでスケジュールを崩壊させた前科があり(あるあるこういう話!)、おかげで自分の演出回が「伝説の作画崩壊回」になってしまった演出家が、今でもそのことを根に持っている……という、アニメ関係者なら胃が痛くなりそうな状況。
 Bパートでは、監督の主張をめぐって、スタッフ全員が集まり、ディスカッションを繰り広げる。このくだり、ほとんど狭い室内だけで展開する会話劇で、アクションなんかないにもかかわらず、見ていてぐいぐい引きこまれる。しかも熱くシリアスに口論している内容が、美少女キャラクターの表現や設定についてなんだから、その落差がたまらない。
 冷静に一歩引いて考えると、何でそんなことで大の大人たちが激論してるんだよとツッコミたくなるんだけど、素人には「どうでもいいこと」に思える部分にこだわるのがプロというものなんだろうな。
 しかも、リアルなだけじゃなく、あおいのピントのずれた発言から、話が思いがけない方向に転がっていって、最後にアニメならではのファンタスティックな表現が炸裂する。このドアホウな展開(褒め言葉)には、深夜にもかかわらず笑い転げた。「『ミスター味っ子』かよ!?」と。
 個人的に、この回は神回認定したい。
 ちなみにアフレコの後で絵の方を直すというのは実際にも稀にあることらしい。『カレイドスター』5話で、そらが空港で泣くシーン、広橋涼が演技を超えてマジ泣きしてるもんで、佐藤順一監督がそれに合わせて絵の方を描き変えるよう指示したという。たぶんそのへんがヒントになってるんじゃないだろうか。(実際、すごい出来だったよ、あのシーン)

 リアルすぎるアニメって、ちょくちょく「これって実写でやってもいいんじゃない?」と疑問に思ってしまうことがあるんだが、この『SHIROBAKO』はまさにアニメであることに意味がある。アニメを愛する人間なら見て損はない。
 なお、ニコニコ動画で公式配信されてるので、見逃した人も今からでも追いかけられる。

http://www.nicovideo.jp/watch/1412927306

 ちなみに、関西では今夜(10月25日深夜)、第3話の放送。ネットでの評判はいいので楽しみである。でも、 「総集編はもういやだ」ってサブタイトルがすごく不吉なんだけど(笑)。



同じカテゴリー(アニメ)の記事画像
作品の枠を超えたキャラクター対比図
同じカテゴリー(アニメ)の記事
 僕たちの好きだった80年代アニメPart2 (2016-06-06 13:55)
 トークイベント:僕たちの好きだった80年代アニメ (2016-05-12 21:26)
 Live Wire「ガルパンはいいぞ! RWBYもいいぞ!~戦闘美少女総進撃」 (2016-01-15 18:06)
 『ガールズ&パンツァー劇場版』 (2015-12-27 17:42)
 『六花の勇者』で考えたこと (2015-10-12 15:45)
 LiveWire「70~80年代・懐かしのアニメ雑誌で盛り上がろう!」 (2015-07-13 15:29)

この記事へのコメント
『SHIROBAKO』は私も見ています。「バクマン。」のアニメ版みたいだな。なるほど、こうやってつくっているのか。などと感心しました。

 ただ、個人的には「クロスアンジュ 天使と竜の輪舞」もブログでとりあげて欲しいですね。第一話から「エネルギーパックに伴う問題」を思いっきりやらかしています。しかも、明らかに「こうすれば売れるだろう」という枠にとらわれた内容です。

 そういう意味で、非常におもしろいので、山本弘先生には、ぜひとも話題に出していただきたいです。
Posted by 狼男と名乗っています。はじめて書きこみます。 at 2014年10月25日 19:36
調べてみたらこの監督ってガルパンの監督で1クールの作品を2回も総集編にしてしまっているらしいですね。(まぁ、そうなるのも納得の素晴らしい作品でしたが)
その時の体験が元になっているのでしょうな。
Posted by 芹沢 at 2014年10月26日 00:35
 25日深夜、3話を視聴されたと思いますが、いかがでしたか?
 いやー、ほんとにあの後半のシーンでは「間に合わないんじゃあないか、万策尽きただろ」と思っちゃいました。

 自分も「SHIROBAKO」見てますけど、いやほんとにハラハラします。アニメ業界は超ハードなわけですから、制作進行は大変だろーなあと思ってましたが。ほんとに大変そうで。
 スケジュールに合わせる事もまた仕事の内。だけど、それを理由に安全パイばかりを選んでいてもダメ。
 けど、こだわりを通すとスタッフ全員に負担を強いる事にもなる。改めて、アニメをつくるって大変なもんだと実感しました。

>ちなみにアフレコの後で絵の方を直すというのは実際にも稀にあることらしい。

 自分が聞いたのは、93~94年「ああっ女神さまっ」OVA4巻または5巻にて。
 井上喜久子さんのベルダンディーの演技がスバらしいために、絵の方をセリフに合わせて直し、完成させた……との事でした。
 当時のOVA専門誌「アニメV」、もしくは女神さまっ関連のムックで、そのように記載されてるのを読んだことがあります。
Posted by 塩田多弾砲 at 2014年10月26日 02:29
 やっと見ました。タイムシフトギリギリなので、一回限り
になりますが、コメントが面白くて。メモしました。
これは後でコメンタリーなどで振り返りたいね。

 こういうアニメの制作現場のアニメを見ると、劇
場版アイドルマスターでもおこってたんだ。冊子を読んだり
してるのですが、作監が風邪をひいたり、主役声優が
リテイクをたくさんくらって、居残りした話など
エピソードが尽きません。

 ミスター味っ子。タイトルしか知らなくて、
どんな演出の作品か知りません。ぜひ、
取り上げていただきますようお願いします。
Posted by てっき at 2014年10月29日 22:40
 『アオイホノオ』もそうでしたが、クリエイターの臓腑を抉らんばかりのメッセージ性全開な作品が出続けているのは、いい傾向だと思います。
Posted by toorisugari at 2014年11月13日 01:47
 SHIROBAKO終わっちゃいましたね。
面白かったです。
SHIROBAKOで得た知識を更にググる事でいろんな事を知るきっかけになりました。
板野さん、今はこういう事してるんだぁとか、SHIROBAKOって、言葉も始めて知ったし。
円盤になったときにはかなり修正されてるだろうから、(イデポンはまずかったらすい)山本さんのおかげで、リアルタイムで見られて幸せでした。
ありがとうございます。
 さて、今期のお奨めアニメを教えていただけるとありがたいのですが、、、、、(ここ大事)
Posted by JetSin at 2015年04月11日 13:10
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。