2014年08月09日

新刊『プロジェクトぴあの』



PHP研究所 2052円
8月19日発売

 2025年、AR(拡張現実)技術が本格的に普及しはじめた秋葉原。「男の娘」の貴尾根すばる(本名・下里昴)は、電子部品を買い漁っていた不思議な少女と知り合う。
 彼女の名は結城ぴあの。人気アイドル・グループ〈ジャンキッシュ〉のメンバーで、科学に関する膨大な知識と桁外れの才能を有する、突然変異的な超天才。普通の人間とは異質の感性を有し、決して人を愛せない。
 アイドル業の傍ら、ガレージでの実験に熱中するぴあの。幼い頃からの彼女の夢はただひとつ──宇宙に行くこと!

『地球移動作戦』の前日談、ピアノ・ドライブの発明者である結城ぴあのの物語です。本当は『地球移動作戦』より前から構想していた話なんですけどね。
 思いついたきっかけは、もう20年以上も前、あるバラエティ番組の一場面でした。某発明家がスタジオに持ちこんだ、宇宙エネルギーなんたらかんたらという、どう見ても嘘っぽい装置を、ゲストのアイドルやコメディアンが取り囲んで、しきりに感心している。
 そこでふと、ひらめいたんです。
「アイドルの女の子がすごい天才で、科学的間違いを指摘しはじめたら面白い」
 そのたったひとつの思いつきから、どんどん妄想と構想が広がって、結城ぴあのというキャラクターが生まれ、最終的にこんな話になりました。

 僕は「変なヒロイン」が好きです。外見や喋り方じゃなく、考え方が普通じゃないユニークな女の子。詩羽がそうだし、一条(仮名)も魅波も千里もみんなそう。アイビスやマイカやカイラなんて人間ですらありません。
 だから、ぴあのを頭がいいだけの普通の女の子にしたくありませんでした。そこで、いっそ人間とは異質の考え方をする突然変異体──ミュータントだと割り切って、その才能と奇行を描くことにしました。
 だからこの小説は、SFのジャンルで言うとミュータントものです。ヴァン・ヴォクトの『スラン』、スタージョンの『人間以上』、パジェットの「黒い天使」などなど、枚挙にいとまがありません。ちなみに書いている間、なんとなく意識していたのは、『エイトマン』の「新人類ミュータント」でした。
 あと、僕はマレイ・ラインスターのような古典的なSFが大好きなんで、「1人の大天才が生み出した発明が世界を変える」という、古典的なパターンに挑戦してみたかったということもあります。 昔からある話でも、現代風に語り直せば面白くなるはずだと。
 逆に、描きたくなかったのは「本物のアイドル」です。僕にとってのアイドルは、AKBでもももクロでもなく、『ようこそようこ』と『アイドルマスター』だったりするので(笑)、リアリティを放棄して、「現代のおとぎ話」と割り切って描くことにしました。

 他にも、『地球移動作戦』で重要な役割を果たすACOM(人工意識コンパニオン)やメガプロデューサーなどは、この時代に生まれたと設定し、その誕生をぴあのとからめて描いています。
『地球移動作戦』を読まれた方なら、この話の結末がどうなるかご存知でしょう。最初からネタバレしてるというのは、作者にとっては大きなハンデです。それでも読者を飽きさせまいと、胸躍る展開、いろんな小ネタを詰めこんでいます。
 ラスト近くの宇宙のシーンはもちろん、中盤の山場である〈メカぴあの〉との対決は、個人的にすごくノッて書けました。

 語り手のすばるを「男の娘」にしようと思いついたのは、実は連載開始の直前。ぴあのがあまりに個性的なもんで、普通の男じゃ釣り合わない。それにアイドルの女の子の周囲に若い男がうろちょろするっておかしくないか……と、さんざん悩んだ末に、「男の娘」にすることを思いつきました。いちおう計算してやってます。
 逆に計算外だったのは、青梅秋穂という女の子。最初はほんのちょい役の予定だったのに、なぜか話の節目節目に出てくるようになり、最後はすっかりいいキャラになっちゃって……。
 いやあ、小説書いてると、自分でも予想していない、こういうハプニングがあるんですわ。

 もうひとつ、忘れちゃいけない、物語の中で重要な意味を持つ〈サイハテ〉という歌。

http://www.nicovideo.jp/watch/sm2053548

 もうね、この歌、好きなんですよ! もちろん小林オニキスさんのオリジナルもいいんですが、「【第7回MMD杯本選】春香さんで「サイハテ」」で使われたハリさんバージョンが、泣けるほどいいんです。

http://www.nicovideo.jp/watch/sm15356120

 だもんで、『アイの物語』の「瑠璃色の地球」のように、いつか小説の中で使おうと思っていました。その夢がようやく叶ったわけです。
 ですからこれは、一種のボカロ小説と言えるかもしれません。
 他にも作中では、ぴあのに実在・架空おり混ぜて、いろんな歌を歌わせています。実在の歌の方は、思いっきり僕の趣味に走った選曲してます。

 楽しめる作品だと自負しています。発売は今月19日。よろしくお願いします。





タグ :PRSF

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この記事へのコメント
19日ですか。個人的な話ですが今月は買う本が多くなりそうですよ。楽しみです!
ただ、欲を言えば今作にもスターシステムがあって欲しかったですかね。
もっと色々なキャラと再会したかったものの、まあ、それはそれとして、楽しみにしています!
Posted by ドードー at 2014年08月09日 21:46
〉僕は「変なヒロイン」が好きです。

自分も好きですww
というか、今さらそんな事ゆってもとっくにバレバレです先生。
「そんないたいけだったりイタイ系だったりなヒロインを、15才にあるまじき妄想力でどう脱がせるか、どうやって彫像化するかばかり考えてんだろ!?そのくせ、リアル嫁とはいまだにラブラブで、コミケは毎回リアル娘同伴で楽しんでるとか、世の中どんだけ不公平なんだよチクショウ!」とか思ってる奴が自分以外にも5~6人くらいいませんかね?


〉描きたくなかったのは「本物のアイドル」

えー、アイドルってそもそもが二次元的というか虚構の存在じゃないんですか?
自分はリアルアイドルにはサッパリ興味がありませんが、つい先日、遠い記憶の彼方に雲散霧消しかけてた『ロケットガール』をハヤカワ文庫で読み直したところ、「やっぱり俺の推しメンは褐色の天使マツリたんだな!…でも、4Gでコロッと気絶しちゃう茜ちゃんも応援せざるを得ないww」などと、アイドルオタ気分になってしまいました。
しかし、一番胸がキュンキュンしちゃうのは『魔法使いとランデヴー』の元ネタであるはやぶさだったり。

まぁ何にしろ、男という生き物はいくつになっても夢やロマンが無くては生きてゆけない「愛すべきバカ」って事……かな? かな?
Posted by 活字スキー at 2014年08月11日 22:50
>僕は「変なヒロイン」が好きです。

というか、そういうヒロインしか書けないだけなんじゃありませんか?
桁外れの超天才少女?「ぼくのかんがえたさいきょうのヒロイン」なんてあぶれてますから。

ヒロインの描き方が類型的なのは赤川次郎に次ぎますね、山本先生。
Posted by MK2 at 2014年08月13日 18:58
>MK2さん

いやいや、変というか様々に個性的で異なる方向性のヒロインをこれまで山本先生は作品に登場させてきましたって。
真面目な性格のヒロインだっていますよ。例えば「ジェライラの鎧」のジェライラさんとか、「ゴーレムは証言せず」等のミシェールさんとか、「マンドレイクの館」のレアンさんとか、「水色の髪のチャイカ」のチャイカさんとか。
ただ、上記の皆さんが登場している作品はほとんど絶版になってるんですよね……。
新装版かスターシステムとかでまた彼女たちが世に出てくることを私は望んでいます。
Posted by ドードー at 2014年08月19日 02:26
本日、本屋で発見して購入しました
で、今しがた一気に読了w
思わず読み終わった時に拍手してしまいました
これだけ楽しい話は久しぶりです
ありがとうございます
Posted by 電脳忍者 at 2014年08月22日 00:05
久しぶりのコメントです。
「ぴあのプロジェクト」読み始めたら止まらなくなり、
ブログで感想・紹介記事を書いていたら、
本当に仕事をする時間がなくなってしまったくらい
面白い小説でした。
ここのコメント欄には、書ききれないので、
見ていただけると嬉しく思います。

http://wizwiznew.blog.fc2.com/?

いやぁ、生きててよかった。
明日から、また大変だけど仕事をがんばるぞ~。おぅ。

p.s.また例の居酒屋あたりでこの本の発売記念を兼ねた座談会とかやらないんですか?
Posted by i ことダル at 2014年08月24日 22:14
明日(もう日付は今日ですが)は仕事だというのに夢中になって一夜で読んでしまいました!いやあ、もう、山本弘イズム溢れる名作じゃありませんか!!
ストーリーもよかったですし、スターシステムは無かったものの、新たに魅力的なキャラたちに出会えてよかったですね。
あと、いつも思うんですが、ギリギリ二十代の私ですらボカロとか最新鋭の趣味に取り残されてるのに(私が遅れてる田舎者なだけかもしれませんが……)、
まったく乗り遅れることなく、それらを毎度深く濃く小説の内容に取り込んでいる山本先生の若々しさと好奇心の旺盛さが羨ましいです。
アンチエイジングというか、「心はいつも15才」は作家としての山本先生の強力な武器だと本当に思いますね。次回作も楽しみにしています。
Posted by ドードー at 2014年08月25日 02:06
それにしても、ぴあのさんは本物でしたが、読んでて何度か、ぴあのさんとは対照的な、STAP細胞のあの人の件が何度か頭をよぎりましたね……。
作中でのニュアンスはやや違うものの、P487の、ぴあのさんの「世界って結局、こうなんですね」という台詞を呟きたくもなります。
まあ、本物の天才がいつか本当に現れる可能性だけは捨てないでおきたいですけどねぇ……。
Posted by ドードー at 2014年08月25日 02:33
すみません、誤字報告です。
p.508の10行目
誤「信じてこまされていたから」→正「信じこまされていたから」

大変面白い物語をありがとうございました。
Posted by Kow at 2014年09月13日 15:01
>ドードーさん
>電脳忍者さん
>i ことダルさん
>Kowさん

 感想ありがとうございます! 楽しんでいただけたようで、僕としても嬉しいです。
 あと、kowさんのご指摘、増刷があれば反映させていただきます。
Posted by 山本弘山本弘 at 2014年09月18日 17:15
>davs さん

 申し訳ありません。あなたの質問はラストのネタバレになっているもので、削除させていただきました。ただ、答えられる範囲で答えさせていただきます。

『地球移動作戦』の中でも書いてますけど(文庫版の上巻24ページ)、亜光速に近づくほど宇宙塵との衝突のダメージが大きくなって危険になるので、あの時代の宇宙船はあまり光速に近づけてはいけないことになってるんです。〈ファルケ〉の場合、せいぜい8.7光日のところまでしか行かないので、最大速度は光速の半分も出ていません。
 ぴあのは宇宙塵との衝突確率を実際より小さく見積もっています。彼女の時代には太陽系外の宇宙塵の密度がよく分かっていなかったから……という裏設定は考えてました。
 あと、のちの専門家が〈さいはて〉が太陽系外に出られなかっただろうと分析したのは、彼女も気がついていない重大な設計ミスが何かあったんだということにしてます。だから彼女が死んでる可能性は高いんですが……まあ、実際はどうなのか、僕にも分かりません。

『地球移動作戦』をお読みになるとお分かりでしょうけど、〈ファルケ〉は船尾に居住区があるんです。あれは実はぴあののアイデアを取り入れてるんです。現代の宇宙船と違い、船尾に噴射管のないピアノ・ドライブ船は、居住区を前に置く必要がないから、宇宙塵との衝突の危険を考えると、後ろに置く方が合理的なんです。
Posted by 山本弘山本弘 at 2014年09月18日 17:50
帰国したら速攻で読ませていただきます。
Posted by toorisugari at 2014年09月19日 06:31
>山本先生
失礼な質問にもかかわらず、丁寧にご回答いただき、恐縮です。

『プロジェクトぴあの』の物語の後、ぴあのドライブがどのように普及していったか、宇宙開発がどのように進んでいったのか、想像するとわくわくします。
Posted by davs at 2014年09月19日 21:09
Kindleにようやく配信されたので読みました。

>のちの専門家が〈さいはて〉が太陽系外に出られなかっただろうと分析したのは、
>彼女も気がついていない重大な設計ミスが何かあったんだということに

いやいや。あとから他の専門家が気がつくことに彼女が気がつかないわけがない。
「あ、それは知ってました。なので〈さいはて〉には○○が積んであって…」とか、
しれっといいそうです。

うん。

やっぱり彼女は帰ってきますよ。
Posted by TNK at 2014年10月06日 09:25
プロジェクトぴあの 面白かったです
私なりに物語のつづきを妄想してしまいました
さいはてには故障にそなえて予備のピアノドライブがつんであり、ぴあのはそれを小惑星にとりつけて前に走らせて隕石除けにする すばるに言わなかったのは万一後をつけられてじゃまをされるのを恐れたから でも小惑星の消滅を知ったすばるは気がつく
ぴあのを忘れられないすばるは彼女を追いかける決心をする 猛烈な努力でライト・カスケード社の会長になり(目的のためメリディアンの孫娘との結婚も)その権力でひそかに宇宙船をつくりぴあのの後を追って出発するという
ホールドマンのおわりなき戦いのラストみたいな展開に
それからふたりで地球にもどって機械の体になって何億年も生きるというフラッシュフォワードみたいな展開に・・
うーん中二病全開で恥ずかしい
Posted by まるまる at 2014年11月14日 14:32
お晩でございました。
やっと入手し、読始めました。
ぴあのって、こだま学のひとえを連想させます。
こんな、ギャップの有るキャラが好きです。・・・方向音痴の航法士とか(^-^)
Posted by 孤星 at 2014年12月13日 19:44
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