2013年07月24日

SF大会レポート2:SF大会で新作のアイデア浮かんだ

●子供たちにSF本を

 作家・川端裕人氏らのパネル。
 今、学校図書館に子供向けのSF全集が置かれていない。かつては、ジュヴナイルSFがきっかけでSFにハマる子供が多かったんだけど、それが失われたということは、次世代のSFファンが育たないことになる。これはSF界の危機ではないのか……という話。
 僕も若い世代にどのようにSFを浸透させるかについて、憂慮している一人です。『ハリー・ポッター』の影響で子供たちの間にファンタジーは流行ってるし、『学校の怪談』系のホラーも定着してる。もちろん『名探偵コナン』とかの影響でミステリも人気がある。だけど、SFだけがなぜか根付かない。
 SFが売れてないわけじゃないんですよ。『レッドデータガール』なんて、かなりオーソドックスなSFだと思うし、『図書館戦争』や『NO.6』もSF。アニメやマンガにもSFものが多いし、実写ドラマや映画でも、ロボットやタイムスリップやパラレルワールドを扱うものが多くなっている。
 ただ、それが「SF」というジャンルだと認識されていない。だから、それぞれの作品には人気が出ても、読者の興味はSFというジャンルには向かない。現実にこれだけ売れているにもかかわらず、出版界にはいまだに「SFは売れない」というジンクスを持ち続けている者が多い……。
 その状況を打破しようと、僕も『地球最強姉妹キャンディ』とかを書いてるわけなんだけど……うーん、壁は厚いな。
 読んでくれた人はたいてい「面白い」と言ってくれる。問題は手に取らない人が多いこと。手に取ってさえくれればなあ……と、いつも歯がゆい思いをしています。

 SFを読んでいない人にSFの魅力をどう伝えればいいのか。
 ここでヒントになるのは、三上延『ビブリア古書堂の事件手帖』や野村美月『文学少女』シリーズ。あれのSF版みたいなものを書けないか、と前から思ってました。SFの好きな美少女が、毎回、SF作品のことを熱く語る話。
 ただ、どういう設定にするかが問題。古書店の話にしたら『ビブリア古書堂』の二番煎じになるし、そもそもミステリ仕立てだと話のパターンが限られて、すぐに苦しくなりそうな気がする……。
 ところがこのパネルを見ていて、アイデアがひらめいた。

 これ、いけるじゃん!

 自分で言うのもなんだけど、これ、絶対に面白くなる。どこかに売りこもう。

●S3Dプロジェクションマッピング“時空の階段”

 1日目の最後の企画。午後8時からの、会場の正面階段を利用したイベント。妻や娘がプロジェクションマッピングというものを知らないというので、連れてきました。僕もテレビとかでは何度も見てるけど、実際に見るのは初めて。
 17組の作家の競作なんだけど、やっぱり階段という場所を上手く利用した作品が面白い。上から立体が転がってきたり、階段が崩れたりするやつ。
 しかしこれらの作品、この場所でしか上演できないんだよなあ。もったいない。

●【サカサマのパテマ】吉浦監督ってどんな人?【イヴの時間】

『イヴの時間』の監督・吉浦康裕氏と、笹本祐一氏の対談。どうでもいいけど笹本さん、今回、ずいぶんいろんな企画に出てたなあ。
『イヴの時間』や新作『サカサマのパテマ』の裏話がいろいろ。『サカサマのパテマ』では、いろんな年齢層のアニメーターが参加してるんだけど、大橋学氏もワンカットだけ担当してるという話にびっくり。大橋学、まだ現役だったのか!?(『宝島』のOPとED描いた人だよ)
 この秋公開の『サカサマのパテマ』、ニコ動の公式配信で予告編と最初の方だけ見たけど、ものすごく面白そうで、期待大です。

公式サイト
http://patema.jp/

 ちなみに吉浦氏もやっぱり、SFにハマったきっかけは、小学生時代に読んだ子供向けのSF全集なんだそうです。 やっぱり、ああいうの大事なんだ。
 終了後、壇上に上がって吉浦氏にあいさつ。「『水のコトバ』で好きになって、『イヴの時間』も大ファンです」という話をしたら、向こうも「『アイの物語』読んで感動しました」とのこと。
 ああ、道理でサミィが「私はアンドロイドです。人間ではありません」と言うシーンに既視感があると思ったよ(笑)。
「『詩音が来た日』のアニメ化の際にはぜひ声をかけてください」と言われちゃいました。機会があればね……。(実は『アイの物語』のアニメ化企画、一度ポシャってるんだよね)

 あと、『家なき子』で使われた立体視の原理を、吉浦氏も笹本氏もご存じなかったので解説。人間の眼は、暗いと視神経から脳に送られる信号がわずかに遅れる。片方だけに色がついているサングラスで、高速で横にパンする映像を見ると、左右の眼から脳へ伝わる信号にわずかに時差が生じ、モニターよりも手前に画像があるように見える。手前のセルを奥のセルや背景より早く動かせば、奥行きがあるように見える……らしい。
 でも、『家なき子』以外で使われたって話を聞かないから、やっぱり実用的じゃなかったんでしょうな。しょっちゅうパンしてるわけにもいかないしね。

●サイン会

 いっぱいサインしました。最新の『MM9―destruction―』から、昔の『妖魔夜行』や『ソード・ワールド』リプレイ本まで、みなさんいろんな本を持ってこられます。「おお、こんな懐かしい本が!」というのもちょくちょく。
 中に中国から来られた方が一人。「先生の小説、大好きです」と言われました。『アイの物語』と『去年はいい年になるだろう』は中国語版、出てるからなあ。外国にもファンがいるというのはありがたいことです。



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この記事へのコメント
自分も(年齢はもはや子供どころではないものの)「面白い」と評価している読者の一人ですが、キャンディ売れなかったんですか……。
続きを楽しみにしていたのですが、「アイの物語」のアニメ化見送りと共に、なんとも残念な気持ちです……。
こうなると一騎くんのMM9シリーズは是非ともアニメ化(でも、まずはコミカライズからですかね)してほしい気持ちになったりします。

>『ハリー・ポッター』の影響で子供たちの間にファンタジーは流行ってるし、『学校の怪談』系のホラーも定着してる。もちろん『名探偵コナン』とかの影響でミステリも人気がある。だけど、SFだけがなぜか根付かない。

個人的には(素人考えですが)妖魔夜行の児童書版を出したらイケるんじゃないかと思ったりします。
あのシリーズはホラーの皮を被ったSFだと個人的には思ってますので(山本先生をはじめ執筆者の先生方はどうお考えだったのかはわかりませんが)。
子供たちに興味を持ってもらい彼らがティーンエイジャーになった時に妖魔夜行を再版してシリーズの復活を……なんてのはまさに素人考えですね。すみません。
とりあえず、思いつかれたという新作、楽しみにしています。長文失礼しました。
Posted by ドードー at 2013年07月24日 17:55
 『幻解!超常ファイルダークサイド・ミステリー』、『NOVA10』 、『サカサマのパテマ』…(日本に)帰ってきてからのお楽しみが増えるばかりです。

>妻や娘がプロジェクションマッピングというものを知らないというので、連れてきました。

 そういえば私、真奈美さんにはお会いしたことないんですよね。いつかお顔合わせ願いたいところ。勿論美月さん弘さん共々。

>「『詩音が来た日』のアニメ化の際にはぜひ声をかけてください」と言われちゃいました。機会があればね……。(実は『アイの物語』のアニメ化企画、一度ポシャってるんだよね)

 MM9の時もそうでしたが、何故ですか勿体無い!何なんですか理由は!?
Posted by toorisugari at 2013年07月24日 23:03
国語の教科書にSFを載せる以外にもう一つアイデアを思い付きました。
SFの絵本を出すというのは?
既にあったらすいません。あるのかな?
国語の教科書だって、動物が話すような非現実的な話はあるんだから、SFもOKだと思うんだけど。
いい加減カビの生えた文学作品なんて勘弁です(^^;)。
Posted by 匿名 at 2013年07月25日 15:09
 追記失礼。

>それが「SF」というジャンルだと認識されていない。

 ジャンルといいますか、レッテルごとの扱いの違いともいえましょうか…

 地歴研究部や科学部の人が社会や科学のテストで悪い点を取ってもあまり何も言われない、バスケ部の人が体育の授業でへましてもあまり何も言われない(そういえば「スラムダンク」はバスケブームを生みましたね)、数学だけ「数理研究同好会の癖に!」と怒られた…
 という体験談を失礼しました。ジャンルの区分について思うことがあったので…
Posted by toorisugari at 2013年07月25日 23:31
〉三上延『ビブリア古書堂の事件手帖』や野村美月『文学少女』シリーズ。あれのSF版みたいなものを


先生、解けちゃいました。

ちょっと残念なSF狂の美少女が時空を越えて古今東西のSF界の奇人超人偉人達に突撃しまくる、コニー・ウィリス風ドタバタラブコメですね?

正解の御褒美には是非、黒レイブン×白レイブンの薄い本をお願い致します。
…あ。『地球最強姉妹キャンディ』の夏休み劇場アニメでも全然OKですよ☆
Posted by 活字スキー at 2013年07月27日 08:54
初めてコメントします。山本さんのリチャード・マシスンの思い出など、聞かせて貰えないでしょうか。レイ・ハリーハウゼン、レイ・ブラッドリー…。
なんとなく終わってしまった感が…。
Posted by 馳夫 at 2013年07月29日 13:40
はじめまして
こいこんはお疲れさまでした。
私も子供向けSF全集から入ったクチです。
たしかにああいったものが復活するといいですね。
昔の名作を、今風のイラストを付けて。
昔かじった団塊向けに、クラシックな装丁でノスタルジーを誘う
という手法で年金生活世代を狙った企画も面白いかもしれません。
孫が遊びにきて「おじいちゃん何読んでるの?」「これはね・・」
なんて展開もあるかもしれません。
Posted by N at 2013年08月03日 02:04
>匿名さん

 あなたのもう一件の書きこみは、星新一氏のショートショートのストーリーからオチまで書かれていたので削除させていただきました。
 どうしてもネタバレしなくてはいけない必然性があるならまだしも、何の理由もなしにネタバレされるのは困ります。

>活字スキー さん

 まったく違います。

>馳夫さん

 今度、アップいたします。
Posted by 山本弘山本弘 at 2013年08月09日 16:34
>匿名さん

ネタバレで削除されたコメントで言ったという作品は星新一先生の「おみやげ」の事ですよね?
あの作品、私も国語で習って教科書で読みましたけど、人間の愚かさを突きつけるラストが今でも心に残ってます。
確かにああいう印象に残る作品が教科書に載るのは良いことだと私も思いますね。
Posted by ドードー at 2013年08月10日 11:41
>山本先生


……ぎゃふんっ!!
Posted by 活字スキー at 2013年08月11日 00:50
 更に追記失礼。
 『MM9』、「パシフィック・リム」で観賞後の感じや作品の肝が同じ、というような感想が出てきてますね。
Posted by toorisugari at 2013年09月05日 00:11
>山本弘さん

すみません。たしかにネタバレになっていました。

>ドードーさん

>人間の愚かさを突きつけるラストが今でも心に残ってます。

ネタバレがあり削除となりましたが
まさにこれと同じことを書きました。
「おみやげ」という作品です。
Posted by 匿名 at 2013年09月05日 15:12
カルコスで購入してきた「迷宮ヶ丘七丁目」を今さっき読み終えたところなんですが、山本先生の作品のみならず全体的にクオリティ高かったです!
山本先生の「あきちゃった」に関しては、あのオチはまったく予想できませんでしたよ!
でも、読み返してみたら伏線に気がつきますし、題材もまさに山本先生らしい作品だったと思えましたね。
それにしても、二十代後半の私が読んでも面白いんですから、この本を子供の頃に読んでたら夢中で読み返してたと思います。
まさに子供に読ませるに相応しいSFとして良い本を買えて良かったです(でも、結婚して子供を作らないとなぁ……。自分……)。
Posted by ドードー at 2014年03月15日 00:46
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