2013年02月23日

東郷隆『定吉七番の復活』

 1980年代、大阪商工議所秘密会所の殺人丁稚・定吉七番は、スイスのユングフラウで秘密結社NATTOの重要人物を追跡中、氷河に落ちて氷漬けになった。
 時は流れて現代。仮死状態から解凍された定吉は、時代の変化にとまどいながらも商工会議所に復帰。NATTOの残党の陰謀を追って新潟に向かう。
 一方、NATTOの最高評議員である新潟出身の政治家・田長マキコは、ドイツ人マッド・サイエンティストを雇い、新たな計画を進めていた。それは死んだと思われていた父・岳永を復活させることだった……。

 定吉七番が帰ってきた!
 本屋で見つけて嬉しくて、即、買った。『小説現代』に連載されてたのは知ってたけど、まとめて一気に読みたくて、単行本になるまで待ってたのだ。好きだったんだよね、このシリーズ。
 いやー、堪能しました。時代はあの頃とすっかり変わったけど、軽妙でスピーディな語り口の中に、風刺とパロディを山ほど詰めこんだ「定吉ワールド」は健在、四半世紀のブランクなどまるで感じさせない。
 いつものことながら、ものすごく荒唐無稽な話なのに、随所にいろんな薀蓄が挿入されていて、変なリアリティを醸し出している。「新潟トルクメニスタン友好の架け橋村」なんていう変なテーマパーク、さすがに作者の創作だろうと思ったら、どうやら「柏崎トルコ文化村」というのがモデルらしい。

 定吉以外のキャラクターもみんな個性的。今回は特に、無敵のスイス娘・ハイディが豪快すぎる。
 最後の方は、いろんなキャラクターが入り乱れ、「残りこれだけのページ数で決着つくの?」「もしかして次巻に続くとか?」と心配になったのだが、アクションとギャグを盛りこみ、ちゃんと話を収めてしまったのには感心した。(ちょっと駆け足だったけど)
 しかし、何でナチ+『ハイジ』なのかと思ったら、最後にあの映画のパロディをやらせるためだったとは。笑った笑った。

 旧作のファンなら必読。旧作を知らない人も、この機会におすすめしておく。



タグ :小説

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この記事へのコメント
ただでさえ積みゲー、積みアニメ、積み本が大量にあって頭が痛いのに、この記事のせいでまた一冊増えてしまいました……。
先生のあらましだけでも面白そうな雰囲気が漂ってきて、実に困ります。
速読術の本でも読もうかな……。
Posted by TakaTaka at 2013年02月23日 19:32
おお、あの「定吉七番」復活ですか、それは嬉しい。
貴重な情報感謝します。
でも定吉のあなこ論議じゃないけど文庫じゃない、4ケタオーバーはちょっと高いよなあとは世知辛くも思わずにはいられません。
Posted by S.K at 2013年02月23日 22:09
続刊おめでとうございます!
あーっ、そういえば定吉七番のPCエンジンのゲームってPCエンジンアーカイブスで出てない!リクエストしなくては!
まあこういう機会があると出してくれやすそうな気が。
Posted by フィルムセンター at 2013年02月23日 22:17
お晩でした〈(~。~)屮


定吉セブン復活ですか。


…って、オチは「全ての山に登れ」ですか?
早速休みに買いに行かなきゃ。

…その前に、このシリーズを教えてくれた友人にも教えてなきゃ
ε=ε=┏( ・_・)┛
Posted by 孤星 at 2013年02月24日 23:35
安永航一郎先生のまんが版って、単行本ありましたかな?
Posted by 取手呉兵衛 at 2013年02月26日 17:05
そう言えばこの作品、PCエンジンでゲーム化されてましたね。
定価が5000円弱だったのに中古ショップで500円とかで売られてたのには・・・
Posted by 餃子少年 at 2013年02月27日 19:27
初コメント失礼します
山本先生が定吉七番について書かれていたのが
嬉しくてコメントしてしまいました
近所の書店では入荷すらしなかったので
悶々しております

山本先生のおかげで注文する踏ん切りが
つきました(笑)
更なる続刊を期待します(笑)
Posted by 風来のやっさん at 2013年02月27日 21:33
昔のシリーズの続きが時を越えて始まるというのは良いものですね。
自分としては山本先生の「サーラの冒険」を思い出します。
私があのシリーズの存在を知ったのは遅めでしたが何年か待った事は事実です。
リアルタイムでシリーズを読んでた人たちには続きが出たのは嬉しかったと思いますね。
私も嬉しかったですから(笑)。名作の5巻、6巻と外伝を読めたのは本当に良かったです。
まあ、マローダさんの末路は最終巻ですし仕方ないとはいえ、やや駆け足な印象でしたが。

そういえば、マローダさんで思い出しましたけど、2巻にチャーナクというエルフの悪党がいましたよね。
サーラにノリノリでウィル・オー・ウィスプぶつけようとした外道さは今でも忘れられません。
最終巻にマローダさんと出てくるかと思いきや、ある意味、逃げ切りましたね。あの野郎。
アレクラストの物語はもう書かれる事もなく、ゲームとしてもクローズしてしまったのですから。
あいつって2巻が書かれた時点では後に再登場の予定とかあったんでしょうか?いまだに気になってます。
ちなみに個人的には、悪役としてあいつは好きですね。

なんだか長くなってしまいましたね。長文失礼しました。
Posted by ドードー at 2013年02月28日 01:51
>取手呉兵衛さん

 マンガ版、ありましたねえ。そう言えば単行本になってなかったかも?
 昔の角川文庫版『太閤殿下の定吉七番』のイラストも安永航一郎さんでした。今回の『定吉七番の復活』も、連載中は安永さんのイラストが入ってたんで、文庫化の際には復活させてほしいです。

>ドードーさん

 ああ、そう言えばいましたな、そういう奴。すっかり忘れてました。
 いや、再登場させる予定はなかったですよ。
Posted by 山本弘山本弘 at 2013年03月01日 15:54
>山本先生

ご返信ありがとうございます。そうですか。つまりあいつは悪運強かったという事でしたか。
あの場面の逃げ切れるあの位置にいた事が幸運だったんですかねぇ。
第二部リプレイで見逃されたのにサーラの冒険で死んだガスリーとは対照的ですね。
しかしアレクラストの物語がもう二度と書かれないというのは残念極まりありません。
「「名探偵デュダ」の五十年後のロジェ・カイナム」とか「「混沌の大地」の続き」とかいろいろネタを残しているのに……。
まあ、これはここで愚痴っても仕方ありませんね。失礼しました。
Posted by ドードー at 2013年03月01日 17:12
>ドードーさん

 「サーラ」シリーズへの情熱(ハマり?)を感じます。
 悪役に注目や人気が集まることは屡(しばしば)起こることとはいえ、仲間を見捨てた逃走犯のチャーナク氏(何故、氏を付けてるんでしょうね私)を「あの野郎」とか「あいつ」呼ばわりするのは、キャラクター愛を感じると同時に笑ってしまいました。

>山本さん

 いますよね、作者にも忘れられる、「神に愛されなかった登場人物」…
Posted by toorisugari at 2013年03月01日 17:41
>toorisugariさん

ええ、5巻のメイガスもそうでしたけど(彼らなりに)思考や行動に一本筋が通った悪役は好きなものですから。
山本先生の自己評価は星2つと低いですが「悪党には負けない!」に出てきたガスリーたちも同様の理由で好きですね。
マローダさんがサーラを殺せないと言ったら、ガスリーが別行動をとらせてもらうと言った場面で
「うわあ、こいつ、小物なりにちゃんとプロの犯罪者の判断をした」とある種の衝撃を受けましたよ。
やられ役でも思考や行動に一本筋を通すと読者にある種の強い印象を与えれるんだなと、個人的には思いましたね。
Posted by ドードー at 2013年03月07日 19:41
この作品、よく読むと大阪の(但し、マニアックかつ、ディープな)観光案内になってますねぇ。京阪電車の所なんか、良く出来てるわ。よく知っている地名や場所が出てくるので、ニヤニヤしながら、読んでしまいましたよ。「イラスト」があれば、なおよかったんだが。
Posted by くり金時 at 2013年03月09日 04:20
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