2013年02月13日

「あなたの知らないマイナー特撮の世界part1 」ご報告

 遅くなりましたが、先月のイベント「あなたの知らないマイナー特撮の世界part1」についてのご報告。

http://hirorin.otaden.jp/e263835.html

「はたして70年代の第2期怪獣ブームまでたどり着けるかなー?」と思ってたら、案の定、ネタが多すぎて、2時間20分話して、ようやく1964年まででした。『ウルトラQ』にさえたどり着かなかった! すみません。次回は第1期怪獣ブームの話がメインになります。
 イベントで紹介した写真や動画、いろいろ。この他にもいろんな映画やテレビ番組を紹介しました。
 
『メトロポリス』の撮影風景。ロボットの中にブリギッテ・ヘルムが入ってるという話は本当だったんだ!

 おそらく世界初の女性スーツアクター。着ぐるみのこの形状からすると、たぶん中は全裸に近い格好だったんじゃないかと思われます。ほとんど拷問ですな。
 ロボットの「マリア」(実は作中ではロボットに名前はない。人間の女性・マリアに化けるから、便宜上「マリア」と呼ばれている)は劇中では前面しか映らず、背面の形状が不明。熱がこもるのを防ぐために、背中が開いてたんじゃないかという説もあります。

 1936年のイギリス映画『来るべき世界』に出てくる未来のヘリコプター。いいデザインです。

 そもそも世界最初のヘリコプター、フォッケウルフ Fw61が飛行するのは1937年。つまり本物のヘリコプターはこの時代にまだない。まさに想像力が生んだ「未来メカ」です。
 ストーリーはかったるいけど、後半の未来都市建設シーンのミニチュア・ワークは今見てもすごい。『サンダーバード』を作ったスタッフは、子供の頃、こういうのを見てたんでしょうね。

 1938年の日本映画『江戸に現れたキングコング』。

 面白そうな映画だけど詳細は不明。おそらくフィルムは現存していないと思われます。このポスターからすると、巨大怪獣じゃなく等身大のように見えるんですが……。

The Mysterious Island (1929) Fragment
http://www.youtube.com/watch?v=KJ4XEmL-8vk
 ジュール・ヴェルヌの『神秘島』は、『SF巨大生物の島』など、何度も映画化されています。これは1929年のサイレント映画。日本では1932年に『竜宮城』という題で公開されているとか。
 原作と違うのは、潜水艦(ノーチラス号か?)で海底に降りていったら、そこに海底人の国があるということ。海底人が何百人もぞろぞろ出てくるんですな。けっこう金かかってる?
 さらに、海底人の守り神らしき巨大怪獣も登場! ワニにひれ付けただけだけど。もしかして、これが史上最古の「トカゲ・ワニ特撮」なのかな?

Deluge (1933)
http://www.youtube.com/watch?v=kAFQcEnUxhs
 日本では『世界大洪水』という題で公開。全世界を大地震と洪水が襲い、文明が破壊されるという話。
 大がかりな特撮シーンはこの4分間のみですが、ニューヨーク壊滅の一大スペクタクルには圧倒されます。ビルの崩れ方なんか、ある種の美学すら感じさせますね。
 これは映画の最初の方のシーンで、後は生き残った人々のドラマが描かれるんですが、特撮ファン的にはそのへんはどうでもいいです(笑)。

The Thief of Bagdad (1940) Trailer
http://www.youtube.com/watch?v=QXqFLiO8ATQ
 1940年の『バクダッドの盗賊』。日本での公開はかなり遅く、1951年。(戦争があったから)
 これは予告編だけど、すでにパブリックドメインなので、全編、YouTubeで見られるし、日本でも廉価版のビデオが出ています(僕は280円で買いました)。
 今見ても話の展開が早くて飽きないし、特撮シーンも多いです。冒頭の帆船からして、よく見るとミニチュアなんですね。
 ビンの中から出てくる魔神ジニーとか、少年盗賊が潜入する異教の神殿のミニチュアとかもすごいけど、いちばん不思議なのが空飛ぶ馬。たぶんブルーバック合成だと思うんだけど、ものすごく大きなブルーホリゾンドの前で馬を走らせたのかな?
 他にも『雨ぞ降る』とか『悪魔の人形』とか、パブリックドメインになった古い映画の特撮名シーンだけ集めたDVD、誰か出してくれませんかね。安上がりにできると思うんだけど。

Gatorsaurus vs. Tegudon
http://www.youtube.com/watch?v=upBlYi0PnJo
 やはり1940年の『紀元前百万年』(『バクダッドの盗賊』と同じく、日本公開は1951年)より、トカゲとワニの壮絶な格闘シーン。今じゃ動物愛護団体が許してくれません。このシーンはその後、いろんなB級映画に流用されることになります。
 格闘シーン自体もすごいけど、その後の、瀕死のトカゲの横を歩いていくシーンが上手いなあ。
 言うまでもなく『恐竜100万年』(1966)はこの映画のリメイク。最初に出てくるのがコマ撮りの恐竜じゃなく本物のトカゲなのは、この映画へのオマージュでしょう。
 アーウィン・アレンの『失われた世界』(1960)の中にも、トカゲとワニの格闘シーンがあります。これも『タイム・トンネル』や『原潜シービュー号』に流用されておりました。
 そう言えば、お客さんの中に「トカゲとワニの出てくるシーンだけ見たい」と言ってた女の人がいました。「トカゲ・ワニ特撮特集」というのも面白いかも。『地底旅行』とか『大蜥蜴の怪』とかのトレーラーも集めて。

 他にも、たぶんパブリック・ドメインじゃないのでおおっぴらには言えないんですが(笑)、『縮小人間ハンター』World of Giants とか『宇宙探検』Men Into Space といった50年代のSFドラマも、YouTubeに上がってます。
 『縮小人間ハンター』は15センチの小人になってしまった諜報員メル・ハンターが、相棒のブリーフケースに潜んでいろんなところに潜入するという番組だそうです。明らかに『ロンドン指令X』の元ネタですね。細部の描写が凝ってて、真面目に作ってる印象です。猫に襲われるのは縮小もののお約束ですね。
 『宇宙探検』の方は、IMDBのエピソード・リストで見ると、 第1話で月周回、第2話で月着陸、第3話で宇宙ステーション建設、第4話で月面基地建設、第5話で原子力ロケットのテスト……と、宇宙開発を大真面目に描いていたようです。ちなみに作られたのは1959年、つまり人間がまだ宇宙に飛び出す前。
 脚本家の名前を見ると、『SF巨大アメーバの惑星』『冷凍凶獣の惨殺』のイブ・メルキオール、のちに『将軍』を書くジェームズ・クラベル、『アウター・リミッツ』のメイヤー・ドリンスキー、『人工衛星物語』のデヴィッド・ダンカン、「今日も上天気」のジェローム・ビクスビイなど、知ってる名前がぞろぞろ出てきてびっくり。そうか、ビクスビイって『スター・トレック』の前はこんなの書いてたんだ。
 特撮の歴史、調べれば調べるほど泥沼です。


タグ :特撮怪獣

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この記事へのコメント
いえいえ、本当面白かったですよ。コース料理頼んだら、満漢全席出された感じで。あの後、私なりにちょっと調べたら、良くまとめたものだと、むしろ感心しました。(なにせ、1960年代以後の特撮・SF映画の本数は、恐ろしいくらい増えますから。)おかげで、DVDレンタル店で「ゴルゴ」と「ゴジラ」と「キングコング対ゴジラ」を借りて観る羽目に。(笑)「江戸に現れたキングコング」今の目で見たら、失笑するかもしれないが。(この映画を作った全勝キネマは、奈良のあやめ池にあった映画会社。全作品サイレント映画。他の作品は時代劇ばかりの、(ターザン物が一本あったが)今で言えば、B、C級の娯楽映画を作っていたようです。)ネガ自体、おそらく、銀と火薬に化けたのではないでしょうか。それはともかく、part2、期待してます。
Posted by くり金時 at 2013年02月14日 06:27
「江戸に現れたキングコング」、めちゃくちゃ気になりますね、これ(笑)。
巨大ゴリラというより、ヒヒの妖怪ぽいですね。
これはこれで、味のあるデザインなのがたまりません。
等身大で登場するけど、後半で巨大化しちゃうのかもしれませんね。
Posted by BB弾 at 2013年02月14日 19:21
 濃いめの内容のようで、参加できなかったことが悔やまれます。
 考えてみれば、「メトロポリス」も「来たるべき世界」も、特撮誌のスチールや書籍などで存在は知っていたものの、現物にはそれほど親しんでなかったなあ。いかんいかん。

 メトロポリス、ロボット・マリアは、今の目で見ても美しい名ロボットだと思います。こういう「若人は知らないだろうけど、超が付くほど有名な特撮キャラ」こそ、特撮リボルテックで出していただき手に取りたいもの。
 他に64年までの特撮ロボキャラとして、「偉大なるトボー」のトボーとか、「禁断の惑星」のロビーとか、旧ソ連映画「嵐の惑星(または、『火を噴く惑星』)」の金星探査ロボット・ジョンとかは取り上げましたでしょうか? ロビーはさすがにメジャーすぎるから省かれたかもしれませんが、トボーや「ゴック」はぜひ、語っていただきたかったかなーっと(つーか、ゴックをググったらガンダムのゴッグばかりヒットするのは、ちとトホホ)。

 >Gatorsaurus vs. Tegudon

 瀕死のトカゲの脇を、主人公が通り抜けるところ。マジにトカゲの傷口から、血が噴き出してるのが見えますね。
 確かに格闘シーンは、作り物では出せない生々しさ、切り苛まれる動物同士の「殺し合い」が感じられますが。
 正直、痛々しくてちょっと抵抗感がありますね。つーかトカゲかわいそう。
 
 トカゲ特撮のみの特集、自分もちょいと見てみたいです。「キング・ダイノソア」とか「恐竜家族」でアールが見てたTVとか、集めたら結構な量になりそう。映像は使い回しだけど(笑)。

>他にも『雨ぞ降る』とか『悪魔の人形』とか、パブリックドメインになった古い映画の特撮名シーンだけ集めたDVD、誰か出してくれませんかね。安上がりにできると思うんだけど

 どっかの特撮系同人サークルさんが、そういうのを編集し、コミケで発売……ってな事してたら、ちょっと欲しいですねえ。
 キングコングなどの「モンスター編」、カリガリ博士などの「幻想・ホラー編」とかで、ジャンルで分けても色々出せそうですし。

 64年以降の第二弾も、どんな特撮を語られるのか楽しみです。ミスターBIGことバート・I・ゴードンの作品とかはいかがでしょうか。
 トカゲ特撮と同じように、本物のネズミをミニチュアセットで走らせ、巨大ネズミを描いた「SF巨大生物の島」。
  特撮に用いたのは、本物のネズミ。それを、火薬使って吹っ飛ばしたりおぼれさせたりと、これまた動物愛護団体からクレーム必至な内容。
 後になって「神々の糧」前半部の映像化と知りましたが、初見時には61年のハリーハウゼンのと勘違いしており、ちょっとイヤーな気分になっちゃったりしましたねえ。

 次回の第一期怪獣ブーム。どんな事を語られるのか、そちらも楽しみ。
Posted by 塩田多弾砲 at 2013年02月15日 00:33
シービュー号、昔、文庫本買いました。

さて、今回の隕石、死者が出なくて何よりです。二重窓の内側だけ割れたのは、玉突きのようなもんでしょうか?それにしても、アルマゲドンの隕石のうそ臭いこと。フジテレビの「まさか、隕石とは思いませんでした」って、テレビでは、どうみても隕石としか思えませんが。
陰謀だと言う輩も出るんでしょうか? 流星号の2~3倍の速度で。
Posted by 理力不足 at 2013年02月17日 23:01
いきなりの質問と言うのか突込みで誠に恐縮ですが、「来たるべき世界」に出てくる、写真の乗り物は、「ヘリコプター」ではなく、「オートジャイロ」ではないでしょうか?
だいぶ前に見たので、記憶違いだったら恐縮ですが、「来たるべき世界」で、映像教育だったかの場面で、天井から、薄い板が下りてきて、そこに映像が出たときは、「え、この時代にすでに薄型テレビみたいな発想があったんだ。」と驚き、その後、戦後作られた(50年代の)SFで、やはり映像投影の場面でブラウン管が出てきたときに、発想が後退したのかな?と思いましたが、「来たるべき世界」の時代では、動画と言えば、映画=スクリーンに映すもの。戦後作られた50年代では、動画=TV=ブラウン管(当時はまだ最新技術)から、「来たるべき世界」では、現在のわれわれから見れば、薄型ディスプレイに見えるものが出てきたのかな?と個人的に考察した次第です。

「月世界の女」を見て、ロケット発射時のGを、乗組員がベットに食い込む。と言う方法で表現する手法に感動を覚え、同時に、Gに逆らって、ロケットを必死にコントロールしようとする表現(管制センターなどは出てこない)所に、人間のイマジネーションの凄さと、限界を見た気分が、個人的にしました。
Posted by zzstop at 2013年05月23日 20:40
はじめてコメントさせていただきます。
自分の知る限り最古のトカゲ、ワニ特撮は1917年のDWグリフィス監督の「BRUTE FORCE」です。
動画: http://www.youtube.com/watch?v=wnKcRJ_ua34
トカゲ恐竜はこの動画の5分55秒くらいに出現。
また、7分55秒くらいにはなんと6mを超える恐竜も出現、短いながらも尻尾や体を動かす姿が拝めます。

また、「恐竜100万年」のトカゲ恐竜については、レイ・ハリーハウゼン自らが執筆された「ハリーハウゼン大全」に書かれている限りでは粗さがしをされない為、時間がなかったからなどの理由があったそうで、山本さんのような「紀元前100万年」のオマージュ、といった意味は書かれていませんでした。
レイ・ハリーハウゼン大全:(この「大全」には今までどのメディアにも載っていないような裏話や、自らの没企画などが沢山載っているので、ぜひ一読をお勧めします)
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%BB%E3%83%8F%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%8F%E3%82%A6%E3%82%BC%E3%83%B3%E5%A4%A7%E5%85%A8-%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%BB%E3%83%8F%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%8F%E3%82%A6%E3%82%BC%E3%83%B3/dp/4309270824/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1369364255&sr=8-1&keywords=%E3%83%8F%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%8F%E3%82%A6%E3%82%BC%E3%83%B3%E5%A4%A7%E5%85%A8
また、「大全」ではハリーハウゼン氏は「紀元前100万年」にはあまりいい印象を抱いていないように書かれているため、オマージュの可能性は限りなく低いと言えるのはないでしょうか。



最後に。レイ・ハリーハウゼン氏のご冥福をお祈りします。
Posted by アウルたん at 2013年05月24日 12:10
申し訳ございません、「BRUTE FORCE」は1914年のようです、訂正していただけると嬉しいです。
Posted by アウルたん at 2013年05月24日 12:14
>zzstopさん

 劇中では垂直に離着陸していましたし、ローターが動力で回転しているようでしたから、オートジャイロではないでしょう。おそらくこの頃、ヘリコプターの開発が行われていて、未来にはこういうものができると予想されていたんだと思います。
 1935年の映画『トンネル』(北米とヨーロッパを結ぶ海底トンネルを掘る話)でも、テレビ電話がごく普通に出てきたのにびっくりしたものです。
 驚いたといえば、『原子未来戦』(バック・ロジャース)で、転送装置が出てきたのには仰天しましたね。『スター・トレック』より20年以上早い! 特撮ファンの上映会で見た時には、どよめきが起きたのを覚えてます。

>アウルたんさん

 情報ありがとうございます。今度調べてみます。
Posted by 山本弘山本弘 at 2013年05月24日 14:54
宇宙探検!懐かしいです、ボンヤリ子供の頃に見た記憶があります。たしか第一シーズンのタイトルが「宇宙探検」で第二シリーズは「マッコーレイ大佐」のタイトルで放映されたはずです。作中に登場した縦に設置された天体とロケットの位置を表示する手動式の透明なディスプレイが記憶にのこってます。たしかこれの原案(?)を担当したマレー・ラインスターのノヴェライゼーションはハヤカワSFシリーズに「宇宙ゆかば」のタイトルで出版されていたはずです、わたしもムカーシ流し読みしただけなのでほとんど忘れているのですが、ラインスターの後書きが収録されていてそれによるときしくも、ハンターの企画にもラインスターは関わっていてその時TV業界の製作多度にがっかりさせられたのでこの企画(宇宙探検)も乗り気ではなかったが、その予断は良い方に裏切られたという一文をのせていた記憶があります。
Posted by 流転 at 2014年07月17日 16:21
>流転さん

 情報ありがとうございます。『宇宙ゆかば』はSFマガジンに載った分は読んでたんですが、あとがきにそんなことが書いてあったのなら、探してみなくちゃいけませんね。
 そう言えばラインスター、確か『巨人の惑星』にも噛んでたような……。
Posted by 山本弘山本弘 at 2014年08月08日 19:00
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