2012年10月28日

ライトノベルについていろいろと(前)

 先日のLiveWireの企画「語りつくすぞ!ライトノベル」の報告をかねて。
 何年か前に某出版社からライトノベルについて解説する原稿を書いてくれと頼まれたけど、お断りしたことがある。「僕はそんなに詳しくない。今、発行されているライトノベルの1/10も読んでませんから」「もっとたくさん読んでいる人に頼んでください」と。
 今回、この企画をやるために調べてみて分かったのは、2011年にはライトノベルがなんと968冊も出てたという事実。

http://d.hatena.ne.jp/yuki_tomo624/20120122/1327244524

 うん、やっぱり1/10も読むのは無理(笑)。97冊読もうとしたら月に8冊だもの。他の本読んでる時間がない。というか、かなりのライトノベル好きでも、年に100冊以上読むという人はあまりいないんじゃないかと思う。
 だから今回は、本当に自分が知っている範囲の話に限定して進めることにした。

 まずは「ライトノベル畑からデビューした作家」の紹介。ライトノベル系の新人賞でデビューしたり、あるいはデビュー後しばらくライトノベルを書いていた人が、一般文芸に移ってくる例が多い。冲方丁、桜庭一樹、有川浩、乙一、小川一水、野尻抱介、橋本紡、長谷敏司……最近の注目は『ビブリア古書堂の事件手帖』の三上延氏。2002年にデビュー以来、電撃文庫で30冊近く書いていた。

 やっぱりね、栞子さん萌えるよね!(笑)
 会場でも言ったんだけど、年配のミステリ作家が『ビブリア古書堂』と同じ題材で小説を書いたとしても、栞子さんはあんな魅力的なキャラにはならなかったと思う。『ビブリア古書堂』はライトノベルの方法論をうまく取り入れたのが、ヒットの要因のひとつ(あくまでひとつだけど)ではないだろうか。

 次に「児童小説とライトノベルの境界が曖昧になってきている」という話。
 2004年頃、当時小学生の娘に読ませる本を本屋で探していて、『妖界ナビ・ルナ』の表紙を見つけた時には、「えっ? 最近は児童書でもこんな絵ありなの?」と驚いたもんである。

 ところが今や、フォア文庫も青い鳥文庫も、さらには角川のつばさ文庫も、アニメチックなキャラクター、ラノベ風の表紙のものが当たり前になってきている。

 会場で意外だったのが、『涼宮ハルヒの憂鬱』や『キノの旅』や『生徒会の一存』が角川つばさ文庫から児童書として出てることを知らない人が多かったこと。

 読んでるんですよ、小学生の女の子が『生徒会』を! 公式サイトに載った感想に「中学校か高校生になったら、生徒会に入りたいと思いました」と書いてあって、「いや、あんな生徒会ないから!」と思わずツッコんでしまいましたよ(笑)。
 つまりこれ、小中学生のうちからラノベを読ませて、ラノベ界にひきずりこもうという角川の戦略なんである。
 この戦略、正しいよ! 先日、ニュースで、中学生にいちばん人気がある作家は山田悠介だというのを知って暗澹たる気分になったもんで(笑)、よけいにそう思う。『リアル鬼ごっこ』読ませるぐらいなら、『ハルヒ』や『キノ』を読ませた方が、はるかに教育上よろしい。

 次は「ライトノベルの定義」の話。これ、意外に考え出すとややこしい。ライトノベルと言っても、SFもファンタジーもホラーもミステリも恋愛小説もあり、ドシリアスな作品からハチャメチャなギャグ作品まで、あらゆるものが揃っていて、ひと言でくくれないのである。
 まあ、「ライトノベル・レーベルから発売されているものがライトノベル」というトートロジーみたいな定義は、つい納得したくなるし、「表紙が女の子でカラー口絵があって本文イラストがある文庫本」というイメージも、だいたい合ってるとは思う。
 でも、そうなると、『化物語』はライトノベルじゃないのか、という問題が発生してしまう。あれを「ライトノベルじゃない」と言い切るのは、何かおかしい気がする。
 あと、桜庭一樹さんの『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』が富士見ミステリー文庫から出てた時はライトノベルで、後で角川から出たのはライトノベルじゃないのか、とか。(ちなみに僕は富士見ミステリー文庫で読んだ)

 有川さんの『図書館戦争』も、先に挙げた定義からは完全にはずれてるんだけど、ノリはライトノベルなんだよなあ……。
 というわけで、厳密に定義できません、ライトノベル。読者が「これはライトノベルだ」と思ったものがライトノベルなんだろう、たぶん。



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この記事へのコメント
「生徒会の一存」
 公式の、小学生や中学生の感想を読むと、アニメも見ていた……ってのが目につきますね。
 深夜アニメも、その年頃の子たちは結構見てるんだなあと、ちょっと意外かつ感動。

>つまりこれ、小中学生のうちからラノベを読ませて、ラノベ界にひきずりこもうという角川の戦略なんである。
 この戦略、正しいよ! 先日、ニュースで、中学生にいちばん人気がある作家は山田悠介だというのを知って暗澹たる気分になったもんで(笑)、よけいにそう思う。『リアル鬼ごっこ』読ませるぐらいなら、『ハルヒ』や『キノ』を読ませた方が、はるかに教育上よろしい

 まったく同感です。
 自分も以前に、書店で「スレイヤーズ」の角川つばさ文庫版を目にしたとき、「こういうのを小学校時に、もっと出てたら読んだのに」と、羨ましく思ったものです。
 というか、思うにラノベの中には少し手を加えれば、小中学生向けになるだろう作品が多くあると思うので、もっと行っていただきたいところ。

 いっそ、「まどかマギカ」の小説版を、文章を平易にしてこういう児童小説レーベルで出したらどうか‥‥と思ったり。この間劇場版を見に行って、パンフに「9歳の女の子も(TV版を)見ていた」とあったので、結構良いのではなかろうかと。
 ラノベではないですが「リリカルなのは」とか「らきすた」とかも、少し手を加えたら児童に対し十分に魅力的な作品になって、親しんでもらえそうな気がします。
「Fate」は、ちょっと難しいかもしれませんが。特にZeroは。
「ニャル子さん」……これも無理かなー。

 個人的には、「とらドラ!」や「僕は友達が少ない」を児童向けにしてほしいな……と思いますね。

 自分は岩波版の児童向け翻案SFで、初めてSFというスバらしい世界に触れたのですが。
 それと同じように、児童向け翻案ラノベにて、若いうちからより多くのラノベに親しんでいってもらいたいですね。少なくとも、山田某のスカポンタンな文章を読むよりかはずっとよいでしょうし(笑)。

>読者が「これはライトノベルだ」と思ったものがライトノベルなんだろう、たぶん。

 なんだか、SFの定義みたいですね。
「なんとなくこんな感じ」は言えるけど、厳密に定義するのは困難と。
 改めて、ラノベは奥が深いと実感です。
Posted by 塩田多弾砲 at 2012年10月28日 17:08
妖怪ナビ・ルナと同時期の少女海賊ユーリも、挿絵がラノベ系の児童文学の源流の一つかと思います。
ストーリーも面白かったですけど。
Posted by 司 at 2012年10月28日 17:50
砂糖菓子の初出は富士見ミステリー文庫ですね
Posted by 重箱の隅つきで恐縮ですが at 2012年10月28日 22:54
初めてコメントさせて頂きます。よろしくお願いします。


私も、新聞で中、高校生の一番読んでる作家は山田悠介というニュースを見て、日本の将来が少し不安になってしまいましたねえ。結構、断トツで1位だったし。せっかく多感な時期なのに、読む作品があれかよ・・と。
私は書店でバイトしてますが、確かに中高校生がちょくちょく山田悠介買っていきますねえ。レジしながら、心の中で
「やめとけやめとけ
って思っちゃったりします。確かにハルヒを読んだ方が遥かに面白いし、大事な物を得る事が出来ると思います。私は夏目漱石の作品等と同じく、ハルヒも100年にも読まれ続ける作品だと思っています。あんな世界に喧嘩を売るような爽快感のある作品はなかなか無いでしょう。


それにしても、年に1000冊近くですか・・・・。絶対に一年に10分の1も読めない・・・。なかなかショックな話ですね。読まなかった本の中にも面白い本はあったでしょうし、本と人との出会いも運命的な物かなと思います。ライトノベルの魅力は破天荒さ、爽快感だと思います。周りの目を気にせず突っ走る青さや痛さが全体的にあると思います。僕はそれらにたいするむず痒さ、憧れ等を求めてライトノベルを読んでるのかなと思います。「ココロコネクト」なんかはまさに痛さや青さがつまっていて、やるせない気持ちになったりしました。
Posted by 蝙蝠 at 2012年10月29日 02:54
『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』は『ゴシック』シリーズと同じく、ファミ通文庫ではなく富士見ミステリー文庫です。

方向性がとっちらかっていて、ミステリ読者にもライトノベル読者にも不評気味だったレーベルであり、いろいろと内実も上手くいかなかったようですが、試みの一つとしては貴重だと思っていますので……記憶してやってください。
ちなみに、レーベルから好みの一冊を上げると、富士見ミステリー新人賞作家が『キリサキ』というSF設定を使った本格ミステリを出していて、これはけっこう良作でした。一冊でまとまり良く、SF設定の導入も「あれ、あれを使ったのか!」という感じで。

ついでに、ファミ通文庫レーベルから、個人的に読んだ範囲の最近作では、『耳刈ネルリ』シリーズがおススメです。
Posted by 十一郎 at 2012年10月29日 04:21
 僭越ながら『砂糖菓子~』の初出は今はなき富士見ミステリー文庫です。
Posted by ぽんたか at 2012年10月29日 11:41
新装版「妖精作戦」で谷川流が後書きで語った「ライトノベル=独立メディア」論を読むべきですな
Posted by   at 2012年10月29日 21:25
20年以上前、「ぼくらの7日間戦争」が映画化されて、それきっかけで、小説(原作)を読みはじめた人がいるはず(現在37歳のわたし)なので、それのようなものだと思っているのですが、どうでしょうか?
Posted by anon at 2012年10月30日 12:56
>重箱の隅つきで恐縮ですがさん
> 十一郎さん
>ぽんたかさん

 うわー、すいません、その通りです! 何で間違えたんだろう。実物持ってるのに。つーか、当日、会場にも持って行ってたのに。
Posted by 山本弘山本弘 at 2012年10月30日 17:28
>山本さん

 まさに偽記憶!?
Posted by toorisugari at 2012年10月30日 18:00
イベント参加したかったのですが時間的に無理で…残念。

とにかく何か読むだけなら年間100冊くらい余裕でも、ラノベオンリーではちとハード過ぎですww
…とは言え「貴方の信じるものが宇宙CQCとかラノベです」の精神があれば大丈夫、その気になりゃあ何だって萌えられますよ♪
『ラノベ部』でも、試験中に化学式見てイキそうになる先輩とかいましたよね?

そんな私の最近のお気に入りは『ベン・トー』と『ヤングガン・カルナバル』です。どっちもテンポが良くてサービス満点で、読んでてメチャクチャ楽しい。
水野先生の『ブレイドライン』がサクッと打ち切りになっちゃったのは「努力・友情・勝利で世界を危機から救う」というあまりに古典的な物語の枠に囚われ過ぎたせいだと思います。ストーリーなんかうっちゃって、ひたすら人外幼女ママを暴走させておけばもっとダラダラ続けられたんじゃないですかね?(←余計なお世話)

そして、何だかんだ言って「ラノベ=本番の無いエロゲ」という解釈でも大体OKな気もします。
筒井先生の『ビアンカ・オーバースタディ』もそんな勢いでしたが、本編よりも「もうイイ歳(喜寿)で根気が続かないから誰か書いて」等の楽屋ネタの方が面白かったなぁww


それはそうと先生、告知告知!
ハヤカワJコレで待望の新刊『輝きの七日間』がcoming soon☆じゃないですか!
必ずや発売日にGetして、近くの西武百貨店で買ってきた八海山を脳内栞子さんに晩酌してもらいながら楽しませて頂きますっ!
Posted by 活字スキー at 2012年10月31日 00:18
へー、『ビブリア古書堂』って売れてるんですか。人に薦められて第一話だけ読みましたが、「ふーん、それで?」って感じでした。古本には読み継いだ者の歴史があるっていうのは、当たり前だろう!と。ニュアンスは違うけど、山本センセの『神は沈黙せず』でもあったし、スカパーの『武田鉄矢の週刊鉄学』でも、本の紙のシミや、間で潰れた蚊なんかが、これを読んでいた自分の時代を物語っていて、いとおしくなってくるってのに共感したし。

でも失礼ながらセンセの『名被害者・一条(仮名)の事件簿』の第一話も、メフィスト連載のとき立ち読みしましたが、それほど心に引っ掛からず、単行本で二話目を立ち読みして、ようやく買う気になりました。さすがに“部長”に、してやられた(*^皿^*)。『ビブリア~』も二話目読んだら面白かったんだろーかー…

山田悠介氏の本て作者分類だと同じ「や」行だし、よく山本センセの本の横に並んでます。しかもセンセのより、遥かに冊数が多いっ(-_-#)。どれ程のもんか、今度図書館で借りてやろ。でもこの前ちょっと離れた図書館に『リプレイ』見つけたし、『虎よ、虎よ!』もまだ途中なのでした(^_^;)。『トンデモ本?違う~』のお陰で、確実に活字SFに踏み入ってます。
Posted by ギルス at 2012年11月02日 08:23
児童書と聞いて思ったんですが、『地球最強姉妹キャンディ』の
文庫化もしくは新作の予定は無いんですか?
結構個人的に好きなシリーズなんですが・・・。
Posted by ちりやま at 2012年11月04日 13:38
>ちりやまさん

 私もそれは期待しております。

http://hirorin.otaden.jp/e175801.html

>文庫版が出ることがあれば

 コメントですでに書いたので諄くて申し訳ありませんが、山本さん、出版されたら速攻で買わせていただきます。
Posted by toorisugari at 2012年11月04日 14:13
 有名人の名を騙ってコメントを書きこんでいるバカがいたので削除しました。
Posted by 山本弘山本弘 at 2013年05月30日 12:13
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