2012年04月23日

山本弘をめぐるデマ(2)

 プロになってからもいろんなデマを流されたり、本に間違ったことを書かれたりした。
 たとえば『と学会白書vol.1』(イーハトーヴ出版・1997)に、超常現象研究家の故・大田原治男氏が寄稿された「と学会に反論する」という文章である。

 と学会では、非常に高度な問題を扱った場合は、間違いが多いと言われている。と学会会長の山本弘氏は、夢で予知するなどとはトンデモない事であると、以前トンデモ本に載せたことがある。(後略)

 当時出版されていた『トンデモ本の世界』『トンデモ本の逆襲』『トンデモ超常現象99の真相』、さらに自分の小説まで読み直してみたが、僕は「夢で予知するなどとはトンデモない事である」とも、それに近いことも書いていなかった。大田原氏は僕が言ってもいないことに対して反論していたのである。
 この時は「そそっかしい人がいるなあ」という印象だった。だが、その後も続々と同じようなことを言う人が現われた。

 (前略)彼らが「トンデモ学会」という会を発足させた最初の動機は、彼らの著書によれば、「真面目な本が売れないのに精神世界の本がバカ受けに売れている。だから彼らも精神世界の範疇の本を書く」というのである。未知なる分野に対して、それを究明するために著述するのではなく、金儲けのために著述するというのである。
――楓月悠元『全宇宙の真実 来るべき時に向かって』(たま出版・1998)

 そんな「動機」はどの本にも書かれていない。

 山本氏が以前に書いた『トンデモ超常現象99の真相』(P103~104)の中で、飛鳥説によるヤハウェの公転軌道を、地球と全く同じ軌道として、だからこそ「ケプラーの法則」から見ておかしいと記載しているが、あのままでいいのか?(後略)
――飛鳥昭雄『飛鳥昭雄ロマン・サイエンスの世界』(雷韻出版・2000年)

『トンデモ超常現象99の真相』の該当ページには「ケプラーの法則」なんて言葉は出てこない。

 当然、ネット上にもこういう人間はよくいる。たとえば、検索していて偶然に見つけてしまったのが、『神は沈黙せず』のデタラメなレビュー。書かれたのは2007年らしいが、僕が気づいたのは最近である。

またストーリーの構造から言えば、結局主人公の最終到達点は「神がいようがいまいが自分には関係ない」となるのだけれど、これって中盤で主人公が批判している宗教家の考えと同じだと思うんだよね。主人公はこの宗教家に対して激しく神が実在する証拠を要求する。宗教家は終いには「神が本当に実在するかどうかは我々の宗教にとって重要ではない」と言い出す。主人公はこれを聞いて「宗教にとって神こそが何よりも重要のはずなのに、それがどうでもいいとは何事か」と唖然とする。(この辺うる覚えなのであしからず)。

中盤で出てくる宗教家も、主人公の最終到達点もどちらも「神はいてもいなくてもいい」だ。両者が同じことを言っているのに山本は気づいていないのかもしれない。山本は宗教を超常現象やオカルトという側面からしか見ていないからこういうことになる。

宗教の本質はその時代時代の社会規範や経験則の集大成であり、現代の法律や科学が担っている部分にある。オカルト的要素は味付けに過ぎないわけで、その意味で「神の実在性」もさして重要なことではないわけだ。まあ宗教家にストレートにこれを言うと激怒するが、彼らの言うことをまとめれば結局そういうこと(「神は宗教にとって本質ではない」)にならざるを得ない。言い方を変えれば、社会規範と経験則の集合体を「神」と擬人化しているのだから、大事なのは集合体の方であって、擬人化された偶像ではない。大切なのは集合体である「教え」の方であって、偶像の方は実在していようがいまいがかまわないわけだ。

ところが山本の代弁者たる主人公には、宗教家が神の実在性を”どうでもいい”などということは常軌を逸した暴言としか解釈できない。山本弘は疑似科学批判が本業(?)だから宗教をオカルト的な側面からしかみれないのは仕方ないのかもしれないが、その偏狭さが小説家としての能力にも足かせをはめてしまっている。


 はい、『神は沈黙せず』を読んだ方なら、どこがおかしいかお分かりですね。
「神が本当に実在するかどうかは我々の宗教にとって重要ではない」などと主張する宗教家なんて、この小説には出てこない!
 当然、主人公が「宗教にとって神こそが何よりも重要のはずなのに、それがどうでもいいとは何事か」とか「常軌を逸した暴言」などと思うくだりもない。そもそも主人公が宗教家に対して「激しく神が実在する証拠を要求する」場面などない。7章で主人公がオカルト信者や宗教関係者に問いかけた質問は、「神が実在するなら、どうして悪がはびこるのでしょう?」というものである。神が実在する証拠など要求していないのだ。

 ちゃんと間違いを指摘してくださっている方もいた。
http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20080924/1222297593

 まあ、僕も小説のストーリーを誤って記憶していることはよくある。しかし、長々と書かれた『神は沈黙せず』批判の主要な論拠が、小説の中に存在しないというのは、あまりにひどいんじゃないだろうか。「この辺うる覚えなのであしからず」と書くぐらいなら、該当箇所を確認するぐらいの手間をなぜかけない?



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この記事へのコメント
>僕は「夢で予知するなどとはトンデモない事である」とも、それに近いことも書いていなかった。

その後、「トンデモノストラダムス本の世界」では書くけどね。

「夢をみるだけという簡単な予言方法で呆れ果てた」って。
案外どこかの雑誌の記事かなんかで同じこと書いたことがあるんじゃない?
Posted by 白牙 at 2012年04月23日 20:16
>白牙さん

『トンデモノストラダムス本の世界』および続編の『トンデモ大予言の後始末』を読み直してみましたが、「夢をみるだけという簡単な予言方法で呆れ果てた」なんて文章が見当たらないのですが? いったい何ページ目でしょうか。
 そもそもノストラダムス本の著者で「夢をみるだけという簡単な予言方法」の人って、思い当たらないんですが。それに僕は、「夢」は「見る」と表記します。決して「みる」とは書かないはずです。
 もしかして、あなたの偽記憶ではないですか?
Posted by 山本弘山本弘 at 2012年04月29日 16:53
『神は沈黙せず』について間違ったことを書いてた奴、反省してるのかと思って見に行ったら、

>山本弘が俺の「神は沈黙せず」のレビューを評価してくれた!(別な意味で)

 と、浮かれてやがりました(笑)。僕に注目されたのが嬉しいらしいです。案の定、間違ったことを書いたことに関する反省も訂正もまったくありませんでした。
 それどころか、僕が「長々と書かれた『神は沈黙せず』批判」と書いたことだけを根拠に、「他のエントリも読んでるんじゃないの?」とか妄想をめぐらせてました。俺が山本弘に注目してるんだから山本弘も俺に注目してるはず……とでも思ってんのかな。今回はたまたま検索しててひっかかっただけで、アンチのブログをこまめにチェックするほど、作家は暇じゃないんだけど。
Posted by 山本弘山本弘 at 2012年04月29日 17:33
山本先生、こんにちは。

「夢で予言するのはトンデモない」という内容についてですが、「トンデモ本の世界」140ページにある広瀬謙次郎「ヘンリー大王とヤマト救世主(メシア)」のことではないでしょうか。

以下引用

しかし広瀬氏の予言の方法はあきれ果てたものである。夢を見るという実に楽な方法なのである。修行もいらない、資本もいらない、あやしげな古文書を解読したと称した後に原典を持った学者から誤りを指摘される恐れもない。多少、説得力に欠ける気はするが、信じる人にとってはどうでもいいことである。

引用ここまで。

でも、これ山本先生じゃなくて藤倉氏が書いた文章なんですよね……。自分も「夢で予言するのはトンデモ、みたいな文章を見たことあるはず」と思って調べたらコレですよ。確認しないと駄目ですね。

以下は余談ですが、SF秘密基地では「シュレディンガーのチョコパフェ」が5つ星、「メデューサの呪文」が4つ星でしたが、僕は「チョコパフェ」を見ても「うーん、意味わかんね(失礼)」、「メデューサ」は「おお、山本先生の短編ではこれが一番おもろい」でした。
SFをあまり読んだことがない僕だと、SFファンやSFマニアと感覚が違うのかなあと思います。
ちなみに長編は「去年はいい年になるだろう」「アイの物語」が好きで、「神は沈黙せず」は「うーん、よくわからん(無知)」でした。やっぱり、僕はズレてます(笑)。
Posted by イサム at 2012年04月30日 17:37
白牙さん

 あなたは立証責任(挙証責任、証明責任)て言葉を知らないでしょう?

 あなたが問題提起(犯罪を糾弾?)するなら、あなたは問題があった事実を明確にしなければなりません!

 トロイア文明がないという常識を覆すには、あなたは一つだけトロイア文明の遺物を見つけるだけでいいんです。

 もっと分かりやすく言えば、あなたが「白いカラスがいる!」と言ったって“バ~カ(T◇T)”呼ばわりされるだけです。ただ一匹、白いカラスを捕まえてくるだけでいいのに…

 あなたの100文字程度の言い掛かりのために、書籍二冊も読み返す労力がいるんですよ!! 迷惑千万でっす(`ヘ´#)。

 『詩羽のいる街』読み返し終わったら、『滅亡の星、来たる』読み返すか『謎解き超常現象3(ローマ数字が出力されない…)』買って読むか迷ってたのに、このコメントしたせいで『トンデモノストラダムス~』をオレも読み返さなきゃならなくなったじゃんよー…
Posted by ギルス at 2012年04月30日 20:36
>イサムさん

 おお、藤倉さんの文章でしたか! 自分の文章しかチェックしてなかったから気がつきませんでした。
 つまり白牙さんは、『トンデモ本の世界』に書かれた藤倉氏の文章を、『トンデモノストラダムス本の世界』に書かれた僕の文章だと思いこんでたわけですね。
Posted by 山本弘山本弘 at 2012年05月01日 12:45
 山本先生、初めまして。本もブログもいつも楽しみにしております(高校で新聞部にいた頃、2回ほど作品を紹介させていただきました)。

 メカAGさんのブログ、先程チェックしたら追記されていて「間違いだったと4年前に書いた」とのこと。確かに該当記事では「該当箇所が存在しない」ことは認めていましたが、謝罪するどころか開き直っていました。こんな「訂正」は生まれて初めて見ますよ。
 山本先生はこの4年前の記事をご存じで、でも全く反省や訂正になっていないから「間違ったことを書いたことに関する反省も訂正もまったくありませんでした」とコメント欄にお書きになった、ということでよろしいんですよね。
Posted by セピア at 2012年05月03日 00:51
>自分の文章しかチェックしてなかったから

「自分は自分で書いたことしかチェックしていない」ことをもっとはっきり表明するのが、誤解を解く一つのやり方かもしれませんね。
Posted by 村川順泰 at 2012年05月03日 19:16
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