2012年04月23日

山本弘をめぐるデマ(1)

 以前、こういう文章を書いたことがある。

山本弘をめぐるデマ
http://homepage3.nifty.com/hirorin/dema.htm

 これを書いたのは2004年のことで、この時点でもうずいぶんいろんなデマが流れていた。その後も様々なデマが流れた。多すぎて全部は書ききれないほどだ。

 僕が自分に関するデマに最初に遭遇したのは、1980年代なかばのアマチュア時代にまで遡る。
 僕は1977年に「スタンピード!」で『奇想天外』誌のSF新人賞で佳作になった。本来ならそれをきっかけに本格的にプロ作家としてデビューすべきだったのだが、できなかった。
 作品が認められ、「これでプロになれる」と有頂天になった反面、「次はもっといい作品を書かなければ」という強迫観念にとらわれ、ぜんぜん小説が書けなくなってしまったのである。原稿用紙を一枚書いては気に入らなくては破り、また一枚書いては破りという繰り返しで、ぜんぜん前に進めない。
『奇想天外』にはその後、確か1本だけ短編を送ったと記憶している。自分でもひどい出来だと分かっていて、当然、ボツを食らった。
 その後約10年間、僕は同人誌に年に1~2回、短編を発表する程度だった。同人誌ならさほどプレッシャーがきつくなく、書くことができたのだ。それでも執筆ペースはひどく遅かったが。
 この間、商業誌に何か原稿を送ったのは、80年代の前半、正確に何年だったかは忘れたが、『SFマガジン』の新人賞に応募して落選したことがある程度だ(ちなみに、その時に書いた話を大幅に改稿したのが、『アイの物語』に収録された「ブラックホール・ダイバー」である)。他には、『ファンロード』によく投稿してたのと、『SFマガジン』の読者投稿ページ「リーダーズ・ストーリイ」にショートショートを何度か送ったぐらい(ちなみに2回載った)。
 そうそう、『アニメック』が『ガンダム』論を募集した時に、ニュータイプをラマルキズム的新人類と位置づける架空理論「あなたもニュータイプになれる……かな?」を書いて送ったら入選したっけな(1980年12月号)。
 だが、当然、そんなものはプロになるための活動ではない。あくまでアマチュア活動である。
 この時期、僕はプロになるための活動をほとんど何もしていなかった。モラトリアムというやつである。
 1988年、『ラプラスの魔』(角川スニーカー文庫)で、ようやくデビューを果たせた。思えば長い回り道だった。

 後になって知ったのだが、80年代のSFファンダムでは「山本弘が雑誌に作品を発表できないのは、不穏当な発言をしたのでSF界から干されたからだ」というデマが流れていたのだ。
 初めて耳にした時はびっくりした。教えてくれたのは同じ同人誌『星群』に所属していた年長のSFファンである。その人は完全にそのデマを信じていた。「いや、そんなことないですけど」と否定したら、「いや、君は知らないだろうけどね……」と、わけ知り顔で説明しようとされたのには参った。
 干されてる本人が干されてることを知らないなんてことがあるか!
 そもそも、作品を送ってないのに、どうやって干されるっていうの? そんなの論理的に不可能だろう。
 他にも何人もの人から同じ話を聞かされた。関西だけではなく、関東のファンダムでも広がっていたようだ。みんなそのデマを信じていた。中には「複数の人から聞いた」という理由で信憑性を覚えている人もいた。複数の人が言ったから正確というわけでもないだろうに。
 そして当然のことながら、その中の誰も、「不穏当な発言」とは何なのか、僕がどこでそんな発言をしたのか、どこから流れてきた話なのかを言えなかった。(今なら「ソースキボンヌ」とか言うところだ)
 SFファンだからといって、思考が論理的というわけではないのである。

 まあ、当時から僕はそういうキャラとして定着していたんだろう。『星群』の合評会(会誌が出た後、必ず作品を批評する会が開かれた)で、みんなが慣れ合いで当たり障りのない感想を述べ合っている中、僕だけが他の人の作品をずけずけと批判したりしていたからだ。一度、あまりにひどい作品があったので、「何でこんなレベルの低い作品を掲載したんですか!?」と、編集長に食ってかかったこともある。
 今から思えば、そもそも同人誌に載るアマチュアの作品がそんなに傑作ぞろいのわけがないのだから、大人げない態度だったとは思うが。
 誰が最初にデマを流したのかは、もちろん確かめるすべはない。誰かが「山本ってああいうことを言うからSF界から干されたんじゃねーの」と冗談で言い出し、それがいつのまにか事実として定着したんじゃないか……という気がする。

 ちなみに『奇想天外』の新人賞でいっしょに佳作になった一人が新井素子さんである。授賞式で初めてお会いした時はまだ高校2年生で初々しく、「この子があんなすごい小説書くのか!」と驚いたものだ。
 その後、足踏みしている僕を尻目に、新井さんは『いつか猫になる日まで』『星へ行く船』『ひとめあなたに…』『グリーン・レクイエム』『二分割幽霊綺譚』などの傑作を次々に発表、たちまち人気作家となる。当時のSF界ではアイドル視されていて、ゼネプロが吾妻ひでおデザインの新井素子メタルフィギュアを出したこともあるほど(僕も買ったけど、どこかに行っちゃった。残念)。若い読者からは「素子姫」と呼ばれていて、『ファンロード』が「素子姫特集」を組んだこともある。
 僕も新井さんの作品の大ファンで、『…絶句』あたりまではほぼ全作品を読んでいた。中でも、地球最後の日々の人間模様を描いた『ひとめあなたに…』は、今でも個人的に新井さんの最高傑作だと思っている。復刻されているので、ぜひお読みいただきたい。チャイニーズスープ!

 もっとも、僕はずっと京都に住んでいて、ぜんぜん新井さんにお会いする機会などなく、遠くから片思いしているだけたった。だもんで、結婚されたと聞いた時にはショックだった……。
 てなことを書いて『ファンロード』に投稿したら、それが後で「山本弘は新井素子に告白してフラれた」というデマに発展していた(笑)。してねーよ! 授賞式の時以来、10年以上、顔を合わせてもいないから。



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この記事へのトラックバック
そんな事があったんですか。
二人の京都人【作戦報告書 ~お笑い部隊“毅”チーム~】at 2012年04月25日 06:33
この記事へのコメント
人に歴史ありですねぇ…(しみじみ)

>「次はもっといい作品を書かなければ」という強迫観念にとらわれ、ぜんぜん小説が書けなくなってしまったのである。

>同人誌ならさほどプレッシャーがきつくなく、書くことができたのだ。

自分なりのペースを一度確立させたクリエイターは、本当の意味で強い人間だと思います。

>。『星群』の合評会(会誌が出た後、必ず作品を批評する会が開かれた)で、みんなが慣れ合いで当たり障りのない感想を述べ合っている中、僕だけが他の人の作品をずけずけと批判したりしていたからだ。

何だか慣れ合いという「空気」が出来てしまったようですね。はっきり思ったことを口に出すのも、大切なことなのに…もし山本さんが「大人げない態度」とご自身を分析なさったのなら、ひょっとしたら言葉の言い方の問題だったのかもしれません。同じ「退いて欲しい」という意味でも「退いてください!」と「横を通ります失礼します」では一言の受け止められ方が違ってきますし…話として的確か、疑問なことを書いて失礼しました。

>僕はずっと京都に住んでいて、ぜんぜん新井さんにお会いする機会などなく、遠くから片思いしているだけたった。だもんで、結婚されたと聞いた時にはショックだった……。

衝撃の黒歴史?でも、新井素子さんとご結婚なされていたら、(今の)真奈美さんもそして美月さんも存在しないことになってしまうので勘弁してください。

…色々詰合せて書いて長文になってしまいました。やはり歴史は長いということで…
Posted by 村川順泰 at 2012年04月23日 15:47
 デマといえば、かつて自分もTFに関する事でデマの有無を山本さんに伺った事がありましたっけね。
 あの頃の掲示板の書き込み、まだ残ってるかな~と思い検索してみたら、残ってました。
 過去の事を蒸し返すのは……とは思いましたが、もう六年経ってますし、知らない人に「こういうデマがあった」と知ってもらった方が良いかと思い、長文になりますがこちらにコピペ。

(投稿日:2006年 5月30日(火)16時19分2秒)

(TFはバカアニメ、みたいな話題があり)

(前略)
※ 「TFはバカアニメ」といえば…、
“熱烈なTFファン”だと誤解されている山本弘が、実は『TFはバカアニメとして最高!』という姿勢の人間であり、TFもTFファンも徹底的に見下していると知って、ショックを受けたことがあります。
「あんなの、本気になって見るもんじゃねぇだろ。」と言い放ち、《こんなのに必死になってるなんて、あきれはてたよ。バカじゃねえのお前ら?》…と言わんばかりに、ため息をついてましたから…。
 いつの日か、「彼はTFファンだ」という誤解がとけて、「なぁんだ、ホントは“敵”だったのか。」と認識される時が……………来ないでしょうね……。
(後略)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 この後、
「何と、そんなけしからん奴だったとは・・・彼奴のTF同人誌、買わなくてよかった(笑)」
「何か共感できそうでできない部分にはそんな事実があったみたいです 」
 などとコメントが書かれる。
 自分(塩田)は書き込んだこの人に「それは事実だったのか。実際どういう状況だったのか」と尋ねると、以下の返答が。

(投稿日:2006年 6月 6日(火)06時58分22秒)

 もう15年以上も前になります。
 たしか、コミケ帰りのことでした。
 TF関係の連中がいつのまにか群れてきて、そのまま大型喫茶店へとなだれこみ、興奮さめやらぬまま、友人知人と熱く語りあっていたときです。

 彼、山本弘が、いきなり話しに割り込んできました。
 当然、こちらは割り込みの理由を聞きますが、答えません。
 なおも聞くと、あるTF同人誌(←私とは無関係の本です)を 私がほめたたえていたのが聞こえたため、その同人誌の関係者かと思い込み、文句を言ってやろうと、話に割り込んできたそうです。

(なにやら、その同人誌サークルと因縁があったそうです。
 もちろん、彼の主観では「俺は完全なる正義」でしたが。)

 私が、(突如として割り込むわ、理由は言おうとしないわ、言ったら言ったで こちらと無関係の私怨だわ、…などなどの不満はグッと飲み込んで、)そのサークルの動向と、同人誌の内容は、混同するべきではないでしょう、内容はこれこれこういう理由で賞賛に値しますよ…、と申し上げたところ、
一方的に話を打ち切ろうとし始めました。

 勝手に割りこんで来ながらそれかい!と思いながら、なおも私が話を続けようとしたところ、かのセリフ「あんなの、本気になって見るもんじゃねぇだろ。」が出たのです。

------------------------------------------

 当然ですが、以上のやりとりを録音していたわけではありませんから、証拠はなにもありません。
 そして人間とは、「自分の足を踏まれたことは 一 生 覚えているが、他人の足を踏んだことは5秒で忘れる」生き物です。
 仮に彼が、「いっさい記憶に無い。」「言ってない。」と主張したなら、どうにもなりません。

 (さらに言えば、人間は「エライ人に弱い」生き物でですから、彼が「言ったとしても、それでも俺が正しい」と言えば、正しくなります。
 ほら、イッパツマンのエンディングでも歌ってるでしょ、「エラきゃ黒でも白になる♪」って(笑))

 ただ、
 彼が、「泣きもすれば笑いもする、赤い血が流れている『人間』」を、まるで『実験動物』を見るかのような目で『観察』し、あざ笑い、悦にいっていることは、 ベストセラー書籍として、証拠が残されています。
(「トンデモ本の逆襲」にて、本物の精神病患者をあざ笑って喜んでいるのを見たとき、私の嫌悪は決定的なものとなりました。
 …とは言え、それに異をとなえたのは、知る限りでは 蛭児神 建・著「出家日記」だけです………素敵な世の中です。)
(後略)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 さすがにここまで書かれると、彼の言ってる奴が本当に山本氏なのか疑わしく思ったので、この後、自分が上記の意見に反論。
 そのあとこの事を山本さんにメールにて伺い、この発言に対する反論をメールでいただき、その事を掲示板に書き込みこの件は終了。

 当時から、この人の思い込みの勘違いだろうとしか思えんかったのですが、改めてコピペしてみても怪しさ大爆発。
 そもそも証拠が無いのなら、その言いがかりつけてきた奴が山本さんかどうかわからんのに「本人だ」と言うのは、名誉棄損だろうに。
 ひょっとしたら、同姓同名の別人だったんじゃなかろうか。加えて、以前より山本さんの事があんまり気に入らなかったもんだから、こういう事を無意識にでっちあげてしまった、とか。 
 それに、「証拠はない」などと言ってるところで、本人かどうかの根拠はないだろうに。無責任だなあ。
 こういう事はすべきでないと、この過去の出来事から改めて実感した次第です。
 長文失礼。
Posted by 塩田多弾砲 at 2012年04月24日 02:46
>「山本弘は新井素子に告白してフラれた」というデマに発展していた(笑)。

むきになるところがますます怪しい!(笑)とか!

というのは冗談として、本人が否定しても無駄なんでしょうねえ…。
先生もそれは重々分かってるでしょうから、
「僕は否定した 以上」
程度のニュアンスとは思いますが。

でもファンロードのあの漫画は対面であんなこと言ってるから、「誤解を招く描写だったかも」程度にはしょうがないんじゃないでしょうか。
Posted by ハーイ・ハー at 2012年04月24日 18:35
>塩田多弾砲 さん

 ああ、ありましたねえ、そんなデマも。もうすっかり忘れてましたけど(笑)。
 僕自身がTFファンなのに、ファンを見下すわけありませんよ。1987年にTFの同人誌出してるし、カバヤのTFガムを買い漁ってたし、『トランスフォーマー・ザ・ムービー』のビデオも日本で発売される前に英語版を買ってるし(そう言えばあのビデオ、志水一夫さんに貸したままだった……)、LDボックスも買ったし、作中で何度もTFパロ入れてたりするし、『山本弘のトワイライトTV』の中でもTFの魅力を解説してるんですがねえ。去年のSF大会でもTFの企画に出たし。
 今も『プライム』見てますけどね。
 最初、誰かが僕の名前を騙ったのかとも思ったんだけど、2006年の15年以上前って言ったら、作家デビューして間もない頃で、と学会もやってなくて、ゲーム業界以外ではまだほとんど無名だった頃ですね。誰かが山本弘のふりをする必然性ってないですよね。
Posted by 山本弘山本弘 at 2012年04月29日 17:20
>山本弘様

 何度読み返しても、「件の問題行動した人物が山本氏である根拠が希薄」としか思えんです。とはいえ、この程度でご本人に問い合わせした自分も同じ穴のムジナですが。

 デマついでに。アンチのHPだったと思いますが、新井素子さんに関しては「(山本弘は)新井素子に『あなたは僕の初恋の人に似ている』と初対面で口説きフラれた」といった事を目にした事があります。
 これ聞いた時、マジかと一瞬疑ってしまいました(←無礼モン)。けど、仮にこれが事実だとしても、ファンが憧れてた人の前に出たら舞い上がって変な事言ってしまうもの。それくらい別に良いじゃないか。こいつらはそれすらも許さず、もしくは笑いものにするのか……と、きわめて疑問でした。こいつら全員宇宙魚に食われろっつーの。

 しかし、こないだ本棚整理してたら「ひでおと素子の愛の交換日記」全三巻が出てきたので、ちらっと読んだら、面白くてつい全部読んでしまったですね。
 下手なラノベのキャラよりも、素子さんご自身の方がずっとかわいくて萌えるという。つーか、中の「あずまひでお対あらいもとこ」なコーナーが大笑いでした。
 当時はヒロイックファンタジーで少女戦士げなのに夢中だったので「扉を開けて」が好きでしたねー。

「プライム」は、今のところアドリブ控えめなので安心して見ておりますが、OPとED、ついでに余計なミニコーナーがちょっと……。音仏家コントみたいなの、ほんとに必要なんだろうか。
Posted by 塩田多弾砲 at 2012年04月29日 19:14
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