2012年03月08日

東野圭吾『歪笑小説』


東野圭吾『歪笑小説』(集英社文庫)

 いやー、東野さん、ここまで書いちゃっていいんですか(笑)。

 以前から「超長編小説殺人事件」「超税金対策殺人事件」など、小説の世界を題材にした短編をいろいろ書いてきた東野さん、今回の本も小説界を舞台にしたユーモア短編集。主人公は毎回変わるけど、登場人物は共通している。
 これはあれだ。唐沢なをきの『マンガ極道』! あれの小説版と思えば間違いない。あそこまで毒は強くないけど、小説界の内情をデフォルメしてネタにしてるもんで、読みながら笑えるやら冷や汗が出るやら。

 とりわけ「小説誌」という話がヤバい。小説誌の編集部を見学に来た中学生が、編集者に鋭いツッコミを入れまくる話。おそらく一般読者は知らないであろう小説誌の内幕をずいぶんバラしちゃってる。僕も小説誌に連載してるから、読みながら顔がひきつっちゃいました。いや、確かにその通りなんだよ! その通りなんだけどね! すいません!
 しかもこれ、『小説すばる』に載ったんだよなあ。いいのか、これ。原稿を渡された編集者の顔もひきつったと思うが。

「職業、小説家」という話もいい。娘が新人作家と結婚すると言い出したもので、不安になる父親の話。小説界のことを何も知らない父親の視点から、小説家というのがいかに危うい職業であるかが描かれる。
 あー、これも本当にその通りだよ。第三者の目から冷静に見たら、小説家ってこうなんだよなあ。僕の妻の父、よく娘の結婚を承諾してくれたと思うよ(笑)。

「夢の映像化」は、自作が初めてドラマ化されることになった作家が、最初は喜んでいたものの、大幅に改変されて原作とかけ離れたものにされてしまうという話。これも僕にとっては他人事じゃありませんでした(笑)。

 他にも、初めて書いた小説が文学賞の候補になったサラリーマンの葛藤を描く「最終候補」、新たな文学賞をめぐるドタバタ「文学賞設立」、売れない作家を何とか売ろうとする編集者の作戦が空回りする「戦略」など、どれもいかにも実際にありそうなというか、似たようなことは現実にあるよね、という話ばかり。 笑って読みながらも、同業者として胸がちくちく。あー、いたたたた。
 小説が好きな人なら面白いと思う。小説家に対する夢が壊れるかもしれんけど(笑)。



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この記事へのコメント
『歪笑小説』とは関係ないコメですいません。読んでないもんで。

>『マンガ極道』
検索したら正しくは『まんが極道』ですね。

山本先生は普段から他人の小説読まれることが多いと思いますが
自分は読むのが遅い方です。速読ってプロ作家から見てどうなんでしょうか?
Posted by karat at 2012年03月10日 15:28
>山本さん

>僕の妻の父、よく娘の結婚を承諾してくれたと思うよ(笑)。
 真奈美さんのお父様が、懐と理解力の深い方だったということでしょう。素晴らしい人間力!?
というより、真奈美さん自身(「去年はいい年になるだろう」で書かれていましたが)一人称が「オレ」になったりガンダムファンだったり戦闘機に詳しかったりと、既にオタクだったので大丈夫だったのでは。

>「夢の映像化」は、自作が初めてドラマ化されることになった作家が、最初は喜んでいたものの、大幅に改変されて原作とかけ離れたものにされてしまうという話。これも僕にとっては他人事じゃありませんでした(笑)。
 …MM9?

>小説が好きな人なら面白いと思う。小説家に対する夢が壊れるかもしれんけど(笑)。
 ……夢を壊してベストセラー??

あと突然すみません、ハンドルネームを変えます。
toorisugari →村川順泰
Posted by toorisugari →村川順泰 at 2012年03月13日 16:01
とりあえず「虚無僧探偵ゾフィー」を読んでみたいです。
Posted by 妄想竹 at 2012年03月14日 14:10
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