2012年02月26日

「『SFマガジン』を創刊号から読もう」(報告)

 先日告知したイベント、無事終了いたしました。客の入りは「女ターザン」の回より多かったです(笑)。お越しいただいたみなさん、ありがとうございます。

 ものすごく濃い人が来て「そこ間違ってるぞ」とツッコミ入れられたらどうしようかと思ってたんですが、そんなことはありませんでした。やっぱり60年代の『SFマガジン』を読んでる人はほとんどいないようです。
 有名な作品については、読んだことがあるかどうか観客に挙手してもらったんですが、驚いたことに、シェクリイの「危険の報酬」でさえ、読んでた人がほとんどいませんでした。確かに今、手に入りにくいからなあ、シェクリイ。 アメリカのテレビ放送黎明期に書かれた作品ですが、今読んだ方が面白いと思います。
 クリス・ネヴィルの「ベティアンよ帰れ」も、やっぱり読んでる人が少ない。一時は「アルジャーノンに花束を」と並ぶ名作だったはずなんだけどねえ。
 あと、「創刊2号に中曽根康弘氏(当時は科学技術庁長官・国務大臣)の祝辞が載ってた」とか「安部公房氏の作品が『SFマガジン』に載ってた」とか「筒井康隆氏は弟の作品の方が先に掲載されてた」とか「小松左京氏の『地には平和を』は第一回のSFコンテストで落選してた」とか「光瀬龍氏は東宝怪獣映画『マグラ!』のノヴェライズを書いてた」とか、ちょっとしたトリビアでいちいち「へぇー」という声も。うーん、やっぱりこういうことは語り継がなきゃだめなんですかね。

 個人的には、僕がすごいバカSFだと思ってる作品群──バンクスの「電送人間」とか、ドニェプロフの「むらさきの女」とか、ダンセイニの「電離層の幽霊」とか、グリンネルの「生きているボロ」とか、ハミルトンの「樹のごときもの歩む」とか、海野十三の「宇宙女囚第一号」とかで、お客さんがきっちり受けていたのが嬉しかったです。いやあ、バカでいいよハミルトン!
 逆に紹介が難しいと感じたのは、“せつない系”のお話。エムシュウィラーの「ベビイ」とか、パジェットの「黒い天使」とか、クリストファー・ヨウドの「クリスマス・ツリー」とか、アーンダールの「広くてすてきな宇宙じゃないか」とか、どれもいい話なんだけど、あらすじだけ語っても魅力を伝えにくいんですね。
 サスペンス系の作品では、ダニエル・F・ガロイの「プライアブル」。宇宙船内で連続殺人が起きるSF版『そして誰もいなくなった』。何とか復刻できませんかね、これ。埋もれさせるのは惜しい。
 あと、ストルガツキーの「最初の試み」やスタージョンの「少数報告」のように、今となっては科学的に否定されていて成立しなくなった話もいろいろ。ロソホバツキーの「砂漠の再会」も、アイデアは抜群に面白いんだけど、科学的に無理がありすぎるから、今のSF作家は書かないでしょうなあ。
「今となっては読めない話」と「今となっては書けない話」が多いことを痛感しました。

 今回の企画のために、バックナンバーをいろいろ読み返してたんですが、やっぱりキャサリン・マクリーンやキャロル・エムシュウィラーが面白いことを再確認。
 あと、昔から不思議なんだけど、何でアルジス・バドリスの『無頼の月』は単行本になってないんですかね。謎。

 今回は創刊号から50号まででしたが、4月に続きをやります。今度は51号から100号までを取り上げる予定。


タグ :SF

同じカテゴリー(PR)の記事画像
「今日も科学はエキサイティング! 科学雑誌からSFネタを探そう!」
「わが青春のSFエッチトーク!」
新刊『プラスチックの恋人』
伊藤ヒロ×山本弘トークLive「僕らはエロい小説が書きたい!」
BISビブリオバトル部4 君の知らない方程式
夏コミ直前情報
同じカテゴリー(PR)の記事
 「オタク映画を力いっぱい語ろう!」 (2018-04-17 19:13)
 『リジー&クリスタル』文庫版・解説は菊地秀行先生! (2018-03-31 22:28)
 スーパー!ドラマ オーセンティック海外ドラマ研究室 『ミステリーゾーン』 (2018-03-17 21:25)
 菊地秀行×山本弘「妖魔饗宴~特撮レトロSF&ホラードラマを語り倒す」 (2018-03-17 19:55)
 今日も科学はエキサイティング! 科学雑誌からSFネタを探そう! Part2 (2018-03-17 19:27)
 「今日も科学はエキサイティング! 科学雑誌からSFネタを探そう!」 (2018-02-09 20:02)

この記事へのコメント
山本さん、

>うーん、やっぱりこういうことは語り継がなきゃだめなんですかね。

ごもっともだと思います。私はなかなか行けなくて申し訳ないのですが、この様なイベントはガンガンやっちゃうべきかと思います!
…自分でも調べろ、という話かもしれませんが。
Posted by toorisugari at 2012年02月26日 16:23
 イベント盛況だったようで、羨まし~。

 オレは雑誌購読ってめったにしないんですけど、継続は力なりですねぇ…。一時期タクティクスからRPGマガジンを毎号購読してましたが、創刊号から持ってる人がいて、全部持っていくなら譲ってあげると言ってくれました。でも膨大な量に断念(-.-;)。手持ちのはRPGマガジン専用バインダーも買って、大切に取ってあります。

 確か『地球移動作戦』連載の時だったかな。読みたくて、図書館でSFマガジンのバックナンバーありますか?と尋ねたら、一年過ぎたら捨てちゃいますと言われ、ビビりました! 捨てるぐらいならオレにくれやあぁ\(T¬T)

 そうそう、お陰さまで『宇宙消失』読みました。『祈りの海』と一緒に図書館で借りたんですが、『キューティ』読むと不愉快になって落ち込んだり、気持ちの切り替えが大変(ToT)。さすが、魂をガンガン殴りつけてくる…。『百光年ダイアリー』まで読んで『宇宙消失』に乗り替えたら、意外にすらすら読めました。でも期待したほど、バブルやバブルメイカーにページがさかれてなくて残念。『シュレディンガーのチョコパフェ』『夢幻潜航艇』の方が面白かったですよ。
Posted by ギルス at 2012年02月27日 09:57
初めまして、山本弘様

とりあえずハンドルをNとさせてください(由来は言うまでもないと思います)。他にこのハンドルを使っている方がいらっしゃるなら、変更いたしますので、その場合は恐れ入りますがどうかお教えください。

さて、『無頼の月』がなぜ単行本になっていないのかご不審とのことですが、殊能将之氏のブログ

http://www001.upp.so-net.ne.jp/mercysnow/Reading/read0205.html

の2002年5月13日の部分を読めば、あるいは理由を知る手がかりになるかもしれません。
殊能氏が『無頼の月』の原書を読んだ感想が書いてあります。
ここで内容は詳しく述べませんが、

>いやー、読了した瞬間、わたしは「小説というのは実際に>読んでみないとわからないものだ」と痛感したね。まさか>「博士が女に悩みを打ち明ける話」だったとは。

という感想から、ある程度察しがつくかと思います。

山本様がもしこの記事について既にご存知でしたら、どうかお許しください。
最後になりましたが、山本様のブログはいつも楽しく読ませて頂いております。
それでは失礼いたします。
Posted by N at 2012年03月03日 04:56
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。