2011年11月16日

『詩羽のいる街』/飛べないハードルを負けない気持ちで

 山本弘作品の中で、世間的に評価が高いものは何だろう? 疑問に思って、mixiのレビューを元に調べてみた。

・レビュアー数が20人以上
・小説のみ

 という条件で、満足度の大きい順に並べてみると、こういう結果になった。

●アイの物語 (文庫)
 平均 4.63点(74人)

●詩羽のいる街
 平均 4.49点(104人)

●サーラの冒険6 やっぱりヒーローになりたい! (文庫)
 平均 4.43点(23人)

●アイの物語
 平均 4.35点(198人)

●神は沈黙せず
 平均 4.27点(180人)

●神は沈黙せず〈下〉(文庫)
 平均 4.13点(43人)

●神は沈黙せず〈上〉(文庫)
 平均 4.00点(69人)

●MM9
 平均 4.00点(84人)

●地球移動作戦
 平均 3.97点(37人)

●アリスへの決別 (文庫)
 平均 3.96点(27人)

●審判の日
 平均 3.95点(20人)

●MM9 (文庫 )
 平均 3.93点(45人)

●闇が落ちる前に、もう一度 (文庫)
 平均 3.90点(30人)

●去年はいい年になるだろう
 平均 3.83点(42人)

●まだ見ぬ冬の悲しみも
 平均 3.81点(21人)

●シュレディンガーのチョコパフェ (文庫)
 平均 3.81点(42人)

 というわけで、『アイの物語』『詩羽のいる街』『やっぱりヒーローになりたい!』がトップ3で、『神は沈黙せず』『MM9』『地球移動作戦』がそれに続くという結果になった。僕の自己評価とそんなにずれていなくて、ちょっとほっとしている。
 しかし『アイの物語』の場合、文庫の点数は高いけど、単行本と文庫の点数×人数を合わせて平均すると4.43になる。つまり、実質上、トップは『詩羽のいる街』なんである。
『詩羽』は3年前に出た本だけど、今年になってからもけっこうレビューが書かれている。ネットでも検索してみたことがあるんだけど、ブログなどでは「○○さんからすすめられて読んだ」というパターンが目立つ。どうも、口コミでじわじわ人気が広がっているようなのだ。

 どういう話かご存じない方はこちらをどうぞ。

詩羽のいる街

 今度、その文庫版が出ることになった。


 ゲラチェックのために久しぶりに読み返したんだけど、やっぱり面白いわ、これ(笑)。 思わず読みふけっちゃったよ。

 冒頭の、TCGのカード交換会に集まった子供たちの描写からして、実に活き活きしているが、その後もあれよあれよという間に、語り手が詩羽につき合わされていろんな人と出会い、いろんな体験(原理的には可能だけど日常的にはまず起きないことばかり)をするもんで、飽きる暇がない。 架空のマンガ『戦場の魔法少女』『ガールズ・テリトリー』を縦糸として、4つの話がゆるく結びついていて、最終話では、それまでに出てきたあらゆる要素が、街全体をボードとして使った巨大なゲームに収束してゆく……。
 何だこれ。こんなもん何で書けたんだ、3年前の自分?
 頭を抱えた。やばい。今書いてる『輝きの七日間』や『UFOはもう来ない』と比較すると、リアリティも人物描写も話の運び方も、格段に違う。 『詩羽』の方が圧倒的に上手い。
 3年でレベルが落ちてるのを痛感する。

 今のところ『詩羽』が僕の最高傑作であることに何の不満もないし、むしろ誇りなのだけど、これに安住してちゃだめだよなあ。 いつか『詩羽』を超えるものを書かないと。
 でも高いハードルだよなあ。どうすれば超えられるんだ、これ。

 ちなみに文庫版の解説は有川浩さん。なぜか分からない人は『レインツリーの国』を読むように。



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この記事へのコメント
記事のタイトル、これってレイアースですか…?
今偶然にも「アイの物語」中で、「詩音が来た日」読んでます。これが山本さんの一番のお気に入りということですね。
私も制作活動の中で、山本さんと同様のジレンマを抱える事が極稀にあります。そういう時は、一度出来たのだからそこから更に上に行けるはずと自分に言い聞かせたり、同じ活動をしている仲間や周りの人たちに愚痴ってみたりしてます。山本さんなら、その辺は言わずもがなでしょう。
長々と失礼しましたが、山本さんの作品を楽しみにしている者の一人として引き続き応援させていただきます。
Posted by toorisugari at 2011年11月16日 19:18
先程のコメントが大間違いだったので失礼します。「詩音が来た日」ではなく「詩羽のいる街」でしたね。大変申し訳ありませんでした。
Posted by toorisugari at 2011年11月16日 20:12
「詩羽のいる町」は今読んでも確かにおもしろいです。それはなぜかと愚考するに、この小説では「SF的な道具」は完全に封印されている。その制約にもかかわらず、「この世界は良い方に変わりうる。それは根拠のない希望ではなく、ロジックによって変わりうるのだ」という、山本さんのSF小説のテーマが追及されていたからではないでしょうか。小説のSF度が低下するにつれて、一方で「ひょっとしたらコレ、本当にできるのでは」と思えてくる、現実侵食度が高くなるのは面白いことです。
・・・もしや、続編をお考えではないでしょうか?(@∀@)いつ出ても買う準備はできております。
Posted by 九郎政宗 at 2011年11月16日 22:38
サーラはやっぱり評価高いんですね。妖魔夜行がマイナーなのには泣けますが……(涙)。
「詩羽」に関しては内容のおもしろさもさることながら、個人的に作中の妖魔・百鬼のオマージュが当時読んだ時は嬉しかったですね。
百鬼とは設定の違う坂城しじま先生とか、第四話冒頭の「詩羽は作られた都市伝説の存在」とかの会話が妖魔っぽかったりと懐かしさと嬉しさで涙が出たくらいです。
そういえば第一話のBキッズの「カードで正義の妖怪に変身」ってのがありましたが新妖魔の奇骸の設定を連想しました。
この頃から新妖魔の構想があったのかなと読み返してみて思ったりもしました。

今後も山本先生の作品を楽しみにしています。特に新妖魔を楽しみにしています(出ますよね?続き……)
長文失礼しました。
Posted by ドードー at 2011年11月17日 18:22
自分も基本ロリコンですが生真面目なお姉さんも大好物なので、胸も控え目なアイビスたん萌え。そしてKYにも程があるフィーバスさんも好き。
…よってMyベストは『アイの物語』ですね。

こういうランキングって「個人的に好きな作品」と「他人にオススメしたい作品」で違ったりしませんか?
山本先生の作品だと、個人的にはアイや詩羽等のキャラが物語を引っ張っていく系が好みなんですが、人によっては『地球移動作戦』や『去年は〜』のようなSF!てカンジのスペクタクル系の方が薦め易いかな…とか。

そう言えば『ラブプラ…じゃなくて『ラプラスの魔』を、まだ黎明期のファミコンではしゃぎまくってた子供の頃に読んで「モンスターを剣と魔法じゃなくて、サブマシンガンや手榴弾で倒しちゃうの!?」とビックリしたのも良い思い出です。
Posted by 活字スキー at 2011年11月17日 21:20
著者にとって、新しい作品より古い作品を褒められるのは、あまりうれしくないことなのかもしれませんが、わたしは『ラプラスの魔』が好きです。

「冷気」には気づきました。家主のおばさんが大ヒントだと思うんですが。
あと、ウェザートップ館の描写はPC版ゲームのマップに準拠して書かれていますよね?

物語の中でラプラスが敗北するのは、科学的世界観それ自体に根拠付けられているというところで、わたしはこの作品を「SF」と捉えています。のちの山本さんの作品に連なるテーマもいくつもありますよね。
あ、フーディニがえらいかっこよかったです!

いい機会だったので、ついごちゃごちゃと乱雑に書いてしまいました、すいません…。
Posted by すける at 2011年11月19日 00:13
うおっ(>ε<)山本先生に先越されたっ。

自分のやってるグリーブログに、気が向いたら山本作品の感想書いてて、そこそこ貯まってきたから、オレ的山本弘ベスト10でもしたろかな~と思ってたんですが。

はてさて、ぼんやり考えてはいたんですが、オレ的ベストワンは…やっぱりサイバーナイトⅠ三部作かなぁ。親切心や偽善や人間関係にモヤモヤしてたころ、四行原則には人生観を補完してもらった気がするからな~。

そうそう。以前薦めていただいた『堕地獄仏法』の『東海道戦争』、ようやく全部読み終わりました。遅くてすいません(^_^;)『チューリップ・チューリップ』がキレがよくて一番面白かったです。ありがとうございました。

次は『トンデモ本?違う、SFだ!』の影響もあって、グレッグ・イーガンに初挑戦してみようかと思ってます。

あ~、まだ文蔵読みに行ってないなぁ…
Posted by ギルス at 2011年11月20日 13:50
大好きな『詩羽のいる街』が話題になっているので、今さらなのですが……。
11/10 にNHK BS1で放送された【BS世界のドキュメンタリー 世界を翻弄するカネ「お金を持たない生き方」】は御覧になりましたでしょうか。
番組紹介ページ(http://www.nhk.or.jp/wdoc/backnumber/detail/111110.html)

詩羽と同じようにお金を使わずに14年も暮らしているドイツ人女性、ハイデマリー・シュヴァルマーを描いたドキュメンタリーです。
彼女の生活手段は「自分が提供できるサービスの代わりに、物やサービスを受け取る give and take」「住居は招いてくれる知り合いの家を転々とする」といったもので、詩羽の生き方に似ている点が多々ありました。視聴している間「おぉ、リアル詩羽だ。おばあちゃんだけど」とニヤニヤしてました。
山本さんが創作した「お金を使わない生活」が、まったくの夢物語ではなく、リアリティのある(条件さえ合えば決して不可能ではない)ものだということの証左だと思い、紹介させてもらいました。
もし既にご存じでしたら、失礼しました。
Posted by 末永 at 2011年11月23日 15:13
詩羽のいる街を随分、前に拝読しました。
今でも心の中に強く残っている詩羽のメッセージがあります。
全体的には覚えてないのですが、部分的に肝心なものは残っています。

「すべてのヒトは認知症、何千年も前から知っていたんです。自分がやられて嫌なことは、ヒトにやってはいけない」

人の言葉も本の内容も忘れたり、受け入れられなかったりしますが、詩羽のこのメッセージは思い出すことがあります。
詩羽が居てたしなめられているように思い出します。詩羽は本当に素晴らしいから、素直に聞き入れられたのだと思いました。

今も思い出したのでコメントしてみました。^^
Posted by 小口和宏 at 2011年11月26日 17:15
『詩羽のいる街』、楽しく読ませていただきました!
以前にもハードカバー(ソフトカバー?)で読んでいたのですが、ダレることなくするすると読めましたよ。
そしてなんだか自分が詩羽ネットワークに加わったような誇らしさと幸福感を覚えました。
アニメ・漫画・SFファンである自分は何度もニヤリとさせられたし。

この物語は、自分ではどうしても『ジャンル分け』ができなかったのですが、オビと裏表紙にファンタジーと銘打たれていたので、「ああ、そうだったのか」と感心しております。
いや、ミステリと銘打ったら売り上げ倍増のような気もしますが。
でも、このオビは書店で買うにはちょっと恥ずかしいですね。担当した編集者さんを怒っておいて下さい(笑)。

今度こそ、印税を受け取ってホクホクの家庭を楽しんで下さい(山本先生って「去年は~」のせいで生活が苦しそうなイメージです)。
『トワイライト・テールズ』も楽しみにしています。
Posted by 南雲マサキ at 2011年11月27日 21:00
今日久しぶりに本屋に行ったら、「詩羽のいる街」の文庫版が平積みされていたので驚きました。
最近、本屋チェックをしていなかったことを本当に悔みました。
ハードカバー版も持っていたのですが、とりあえず3冊買いました。(定員さんは親切にも「本当によろしいんですか」と尋ねてくれました)

「詩羽のいる街」は私が今までに読んだ(あるいは見た)フィクション作品(映画やドラマ、アニメ、漫画を含む)のうちのトップ3に間違いなく入ります。
しかも、ずば抜けてます。
読んでる時になぜか涙が出てくるときもあるくらいです。
勝手な話ですが、もはやこの本は自分にとってバイブル的な本です。もう何度読み返したかわかりません。
まだ書きたいことがたくさんあるのですが、キリがないのでこれくらいにしておきます。(本当は布教活動のエピソードも書きたいのですが)

これからも素晴らしい作品をよろしくお願いします。
私も布教活動をもっと頑張ろうと思ってます。
この本が本屋大賞候補にならない世界は間違ってます。(半分くらい本気です)
Posted by aosagi at 2011年12月02日 19:34
そういえばある映画監督が
アクターズスタジオ・インタビューという番組のなかで
「音を消していてもストーリーがわかる映画はいい映画」
なんてことを話してました
あれはいつの回だったかなー
Posted by mnchrm at 2011年12月23日 09:47
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