2011年10月22日

『電人ザボーガー』と『キャプテン・アメリカ』

 長いことブログを放り出していて申し訳ない。今月は前半が死ぬほど忙しかったのである。
 昨日、ちょっと時間に余裕ができたので、梅田でレトロなヒーロー映画を2本続けて見てきた。

『電人ザボーガー』は観客を選ぶ映画だなあ。僕はけっこう楽しんだけど、「何だ、これは!?」と怒る人も多そう。
 まあ、僕も意図的なギャグ(それもしょーもないやつ)が随所に入ってるのが、ちょっと嫌だった。「大男による辱め」とか「オナラでロケット噴射」とか。笑えるんじゃなく、逆に引いてしまう。ギャグが出てくるたびに現実に引き戻される感じがして、映画に没頭できないのである。
 単に監督がしょーもないギャグが好きな人なのか、それとも「真剣にやってるんじゃありませんよ。ふざけてますよ」というサインを発してるのか。後者だとしたら余計なお世話である。『ザボーガー』ってだけで最初からマジじゃないのは分かってますから(笑)。 つーか、『ザボーガー』はそのまんまやるだけで笑えるから!
 ギャグなんか入れなくても、むしろ徹底して大真面目にやった方が、心の底から笑えたと思うんだがなあ。『Gガンダム』とか『プリンセス・ナイン』みたいに。

 でも、いい場面がいろいろあるんだよ。
 アバンの後で主題歌とともに展開されるOPのアクションが、ダサいのに猛烈にかっこいいの。ダサかっこいい。「飛竜っ三っ段っ蹴りっ!」という掛け声にすごく力が入ってる。
 最終決戦に向かうためにマシーンストロングザボーガーが疾走するシーンで、子門真人版の主題歌が流れたのにも大感激。
 クライマックス、ザボーガーとブラックホークが人型→バイク→人型とめまぐるしく変形しながら戦うカットなんか、ちょ~かっこいい。
 ウォシャウスキーの『スピードレーサー』(マッハGOGOGO)とかがOKな人なら、この映画もOKのはず。
 それだけに「ギャグは要らんかったなあ」と思えるのである。

 EDでは旧作のダイジェスト映像が流れるんだけど、「ニコニコ団の恥ずかしいピンクのユニフォーム」「ブル・ガンダーのものすごく目立つ弱点」「巨大ロボの体を垂直に駆け上がるザボーガー」などのシーンが、ちゃんと原典通りだったのには、あきれるやら感心するやら。
 しかし、ブル・ガンダーとかは旧作のまんまなのに、ジャンボメカがああなるとは思ってもみなかったなあ……などと『MM9』書いた人間が言っちゃいかんか(^^;)。

『キャプテン・アメリカ』も良かった。元々、第二次世界大戦中(アメリカが参戦する前の1940年)に生まれた国粋主義的ヒーローなんだけど、その胡散臭い出自を逆手に取って、いい話に仕上げている。
 まず、キャプテン・アメリカになる前のスティーブ・ロジャースがじっくり描かれている。肉体はひ弱だけど、心優しく、正義感は人一倍の純粋な青年。「ナチを殺したいか」と問われ、「本当は人殺しなんかしたくない」と答える。その善良さこそが、超人兵士としての資質なのだと語られる。
 また、超人兵士となった直後のスティーブは、前線で戦ったりなんかしなくて、戦時国債を買うキャンペーンのキャラクターとして利用される。舞台の上でヒトラーをノックアウトしてみせたり、映画に出演したり。
 分かる人なら分かるけど、「ヒトラーをノックアウト」という絵は、1940年の『キャプテン・アメリカ』創刊号の表紙なんである。つまりこの映画では、1940年代のコミックスは、戦意高揚のために創られたフィクションとして位置づけられているのだ。
 あの派手な青いコスチュームも、元は舞台の上で着ていたもの。キャプテン・アメリカは最初、架空のキャラクターにすぎなかったわけだ。
 しかし、前線を慰問に訪れたスティーブは、戦争の現実を目にし、さらに親友が敵に囚われたことを知って、架空のキャラクターであることに嫌気が差し、本物の戦場に身を投じることを決意する。
 しかも戦う相手はナチそのものではなく、レッド・スカル率いるヒドラだ(レッド・スカルは途中でヒトラーと袂を分かつ)。ドイツ人全体を悪者にしないための配慮だろう。
 このあたりの、観客に嫌悪感を抱かせないための気配りの数々、本当に上手い。

 当然、スーパー・ヒーロー映画だから、派手なアクション・シーンもぎっしり。
 ヒドラは現代科学をも上回る超テクノロジー兵器を有している。あのハワード・スターク(トニー・スターク=アイアンマンの父親)に「どうやって動いてるのか分からない」と言わしめるほど。そのハワードも、すでに反重力装置を開発してたりするんである。この映画版では、もしかしてS.H.I.E.L.Dの空中母艦とかもハワードの技術を使ってるとかいう設定なのかな?
 しかし、ニューヨーク万博で新発明をプレゼンするハワードの言動が、息子そっくりなのには笑った。
 笑ったといえば、レッド・スカルが逃亡する際に使ったメカにも爆笑した。トリープフリューゲルだよ! すごいよ! 映像作品にトリープフリューゲルが出たのって、これが初めてじゃないか? この映画のリアリティ・レベルにぴったり合ってて、良い選択だ。
 クライマックスに登場する巨大全翼機も素敵。ホルテンのHo229やH VIIIあたりをごちゃ混ぜにした感じの、これまた「分かってる」デザインなんである。 珍兵器好きの人間には感涙もの。

『電人ザボーガー』は笑って許せる人にしかおすすめできないけど、『キャプテン・アメリカ』は万人におすすめできる。



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この記事へのコメント
>長いことブログを放り出していて申し訳ない。

 自分のペースで更新なされればよろしいと思います。(ごめんなさい偉そうですね)
 それにしても、相も変わらず感想だけで楽しませてくださいます山本さん。御馳走さまです。
Posted by toorisugari at 2011年10月22日 20:42
 またまたご無沙汰しております。
 両方とも大が付くほど好きなヒーローなので、すぐにでも見たいと思っておりますが、最近妙に忙しくなかなか見に行けず。

 ザボーガーは、MIXIのコミュなどで賛否両論のようですが、当時の「ダサさ」も再現してるのなら見たいなと。予告でのザボーガーの変形シーンとか見ると、スタイリッシュになっててかっこいいんですけど、やはり旧作の「変形する時の、ちょっともたっとしたアクション」も良いな……と思うので。
 そういえば、ザボーガーがブーメランカッター投げるとこ。旧版ではちょっともたついてるんですよね。
 現代、どんな風に映像化されたのか楽しみにしたく。
 しっかし、ジャンボメカも出ますか。ならばコンピューターアニマルとかアイバンとかリングイとかも……さすがに無理か。

 キャップも楽しみです。山本さんが「万人におすすめ」と言われるのなら、っつーかそういうおすすめの言葉を言わせるのなら、期待大。
 いや、個人的に「元から戦意高揚のヒーローだし、アメリカ軍とアメリカの正義を推し進めてると誤解されたりしたら、政治的にややこしい事を言われんかな」と心配していたのですが、杞憂に終わって何よりです。
 原作の「アメリカの名を背負っているけど、国家を超え、すべての人々の自由と正義を守ると己に誓っている」という点。
 復讐でも、巻き込まれでも、身近な人々を守るでもなく、自らの意思で正義に身を捧げ、戦いに身を投じた。
 ライダーや戦隊など、昨今の日本のヒーローにはちょっと見られない硬派なとこが好きだったので、そういうところが見られそうで期待大です。
 ただ、できればシールドは「初期は鉄製のスクエアシールド、後記はアダマンチウムとビブラニウムのラウンドシールド」ってのも見たかったですが、さすがにそこまでは無理かなー。

 次の出番は、「アベンジャーズ」の劇場版でしょうけど。ぜひキャップ単体の映画第二弾をつくってほしいなあ。
 味方にバッキーとファルコンが登場し、フリーエージェントのローガンと協力し、ナチスが残した最終兵器「スリーパー」の起動を阻止するため活躍!……みたいなのを凄く見てみたいです。
Posted by 塩田多弾砲 at 2011年10月22日 22:14
「ドイツ人全体を悪者にしないための配慮だろう」は言い得て妙です。原爆がナチス・ドイツの地に投下されなかった経緯もうまく説明しております。

それに引き換え、日本への配慮は・・・

「猿の惑星 創世記」未だに尾を引く、ピエール・ブールの逆恨み。
「ハンニバル・ライジング」の枢軸国出身、レディ・ムラサキ。
「スタートレックIV 故郷への長い道」の反捕鯨的ストーリー。
 :

 嗚呼!
Posted by ばいなりい at 2011年10月23日 00:16
山本先生、こんにちは。私も見に行きました、電人ザボーガー。
私の感想も先生とほぼ同じです。あの変なギャグ(ギャグなのだろうと推測しますが・・・)さえ無ければかなりの高評価なんですが。60点未満が赤点だとすると、65点くらいでしょうか。本編だけだと50点か55点なんですけど、エンディングの映像と子門真人の主題歌でプラス10点と言う感じです。実写版ヤマトよりは、原作に対するリスペクトが感じられました。
上映が始まったばかりの映画ですから、ネタバレになるんであんまり詳しく書けないのが残念ですが、バトルシーンはかっこよかったし、ザボーガーの造形もよくできてたんで、ストーリー(特にギャグ部分)が残念でした。
Posted by カルスト at 2011年10月23日 10:36
おおぅっ、ザボーガーを
「邦画にありがちな『マニア受けする原作を
 愛の無いリメイクで台無しにする』パターン」
だったらどうしようか迷っていた自分には背中を
押された思いが。

上映館近くにないけど頑張って探してきます。
Posted by あくま帽子 at 2011年10月24日 17:40
私もザボーガー見ましたが、印象に残っているのは映画が終わった後の客席の形容し難い沈黙でした。
正直、露骨なギャグと恋愛パートは不要だった気が……。
つくづく、良い所もあっただけに惜しいと思います。
Posted by Rick=TKN at 2011年10月26日 00:08
>トリープフリューゲルだよ!

軍事音痴で分からず、ググってみました。画像がたくさんありました。
こ、これはぁっ! もう実用軍事なんぞではなく、フィクションのために人類の英知が生み出したとしか思えない、その雄姿! 素晴らしいです。
他にも、こんなのがいっぱいあったりするんでしょうか。なんだか、わくわくして、このところは、ちまちまと思いつくキーワードで調べてますが、なかなか「これ!」というものが……。
Posted by K.K@2 at 2011年10月26日 08:05
あくま帽子だったかな……背中押された気分だった
人ですが、観てきちゃいました。

どうやら自分は全力で「許せる」人だったみた
いで、ブルガンダー戦とか「かっこいいから」
が理由で(比喩じゃなく)泣いちまいました。

でも、人を選ぶ映画だというのは確かですね
Posted by ぼうしあくま at 2011年10月27日 12:53
キャップの評価高いですね。

う〜ん…先生の言う通り作りは丁寧だし、お気楽な娯楽作として楽しめない事もないんですが、個人的な感想は「アヴェンジャーズの予告だけで2時間かよ!」

現代ならではの新解釈がもっとあるかと期待半分で観賞してみれば、あまりにも無邪気で時代錯誤的な内容で(3Dで割高だし)、正直ガッカリでした。

アイアンマンもそうですが、今時「独断で悪者ブチのめしてヒーロー面」てアリなんですか?
これなら、我が国が誇る菓子パン男の方が普遍的ヒーロー像として完成度が高い気がします。
愛と勇気しか友達がいない残念系ですがww

最後に、知恵と勇気で未来を切り拓く我らがキャンディの新たな活躍を心待ちにしております。
Posted by 活字スキー at 2011年11月06日 11:35
 両作品とも見ました。
 自分も概ね同感です。

 ザボーガーに関しては、確かにギャグは要らんかったですね。あれらしょーもないギャグを無くし、どシリアス(シリアス、でなく)になおかつ暑苦しい作風にしたほうが、かえって良かったんじゃないかと。

 ストロングザボーガーのマシーン形態、それにマシーンホーク……の平成版、ブラックホークとホークロボが出てきたのは良かったです。
 ついでに言うと、悪乃宮以上にあの議員の方が悪人ですよね。大門は奴に飛龍三段蹴りを食らわすべきだったかと。

 キャプテン・アメリカに関しても、面白かったです。
 スクエアシールド、原作コミックのコスチュームとともに大活躍。こういう使い方するとは、予想外で良かったなー。
 最初からヒーロー……ではなく、血清打つ前、打った直後、お飾りのヒーローとして活躍し、実際に作戦に参加、以後、正式に部隊に編入し……と、段階を踏んで、本当の意味でのヒーローになっていった描き方もいい感じです。
 おっしゃる通り、原作の国粋主義的・戦意高揚キャラとしての出自を、「劇中における架空キャラ」として描いているのもまたうまいですし。
 
 アベンジャーズのリーダーゆえか、映画「アベンジャーズ」の前日談的な話でもありましたね。
 このキャップが、アイアンマンやソーやハルクとともに、いかな活躍をするのか楽しみです。
Posted by 塩田多弾砲 at 2011年11月06日 17:35
トリープフリューゲル出ましたか!
次は是非ミドガルド蛇をお願いしたいものです。

ムカデ砲、曲射銃、潜水空母、飛行戦車、パンジャンドラム、、、
珍兵器だらけの戦争映画が見てみたい。
Posted by 兵器爺兵器爺 at 2011年11月24日 05:03
ザボーガーの名台詞を某サイトに投稿してください。
Posted by UHI at 2011年11月24日 12:45
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