2010年10月29日

『逃げゆく物語の話』




大森望・編
ゼロ年代日本SFベスト集成〈F〉 逃げゆく物語の話』
創元SF文庫 1000円+税 発売中

「西暦2000年を境に日本SFは不死鳥のように復活し新たな春を迎えた。新しい動きや時代の空気を実感していただければさいわいです。本巻には、現代を舞台にした“すこし・ふしぎ”系の物語を軸に、幻想小説や寓話系のものも含め、時間を扱ったSFや、世界の成り立ちをめぐる奇想小説を収録しました。現代SFの豊かな広がりと多様性を示す12編をお楽しみください。」
──大森望

【収録作品】
恩田陸「夕飯は七時」
三崎亜記「彼女の痕跡展」
乙一「陽だまりの詩」
古橋秀之「ある日、爆弾がおちてきて」
森岡浩之「光の王」
山本弘「闇が落ちる前に、もう一度」
冲方丁「マルドゥック・スクランブル“-200”」
石黒達昌「冬至草」
津原泰水「延長コード」
北野勇作「第二箱船荘の悲劇」
小林泰三「予め決定されている明日」
牧野修「逃げゆく物語の話」

 編者である大森氏の言葉通り、日本のSFは「冬の時代」と呼ばれた90年代の沈滞を吹き飛ばし、この10年で急激な発展を遂げています。多くの新人作家が登場する一方、作品の質も向上、多くの傑作が生まれています。これはその現代日本を代表するSF作家の短篇を集めたアンソロジーです。
 おかしな超能力を持つ子供たちが巻き起こすドタバタ(恩田陸「夕飯は七時」)、人類が滅亡に瀕した未来を舞台にしたオーソドックスなロボットもの(乙一「陽だまりの詩」)、空から落ちてきた女の子の形をした爆弾とのデート(古橋秀之「ある日、爆弾がおちてきて」)、ボイルドとウフコックのコンビが活躍する『マルドゥック・スクランブル』の前日譚(冲方丁「マルドゥック・スクランブル“-200”」)、太平洋戦争中に北海道で発見された奇妙な性質を持つ植物の記録(石黒達昌「冬至草」)などなど、コメディありアクションあり泣かせる話あり、個性あふれる作品がいろいろ。巻末の大森氏による解説「ゼロ年代日本SF概況」も参考になります。

 上巻の『ゼロ年代日本SFベスト集成〈S〉 ぼくの、マシン』も同時刊行。こちらも傑作ぞろいです。

野尻抱介「大風呂敷と蜘蛛の糸」
小川一水「幸せになる箱庭」
上遠野浩平「鉄仮面をめぐる論議」
田中啓文「嘔吐した宇宙飛行士」
菅浩江「五人姉妹」
上田早夕里「魚舟・獣舟」
桜庭一樹「A」
飛浩隆「ラギッド・ガール」
円城塔「Yedo」
伊藤計劃+新間大悟「A.T.D Automatic Death■ EPISODE:0 NO DISTANCE, BUT INTERFACE」
神林長平「ぼくの、マシン」

 2冊合わせると、日本SFの現在が概観できます。SF初心者の方にもおすすめです。



タグ :SF

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この記事へのコメント
面白そうですな。これから本屋行って注文してきます(^^)
Posted by ナイス害 at 2010年10月30日 16:17
コメントは控えていましたが、私と一文字違いの方がおられるのでビックリしました。(笑)
山本弘さんのブログをいつも楽しく拝見しておりました。
去年はいい年になるだろうを購入したいと思います。紹介してある作品も読みたいと思います。
風邪にお気をつけてください。
Posted by 小口和宏 at 2010年10月31日 04:26
是非とも、これに関してSF的にコメントをして頂きたい
http://www.cnn.co.jp/world/30000707.html
Posted by 愚痴屋 at 2010年10月31日 17:15
>愚痴屋さん

 ラプラスの著書『天体力学』を読んだナポレオンが、「この本には神のことが書かれていないではないか」と言うと、ラプラスいわく。
「私にはそのような仮説は必要ありませんでした」
 ホーキングの主張は新しくも何ともないし、それに対するベネディクト16世のような反応も、これまでさんざん繰り返されてきたんでしょうね。
Posted by 山本弘山本弘 at 2010年11月01日 17:18
山本さんはまあまあでも、オレは『闇が落ちる前に、もう一度』は短編集『審判の日』の中で一番好きです。

元ネタも分かってますよ~。オレは古い方の文庫の『奇妙な論理』持ってますが、94ページからのですよね。『闇が~』を初めて読んだ時、ピンときました♪

『闇が~』がまた多くの人に読まれて、嬉しいです。切ない男心に共感します…
Posted by ギルス at 2010年11月06日 10:09
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