2010年07月31日

新短篇集『アリスへの決別』




 新しい短篇集『アリスへの決別』(ハヤカワ文庫)の収録作品を紹介します。
 発売は8月6日の予定。740円+税。
 表紙イラストは大石まさるさん。表題作の一場面ですが、僕が指定したんじゃないですよ(笑)。編集さんの話では「書店ではオビがかかるから、そんなにエッチにならない」そうです。そういう問題か?
 よく見ると六角形の中には「倫」と書いてあります。

「アリスへの決別」
 一九世紀後半のイギリス。僕――数学者チャールズ・ラトウィッジ・ドジスンの暮らすオックスフォード大学の寮に、金髪の美少女アリスが訊ねてくる。いつものようにヌード写真のモデルになるために。
「ねえ、先生、何かお話して」
 アリスにせがまれ、僕は奇妙な物語を語り出す。遠い未来に発明される小さな機械の話を……。


 初出はロリコン雑誌〈うぶモード〉(コアマガジン)2010年4・5月号。
 児童ポルノ法問題がらみで同誌からインタビューを受けた際、「機会があれば何か小説を書いてください」と言われたので、ふと思いついたアイデアで短篇を書いて送ったら採用されました。掲載時には町田ひらくさんのイラストが付いていました。

「リトルガールふたたび」
 二一〇九年の日本。小学校では教師が子供たちに二一世紀の日本の歴史を教えていた。マスメディアの衰退とネット言論の暴走、大衆の低IQ化スパイラルの進行により、日本がどのように核武装への道を突っ走っていったかを。


 初出は〈小説現代〉(講談社)2009年8月号。「百年後の世界」というテーマの特集で、椎名誠氏、川端裕人氏、真藤順丈氏と競作しました。
 ブライアン・W・オールディスの短篇「リトル・ボーイ再び」(〈SFマガジン〉1970年2月号)へのオマージュです。

「七歩跳んだ男」
 月面基地のエアロックの外で、宇宙服を着ていない男が倒れていた。砂塵の上に残る足跡から、エアロックから飛び出して七歩跳躍して倒れたと推測された。自殺か? 事故か? 他殺か? 月面基地にやって来た男の奇妙な言動の数々には、意外な意味が秘められていた。


 初出は日本SFアンソロジー『NOVA1』(河出文庫・2009年)。オーソドックスなSFミステリです。

「地獄はここに」
 私はテレビで人気のある霊能者。今回もあるテレビ番組に出演し、一年半前に埼玉県の竹林で起きた少女殺人事件の霊視をすることになった。
 現場に出向き、いつものようにデタラメな犯人像を語る私。だが、事件の真相は私の嘘を上回る恐ろしいものだった。


 初出は2006年5月発行の〈ファントム〉(二見書房)。ある種のモンスターが出てくるホラーです。

「地球から来た男」
 シーヴェルの接近による地球壊滅の危機が去って三四年後。一五万人を乗せて太陽系外に向かって旅立とうとしていた小惑星船〈ラウファカナア〉に、一人の青年が密航してきた。二二世紀の現代では珍しいことに、彼は一度も遺伝子改変を受けたことがないというのだ。


 初出は〈SFマガジン〉2010年2月号。
 自分では問題作だと思うんだけど、何がどう問題作なのか書こうとするとネタバレになってしまうというジレンマ(笑)。怒る人がいるかと思いきや、意外に好意的に受け入れられてほっとしています。

「オルダーセンの世界」
 原因不明の異変によって文明が崩壊した後の世界。宗教的指導者に支配され、禁欲主義を貫くコロニーに、謎の女が現われた。捕らえられて留置場に入れられても、不敵な態度を崩さない。彼女の名はシーフロス。職業は深夢ダイバー。「亜夢界」から来たのだという……。


 初出は〈SFマガジン〉2010年7月号。「シュレディンガーのチョコパフェ」のラスト近くにちらっと出てきた深夢ダイバーのシーフロスが主人公。

「夢幻潜航艇」
 夢と現実の中間の量子論理世界、亜夢界。そこに危機が訪れた。夢の海の底に潜む〈魚〉が浮上し、夢化率を一挙に上昇させ、大規模なランダマイズ(無秩序化)を惹き起こしたのだ。
 深夢ダイバーのシーフロスは〈魚〉の正体を探るため、発明家トールの作った潜航艇に乗り、普通の人間には耐えられない深度の夢に挑む。そこは絶えず現実が変化し、アイデンティティ崩壊の危険にさらされる危険な世界だった。


 この短篇集のための書き下ろし。こちらもシーフロスが主人公の亜夢界もの。アラン・E・ナース「悪夢の兄弟」やピーター・フィリップス「夢は神聖」など、夢の世界を舞台にしたSFはよくありますが、その山本弘版です。本当の夢ではなく、あくまで独自の物理法則に支配された世界なんですけどね。

 なお、8月7・8日の日本SF大会TOKON10にてサイン会をやります(7日16:35より)。大会参加者の方のお越しをお待ちしております。




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この記事へのコメント
以前、「地獄はここに」のタイトルに興味を引かれていたので、読む事が出来て嬉しいです。
その他の作品もそれぞれ面白く読ませてもらいました。

「渇きの海」のファンとしては、月SF(しかも推理物!)の「七歩跳んだ男」も印象深かったですね。

それでは、新作を楽しみにしています。
(とりあえずはMM9の続きを楽しみにしてます)
Posted by Rick=T at 2010年08月07日 22:06
『ボクには世界がこう見えていた』って本を読んだ時に、現実って実は相対的なものなのではみたいなことは自分も考えたことがあったので、最後の二編がすごく気に入りました。主人公の思考過程の変化が滑らかに描写されるのが特に好きです。

シーフロスの続編はぜひ読みたいです。
Posted by さかな at 2015年08月15日 21:28
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