2015年11月14日

SF⇔人文「SF作家の思考をたどろうフェア」

紀伊國屋書店新宿南店
SF⇔人文「SF作家の思考をたどろうフェア」
https://www.kinokuniya.co.jp/c/store/Shinjuku-South-Store/20151024125610.html

作家は普段どのような本を読み、影響を受け、また執筆の参考にしているのでしょうか。もしそれを追体験することができたら作品を読む際の見方に広がりが生まれそうです。

そんな思いから生まれた企画。今回は「SF作家」と「人文書」に焦点を当てました。

藤井太洋氏、宮内悠介氏、上田早夕里氏、山本弘氏、酉島伝法氏、笹本祐一氏の6名の作家に人文書をセレクトしていただき、全点にコメントをいただき著作と一緒に並べました!

この機会にぜひお越しくださいませ。

期間:2015年10月20日~2015年11月末まで人文SFフェア.jpg
場所:新宿南店5F フェア棚
※10/20~10/31 棚24-04 11/1~11/末 棚24-06にて展開
お問合せ::03-5361-3315(10:00~20:30)

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 今月末まで開催中です。
 僕の選んだ本は、この下の段に並んでいる5冊。

 実際に新宿南店まで行って見てきました。他の5人の方々の選んだ本も、それぞれ面白そうです。
 東京にお住まいの方、新宿に立ち寄られたついでにご覧になっていってください。
  
タグ :PRSF


Posted by 山本弘 at 18:53Comments(0)SFPR

2015年11月14日

ファンタジーじゃがいも警察の話

【定番議論】ファンタジーを描く時、食物や単位やマナーや言葉…の何を現実世界と共通させ、何を創造すべきか?
http://togetter.com/li/887490

 中世ヨーロッパ風のファンタジーで、新大陸原産の「じゃがいも」が出てくるっておかしいんじゃないの……という話から派生した議論。

 これを読んでて思い出した。もう30年近く前、『モンスター・コレクション』(富士見文庫)を書いた時に、「コウモリ」の項で、吸血コウモリは南アメリカにしかいないから、「普通は中世風のファンタジー世界には出てこない」って書いたことがある。
 後になって反省した。ドラゴンとかキマイラとかゴブリンとかがいる世界なら、べつに吸血コウモリいてもおかしくないよね(笑)。我々の世界の吸血コウモリとは違う、この世界独自に進化したコウモリがいるということにすればいいんだから。
 上の議論の中でも言及している人がいるけど、『グイン・サーガ』の世界では、当初、我々の世界の馬によく似た生物がいて、それを作中で「ウマ」と表記している……という設定になっていた。
 じゃがいもにしても、その世界にはじゃがいもによく似た作物があって、それを作中では「ジャガイモ」と表記している……と解釈すればいいだけだ。

 ただ、この手の問題、どこまで読者に親切にすればいいのか、よく悩む。
 子供の頃に観たTVシリーズの『スーパーマン』の中では、吹き替えで「7000万円」といった台詞がよく出てきた。当時は1ドル=360円だったから、実際には20万ドルなのを、日本の視聴者向けに分かりやすく円に置き換えたのだろう。
 でも、アメリカ人が「7000万円」と言うのは、やはり違和感を覚えたものだ。

 こうした単位の置き換えというのは、現代の洋画の翻訳でも頻繁に行なわれている。たとえば『スピード』では、バスが時速50マイル以下になると爆発するという設定だが、翻訳では「80キロ」と言っていた。温度の華氏を摂氏に置き換えている例もよくある。
 現代のライトノベルなどのヨーロッパ中世風ファンタジー世界の中で、「メートル」という単位が出てくるのも同じ。この世界の単位を日本人向けに訳してるんだろう。
 ……とは思うんだけど、やっぱりひっかかってしまう。
 もし、ファンタジー世界の人物が「このジャガイモは3個で100円だ」とか言ったら、違和感ばりばりだろう。やっぱりどこかに線を引く必要がありそうだ。

 そもそも、馬に似た生物を「ウマ」と表記したり、この世界の距離単位を「メートル」に換算したりするのは、はたして読者への親切になっているのだろうか。
 そういう表記をしないと、読者は作品の設定が理解できないものなのか?
 そんなことはない。そんな問題は100年も前にエドガー・ライス・バローズが通り過ぎている。

火星用語辞典
Dictionary of Barsoomian Language
http://www.princess.ne.jp/~erb/dic_mars.htm

ペルシダー用語辞典
Dictionary of Pellucidarian Language
http://www.princess.ne.jp/~erb/dic_pell.htm

金星用語辞典
Dictionary of Amtoran Language
http://www.princess.ne.jp/~erb/dic_vens.htm

 火星で用いられる8本足の乗用動物、地球における馬に相当する生物は、ソートと呼ばれている。わざわざ「ウマ」などと書き変えてはいない。
 火星や金星では、距離の単位や時間の単位も違う。ペルシダーなどは陽が沈まなくて昼夜の区別がない世界なんで、我々のような時間の単位すらない。それでも特に、読むのに支障は生じない。
 数十個の造語を設定するのは、作者にとってそんな大きな労力じゃないし、読者にとっても重荷じゃない。「バローズの小説は独自の造語がいっぱい出てきて難解だ」と批判する人なんて、見たことがない。

 馬に相当する生物を、「ソート」と呼んでも、作中では何の支障もない。
 だったら、じゃがいもに似た作物だって、たとえば「ボルート」とかいう名前で呼んでもいいんじゃないだろうか?
 けっこう安直に異世界感が出ると思うんだが、なぜみんなそうしない?

 どうも現代日本の異世界ファンタジーの多くは(もちろん例外もあるが)、「異世界」じゃなく、「なじみの世界」を描いてるんじゃないかという気がする。
 じゃがいもなどの、この世界に普通にあるものや、エルフやゴブリンやドラゴンなど、ファンタジーRPGでおなじみの要素ばかり使っている。それを読んだ読者も「異世界とはこういうものだ」という固定観念に縛られている。
「異世界」と呼んでいるが、実は読者が知っている要素だけで構成されている。
 想像力や創造力という点で、100年前のバローズより後退してるんじゃないだろうか。

 もう少しだけ異世界を異世界っぽく描いてもばちは当たらないと思うんだが。
  


Posted by 山本弘 at 18:27Comments(25)SF作家の日常

2015年11月14日

「このエピソードがおすすめ! 勝手に『ミステリー・ゾーン』傑作選」

山本弘のSF秘密基地LIVE#52
このエピソードがおすすめ! 勝手に『ミステリー・ゾーン』傑作選

 アシェット・コレクション・ジャパンの〈ミステリー・ゾーンDVDコレクション〉が、旧シリーズ分56巻を消化し、『新トワイライト・ゾーン』に突入しました。これを記念し、今回は『ミステリー・ゾーン』の魅力を徹底的に語る特集です。
 1959年に放映開始されたSF・ホラー・ファンタジーのアンソロジー番組。番組クリエイターで名脚本家であるロッド・サーリングをはじめ、リチャード・マシスン、チャールズ・ボーモント、ジョージ・クレイトン・ジョンソンといった作家たちが紡ぎだした、5シーズン全156本のエピソードから、〈問題作〉〈びっくりする話〉〈こわい話〉〈笑える話〉〈泣ける話〉を選び出して紹介します。「狂った太陽」「2万フィートの戦慄」「子供の世界」などの名作はもちろん、日本での未放映エピソードまで。この2時間のトークで『ミステリー・ゾーン』のすべてが分かります!

[出演] 山本弘

[日時] 2015年11月27日(金) 開場・19:00 開始・19:30

[会場] なんば紅鶴(大阪市中央区千日前2-3-9 レジャービル味園2F)南海なんば駅より南海通り東へ180m・駐車場有

[料金] 前売り¥1,500- 当日¥2,000-
(店内でのご飲食には別途料金がかかります。入場時に別途ワンドリンクをご購入いただきますのでご了承ください)

チケットのご予約はコチラ↓
http://boutreview.shop-pro.jp/?pid=95224733

もしくは紅鶴・白鯨へメールで
namba_hakugei999@yahoo.co.jp
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 今の人には「『世にも奇妙な物語』の元ネタ」と言った方が早いのでしょうか? でも、古いからといって甘く見てほしくないんですよ。半世紀以上も前の番組なのに、今観てもまったく遜色がない。それどころか、扱われている題材が、現代の目で観ると逆に面白かったりするんです。

 たとえば「人形の家で」というエピソードは、本物の女性とつき合ったことのないマザコンの男が、博物館に展示された人形の家に飾られた小さな女性の人形に恋をするという話。このまま現代日本に移し替えてリメイクしてもいけるんじゃないでしょうか?
「悪意の果て」は、自分を正義だと思いこんでる男の話。世の中にいるいろんな悪人(と彼が考える人)のことを調べ上げ、上司に「あいつはアカです。辞めさせなさい」と密告の電話をかけたり、ただ一度のミスで患者を死なせた医師を執拗に糾弾し続けたり……これ、現代のネット社会の方がリアリティあるんでは?
 この他にも、「疑惑」「生と死の世界」「鏡」「暗闇の男」「暗黒の死刑台」など、人間の心の闇を描いたシリアスな社会派のエピソードがいくつも。特にサーリングの脚本は、台詞の緊張感が素晴らしくて、同じ創作を生業とする者として感心させられます。

 ホラーの秀作もいろいろ。マシスン脚本では「2万フィートの戦慄」が有名だけど、「遠来の客」「亡き母の招き」あたりもかなり怖い。 「夢の中に消えた男」は、今回のDVD化で初めて目にしたエピソードなんですが、『謎の円盤UFO』の「謎の発狂石」の元ネタこれか!? とビックリしました。
 ロッド・サーリングもけっこう怖い話が上手くて、やはり今回のDVD化で初めて目にした「誰かが何処かで間違えた」(マシスンの原作をサーリングが脚色)「ヒッチハイカー」「めぐりあい」などはどれも秀作。じわじわと不安をかきたてていって、最後のシーンでぞっとさせるというテクニックが絶品です。血しぶきもモンスターも出さなくても、ホラーはいくらでも創れるんですな。
「ヒッチハイカー」なんて途中でオチが読めちゃうんだけど、その予想通りのオチにたどりつく瞬間の怖さときたらもう……「子供の世界」もそうだけど、「これは子供の頃に観なくて良かった!」と思いましたわ、痛切に(笑)。こんなの子供の頃に観てたらトラウマになる。
 その一方で、マシスンは「すべては彼の意のままに」、サーリングは「西部劇作法」みたいな大バカなコメディも書いてたりするんで、もうこの人たちの才能には脱帽するしかありません。
 あと、もちろん、「弱き者の聖夜」「8時間の奇蹟」「遠い道」などの、感動するエピソードもいろいろ。

 今回はそうした『ミステリー・ゾーン』の魅力を存分に語ろうと思っています。DVDに収録されなかった「ふくろうの河」「対決」などの幻のエピソードも紹介します。
 なお、オチが命の作品に関しては、オチまで語りません。この機会に、ぜひDVDを買って実物を観ていただきたいと思っていますので。
  


Posted by 山本弘 at 17:59Comments(2)SFPR レトロテレビ番組