2015年06月02日

彼らは調べようとしない・3

 イソップ童話では、「狼が来たぞー」と嘘をつき続けた少年は、みんなから信用されなくなる。
 だが、今の日本は違う。嘘つき少年に騙されても騙されても、それでもなお信じ続ける人間が多い。騙されたことで腹が立ったり、自己嫌悪に陥ったりしないのか。それとも「騙された」という自覚すらないのか。

http://linkis.com/blog.livedoor.jp/abe/W22Su

>衝撃的事実。日本の皆さんはこの事実をよく知っておくべき。

>日本刑務所の囚人内訳
>32%が 朝鮮韓国人
>21%が 帰化人
>33%が 中国人
>11%が 他外国人
>3%が  日本人


 これがツイッターで流れてきた時には、本当にびっくりした。元のツイートはすでに消されてるんだけど、僕が見た時には、すでに多くのコメントがついていて、信じている人間が大勢いたのだ。
 いやいや、こんなの見た瞬間、怪しいって分かるだろ!?

 2013年の政府の「矯正統計」のデータを見てみる。

http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001120338

 平成25年の刑務所の年末収容人員は62,971人。うち外国人は3,657人(5.8%) 。
 国籍別の内訳は、韓国・朝鮮人が1,210人、中国人852人、ブラジル人274人、イラン人221人、ベトナム人130人、フィリピン人120人。
 つまり韓国・朝鮮人の割合は1.9%。
 ちなみにこれは来日外国人も含めた数字なので、在日外国人に限定すればもう少し少ない。
 データを過去にさかのぼってみた。韓国・朝鮮人の入所者は、平成18年1788人、平成19年1717人、平成20年1590人、平成21年1508人、平成22年1500人、平成23年1459人、平成24年1334人。
 そう、着実に減ってる。

 そもそも「帰化人」とか書いてあるのがおかしい。入所者が帰化した外国人かどうかなんて、法務省のデータには載ってない。誰がどうやって調べたのって話だよ。

 ほんと、明らかに怪しい数字だし、ちょっと調べたらデタラメって分かるんだけどねえ。調べないんだよなあ。
「衝撃的事実」って書いてあったら、事実だと思っちゃうのかなあ?
  
タグ :デマ


Posted by 山本弘 at 19:21Comments(7)事件メディアリテラシー

2015年06月02日

彼らは調べようとしない・2

 最近、東日本大震災から4年も経って、さすがに放射能デマは少なくなってきたように思えるが、嫌韓デマや反・反日デマ(「これは反日活動だ!」と騒ぎ立てるデマ)はいっこうに治まる気配がない。
 たとえばこういうのがあった。

神社は燃えるもの
http://togetter.com/li/819442

>この短期間で神社仏閣の全焼ってこんなにあるの!
>マスゴミは何で報道しないんだよ!


 と驚く人たち。そして、当然、「外国人のしわざ」という話になってゆく。

>わかっているのは、こんなバチ当りな事は日本人に出来ないと言うことです。

>日本人にはこんなひどいことを神社仏閣にできません。


 おいおい、あんた、延暦寺とか金閣寺とか知らんの?(笑) つーか、日本人が神社仏閣を破壊した例なんて、歴史上いっぱいあるんだが。明治時代の廃仏毀釈とか。
 日本史を知らないこの人こそ、本当に日本人なのか疑問に思うのだが。
 そもそも「バチ当り」って言うけど、放火という行為自体が神をも恐れぬバチ当たりな行為なのだから、放火犯が神社仏閣を避けると思う方がおかしい。

>小泉純一郎政権→韓国人2006年3月より無期限ビザなし以降、神社仏閣への犯罪が大増加!これは日本へのテロだ!

 本当だろうか? ネットでは去年、すでに調べている人がいた。

毎年神社・寺社は平均毎週2~3社ずつ燃えている
http://d.hatena.ne.jp/next49/20140501/p1


 2006年どころか、2003年からずっと、年平均約130件の神社・寺社の火災が起きていて、増加傾向は認められない。
 ちなみにこの人は2003年までしかさかのぼっていないが、僕がさらに調べたところ、2000年は152件、2001年は144件、2002年は155件だった。
 つまり、ちっとも増えてない。
 統計局ホームページの「宗教団体数,教師数及び信者数」のデータによると、平成24年現在、神道系の神社・寺院は81,131社。仏教系の神社・寺院は75,935社。合計15万7000社というところである。(教会、布教所は含まず)

http://www.stat.go.jp/data/nenkan/23.htm
 
 つまり大雑把に、1200社に1社ぐらいの割合で火災に遭っている。
「増えている!」と主張する人間は、こういうデータを調べようとしない。

 思うにこれは「福島で鼻血が増えている」というのと同じ話ではないだろうか? それまでと発生数は変わらないのに、急にそれが注目を集め、「増えている!」と騒がれているだけなのでは?

 ただ、普通の家に比べ、神社や寺が放火に遭う率が倍ぐらい高いのは事実である。
 たとえば平成24年の例で見ると、106件中46件が放火。年平均47件。

http://www.bousaihaku.com/cgi-bin/hp/index2.cgi?ac1=B310&Page=hpd2_tmp

 なぜ神社や寺は放火の標的にされやすいのか。ここのサイトに分析がある。

寺・神社の犯罪事情
http://www.hanzai.net/temple/

>泥棒や放火犯にとって、最も重要なことは「人目に付かず確実に逃げられること」。
>神社仏閣は下記の通り、犯人にとって「犯行しやすい環境」ベストコンディションであるということをぜひ認識し、少しでも対策することが重要です。

>「観光客、参拝者を装って下見」が可能。誰にでも開放されている場合が多いため、いつでも下見や犯行を行うことができる。
>樹木に囲まれており、道路など外部からの見通しが悪い。
>夜間暗がりがあり、隠れたり犯行を行うのに適している。
>誰にでも開放されているため、たまたま誰かに出くわしても参拝者を装い逃げることが可能。
>大切な仏像や宝物、賽銭などが手に届くところに置いてあり、周囲に人目がない時間帯が多い。
>無住の寺社も多く、異常が発見されにくい。

 まことに筋の通った説明である。
 もうひとつつけ加えるなら、「民家に火をつけるのに比べて罪悪感が少ない」というのもあるのではないだろうか。人のいない寺や神社に火をつけても、民家に比べて焼死者が出る可能性が少なく(それでも毎年何人か亡くなっているのだが)、建造物が燃えるのをただ見てみたいが人は殺したくないという奴には、心理的なハードルが低いのかもれない。
 そしてこの説明は、犯人が外国人でも日本人でも当てはまる。もちろん外国人が犯人の場合もあるが、「神社に放火」と聞いただけで「日本人に出来ない」と言い出すのは、明らかにおかしい。

 ちなみに、ツイッターでこの話を話題にしたら、こんなことを書いてきた奴がいた。

>@hirorin0015 @togetter_jp ひょっとして、最近多いシナ系の帰化人の方ではないでしょうね。日本語の堪能な優秀な工作員も入って来ているそうですが。

「最近」ってあんた(笑)。
 僕が作家であることはプロフィールに書いてあるし、ちょっと検索すりゃあ経歴なんかすぐに出る。たとえば僕が1978年の奇想天外SF新人賞で佳作に入った……なんてデータも出てくるんだが。
 だけど、検索しないんだよなあ、こういう奴は。


 前にも書いたけど、この手の「犯人は外国人」「犯人は在日」とかいう噂のほとんどはデマである。(嘘であることが判明しているか、真実であるという証明がない)

http://hirorin.otaden.jp/e273759.html

 だからこういう話は、まず「デマじゃないか」と疑うのが正しい。
 先日も、「神社に油を撒いていた犯人は在日コリアン」という情報が流れてきたんで、どうせまたデマじゃないかと疑ったら、本当だったんで驚いた。まあ、確率的には、デマみたいなことが実は事実という例もあるわけだけどね。
 でも、案の定、正しかった情報の他にも、無関係の人物・団体を犯人扱いするデマも流れていた……。

http://japanlove.jp/


【6月3日追記】
 最後のデマについて補足説明。
 容疑者が「米国在住で東京都内に拠点があるキリスト教系の宗教団体幹部(52)」「東京都出身で2013年に教団を設立」という報道から、2ちゃんねるで犯人探しが行なわれ、この手がかりに該当する3つの宗教団体の名前が挙がった。
 ところがそのうちのひとつ「日本キリスト教バプテスト会東京教会」の代表者・李起龍氏(42)が、名前が朝鮮名だというだけの理由で、たちまち「犯人」ということにされてしまったのである。
 その後、本物の容疑者は別の団体の金山昌秀という人物(在日韓国人。ただし、すでに帰化して日本人になっている)だと判明するのだが、あきれたことに、それでもデマは収まらない。
 今度は李起龍氏と金山昌秀が同一人物だというデマが流れるのだ!

寺社に油をまいた犯人に関するデマ
http://kyoumoe.hatenablog.com/entry/20150602/1433236126

 東京教会はすぐにデマを否定する声明を発表。

【寺社油まき事件】容疑者と誤解された教会が「一切関係ない」と異例の声明
http://getnews.jp/archives/983149

 はい、年齢も経歴もぜんぜん違いますね(笑)。
 当然のことながら、李起龍氏を犯人扱いして中傷した連中からは、まったく謝罪や反省の声は聞かれない。
  
タグ :デマ


Posted by 山本弘 at 19:12Comments(14)事件メディアリテラシー

2015年06月02日

彼らは調べようとしない・1

 もう30年ぐらい前になるが、こんなジョークを考えたことがある。

「熊本民謡『おてもやん』は長崎の原爆投下の予言である」

 ピーチク パーチク ひばりの子
 げんぱく茄子の いがいがどん

「ピーチク」は原爆を投下した爆撃機B29、「パーチク」は原爆が投下された8月9日、「ひばり」とは高空を飛ぶB29であり、その「子」とは、投下される卵型の原爆のこと。「げんぱくなすび」は「原爆為す火」であり、「いがいがどん」は原爆を意味する「ピカドン」である……。
 この話、1992年、東京で開かれたオカルト系イベントの中のパネルディスカッション「サイキック・バトルロイヤル」で喋った。べつにノストラダムスでなくても、その気になれば、予言でも何でもない文章からこじつけで予言を読み取ることは可能だ、という例としてである。聴衆からは「なるほど」「間違いない」という笑いが起きた。
(このディスカッションのことは、後で『サイキック・バトルロイヤル』(鷹書房弓プレス)という本にまとまった)

 その後、故・志水一夫氏から、そのイベントに同席していた超常現象研究家の某氏が、僕の話を聞いて気分を害していたという話を聞かされた。

「〇さん、あの説を真剣に唱えてたんだよ(笑)」

 いやー、誰でも思いつくようなネタだから、誰か先に考えていた人がいるかも……とは思ったが、まさか真剣に信じてる人がいるとは思わなかった。


ネットのデマはなぜ無くならないのか?「8.6秒バズーカー」「翁長知事の娘」から考えるデマと寄生の関係
http://bylines.news.yahoo.co.jp/furuyatsunehira/20150424-00045120/

 この「ラッスンゴレライ」=「落寸号令雷」という話、最初に聞いた時、「民明書房か!?」とツッコんだ(笑)。そして、「いくらなんでもこんなアホなデマを本気にする人間など、そんなに多くないだろう」と思った。
 ところが、本気にして騒ぎ立てる人間が大勢いたのにはあきれた。みんな『男塾』読んでないの? もしかして「ゴルフを発明したのは呉竜府」とか言われたら信じちゃうの?

 さらにあきれたのが、この記事についたコメント。

>根拠のないデマなら、否定する根拠が欲しい。

>諸説ある内の(アナグラム説が有力)1説を否定したからといって完全にデマと断定できないだろ?


 おいおいおい、そりゃ逆だ!
 どうもこういう人の頭の中は、「噂は完全に否定されるまではデマではない」という理屈が支配しているらしい。この理屈がどれほどバカげているかは、それを自分の身に置き換えてみれば分かる。

 仮に、あなたがネットで、「あいつは子供の頃にスーパーで万引きしたことがある」という噂を流されたと想像してみてほしい。その噂を完全に否定するまでは、デマではないことになるのか?
 考えてみれば、あなたがこの噂を否定することはきわめて困難であることが分かるはずだ。「そんなことやってませんよ」と言うだけでは否定したことにならない。やってない証拠を出さなくてはならない。でも、やってない証拠って何?
 そのスーパーの人に証言してもらう? でも、何十年も前の万引き事件の記録なんか残っているだろうか。親に証言してもらう? その証言が正しいとどうやって証明する?

 スマイリー・キクチ氏など、「女子高生を暴行殺害した」というデマを流され、それを打ち消すのに10年を要した。
http://hirorin.otaden.jp/e226018.html

 それを思えば、もしあなたが何かデマを流されても、それを完全に打ち消すのはきわめて困難であり、多大な労力を要することが分かるはずだ。
 8.6秒バズーカ―の場合も同じだ。彼らが反日活動家ではないことをどうやって証明すればいいのだろう? 舞台の上で日の丸を振ってみせる? でも、そんなの「ただの演技だ」と言われたらおしまいだよね。
 つまり「否定する根拠」を要求する連中は、無理難題を言っているのだ。

 デマの怖ろしいところは、言い出す奴や拡散する奴はローコスト(具体的な証拠を提示する必要がない)だが、それを否定する側は大きな労力を要求されることだ。まったくもって不公平である。
 証拠を提示する責任があるのは、「やった」と主張する側だ。立証責任を相手に押しつけてはいけない。
 だから、「噂は完全に否定されるまではデマではない」と考えてはいけない。「噂は事実だと証明されるまではデマ」と考えるのが正しい。
 もちろん、それが最終的にはデマではなかったと分かる場合もある。しかし、ネット上では「デマっぽい話がやっぱりデマだった」という例が圧倒的に多い。怪しい話に接した時は、判断を保留することだ。
「やっぱり事実だった!」と言うのは、確実な証拠が出た後でも遅くはない。

 こんなことを書いている奴もいる。

>ネットではいろんな人間が自分の考えた検証結果を投稿しています。中には私もこじつけだなあと思うものも多いです。しかし、いくつか「偶然」とするには納得行かないものもあります。例えば、ネタ中にセットで出てくる「ウルグアイとアルゼンチン」「サウジとインド」この2国の首都を結ぶと、8.6原爆爆撃機の発進地テニアン島と原爆投下地の広島を通ります。それが更にコンビ名「8.6」とも符牒するなんて出来過ぎです。奇跡のような偶然でこれが起こったと考えるより、意図的に企てたとするほうが遙かに合理的思考だと思いますが…。

 僕は即座に、グーグルアース上で線を引いてみた。
 サウジの首都リヤドとテニアン島を結ぶ線は、インドの首都ニューデリーを通過しない。つまりリヤドとニューデリーを結ぶ線はテニアン島は通過しないのだ。


「ウルグアイとアルゼンチン」の方は……って、これ日本から見てほぼ地球の真裏じゃん!
 そりゃあ地球の真裏からなら、どっちの方向に線引いても、かなりの確率で日本に突き当たるよなあ。
 グーグルアースで見ると、ウルグアイの首都のモンテビデオとアルゼンチンの首都ブエノスアイレスはすごく近い。200kmぐらい。地球の円周は4万kmだから、その200分の1。
 つまり円周70cmのサッカーボールに3.5mmぐらいの線を引く行為である。
 で、モンテビデオから広島に向けて線引いてみたら、やはりブエノスアイレスは通過しなかった。


 つまり、このデマを信じてる人間は、自分で調べてない。
 誰かが「ウルグアイとアルゼンチンの首都を結んだら広島を通る」と言ったのを、検証もせずに鵜呑みにしているのである。
 グーグルアースをインストールしてりゃあ、簡単に調べられるのに、その程度の労力をかけない。そして、デマを信じこみ、誹謗中傷する。

 こういう人間はきっと、他にもいろんな嘘に騙される。
  
タグ :デマ


Posted by 山本弘 at 17:59Comments(23)事件メディアリテラシー