2015年01月21日

初めてマンガの中でコミケを描いた作品は?

 冬コミで『漫画の中の同人誌即売会』という同人誌を買ったのである。
 コミックマーケット、あるいはそれをモデルにした同人誌即売会が作中に出てくるマンガを集めたもので、80年代の『世紀末同人誌伝説』を筆頭に、『編集王』『コミックマスターJ』『こみっくパーティ』『まにぃロード』『げんしけん』『らき☆すた』『ドージンワーク』『まんが極道』などなど、メジャーな作品からかなりドマイナーなものまで、かなりの数の作品が紹介されていた。
 続編の『漫画の中の同人誌即売会plus』では、前の本で洩れていた『クロノアイズグランサー』などをはじめ、『コミケ中止命令』『人類は衰退しました』『ベン・トー』などの小説も取り上げられている。

 しかし。

 ものすごく大事な作品が抜けているのだ。

 吾妻ひでお『スクラップ学園』(秋田書店)である。

 その1巻に収録された「パトスってふんでも死なないのよね」が、同人誌即売会を題材にしているのだ。
『スクラップ学園』は〈プレイコミック〉に1980年1月から連載された作品。僕は当時、リアルタイムで読んでいた。
〈プレイコミック〉は月2回発売。「パトスってふんでも死なないのよね」は18話なので、掲載されたのは、80年の9月か10月頃のはずである(正確に何月何日号かまでは調べがつかなかった)。まず間違いなく、日本で初めて、商業出版物で同人誌即売会を扱った作品である。

 とある休日、公園でくつろいでいたおじさんが、やけに若者が多く通りかかるのに気づき、主人公のミャアちゃん(猫山美亜)に「今日は何かあるのかね」と訊ねる。「同人誌の即売会。あたしも本作ったから売りに行くの」と答えるミャアちゃん。
 若い頃は文学青年だったおじさん、「同人誌」と聞いて勘違いし、興味を抱いて、即売会に出かけてゆくが……という話である。
 即売会の名は〈第30回 ぬめぬめマーケット〉になっている。まだ川崎市民プラザで開催されていた頃、参加者7000人程度の規模の時代と推測される。

 すでにコスプレイヤーがいたことも分かる。一本木蛮さんの『同人少女JB』で描かれていたのが、だいたいこの時代である。

 もちろん吾妻マンガの中の話だから、まともな即売会であるわけがなく、シュールなギャグが続出し、コミケのカオスな雰囲気を戯画化しているのだが。


 この『スクラップ学園』、4話ですでに『ガンダム』ネタを出してきたり、コスプレを題材にした話があったりして、読み直してみるとあらためて、吾妻氏の先見性に驚かされる。
 ちなみに、ミャアちゃんのソックスがいつもよれよれなのは、わざとゴムをカッターでずたずたに切っているからだという設定がある。(『ミャアちゃん官能写真集Part1』参照)
 ずっと後になって、ルーズソックスが流行った時、「そんなのミャアちゃんはずっと前からやってたぞ!」と思ったもんである。

 ちなみにこの「パトスってふんでも死なないのよね」は、調べてみたら、今、山本直樹監修『21世紀のための吾妻ひでお』(河出書房新社)に収録されていることが分かった。やはり名作である「聞かせてよ、くぬやろの歌」とかも入ってるので、初心者にはおすすめである。


 吾妻作品からもう一本、紹介しておこう。
『ミニティー夜夢』(秋田書店)に収録された「愛なき世界」という短編。1984年頃の『マイアニメ』に掲載されたもの。

 ちなみに僕は「おたく」という言葉を、この作品で初めて知った。
 すでにコミケの開催場所は晴海に移っていて、参加者の数も万単位になってきた頃である。描写も『スクラップ学園』とはかなり違い、現在のコミケの雰囲気に近づいている。また、『うる星やつら』がブームだったことも分かる。

 言うまでもなく『コロコロポロン』は吾妻ひでお原作のアニメ。『ぐるぐるメダマン』と『好き好き魔女先生』は吾妻先生がコミカライズを手がけた特撮番組である。
 実際には、この時代にはまだ、こんなマイナー特撮番組の同人誌はなかったはずである。同人誌を作ろうにも資料がなかった。昔の番組が全話DVDになったりCSで放送されたりするような時代ではなかったからだ。
 だからこそ、「さすがにこんな同人誌あるわけない」というギャグが成立していたわけだが……いやー、今となってはギャグじゃないわ。『アステカイザー』とか『トリプルファイター』とか『ボーンフリー』とかの同人誌、普通にあるもんなあ。
 やはり吾妻先生の先見性、恐るべしである。

 ところで、読み返していて気がついたのだが、このシーン、これが同人誌即売会というもので……という基本的な説明がどこにもない。当時の『マイアニメ』の読者にはすでに、コミケというものが説明なしでも理解できたということか。

 そうそう、『漫画の中の同人誌即売会』を作ってる方、もし増補改訂版を出す予定があるなら、川上亮『コミケ襲撃』 と僕の『プロジェクトぴあの』も入れてくださいね(笑)。
  


Posted by 山本弘 at 17:08Comments(8)マンガコミケ

2015年01月21日

平井チルドレンに残された大きな宿題

 前にこのブログで、平井和正・桑田次郎『エリート』のすごさについて語った。

http://hirorin.otaden.jp/e271.html

 平井・桑田コンビは、『8マン』や『超犬リープ』でも有名だが、僕が好きな作品のひとつは、『デスハンター』である。〈週刊ぼくらマガジン〉に1969年から70年にかけて連載された長編だ。(のちに平井氏自身の手によって、『死霊狩り ゾンビー・ハンター』と改名されて小説化される)


 デスとは、宇宙からやって来た緑色の不定形生命体。それに憑依された人間は、姿形は変わらないが、不死身の肉体と怪力を有するようになる。
 カーレーサーの田村俊夫は、シャドウと名乗る謎の人物に勧誘され、カリブ海の孤島で苛酷なサバイバル試験を受ける。多くの犠牲者が出る中、生き延びた俊夫、アラブゲリラのリュシール、中国の秘密工作員・林石隆らは、デスハンターに任命される。その使命は、人間社会にまぎれこんだデスを見つけ出し、抹殺すること……。
 とまあ、これだけならよくある話だが、『デスハンター』のすごさは、人間の側の愚かさや残酷さが、これでもかというほどしつこく描写されること。確かにデスも危険だが、作中での死者の多くは、人間同士の殺し合いによるものなのだ。
 後半、人間の愚行をさんざん見せつけられた俊夫は、ついに人類を見限ってデスとなり、人類を糾弾する側に回る。

「人類こそ本当に荒々しく邪悪な生物だっ。
 人類の敵は決して宇宙人なんかじゃない……
 人類の本当の敵とはほかならぬ人類なのだっ。
 地球人類こそ宇宙に住む本当の意味の化物なんだ」

 ラスト近く、俊夫は「宇宙救済協会」という新興宗教団体を旗揚げし、「不死身の肉体が得られる」という謳い文句で、多くの信者を集める。その目的は、全人類をデスと同化させること。すべての人間がデスになれば、人間同士が殺し合う時代は終わり、素晴らしい世界が生まれるだろう……。
 このあたりの展開は、のちに平井氏自身が宗教団体GLAにのめりこみ、教祖のゴーストライターまで務めた事実を連想させ、未来を予見していたように読めてしまう。

 マンガだけではない。平井氏は小説の中でもしばしば、愚かな人類に対する怒りをストレートに読者にぶつけてきた。
 僕が印象に残っているのは「ロボットは泣かない」という短編。初出は〈SFマガジン〉1963年8月号の「機械が支配する!」というロボット特集号。アシモフ「われ思う、ゆえに…」、ブラッドベリ「長かりし年月」、バウチャー「Q・U・R」、レム「君は生きているか?」などと並んで掲載されている。僕は高校時代に〈SFマガジン〉のバックナンバーで読んだ。
 主人公は中古の女性型アンドロイドを格安で手に入れる。彼女は前の持ち主にひどい虐待を受け、脚の部品が壊れてびっこを引いていた。主人公は彼女をかわいそうに思うのだが、彼の周囲の人間、友人や妻や子供までも、ロボットを露骨に蔑視し、アンドロイドをかばう主人公を白眼視する。しかし、アンドロイドは決して人間を恨まず、ただひたすら迫害に耐え忍ぶ……。
 この話に結末はない。何ら問題が解決されず、救いもないまま、絶望のうちに終わってしまう。

 人類は凶暴で下等な生物──それが平井氏の初期作品を貫くテーマだ。もちろん人間の愚かさや残酷さを描いた小説なんて、SFでなくてもたくさんあったが、平井氏のすごさは、一部の人間の悪行ではなく、人類という種族全体をまるごと否定したことだ。
 それらの作品は“人類ダメ小説”と呼ばれる。
(もちろん、そうした考えも平井氏が世界で初めて思いついたわけではない。たとえば『デスハンター』の中には、明らかにハミルトンの「反対進化」をヒントにしたくだりがある)
 人類の愚かさを浮かび上がらせるために、平井氏は人類よりも高潔な存在を設定する。アンドロイドや宇宙生命体、あるいは狼を。 ヒット作となった『ウルフガイ』シリーズなども、主人公を狼男に設定し、狼を高潔な生物として描いていた。
 もちろん、狼が人間よりも誇り高いというのは、あくまでフィクション、人間の勝手な思いこみである。グループSNEが結成された直後、みんなで動物園の見学に行ったことがあるのだが、檻の中でグデ~ッとなっていて、人間が近づくと嬉しそうに尻尾を振る狼を見て、「狼の誇りはどうした!?」「犬神明を見習え!」と、みんなでツッコんだものである。

(もちろん、平井氏はシリアスな作品ばかり書いてきたわけじゃないこともつけ加えておく。『超革命的中学生集団』は、まさにライトノベルの元祖と呼べるハチャハチャでパワフルな話で、僕は大好きだった。「星新一の内的宇宙」というショートショートもお気に入りである)

 僕らの世代のSFファン・SF作家の多くは、若い頃に読んだ平井氏の“人類ダメ小説”に影響を受けている。
 僕の作品で言うなら、『神は沈黙せず』や『アイの物語』や『UFOはもう来ない』などに出てくる「人類は知的生物としては重大な欠陥がある」とか「人類は実は知的生物じゃない」というビジョンは、やはり平井作品の強い影響下にある。 と言うより、たぶん平井作品を読んでいなかったら、決して書かれなかった作品だと思う。
 やはり平井ファンであることを公言している新井素子さんの初期作品、『いつか猫になる日まで』や『宇宙魚顛末記』とかも、人類はちっぽけでいつ滅びてもおかしくないんだという、ある種ニヒルな考えがベースになっているが、あれなんかも平井氏の“人類ダメ小説”の影響ではないかと思える。
 新井作品の中でいちばん平井っぽいと思うのは『……絶句』。狼ではなくライオンを高潔な存在として描き、人間と対比させていた。

 確かに、“人類ダメ” という認識は刺激的で、腑に落ちるものである。若い頃にハマってしまうのも当然だ。しかし、落とし穴もある。

“人類ダメ”で止まってしまって、その先に進まないのだ。

 人類がダメってことは、『エリート』のアルゴールが言うように、人類を滅ぼせばいいのか? でも、「人類は滅びました。終わり」というのも、結末として安直すぎないか?
 あるいは『デスハンター』の俊夫が言うように、全人類がデスになったら、本当に理想の世界が来るのか? 僕には信じられない。たとえ最終的にそうなるにしても、その過程でおそらく、すさまじい規模の混乱と殺戮が繰り広げられるに違いない。それはダメな人類がやってきたこととどう違う?

 それに「人類なんてダメだよ」と言うのは簡単だけど、そう言う自分自身も人類の一員だという事実を忘れてはいけない。
“人類ダメ”というのは、決して大衆を見下すエリート思想じゃない。自分自身のダメさをも見つめることなのだ。 ダメな人類である自分がそんなに賢明であるわけないと認識することなのだ。
 じゃあ、どうすればいいんだ?
 自分も含めた人類がダメなら、いったいどこに希望がある?

「ロボットは泣かない」が尻切れトンボで終わっていることが象徴するように、平井氏はこの問題に対する明確で現実的な回答を出せなかったんじゃないかと思う。
 その後、新興宗教にハマったりしたのも、自分が提示した“人類ダメ”思想に追い詰められて、脱出口を求めた結果だったのかも……という気もする。ダメな人類を天使様が導いてくださるのではないか、と思ったのかもしれない。
 もちろん僕は(おそらく多くの平井ファンも)、そんなところに本当の救いなんてないと分かっていた。
 だって宗教なんて、ダメな人類が思いついたもののひとつにすぎないじゃないか。宗教が原因でどれほど多くの争いが起き、血が流されてきたことか。(今もまさに、そうしたことが起きている)
 平井氏はなぜ、人類の所業の中で、宗教だけはダメじゃないと思ってしまったのか。それは僕には理解できないことである。

 だから70年代後半以降の平井作品には失望したものの、それでも平井氏の初期作品が(マンガ原作も含めて)素晴らしいものだったことは間違いないし、僕らの世代が大きな影響を受けたことは否定できない。
 作家・平井和正は本当に偉大な人だった。
 僕ら平井チルドレンにとっては、いわば平井氏の提示した“人類ダメ”という概念がスタート地点であって、それをどう克服するかが課題だった。
“人類ダメ”を否定するんじゃない。“人類ダメ”であることを認めたうえで、それを超える回答を提示するのだ。

 新井さんの『ひとめあなたに』はまさにそうした作品だと思う。地球滅亡を前にした人々のドラマを通じて、人間の醜さや欠陥を描きながらも、最後はやはり「生まれてきて良かった」という結論に到達する。
 僕の場合は『神は沈黙せず』がそれで、人間は神と対話することさえできないちっぽけな存在にすぎないけれど、それでも正しく生きてゆくべきだと書いた。『アイの物語』では、人類はダメであっても、人類の生み出した人工知性は我々よりも賢明な存在になり、ヒトが到達できなかった高みを目指すことにした。

 そう、認めよう。人類はダメだ。まともな知的生物なんかじゃない。
 それは今、世界で起きていることを見れば分かる。

「真の知性体は罪もない一般市民の上に爆弾を落としたりはしない。指導者のそんな命令に従いはしないし、そもそもそんな命令を出す者を指導者に選んだりはしない。協調の可能性があるというのに争いを選択したりはしない。自分と考えが異なるというだけで弾圧したりはしない。ボディ・カラーや出身地が異なるというだけで嫌悪したりはしない。無実の者を監禁して虐待したりはしない。子供を殺すことを正義と呼びはしない」
──『アイの物語』

「なぜ地球人は、人間どうしにくみあい、殺しあうのか。つみもない子どもまでまきぞえにしてしまっても平気なほど、戦争がすきなのか。人をにくみ、殺しあうことがすきなのか。地球人のひとりとしてこたえてみよ!」
──『エリート』

 半世紀前にアルゴールの(そして平井氏の)突きつけた問いは、どれだけ時が経とうと、決して色褪せない。
 言ってみれば、僕らは平井氏の残した大きな宿題に、懸命に取り組んでいるのだ。これまでも、これからも。
  
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Posted by 山本弘 at 15:58Comments(14)マンガSF作家の日常

2015年01月20日

「80年代ホビーマンガの素晴らしき世界」

山本弘のSF秘密基地LIVE#42
80年代ホビーマンガの素晴らしき世界

 今回のテーマは、ゲームやプラモやマイコンを題材にした奇想天外なマンガの数々!
『ゲームセンターあらし』『プラモ狂四郎』などのメジャーな作品から、少しマイナーな『3D甲子園 プラコン大作』『ディオラマ大作戦』、さらには誰も覚えていないような超マイナーな作品まで、80年代の子供たちを熱狂させた、想像力あふれるマンガの数々を紹介し、その魅力を語ろうという企画です。
 今回もB級アイテム・コレクターの鋼鉄サンボ氏とともに、濃くて熱くて懐かしいオタク・トークを繰り広げます。お楽しみに!


[出演] 山本弘、鋼鉄サンボ

[日時] 2015年1月23日(金) 開場・19:00 開始・19:30

[会場] なんば紅鶴
(大阪市中央区千日前2-3-9 レジャービル味園2F / Tel. 06-6643-5159)
南海なんば駅より南海通り東へ180m・駐車場有

[料金] 1500円
(店内でのご飲食には別途料金がかかります。入場時に別途ワンドリンクをご購入いただきますのでご了承ください)

 ご予約はこちらへ。
http://boutreview.shop-pro.jp/?pid=85636920
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 申し訳ありません。今月は仕事が忙しく、ブログを更新している時間がなかなかなくて、告知が遅くなってしまいました。
 いつもは月の最終金曜日なんですが、今月は23日です。お間違えないように。つーか、もう今週じゃん!

 だいぶ前に『プラモ狂四郎の世界』という同人誌を出したことがあるんですが、今回はプラモ以外にもマイコンやゲームなどのホビーマンガをいろいろ取り上げます。例によって話すことがいっぱいありそうで、はたして2時間で終わるかどうか……。
 宣伝のために、こんな画像(『マイコン電児ラン』2巻収録の「アップルⅡストーリー」)をツイッターに流したら、すがやみつる先生自身にリツイートされてて、ちょっとあせりました(笑)。


  


Posted by 山本弘 at 18:45Comments(2)マンガPR

2015年01月09日

ビブリオバトル・チャンプ本『ゲームウォーズ』

 先月26日のLiveWire「ビブリオバトルをやってみよう」は成功でした。応援を頼んだ鋼鉄サンボくんや、阪大の菊池誠先生、神戸大学の学生さんらの協力もあり、ビブリオバトルの実演が盛り上がりました。
 紹介されたのは次の4冊。

小田雅弘『模型歳時記』(トイズプレス)
吉川浩満『理不尽な進化 遺伝子と運のあいだ』(朝日出版社)
高野秀行『幻獣ムベンベを追え』(集英社)
アーネスト・クライン『ゲームウォーズ』(SBクリエイティブ)

 どれも面白そうだ!
 僕が投票したのは、鋼鉄サンボくんが持ってきた『模型歳時記』。いやー、『理不尽な進化』『幻獣ムベンベを追え』も前から評判は聞いていて、読もうと思ってはいたんですけどね、やっぱりストリームベースの小田さんのエッセイ集ときたら、読むしかないでしょ!
 結果は僅差で、僕の紹介した『ゲームウォーズ』がチャンプ本になりました。本当はもっと大差つけて勝つつもりでいたんだけどなあ。

 というわけで、チャンプ本になった記念に、『ゲームウォーズ』の内容を紹介いたします。できるだけビブリオバトルの雰囲気を出すために、会場で喋った内容を可能な限り思い出して再現してみました。

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 どうも、今日は勝ちに来ました!
 というのも、この本はすごく面白い! 読み終わって何日も興奮が収まらなかった。そんなすごい本なんです。冷静に紹介してなんかいられない。エキサイトさせていただきます。
 アーネスト・クライン『ゲームウォーズ』。近未来を舞台にしたSFです。
 時は2041年。〈オアシス〉というバーチャル・ゲームが全世界に普及しています。単なるゲームじゃなく、すでにインターネットはほとんど〈オアシス〉と一体化しています。たとえば学校教育なんかも〈オアシス〉が使われている。生徒は自分の家にいながら、仮想空間の学校に通って勉強ができる。そういう時代なんです。
 そんな時、〈オアシス〉の開発者である天才プログラマーのハリデーという男が亡くなります。彼は死の直前に遺言を残していて、その映像が全世界に流れます。その遺言というのは──
「私の資産、総額2400億ドルを1人の人物に譲る」
 彼は〈オアシス〉のどこかに〈卵〉を隠した。いわゆる「イースター・エッグ」というやつですね。それを手に入れた者が遺産を受け継ぐことができるんです。

 さあ、このあたりでもう、頭の中に『ONE PIECE』のOPのナレーションが流れてきて(笑)、盛り上がってくるわけですが。
 当然、世界中の人間が〈卵〉探しに熱中します。〈卵〉を手に入れるためには3つの鍵が必要で、まずその鍵を見つけなくちゃいけないんですが、それがなかなか見つからない
 というのも、〈オアシス〉の世界はとんでもなく広いんです。何千というワールドがあって、それぞれに何十もの惑星がある。行き当たりばったりに探したって見つかるわけがない。ハリデーの遺したヒントを解かなくちゃいけないんです。
 ここで重要なのが、ハリデーは1972年生まれだという設定。つまり1980年代に少年時代と青年時代を過ごした。おまけに、がちがちのオタクです。
 だもんで、ハリデーの遺した謎を解くためには、80年代サブカルチャー──ビデオゲーム、TRPG、映画、ドラマ、音楽、アニメとかに関する膨大な知識が要求されるんです。

 ここに登場するのが主人公のウェイドという少年、高校生です。かわいそうな身の上なんですよ。両親を早くに亡くして、おばさんに引き取られてるんですけど、貧乏だからトレーラー・ハウスに住んでる。社会の最下層の人間です。でも、オタクなんです。ゲームに課金とかできないから、〈オアシス〉の中でも、ただで遊べる古いゲームばかりプレイしてる。
 そのウェイドが、あるきっかけで、最初の鍵を発見するんです。たちまちネットの世界で有名人になってしまいまして、〈卵〉の争奪戦に巻きこまれます。
 当然、悪役も出てきます。IOIという世界的大企業が、ハリデーの資産と〈オアシス〉の乗っ取りを企んで、〈卵〉を先に手に入れようと卑劣な工作を仕掛けてきます。目的のためなら平然と人殺しもするような、ほんとに悪い連中なんです。
 ウェイドは頼りになる仲間とともに、現実世界でIOIの陰謀から逃れながら、仮想空間で宝を探します。もちろんバトルもありますし、ヒロインとのロマンスもあります。だからこれはSFなんですけど、『宝島』のような、財宝をめぐる昔ながらのアドベンチャーでもあるんですね。
 で、やっぱりこの小説の魅力は、山のように詰めこまれた70年代や80年代のゲームや映画に関するトリビアです。それが謎を解く鍵になってる。たとえば最初の鍵のありかですけど、『ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ』の初期のモジュールの中にヒントが隠されてたりします。
 ネタバレになるから詳しくは話せないんですが、下巻の展開をちょっとだけ。
 クライマックス。ゲーム世界の命運をかけた一大決戦。IOIの軍団がたてこもる〈オアシス〉の中の惑星に、IOIに立ち向かう世界中のゲーマーが集結してる。その戦場に主人公が赴くんですよ。巨大ロボットに乗って。その巨大ロボットというのが──

 レオパルドンです!

 いや、ほんと。ブレスレットに向かって「チェンジ・マーベラー!」と叫ぶと、ちゃんとマーベラーに変形するんですよ。
 その最終決戦がまた、とんでもないことになってるんですけど、それは読んでのお楽しみということにしておきます。
 この小説、すでに映画化が決定してまして、監督を探してるところなんだそうですけど、でも、これを映像化しようとしたら……

 東映と東宝と円谷プロとダイナミックプロとサンライズにどんだけ版権料払わなあかんのかなと(笑)。

 でも、見たい! このクライマックス・シーンはぜひ映像化してほしい! そんな夢の詰まった作品です。

【質疑応答】
Q.私は80年代のサブカルに詳しくないんですが、楽しめますか?
A.作中にいちいち「これはこういうもので」という解説が入りますんで、理解するのに支障はないと思います。僕も正直、音楽関係のことはぜんぜん分からないんですけど、それでも楽しめましたから。

Q.主人公の冒険は仮想世界の中がメインなんですか?
A.現実の世界でIOIの魔の手から逃れながら、並行してゲーム世界での冒険も繰り広げます。現実世界とゲーム世界の比率が半々ぐらいですかね。

Q.仮想空間に入るのは、やっぱり脳にジャックインとかして?
A.いえ、インプラントとかは必要なくて、基本的にヘッドマウントディスプレイとグローブを使用します。現代の延長線上の技術ですね。

Q.サイバーパンクなんですか?
A.サイバーではあるけどパンクじゃないですね。




【補足】
 何で主人公がレオパルドンを持ってるかというと、そのひとつ前のミッションで、クリヤーするとご褒美に好きな巨大ロボットを一台もらえるんですよ。
 ガンダムやマジンガーやエヴァンゲリオンがずらっと並ぶ中、主人公が迷わず選んだのがレオパルドン! 素晴らしすぎます。

 下は台湾のSharksDenというイラストレーターが描いたファンアート。公式のイラストじゃありません。

http://sharksden.deviantart.com/art/Ready-Player-One-423782453

 冗談抜きで、こんなシーンがあるんですよ!

 ちなみに映画の監督はクリストファー・ノーランがオファーされてるらしいんだけど……うーん、ノーランじゃ何か違うかも。
  


2015年01月09日

『翼を持つ少女 BISビブリオバトル部』刊行記念 トーク&サイン会

 紀伊國屋書店および東京創元社のサイトより。

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『翼を持つ少女 BISビブリオバトル部』刊行記念 山本弘先生×谷口忠大先生トーク&サイン会 紀伊國屋書店 グランフロント大阪店(2015/1/17)

 このほど『翼を持つ少女 BISビブリオバトル部』を上梓した作家の山本弘先生と、「ビブリオバトル」の発案者で同普及委員会代表の谷口忠大先生(立命館大学情報理工学部准教授、創発システム論)のトークセッションを開催いたします。
『翼を持つ少女 BISビブリオバトル部』ができるまでの裏話や、現代の読書環境における「ビブリオバトル」などについてお話しいただきます。

日  時| 2015年1月17日(土) 18:30~(18:15開場)
○第1部 トークショー 18:30~19:30予定
○第2部 サイン会 19:30ごろ~

会  場| 紀伊國屋書店グランフロント大阪店 店内特設会場にて

参加方法| ご参加無料・ご予約優先

・紀伊國屋書店グランフロント大阪店1番カウンターにて整理券を配布いたします。
・お電話でのご予約も承ります。
・整理券の配布はお一人様1枚までとさせていただきます。

・お申し込みの順番によってはお立見となりますので、あらかじめご了承くださいませ。お立ち見は会場周辺の通路からとなりますので、ご参加の人数によっては見えにくい、聴き取りにくい場合もございます。あらかじめご了承くださいませ。

・トーク終了後に山本弘先生と谷口忠大先生のサイン会を予定しております。山本弘先生の『翼を持つ少女 BISビブリオバトル部』(東京創元社/税込2,052円)や谷口忠大先生の『ビブリオバトル』(文春新書/税込831円)など、おふたりの著作にサインを入れていただけます。会場にて書籍を販売いたします。色紙など対象書籍以外へのサインはご遠慮くださいませ。

お問い合わせ・ご予約| 紀伊國屋書店グランフロント大阪店 06-7730-8451(10:00~21:00)

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 より詳しい説明はこちらを参照してください。

http://www.kinokuniya.co.jp/c/store/Grand-Front-Osaka-Store/20141225100000.html



  


Posted by 山本弘 at 19:15Comments(2)PRビブリオバトル