2014年12月11日

NHKバリバラ ドラマ「悪夢」

 先日、再放送で視聴した。

「悪夢」
http://www.nhk.or.jp/baribara/special/akumu.html
 
 いやー、すごいドラマだった。
 素晴らしかった。 絶賛しておく。

 ストーリーは、こちらのレビューを参考にしていただきたい。

バリバラ「悪夢」レビュー ~障害者ドラマを超えた何か~
http://togetter.com/li/754668#c1700249

 実は僕はこのレビューを読んで、再放送を観てみようという気になったのである。うまく後半のネタバレを伏せてくれているのもありがたかった。
 公式サイトでも触れられていないし、この人も触れていないけど、主人公をはげますマキちゃんという明るい少女(少年? どっちだかよく分からない)の存在が大きい。劇中でどんな役割を果たすのかは、それこそネタバレになるから書けないけど。

 さて、公式サイトでは「ハートフルコメディー」ということになってるけど、正直言ってあまり笑えない。扱っているテーマがシリアスで重いということもあるけど、こわいシーンがいくつもあるからだ。

 特にこわいのは、統合失調症の主人公(ハウス加賀谷)がいつも苦しめられている幻覚「シロイヒト」。
 特撮も何も使わず、昼間の普通の商店街を、裸で白塗りの男たちがのたのたと歩いてくるというシュールな映像。通行人は誰もそれに気がつかない。
 手抜きのように思えるかもしれないけど、これはリアルな表現なんである。幻覚というのは(まだ見たことはないけど)、多くの場合、現実と同じぐらい存在感があるのだそうだ。実際にそこにいるかのように思える。だから特撮なんか使うとかえってぶち壊しなんである。
 幻覚のために奇行に走る主人公。しかし、周囲の健常者にはそれが見えないから、何をやってるか分からない。そのギャップがうまく表現されている。
 しかも幻覚と現実の区別がつかないというのが、ちゃんとクライマックスの伏線になっている。
 ちなみに主演のハウス加賀谷自身、12歳の時から統合失調症を発症しており、彼の実体験も作中に反映されているのだそうだ。

 で、やっぱり素晴らしいと思えたのは、「健常者お断り」と書かれた障害者だけが集まる店の描写。
 本物の障害者(脚がない人、顔が変形している人、脳性まひの人、などなど)が大勢出演してるんだけど、最初こそ緊張するが、だんだん普通に見えてくるのだ。
 そうか、こんな風に普通に障害者を描いても良かったんだな。
 このへんはほんと、テレビのタブーを大胆に破ってくれて快感である。

 さらに秀逸なのは、この店に迷いこんだ主人公が、障害者たちにおびえ、「ここに普通の人はいないのか!?」と叫ぶところ。彼は明らかに障害者に対する差別意識を持っている。
 同じ台詞を健常者に言わせたら単に不快になるだけだけど、精神障害者である主人公に言わせるのだ。
 障害者を扱ったドラマというと、差別表現回避に過敏になるあまり、障害者を無垢な存在として描きがちなんだけど、ここでは障害者でさえ差別意識を持っていることを示すことで、逆に障害者も普通の人間であることを表現している。

 この脚本書いた人、ただ者じゃない!

 少なくとも、この表現方法は僕には思いつかなかった。いや、思いついても「これ、やっていいの?」と悩んだと思う。

 そこに現われた謎の男が、主人公に「食べれば障害が治る」という不思議な果実を渡す。ただし、副作用として、過去の記憶を失う。
 障害に苦しみながら生きるか、それとも記憶を失うか。
 この二者択一が秀逸で、特にクライマックスで大きな意味を持ってくる。

 で、ラスト。
 一見するとハッピーエンドのように見えるけど、「ほんとにそれでいいの?」と視聴者に考えさせる、そんなもやもやした結末になっている。
 安易な結論は出ないし、出しちゃいけない──そこまで考えて作っている。

 ぜひ多くの人に観てほしい。再々放送、もしくはソフト化を熱望する。
  
タグ :障害者NHK


Posted by 山本弘 at 12:33Comments(9)テレビ番組

2014年12月11日

初めてRPGを知った日のこと・そして3D小説

 11月28日にやったLiveWire「 『ゴーストハンター』とグループSNEの世界」のご報告。

http://hirorin.otaden.jp/e402334.html

 特に話す内容を打ち合わせずに、即興でやったんだけど、安田さんがいっぱい喋ってくださって助かりました。 正直、『パラケルススの魔剣』書いた頃のこと、あまり覚えてないもんで。
 ちなみに第3作の『アルケリンガの魔海』には僕は噛んでないんだけど、安田氏のプロットを基に川上亮(秋口ぎぐる)が執筆、それをさらに安田氏が手を加えるという合作。来年1月に発売予定だそうだ。

 おそらく出版関係者なら驚く(出版関係者でないと驚かない)と思われるのは、SNEの社員が『ソード・ワールド』とかの小説書いても、印税の9割が作者に行く、という話。つまりSNEが取るロイヤリティは印税の10%。
 普通、ありえませんよ、こんな数字。安田さんが業界の常識をよく知らずに飛びこんだってこともあるんだけど、僕も長いことSNEでしか仕事してなかったから、10%が当たり前だと思ってたよ(笑)。
 聞くところでは、50%ぐらい取るところや、もっと取るところとかもあるらしい。会社によっていろいろだけど。

 あとは3D小説の話題。グループSNEの企画で、去年、第一弾をやって、今年の7月に第二弾をやったらしい。
「らしい」というのは、恥ずかしながら、僕はリアルタイムで見ていなくて、知ったのは8月のJGC(ジャパン・ゲーム・コンベンション)だからである。

公式サイト
http://3dnovel.jp/#top

ASCIIの紹介記事
http://ascii.jp/elem/000/000/926/926193/

 この紹介動画を見ると、だいたいの雰囲気が分かる。



 ライブRPGや脱出ゲームに似てるけど、違うのはプレイヤーが日本全国に散らばっていて、協力して謎を解いてゆくということ。危機に陥るのはプレイヤー自身じゃなく、小説の登場人物を救うのが目的だということ。
 僕は後から追っかけただけだけど、凝った暗号とかを仕掛けても、プレイヤーたちの協力であっさり解かれてしまうのだ。集合知ってすごい。
 あと、プレイヤーの提案によって、作者がどんどんストーリーを変えてゆくのだそうで、このへんはPBMに近いかな。 『朝のガスパール』とかも。
 確かにこれは面白そう。大流行するかどうかは分からないけど、ハマる人間は多いだろうと思う。
 ちなみに、聞いた瞬間に僕が連想したのは、『アイの物語』の中の「宇宙をぼくの手の上に」だった。あれを書いたころはまだツイッターというものはなかったわけだけど、「みんなの協力で小説の主人公をバッドエンドから救う」というコンセプトは、だからすごく理解できるんである。

 司会の井田さんが食いついてきたのが面白かった。この人も実はSFファン。SFファンなら、これがどれほどすごい概念なのか、すぐピンとくるんだろう。
 もしこれが普及し、さらに拡張現実が取り入れられるようになったら、世界が変わる。ゲームと現実が地続きになる。フィクションと現実の境界がなくなるってことなのだ。
 すべての人間が3D小説をプレイしていて、ゲームと現実の区別がつかなくなった未来……というのを想像すると、すごいSFが書けそうな気がするんだよね。

 それで思い出したのが、1970年代の末頃、安田さんが〈SFマガジン〉誌上で、「今、アメリカでは『D&D』というゲームが流行っていて」と、初めて紹介された時のこと。
「何これ? ロールプレイング・ゲーム? よく分かんないけど、すごそうなものが出てきたぞ!」と、わくわくしたのを覚えている。
 あの時のわくわく感と同じものを感じるのだ。

 ちなみに、「どうやって儲けるんですか?」と訊ねたら、やはり関連書籍(リプレイ本とか)の販売で回収するのだという。
 すでにドワンゴが噛んでるんだけど、提携する企業がいくつも出てきたら、ゲーム内広告とかでも儲けられそうな気がするんだけどねえ。
  


Posted by 山本弘 at 12:16Comments(2)ゲーム

2014年12月11日

「僕らは何故、電子の歌声に魅了されるのか?」報告

 遅くなりましたが、11月30日にやったイベントの報告。

 まず最初は、司会の大須賀さんによる、人工的に人間の声を作ろうとしてきた人々の歴史の解説。ベーコンあたりまで遡るんだけど、18世紀にケンペレンが作った音声合成機(これ、今ならニコニコ技術部の人が作りそう)やら、ボコーダーの誕生やら、1960年代に作られた「デイジー、デイジー」と歌うマシン(もちろん『2001年宇宙の旅』の元ネタ)やら、80年代の声の出るエロゲやら、面白い話題がいろいろ。こういう試みが初音ミクの誕生につながるわけだ。
 この話聴けただけで、「来て良かった」と思えた。

 特別ゲストのotomaniaさんの話も面白かった。あの名作「VOCALOID2 初音ミクに「Ievan Polkka」を歌わせてみた」は、『初音ミク』が発売されて4日目の2007年9月4日にニコ動にアップされてるんだけど、歌自体は9月2日にもう完成していたのだとか。早い! なのに今聴いてもまったく色褪せない完成度。



 トークしながら、即興でぱぱぱと『初音ミク』を操作して歌わせたりもしてくださいました。なるほど、こうやって作るのかと感心。
 ちなみに、あの悪名高い『アッコにおまかせ』事件では、実はotomaniaさんもTBSから出演の依頼があったんだけど、寸前で向こうの方からキャンセルしてきたんだとか。ああ、たぶんTBSのディレクターが求めていたものと合わなかったんだろうな……。
 頭の固い人間に受け入れられなかったのも無理はない。当時は、まさかボカロ曲がオリコン上位に入るのが当たり前の時代がこんなに早く来るなんて、僕だって夢にも思わなかったよ。それどころか、今や小林幸子が「千本桜」歌うんだもの。
 ミクが登場して、まだたった7年だよ!?

 僕はというと、『ミク』発売当初からニコ動で追いかけていた。
 リアルタイムで僕が楽しんだのは、こういうのとか、



 こういうのとか、



 こういうのとか、



 きわめつけ、こういうのも。みんながコメントで盛り上がってるのが楽しい。



 これらはすべて、2007年9月30日までにアップされた動画なのだ。「『初音ミク』はこんなにもいろんな遊びができる」というのが、あっという間に知れ渡ったわけである。
 他にも「恋スルVOC@LOID」が9月13日、「みくみくにしてあげる♪」が9月20日と、すでにオリジナルの名曲がいくつも生まれているし、3Dモデルを作って動かしている人もいた。発売されてたった1か月で、その後のムーブメントの基本はかなり出揃っていた感がある。
 やはり、ニコ動の人気が盛り上がった時期とちょうど重なったというのが、『ミク』のヒットの要因だろう。

 ちなみに(前にも書いた気がするけど)、僕が最も衝撃を受けたのが、その年の12月18日にアップされたこれだった。



 僕はこの曲を聞いて、感動のあまり、ぼろぼろマジ泣きしてしまったんである。普段、人間の歌で泣いたりしないのに。 今もこの曲を聴くたびに、パブロフの犬のごとく、目頭が熱くなる。
 それまで、まだ僕はミクを甘く見ていた。「面白いソフトウェア」「声の出るシンセサイザー」という程度の認識だった。だが、「金の聖夜霜雪に朽ちて」を聴いて思い知らされた。
 機械の歌は時として、人間以上に情動を動かす力があるのだと。

 他にも、『地球移動作戦』のヒントになったこれとか、



 やはり『プロジェクトぴあの』に大きな影響を与えた「サイハテ」とかの話もいろいろ。 もちろんotomaniaさんたちからも、面白い話をいっぱいうかがえた。

 有意義なイベントだったと思う。
  


Posted by 山本弘 at 11:42Comments(1)ニコニコ動画サブカル

2014年12月11日

『翼を持つ少女 BISビブリオバトル部』


 東京創元社 2052円
 12月22日発売

 中高一貫の国際学園BISに通う埋火武人(うずみびたけと)は、ある日、図書館で同級生の伏木空(ふしきそら)とばったり出会う。
 空はSFが大好きな少女。SFの話をはじめると止まらない。
 武人の亡くなった祖父はSFマニアだった。彼の遺した膨大な蔵書に魅了される空。しかし武人はノンフィクションしか読まず、SFを毛嫌いしている。
 武人は空をビブリオバトル部に勧誘する。初めてビブリオバトルを観戦する空。BISビブリオバトル部には、部長の聡(さとる)をはじめ、理系のクールな美少女・明日香(あすか)、腐女子のミーナ、かわいいものが大好きな少年・銀(ぎん)など、それぞれに本を愛する個性豊かな面々が揃っていた……。


 キャッチコピーは「日本初の本格的ビブリオバトル青春小説!」。日本初じゃなく世界初じゃないかと思ってるんですが。
 きっかけは去年のSF大会で「子供たちにSF本を」というパネルディスカッションを見たことでした。

SF大会レポート2:SF大会で新作のアイデア浮かんだ
http://hirorin.otaden.jp/e284093.html

 どうすればSFを知らない若い世代にSFの面白さを伝えられるのだろうか……と考えていた時、このパネルの中でビブリオバトルの話題が出てきたもので、「これだ!」とひらめいたわけです。SFが大好きな少女を主人公にしてビブリオバトルをやらせようと。
 しかも、考えてみれば、べつにSFに限定することはないんですよ。各キャラクターごとに得意分野があることにすれば、ノンフィクションだろうと科学本だろうと図鑑だろうとマンガだろうとライトノベルだろうと、本なら何でも取り上げられる。本を読むことの楽しさを伝えられる。
 と学会ではずっと、ひどい内容の本ばかり紹介してきたわけですが(笑)、逆に面白い本ばかりを紹介するのもいいんじゃないかと思いついたわけです。
 作中に登場する本はすべて実在のもの。世界の名作とかベストセラーとかではなく、(一部を除いては)ややマイナーな本が多いです。本好きの読者でさえ「そんな本あるんだ!?」と驚くような本をセレクトしました。

 もちろん、ただ本を紹介するだけでは小説にはなりません。「ドラマを盛り上げる」」「バトルを熱くする」という点に全力を注ぎました。
 特に苦労したのはビブリオバトルのシーン。バトルといっても物理的に戦ってはいないわけですが、それでも熱く見えなきゃいけない。どんな本を登場させるかはもちろん、誰がどの順番で紹介するか、どういうアピールをするか、各キャラクターがその本にかけた想い、そして誰に勝たせるか……と、バトルの手順を組み立てるのが、毎回、書いていて悩ましいし、楽しいんです。
 あと、青春小説なんで、もちろん恋も出てきます。特に空と武人の関係。1巻では、すでにお互いに意識し合ってるのに、表面上はぶつかり合ってる……というライトノベル的王道展開が、書いてて楽しいんですよね。2巻以降は、明日香や銀など、他の部員にもスポットを当ててゆく予定です。

 本好きの方ならおおいに共感していただけるでしょうし、本をあまり読まない方も、この機会に本を好きになっていただけると期待しています。

  


Posted by 山本弘 at 11:21Comments(3)SFPRビブリオバトル

2014年12月11日

山本弘のSF秘密基地LIVE#41: ビブリオバトルをやってみよう

山本弘のSF秘密基地LIVE#41
ビブリオバトルをやってみよう

 本を通して人と人をつなぐ知的書評ゲーム〈ビブリオバトル〉。それを題材にした小説『翼を持つ少女 BISビブリオバトル部』(東京創元社)の発売を記念したイベントを開きます。
 前半はビブリオバトルの実演、後半はビブリオバトルをめぐるトークショー。ビブリオバトルの実演では、会場に来ていただいたみなさんも投票していただけます。ふるってご参加ください。


[出演] 山本弘(SF作家)

[日時] 2014年12月26日(金) 開場・19:00 開始・19:30

[会場] なんば紅鶴(大阪市中央区千日前2-3-9 レジャービル味園2F / Tel. 06-6643-5159)(地図)南海なんば駅より南海通り東へ180m・駐車場有

[料金] 1500円
(店内でのご飲食には別途料金がかかります。入場時に別途ワンドリンクをご購入いただきますのでご了承ください)

予約はこちらから。
http://boutreview.shop-pro.jp/?pid=80568322
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 今年最後の「山本弘のSF秘密基地LIVE」はビブリオバトルです。互いに面白いと思う本を持ち寄り、熱くアピールし合います。僕もとびきり面白い本を持っていきます。
 今のところ出演名が僕だけになってますが、他にも有名ゲストの方をお招きしようと交渉中です。決まり次第、お知らせいたします。お楽しみに。

  


Posted by 山本弘 at 10:06Comments(2)PR