2014年03月03日

Wikipediaすら読まない人たち

 関東地方各地の図書館や書店で、『アンネの日記』やその 関連本が破損されるという事件が相次いでいる。被害を受けた本はすでに300冊を超えるそうだ。
 今のところ、手がかりが少なすぎて、犯人像に関してはどんな可能性も考えられる。極端な話、『詩羽のいる街』の第3話に描いたような、政治的な背景なんか何もなくて、ただ単に人を不快にしたいだけの奴という可能性だってある。
 犯人の正体について、「……かもしれない」とか「……ではないかと思う」とか、推測や感想を述べるのは、べつにかまわない。
 しかしネットを見ると、もうすでに「犯人は○○だ!」と断定している者が大勢いるのだ(右と左、両方から)。
 おいおいおい、今の状況からなぜ断定できるんだ、あんたらは?
 その断定が間違っていた場合、ちゃんと責任取るの?(取らないだろうなあ……)

 さて、今回、僕が注目したのは、事件そのものは別のことである。
 この事件の報道に対するmixiでのつぶやきを見ると、こんな意見が散見されるのだ。

>まあ、アンネの日記は聖書、人間革命と並ぶ世界三大偽書だから、どうでもいいや。

>「アンネの日記」の嘘http://www.geocities.co.jp/Technopolis-Mars/5614/an.html

>「アンネの日記」→アンチの日記。そもそもが偽りの小説。そして今回もプロパガンダに利用され、日本=ナチスの構図を作りたい奴等が居るってこと。 安い仕掛けww

>アンネの日記はアンネが書いた物ではない。別の人間が書いた物である。 http://bit.ly/1mym0Qf ・・・計40近くの図書館とは大掛かりである。個人の仕業ではないだろう。政治的意図を感じる。

>ホロコーストは世紀の大嘘だという事はもう常識ですね。ヨーロッパ各国じゃ軒並み事実関係を調査しようとするだけで捕まるってんだから、ちゃんと調べられたら困る(嘘がバレる)と言ってるようなもの

 そう、『アンネの日記』偽書説やホロコースト捏造説を信じちゃってる奴がいるんである。ある記事では、全171件のつぶやき中、5件がこうした陰謀説を唱えていた。全体の3パーセントだから、決して多くはないんだが。
 それにしても最後の奴の「もう常識ですね」にはあきれる。どうも「常識」という言葉を「俺の信念」と同義語に使う奴がいるようだ。
 日記でもいる。

>アンネの日記については裁判にもなってるし、一部の内容は捏造なのでそこは公にしてほしい。
>(収容所に毒ガスを巻かれて大量殺害はなかったはず)

>これは研究の結果、筆記具の時代性が適合せず、二次大戦後の宣伝文書であると解明されたものではなかったか。

>アンネの日記が捏造だということをご存じですか?
>ありもしないガス室によるユダヤ人ホロコーストをでっち上げ、聖書の予言の実現としてのユダヤ人国家を作るのに貢献したのがアンネの日記です。
>少なくともガス室は存在しませんでした。検証に耐える証拠が一切ありません。ちょっと調べれば分かります。私が読んだ本(絶版ですが)矢印(右)︎
>http://www.amazon.co.jp/アウシュウィッツ「ガス室」の真実―本当の悲劇は何だったのか-西岡-昌紀/dp/4817403934/ref=cm_cr-mr-title

 西岡昌紀!(笑) いやあ、やっぱあれを信じちゃってる人もいるんだなあ。
 ちなみに最後の奴は、『アンネの日記』偽書説やホロコースト捏造説だけじゃなく、911陰謀説も信じてた。ある嘘に騙される人間は、別の嘘にも騙されやすいのだろう。(でもって本人は、「世間の連中の方が騙されているのだ」と信じてる)

 確かに『アンネの日記』偽書説が唱えられたことがあり、それをめぐる論争もかつてはあった。しかし、とっくに調査が行なわれ、決着がついている。偽書ではないのだ。
 このへんの解説が詳しい。

「アンネの日記」真贋論争~偽書説が科学的検証を経て否定されるまで
http://kousyou.cc/archives/6102
『アンネの日記』偽書説への反論
http://togetter.com/li/633320

 それにしても不思議に思う。
 この人たち、ってWikipediaすら読まないのか? 偽書説についてもちゃんと書いてあるんだけど。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%8D%E3%81%AE%E6%97%A5%E8%A8%98

 履歴を見ると、2006年ごろから偽書説を信じる者による編集が行なわれ、それに対抗する形で偽書説否定の記述が充実していったらしい。2014年現在、「アンネの日記」で検索すれば真っ先にWikipediaの記事がヒットして、偽書説が嘘であることが誰でも分かるはずなのである。

 もちろんWikipediaも常に正確ではない。かつてほどではないにせよ、間違ったことを載せている項目もたくさんある。
 しかし、何か重大な問題を語る際に、Wikipediaすら読まないというのは怠慢すぎやしないか?
 僕は前にこう書いた。

http://hirorin.otaden.jp/e273766.html
>「騙されただけだ」という言い訳は通じない。あなたがデマを信じてしまっただけなら被害者だが、それを拡散した時点で、あなたも加害者なのだ。被害者ではなく加害者になることを恐れてほしい。

 ツイッターでつぶやいたり日記に書いたりする前に、基本的事項を確認することもせず、嘘に踊らされて陰謀説の拡散に加担する。
 そんなのは怠慢を通り越して「罪」である。

 似たようなので、「クライメートゲート事件」なんてのもある。

気候研究ユニット・メール流出事件
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%97%E5%80%99%E7%A0%94%E7%A9%B6%E3%83%A6%E3%83%8B%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%83%AB%E6%B5%81%E5%87%BA%E4%BA%8B%E4%BB%B6

 これなんか、もう何年も前に疑いが晴れてるのに、いまだにこの事件を根拠に「地球温暖化は捏造だった!」と騒いでる連中がいる。どんだけ情弱なんだ。
 他にも「江戸しぐさ」「武田邦彦」「アポロ計画陰謀論」「血液型性格分類」とかもそうで、Wikipediaを読めば怪しさがよく分かる。こういうのを信じる人というのは、そもそも「ググる」という習慣がない人たちなのかもしれない。

 騒ぐ前に、最低限、ググってみようよ。  
  
タグ :デマ陰謀説


Posted by 山本弘 at 17:16Comments(18)事件メディアリテラシー