2014年01月24日

コミケの困ったちゃんの話(後編)

 しかし、XXは3年前のことをまるで気にしている気配がない。僕を怒らせたことが記憶から抜け落ちているのか、まるで友人ででもあるかのように親しげに話しかけてくる。
 これがまた、実にしょーもない話題ばかり!

「『○○』というアニメ、ご覧になってました?」
「いえ、観てません。第一話だけ観て切りましたから」
 そんな話をする気はないから、わざと無愛想に突き放したのだが(第一話だけ観て切ったというのは事実)、XXは僕の返答をあっさり無視した。
「ネットであの作品について議論が起きてるんですけど、それについて山本先生の意見をうかがおうと……」
 と、そのアニメについての話題を強引に語りはじめる。
「ちょ、ちょっと待って」と僕は慌てて制止する。「僕はそのアニメを観てないって言ったでしょ?」
「いえ、でも……」
「観てないから分かりません。何も語れません」
 XXはちょっと残念な顔をしたが、すぐに別の話題――好きな映画の話題を振ってきた。
「『△△』の続編が製作中なんだそうですよ!」
「はあ、そうですか……」
「主演が『□□』の%%なんですよ! 今から期待しちゃいますよね!」
 このへん、どんな固有名詞が発せられたか、記憶から飛んでいる(笑)。
「『**』はご覧になりました?」
「はあ、まあ……」
「IMAXの3Dですか?」
「はあ……」
 本当はIMAXじゃなかったんだけど、いちいちそんなこと説明したくもない。
「あの冒頭のシーンが素晴らしかったですよね!」
 ああ、確かに素晴らしかったけど、お前とは語りたくないんだよ。それぐらい察しろよ。
 彼はそれからも次々に作品名を挙げて、あれが良かったとか、あの監督がどうとかいう話をえんえん続ける。終わる気配がない。
 つーか何でこいつ、僕が怒ってないと思ってるんだ?
 マジで、3年前のことを忘れてんじゃないのか?
「あのー、そんな話、僕はしたくないから」
 追い払いたくてそう言うと、
「そうですか。じゃあ今、どんなアニメをご覧になってるんですか?」
「何でそんなことをあなたに教えなくちゃいけないんですか?」
「あっ、この前、ブログで紹介されていた『++』はどうですか? 面白いですか?」
「あのねえ、そんなことを訊ねてどうするの? 僕から何を聞きたいの?」
「山本先生の感想を聞きたいんです!」

 嘘だ。

 お前、さっきから、僕の話、ぜんぜん聞いてないじゃん。僕の言葉が全部、頭の中をすり抜けてるじゃん。
 僕の話を聞く気なんてないだろ?
 僕と話したいんじゃなく、自分の好きな映画やアニメの話を一方的に語りたいだけなんだろ?
 悪いけど、そんなのにつき合う気、ないから。

 さて、コミケに行ったことのない方のために説明しておく。
 コミケのブースというのは、1つのテーブルを2つのサークルが使用する。1サークルあたりの幅は90cm。これは2人の人間が横に並ぶことしかできない幅である。
 この状態で、ずっとブースの前に立っておしゃべりをされたらどうなるか。
 ブースの半分をずっと占拠することになる。後から来るお客さんが、1人ずつしかサークルの前に立てないから、大変に迷惑である。
 それだけじゃない。参加者の中には、歩きながらふと目についた本に興味を抱いて、手に取る人もいる。でも、XXはずっと僕の新刊の前に居座って、通りかかる参加者たちの視線から、新刊を遮っている。つまり営業妨害。
 実際、XXがくだらないおしゃべりを続けている間にも、次々にお客さんがやってきてるんである。新刊を手に取るために、突っ立っているXXの脇から手を伸ばす人もいる。
 僕がたまりかねて、「お客さんのじゃまだからどいて!」と言うと、XXはちょっとだけ後ろに下がるが、お客さんがいなくなるとまた戻ってきて話をはじめる。
「そうじゃなくて、どっか移動して! そこに立たないで!」
 僕がそう言うと、XXはどうしたか?

 なんと、隣のブースの前に移動して、そこに立って話を続けるのだ!
 こいつ、隣のサークルさんにまで迷惑かけてやがる!
 これにはさすがにブチ切れた。
「どっか行け! 立ち去れ! お前とは二度と話したくないから!」
 そう言うと、XXはようやく去っていった。
 どっと疲れた。

 実は10何年か前にも、やっぱりブースの前で居座ってくだらない話をえんえん続ける奴がいた。それも本も買わずに。
「他のところも回って来られたら」と遠回しに追い払おうとするんだけど、ぜんぜん動かない。
 いいかげん不愉快になってきて、「本も買わないのに立ってられると迷惑なんですけど」と言ったら、「買いますよ、買えばいいんでしょう」と、へらへら笑う。
 さすがに切れて、「お前なんかに買ってほしくない! どっか行け!」と怒鳴りつけて追い払った。
 その時にもNくんがいて、「山本さんが怒ったところ、初めて見ました」と驚いていた。そりゃ僕だって、腹が立って誰かを面と向かって怒鳴りつけることなんて、10年に1度あるかないかだよ。
 ちょくちょく、よそのサークルでも、ブースの前に立って長話をしている人を見かけるけど、あれは本当にサークルの誰かの知り合いなのか、それとも無駄話で迷惑をかけてる困ったちゃんなのか。

 僕はコミケで同人誌を買う時、可能な限りブースの前に立つ時間を短くしている。
 内容を知っている本なら、「これ1冊ください」と言ってお金を出し、本とお釣りを受け取って、ただちに立ち去る。
 内容をよく知らない場合、ぺらぺらとめくって中を確認する。売り子の人と本の内容について話すこともある。「今回の新刊はどちらですか?」とか「妻から頼まれたんですけど」とか「これ、調べるの大変だったでしょう」とか「『RWBY』の本って、今日、ここだけなんですよねー」とか「がんばってください」とか言うこともある。
 必要最低限のことだけ喋って、本を買って立ち去る。長くても1~2分程度だ。

 親しい人が僕のブースに来る場合も同じ。あいさつをして、同人誌を買って、ちょっとした近況報告なんかもして、すぐ去ってゆく人が大半である。長い用件がある場合、その場では話さず、「後でメールでお送りしますから」と言われることもある。
 親しい人でさえそうなんである。まして親しくない人間が、しかも何ら重要性も緊急性もない用件で、なぜ長々と居座るのか。
 ブースの前に長時間居座るのは迷惑――それはコミケ参加者なら、誰かに教わるまでもなく、ごく普通に身につけるマナーだろう。

 その基本的なマナーがXXには分からない。
 なぜなら、彼は他人の心理が理解できないからだ。自分の行動が他人を不快にしているという意識がまったくない。僕の言葉も頭の中を素通りする。
 だから、いくら言っても態度を改めないし、僕に嫌われているということすら認識できないのだろう。
 だからXXでなくても、こういう迷惑な奴が来たら、きつい言葉で追い払っていいと思う。「それはマナー違反なんだ」ということを叩きこんでやらなくちゃ、今回の件のように、他のサークルさんにも迷惑をかけるかもしれないしね。
  


Posted by 山本弘 at 14:01Comments(16)コミケ

2014年01月24日

コミケの困ったちゃんの話(前編)

 12月30日はコミケのサークル参加。夏コミは申し込みの不備で落選したもので、1年ぶりのサークル参加である。
 新刊の『世にも不思議な物語』の資料本、60部持って行ったのが、昼頃には完売した。こんなマイナーな番組の本が売れるかどうか疑問だったので、持ち込み数を絞ったんだけど、その予想が裏目に出た形。嬉しい誤算というやつである。
 いつものことながら、同人誌の印刷部数には悩む。今回みたいに予想以上に売れることもあるが、「これはきっと売れる」と思ってたくさん刷った本がさっぱり売れなかったことも何度もある。こればっかりは晴海時代から四半世紀もコミケにサークル参加してても、いまだに読めない。
 まだ30部ぐらい家に余っているので、夏コミでまた売ろう。

 逆に、前年は売れた『チャリス』が今回はイマイチ。それでもちょくちょく、4冊まとめて買っていく方がおられて、嬉しくなる。
 ちなみに今回、娘は開田裕治さんのブース(壁際)で売り子をさせた。娘はまだ17歳。18禁の本を売らせるわけにはいかないからである。来年は18になるので、「これで18禁のBL同人誌が買える!」と本人も張り切っているのだが(笑)。
 今年の娘のコスプレは、キョウリュウグリーン=ソウジ。緑色の学生服は妻の力作である。ガブリボルバーを入れるホルスターは『てれびくん』の全プレだが、子供用なのでベルトの長さが腰周りに合わず、妻が大改造を施した。
 来年の夏コミは『Free!』の鮫柄学園水泳部のジャージの予定。もうすでにほぼ完成しているという恐るべき事実。

 さて、ブースにはたくさんのお客さんが来ていただいて、本当にありがたかった。
「新刊読みました」とか「ずっとファンです」とか言われると、やる気が湧いてくる。サインを求められることもある。もちろんサインぐらいいつでも喜んでする。
 しかし、不愉快な思いもしたことも報告しておかなくてはならない。

 開始早々、マイミクのNくんに店番を頼んで、一時間ほど買い物に行った。
 ブースに戻ってみると、客の相手をしていたNくんが、僕の接近に気づき、手の平をこっちに突き出して、「来るな」というサインを出している。
 これは……「厄介な客が来てる」というサインか!?
 事前にサインの取り決めをしていたわけではなかったが、僕はとっさにそう判断して、Nくんの後ろを素通りした。客が「あれ? 山本先生?」と声をかけたが、無視して歩み去った。
 遠くから様子を伺っていると、案の定、その客はなかなか立ち去らない。僕はしかたなく、会場を回って10分ほど時間を潰した。

 しばらくして戻ってみると、その客の姿はなかった。僕が「厄介な客だった?」と訊ねると、Nくんは「厄介な客でした」と苦笑する。それ以上、深くは訊ねなかった。
 とりあえずいなくなってくれてほっとした。今度はNくんが買い物に出ることになり、僕は売り子を交代した。
 ところが……。

 そこに戻ってきたのである、さっきの奴が!

「山本先生、私、XX(仮名)です」

 ああー! あいつかー!

 以下の文章を読んで、もしかして「山本弘はファンをこんな邪険に扱うのか」と誤解する人がいるかもしれないので、事前に説明しておく。
 こいつ、僕のファンなんかじゃねーから!
 いや僕も以前は、てっきり僕のファンだと思いこんでたんだよ。mixiで頻繁に長文のメッセージ送ってくるから、やけに熱心な人だなあと。
 そのメッセージの内容というのは、自分の好きな映画とかテレビ番組とかの話題を長々と書いて、最後の方にちょこっとだけ、「山本先生はどう思われますか?」とか書いてあるの。一度など、「お聞きしたいことがってメールをよこしました」(原文ママ)という出だしで、最後まで質問が書いてなかったことがあった(笑)。
「お気に入り映画20本を教えてくださりますと助かります」と書いてきたこともあった。「助かります」って何だよ? 僕が映画タイトルを20本挙げたら、君がどう助かるっちゅーの? だいたい、僕が見た何百本もの映画から、20本を選出するって大変な作業だよ。『映画秘宝』あたりから依頼されたら、丸一日考えちゃうよ。 君はなぜ僕にそんな作業を要求するの? 僕はなぜ原稿料ももらえないのにそんな作業しなきゃならんの?
 もちろんそんな要求、拒否したけど。
 あと、「お聞きしたいことがってメールをよこしました」でも分かるように、こいつの文章はデタラメである。「山本弘先生は西部劇だけどSFでもあるでというSF小説のは何所まであるんでしょうか?」(原文ママ)とか、平然と書いてくるの。
 不思議なことに、彼のmixiのコミュとかでの発言を見ると、その気になればきちんとした文章が書けるんである。僕に送ってくる時だけ「お聞きしたいことがってメールをよこしました」になるのだ。
 つまり、僕にメッセージを送信する前に、まったく推敲してないってことなんだよね。
 一度、いくらなんでもそれは失礼だと叱りつけた。そしたら、一時的は反省したんだけど、その後もぜんぜん直らない。あい変わらずのデタラメな文章でくだらないことをえんえんと書いてくる。
 しかも「文書にまとまりがなくてすいません」(原文ママ)なんて書いてあったりする。つまり自分の文章(「文書」ではない)にまとまりがないことを自覚してるんである。なのに「送信する前に直そう」とは思わないらしいのだ。

 ある時、彼からのメッセージを読んで愕然となった。
 彼が僕の小説をまったく読んでいない、それどころか『MM9』や『去年はいい年になるだろう』を書いていることも知らないということが、その文面から分かっちゃったのである。
 それでようやく気がついた。これまで、こいつからのメッセージには、自分の見た映画やテレビ番組の感想ばかりで、僕の小説の感想なんかまったく書かれてなかったということに。
 つまり「何だかよく知らないけど山本弘という作家がいて、僕の話を聞いてくれてる」という程度の認識だったのだ。
 その時の僕のショックと落胆をどう表現したものか。今までファンだと思っていたから返事を書いてやっていたのに、裏切られた気分だった。
 もう一度叱りつけたら、逆ギレしたメッセージが返ってきた。例によって「僕も本気呆れ返れました」(原文ママ)とか文法デタラメで支離滅裂だった(笑)。僕はもうこいつとのコミュニケーションは無理と判断して、メッセージを受信拒否に設定した。
 それが2010年4月のこと。あの時、僕はもう彼との関係は切れたと思ってたんだが……。
(つづく)
  


Posted by 山本弘 at 13:40Comments(2)コミケ

2014年01月23日

講座「料理をするように小説を書こう!」

作家・山本弘の
料理をするように小説を書こう!


 あなたの書きたい題材を料理をするように形にしてみませんか。どんなジャンルでも構いません。作家・山本弘が美味しく調理する(書く)手法を伝授します。
◎受講生で自作の短編作品がございましたら添削いたします。作品の提出はメールに添付(宛先=mint@k-cc.jp、件名に「山本教室添削希望」と書いて送信ください)または、フラッシュメモリやCD-Rなどのデータでご提出ください。締切は2/23の講座内でお知らせいたします。

日 時 2014年02月09日~2014年03月09日 13:00~15:00
定員数 20
主催 神戸新聞文化センター(KCC)
場所 三宮KCC教室
講師 山本弘
参加費(全3回)7,875円

予約申し込み・問い合わせははこちらまで
http://k-cc.jp/PageMoreevent/01/27676/Default.aspx

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 こういう講座をやることになりました。 僕が26年の作家生活で貯めこんだ様々な実用的ノウハウを、料理にたとえて分かりやすくレクチャーしようというものです。どこでアイデアを見つけるか、どうやってプロットを組み立てるか、キャラクターの創り方、ストーリーを盛り上げるちょっとしたコツ……それらを実際の作品(『MM9』『アイの物語』『詩羽のいる街』などなど)を例に挙げ、その裏話を交えて解説します。
 他にも、「プロ作家はどれぐらい儲かるか」「デビューするにはどうすればいいか」といった話題も満載です。
 前にLiveWireでも同じタイトルでやったことがありますけど、あの時は2時間しかなくて、ものすごい駆け足になっちゃって、言いたかったことをいろいろ言い忘れたりしてました。今回は3回に分けてじっくりやります。
 さらに今回は、あなたの書いた小説の添削もいたします!
 プロを目指す人も、趣味で小説を書きたい方も、必ず役立つ内容だと自負しております。

 あと、「山本弘は金に困ってこんなこともやるようになったのか」と陰口を叩かれる前に言っておきます。
 講師なんて儲かりません!(笑)
 講座は2時間。会場までの往復の時間も入れれば、正味4時間ぐらい費やします。たぶん添削にはもっと時間がかかります。同じ時間があれば、原稿書いてた方がよっぽど金になります。
 これはほとんど趣味のようなものですね。僕の編み出したノウハウを埋もれさせたくない。小説を書きたい方にできるだけ多く伝えたい。その思いだけでやってます。
 小説を書きたい方をお待ちしております。
  


Posted by 山本弘 at 21:06Comments(9)PR

2014年01月23日

あなたの知らないマイナー特撮の世界#7

Live Wire 14.1.31(金) なんば紅鶴|山本弘のSF&トンデモNIGHT#30
あなたの知らないマイナー特撮の世界#7

 『ウルトラマン』や『仮面ライダー』や『ゴジラ』ばかりが「特撮」じゃない!  一世紀以上に及ぶ特撮の歴史の中には、一般にほとんど存在を知られていない作品、よほどの特撮マニアでさえ言及することの少ない作品が山ほどあるのです。

 歴史の闇に埋もれたそうした作品の再評価や、作品の生まれた時代背景、特撮シーンの見どころなどを紹介しつつ、愛にあふれるツッコミを入れまくろうというのがこの企画。第二次怪獣ブーム真っ盛りの1970年代。有名作品の影に埋もれたマイナー作に、愛あるツッコミを入れていきます。

 今回も、特撮をこよなく愛する小説家でゲームデザイナーの友野詳さんと、特撮マニアでB級アイテム・コレクターの鋼鉄サンボさんのトリオ、おなじみ「ナニワの特撮三兄弟」でお送りします。


[出演] 山本弘(SF作家/と学会会長)、友野詳(作家)、鋼鉄サンボ(マイナープラモデルコレクター)

[日時] 2014年1月31日(金) 開場・19:00 開始・19:30

[会場] なんば紅鶴(大阪市中央区千日前2-3-9 レジャービル味園2F / Tel. 06-6643-5159)(地図)南海なんば駅より南海通り東へ180m・駐車場有

[料金] 1500円
(店内でのご飲食には別途料金がかかります。入場時に別途ワンドリンクをご購入いただきますのでご了承ください)

前売り券のお求めはこちらへ
http://boutreview.shop-pro.jp/?pid=68238208

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 すっかり恒例となった企画です。もう1年もやってんだな。
 それにしても、なかなか70年代から脱しません(笑)。語ることが多すぎるんですよ、70年代の特撮。
  


Posted by 山本弘 at 20:37Comments(1)特撮