2013年12月25日

北原尚彦『SF奇書コレクション』

 昨日、著者の北原尚彦氏から献本が届いた。

http://www.webmysteries.jp/sf/kitahara1312.html


 以前に出た『SF奇書天外』の続編で、古今東西の様々なSF関係の珍本・奇本を紹介した本。『Webミステリーズ!』連載時から読んでたけど、このたび加筆修正のうえ一冊にまとまった。
 目次から書き写してみる。

・探し求めた『怪談十五夜』ついに入手!
・科学教育者が戦後初期に書いた『二十一世紀の秘密 ニュートピアの巻』
・勝手にコラボ・SF奇書コレクション版/星新一展『未来に挑むNEC』ほか
・『宇宙航路』の著者、L・ロン・ハバードのお話
・自動車がないと人々の生活はどうなる? 『車のない街』
・地方へ旅して、古本屋巡りをして出遭う、見知らぬ地方SF
・創元社初のSF? 『笑の話』
・軍人が書いた未来架空戦記SF『血の叫び』は××本だった!
・二十二世紀なのに未来感はほぼゼロの武術SF『合気道小説 神技』
・ウェルズの時代に書かれたゴルフSF『21世紀のゴルフ』
・三種コンボ先取り! 科学博で刊行の『象昆鳥』
・実はSF含有率が高かった〈原爆児童文学集〉(前篇)
・実はSF含有率が高かった〈原爆児童文学集〉(後篇)
・知られざる静岡SF作家・杉山恵一
・原子が少年になっちゃった『アトミーノは戦争がきらい』
・聞いたこともなかった児童SF『正義のロボット』
・知られざるSF新人賞受賞作『無意識の底で』
・南沢十七は異星でもハチャメチャ! 『天外魔境』
・遅れてきた新入会員・天瀬裕康=渡辺晋
・実在の市が住民ごと縮んでしまった『小さくなった町』
・東北の民話&童謡作家の書いたロストワールドSF『沙漠の下の海』
・『発酵人間』以上の価値があるレア本『三代の科学』
・映画化までされていた! 透明人間SF『忍術三四郎』
・木枯し紋次郎+ブラック指令が書いたSF劇『すばらしい新世界!』
・一九六〇年代にかくもディープな私家本が! 『宇宙生物分類学』
・『発酵人間』よりも奇書と言われては……『銀座快男児』
・人気作家が好きに書いた同人作品《チャリス・イン・ハザード》
・地球の危機そっちのけで拳法修業? 『燃える地球』
・意外な意外なロストワールドSF『巨龍と海賊』
・総まくり! 科学童話『原子の踊り』から二十一世紀のSF奇書まで

 などなど。目次見てるだけでわくわくしてくるでしょ?

 何より嬉しいのは、僕の『チャリス・イン・ハザード』を紹介してくださってること!
 それだけじゃない。『みづき・ふりーだむ!』『生徒会の百式』『オタクのグルメ』『僕らを育てたSFのすごい人』『シャナナのひみつ』『プラモ狂四郎を10倍楽しむ本』『AXEL全開!』『MADなボクたち』などなど、これまでに僕が出した同人誌がずらりと! 写真入りで! いや、僕が北原さんに頼まれてお送りしたんだけどさ。
 いやあ、自分の作品が伝説の『発酵人間』あたりと肩を並べて語られるって、感無量ですね。
 これ読んで冬コミに『チャリス』買いに来てくださる方、増えるかしらん。

http://hirorin.otaden.jp/e305055.html

 それにしても、知らない本がまだまだずいぶんあるもんである。この本で紹介されてる小説で僕が読んだのって(自分の同人誌を除けば)、三石巌『二十一世紀の秘密 ニュートピアの巻』、L・ロン・ハバードの『宇宙航路』、畑正憲『ゼロの怪物ヌル』、福井大記『アトランティス名古屋に帰る』ぐらい。南沢十七も『緑人の魔都』以外の作品、読んでみたいんだけど。誰か復刻してくれないものか。
 復刻と言えば、ハバードの『宇宙航路』が、あの元々社版のひどい訳ほとんどそのまま、21世紀になって復刻されているというのは驚いた。訳の版権が切れてるのか? 何にしても、あの訳は直して欲しいよ。ほとんど意味不明だったもの。
 あと、『アトランティス名古屋に帰る』もそうだけど、『地球外動体視力ゴルファー』とか、タイトルだけで気になっちゃうよね。

 他にも、岡部いさくと水玉螢之丞が兄妹で、父親が岡部冬彦だって、恥ずかしながらこれ読むまで知らなかったよ。意外というか、言われてみれば「ああ、なるほど」というか。
 意外と言えば、例の「百人斬り」事件で処刑された田中軍吉が、昭和8年に『血の叫び』という未来架空戦記小説を書いていて、しかもそれが発禁になっていたというのは意外。
 おまけにその発禁の理由ってのが、ものすごくしょーもないもので……こんなので発禁かよ! いやあ、あの時代の日本が言論の自由のない国だったことがあらためて実感できるね。
 しかも、「百人斬り」裁判のきっかけになった「悲願三百人斬りの隊長愛刀」という写真を載せた本の編者が、なんと山中峯太郎! これまた意外なつながりがあったもんだ。
  


Posted by 山本弘 at 16:15Comments(4)最近読んだ本

2013年12月25日

まだある、嫌韓デマ

市民社会フォーラム第123回学習会
『ヘイトスピーチとレイシズム問題を考える ―ネットからリアルへ―』

http://www.theater-seven.com/2013/b1_131215.html

 行ってきました。
 こんな堅い企画、お客さんが来るのかな……と思ってたら、100人ぐらい入れる会場がほぼ満席だった。やはりヘイトスピーチに関心を持っている人が多いらしい。
 おかげで僕が会場に持ちこんだ本もけっこう売れた。『タブーすぎるトンデモ本の世界』が10冊完売。『詩羽のいる街』文庫版と新刊の『夏葉と宇宙へ三週間』が各4冊ずつ。
 こういういつもと場所で、少しでも違う客層にアピールしとかないとね。

 同じ日には、大阪でヘイトデモが3つも行なわれていたそうだ。あらためて、嫌な時代になったな、と痛感する。
 もっとも、見てきた人の話によると、いつものような「殺せ」「死ね」「鶴橋大虐殺」みたいな言動は少なく、明らかに自粛していたようだ。先日、警察庁が平成25年度版「治安の回顧と展望」の中で、在特会などの右派系市民グループについて、「反対勢力とのトラブル事案等、違法行為の発生が懸念される」などと、警戒を示したことが報道されたせいかもしれない。
 ちなみに、この報道を読んだ連中の反応はこんなの。

『「右派系市民団体」の違法行為懸念 警察庁、初めて言及』に対する「右派系(?)市民」の反応集
http://togetter.com/li/601894

「また朝日か」とか言ってる奴が多くて笑った。朝日新聞の記事だけ読んで、朝日が偏向報道をしてると思ってるのだ。産経も毎日も報道してますけど?

在特会などの過激化に懸念 25年版「治安の回顧と展望」(産経新聞)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/131211/crm13121122310018-n1.htm

警察庁:2013年版「治安の回顧と展望」公表(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/news/20131212k0000m040026000c.html

 かと思えば、「左派系は取り上げられてないの?/ソースを読む機内けど(原文ママ)」などと、とぼけたことを言っている連中も多数。左派系の活動が取り上げられていないと思っているのだ。ソース読めよ。北朝鮮や中国や核マルや共産党についてもちゃんと触れられてるから。つーか、そっちの方が多いから。

「治安の回顧と展望」(平成25年版)
http://www.npa.go.jp/keibi/biki/kaiko_to_tenbou/H25/honbun.pdf

 そうした、これまで警察が危険視していた勢力に、「右派系市民団体」もようやく加わったってことなんである(遅すぎたぐらいだけど)。
 それにしても、あいかわらずメディア・リテラシーのとことん低い連中だなあ。ググッてみるということをしないのか。

 安田浩一さん、初めてお会いしたけど、すごく話し上手な人だ。話の内容も面白くて、まったく退屈しなかった。
 当初の予定では2時間で、前半が安田さんの話、後半が僕と安田さんの対談だったんだけど、安田さんが1時間40分喋ったもんで(笑)、急遽、30分延長することに。いや、面白かったからいいんだけどね。
 ちなみに僕は主に、ネットに氾濫する嫌韓デマについて語った。

 この日、楽屋で安田さんに見せていただいたビラ。在特会とは別の団体がばらまいているものだそうだ。後でネットで検索してみたら、本気にして拡散している奴が何人もいて唖然となった。


>日本人差別をなくそう
>人口比わずか0.5%
>64万人の在日朝鮮人の内、46万人が無職で
>年計2兆3千億円が
>在日朝鮮人の生活保護費
>として使われているのをご存知ですか?

 ぜんぜんご存知じゃありませーん(笑)。
「2兆3千億円」という突拍子もない数字がどこから出てきたのかと、ビラを見つめて首をひねっていたら、46万×500万=2兆3000億だと気がついた。
 つまりこのビラを書いた奴は、「生活保護を受けている者が在日コリアンが46万人いて、1年に1人あたり500万円を受け取っている」と主張しているわけである。月41万7000円? 3人家族なら月125万円? それはまた豪勢だな(笑)。生活保護費って、月額最大で30万円ぐらいのはずだが。
 しかもその左下には「働かず年600万円貰って」と書いてある。計算合わねえ!
 まあ、こういうビラを真に受けるのは、いい年して掛け算割り算もできないバカだけだろう。

 まともに反論するのも空しいけど、とりあえず事実を書いておこう。
「46万人」というのは無職の人数である。無職=生活保護ではない。日本人だって半数以上が「無職」である。高齢者や子供や主婦がいるからだ。
 実際はどうなのか、政府の2011年の統計を見てみる。

http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020103.do?_toGL08020103_&listID=000001107137&requestSender=search

 この年の被保護人員は147万2230世帯、202万4089人。
 このうち韓国朝鮮籍の者は、2万8796世帯。支給世帯全体の1.9%にすぎない。
 つまり、仮に韓国朝鮮籍の人への生活保護を停止しても、生活保護費は2%ぐらいしか減らないということだ。嫌韓レイシストがよく言う「在日の生活保護費が日本人の生活保護費を圧迫している!」などという主張は事実無根である。

 世帯数ではなく人数も計算してみよう。
 単身世帯が2万2241世帯、2人世帯が4764世帯、3人世帯が1165世帯、4人世帯が415世帯、5人世帯が144世帯、6人以上が67世帯。 「6人以上」というのを仮に7人として計算してみると、

22241+4764×2+1165×3+415×4+144×5+67×7=
=22241+9528+3495+1660+720+469
=38113

 約3万8000人。「46万人」という数字の12分の1だ。

 ただ、在日コリアンの生活保護受給率が平均的日本人より高いのは事実である。これは平均的日本人より貧しい家が多いのと、(会場でも安田浩一さんが言っていたけど)高齢の受給者が多いためである。
 この統計を見ると、在日コリアン受給者の中で最も多いのは単身世帯で、2万2241世帯。うち1万3301人が高齢者である。2人世帯では1612世帯、3人世帯では26世帯。高齢者世帯は需給世帯全体の52%を占める。
 それに対し、日本全体で見ると、147万2230世帯中、高齢者世帯は63万9760世帯、つまり43%。在日コリアンは高齢受給者の比率が高いことが分かる。
 在日外国人は1986年まで、国民年金に加入できなかった。そのため、高齢になっても年金を受け取れず、生活保護に頼るしかない者が多いのだ。
 これが嫌韓レイシストに言わせると「在日特権」なんだそうである。

 もっとも、今では在日外国人も年金に加入できるので、この先、高齢受給者は減ってゆくと予想される。
 と言うか、そもそも在日コリアン自体が急速に減っている。統計を見ると、1992年からの20年間で15万8000人、23%も減った。現在は年間1万人ぐらいのペースで急速に減少している。それだけ帰化する人がいるということだ。

http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/1180.html

 上の差別ビラには「64万人の在日朝鮮人」と書いてあるけど、それは2000年頃の数字。2012年の時点で特別永住者は53万人にまで減っている。在日コリアンを蔑視する連中は、彼らが今何人いるかすら知らないのだ。
 在日四世とか五世とかになると、もう民族のアイデンティティにこだわる人が少なくなってきているかもしれない。このままだと、あと半世紀もすれば、日本から在日コリアンはいなくなる。
 上の差別ビラには「こんなに特権階級だから帰化出来るけどしません」と書いてある。これを論破するのは簡単だ。「どんどん帰化してますけど、何か?」と言えばいい。
  
タグ :デマ嫌韓


Posted by 山本弘 at 15:43Comments(33)差別問題