2013年12月03日

『夏葉と宇宙へ三週間』

〔21世紀空想科学小説〕
夏葉と宇宙へ三週間
岩崎書店 1575円+税
12月9日発売

 小学6年生の夏休み、臨海キャンプの最後の日。突然、海の中から宇宙船が出現した。それに近寄った加納新(かのうあらた)と隣のクラスの首藤夏葉(すどうなつは)は、船内に吸いこまれてしまう。
 二人の前に現われたのは、夏葉の姿を借りた立体映像――この宇宙船ユーディシャウライン号のメインコンピューター・ユーディだった。ユーディは、この船のただ一人の乗員であるガルムイエ人の探検家ダリー・イスターンが死んでしまい、困っていることを告げる。ダリーが未開の惑星で発見した秘宝を届けるため、急いでガルムイエ星に帰還しなくてはならないのだが、宇宙船はニンゲン(知的生物)を乗せずに宇宙を飛んではいけない規則になっているのだ。
 ユーディに頼まれ、新と夏葉は宇宙の旅に出発する。目指すは銀河系の反対側、4万光年彼方のガルムイエ星。その途中、廃墟の惑星で恐竜に襲われたり、氷の惑星で遭難した宇宙船を調査したり、ロボット宇宙船ディアゴーンに追われて銀河中心の巨大なガスの渦に逃げこんだりと、様々な冒険を繰り広げる。
 ようやくたどりついたガルムイエ星で明かされる、10万年前の秘宝の謎。そして、思いがけない真実が明らかになる。

 小学生の頃、学校の図書室で、筒井康隆さんのSF童話集『かいじゅうゴミイ』(盛光社)を読みました。その中に、「うちゅうをどんどんどこまでも」という話が入っていました。
 博物館にあったロケットにこっそり乗りこんだ二人の子供。ちょっとだけ宇宙飛行を楽しむつもりが、地球に戻る方法が分からず、宇宙をどこまでも突き進んでゆく。ついに宇宙の果てにたどりつくと……。
 ラストのどんでん返しと、ものすごい「教訓」に、子供心に「おいおい、子供向けにこんな話書いていいの!?」とびっくりし、同時に大喜びしてしまったものです。

 この〔21世紀空想科学小説〕は、日本SF作家クラブ創立50周年を記念して、日本SF作家クラブと岩崎書店のコラボレーションで誕生したシリーズです。かつて小松左京さんや星新一さんや筒井康隆さんたちが子供向けのSFを書き下ろしたように、現代のSF作家が21世紀の子供たちに向けて新作SFを書き下ろすというものです。すでに北野勇作、東野司、藤田雅矢、林譲治、藤崎慎吾、梶尾真治、松崎有理氏らの作品が刊行されています。

SF作家クラブ/岩崎書店 「21世紀 空想科学小説」

http://sfwj50.jp/projects/iwasaki/

 この依頼を受けた時、真っ先に思いついたのは、「うちゅうをどんどんどこまでも」のオマージュをやってやろう、ということでした。男の子と女の子が宇宙船に乗って、宇宙をどんどん突き進んでいく話にしようと。さすがに宇宙の果てまで行くのはおおげさなので、4万光年ということにしましたが。
 あと、やはり子供の頃に読んだG・マルチノフの『宇宙探検220日』(講談社)という小説が心に残っていたので、タイトルも宇宙旅行の期間を入れようと思いつきました。だから「三週間」。
 僕が子供の頃に夢中になって読んだ児童向けSF、特に宇宙探検ものの面白さを詰めこんだつもりです。
 もちろん大人が読んでも楽しいはずです。古くからの僕の読者の方なら、『サイバーナイト』や『ギャラクシー・トリッパー美葉』を連想されることと思います。

 あと、筒井さんに敬意を表して、ラストで「おいおい」と言われるようなものにしようと思いました。お行儀のいい話はつまらない。子供向けでもこれぐらいやっていいよねと。
 どんなラストかは読んでのお楽しみ。きっと子供の心に残るもののはずです。

【12月25日追記】
 この〔21世紀空想科学小説〕シリーズは、あまり書店に並びません。お求めの方はAMAZONなどを利用されることをおすすめします。

  
タグ :PRSF


Posted by 山本弘 at 18:41Comments(9)PR

2013年12月03日

イベント「ヘイトスピーチとレイシズム問題を考える」

市民社会フォーラム第123回学習会
『ヘイトスピーチとレイシズム問題を考える
 ―ネットからリアルへ―』

http://www.theater-seven.com/2013/b1_131215.html
在日朝鮮人など特定の民族集団を差別する「レイシズム」は、「ヘイトスピーチ」という形で大阪をはじめ各地の街頭です さまじい勢いで拡大してきました。
かつてはネット上での「在日特権」デマを煽り煽られてきたにすぎない「ネット右翼」は、ネットを活用しつつリアルな街頭での運動へと展開しています。
ネットから生まれた排外主義運動について緻密な取材をされているジャーナリストの安田浩一さんに、ネットからリアルへと拡大するレイシズムの現状と背景についてお話しいただきます。
ゲストにネット右翼のトンデモデマに詳しい「と学会」会長の山本弘さんをお招きします。
開催日2013年12月15日(日)
時間14:00~16:00
参加費1,000円
出演講師:安田浩一さん(ジャーナリスト)
ゲスト:山本弘さん(と学会会長)

■安田浩一(やすだ こういち)さん
ジャーナリスト。1964年静岡県生まれ。週刊誌、月刊誌記者を経てフリーに。
在特会を追いかけたルポ『ネットと愛国』(講談社)で講談社ノンフィクション賞を受賞。
最近の共著に『なぜ、いまヘイト・スピーチなのか ―差別、暴力、脅迫、迫害― 』(三一書房)、『ヘイトスピーチとネット右翼』(オークラ出版)、『安倍政権のネット戦略 』(創出版新書) 、『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」 』(宝島社新書)、『ナショナリズムの誘惑』(ころから)など。

■山本 弘(やまもと ひろし)さん
「世間のトンデモ本やトンデモ物件を品評することを目的としている」読書集団「と学会」会長。
1956年京都生まれ。洛陽工業高校電子科卒。SF作家でもあり、著書多数。
87年にゲーム創作集団「グループSNE」に参加し、作家・ゲームデザイナーとしてデビュー。
2003年に『神は沈黙せず』、06年に『アイの物語』が日本SF大賞候補となる。
ホームページは、「山本弘のSF秘密基地」

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『タブーすぎるトンデモ本の世界』で安田浩一氏の著書や嫌韓デマについて取り上げたのがきっかけで、こんなイベントに招かれました。大阪ですけど、興味のある方はご来場ください。
 最新の著作なども販売する予定です。
  


Posted by 山本弘 at 17:52Comments(16)PR

2013年12月03日

空から見た『MM9―invasion―』

 11月21日木曜日、NHK-BSの番組『幻解!超常ファイル ダークサイド・ミステリー』に出演するために渋谷のNHKへ。テーマはノストラダムス。スタジオで栗山千明さんと対談してきた。
 放送予定は12月13日。

http://www4.nhk.or.jp/darkside/

 その足で、今度は半蔵門にあるPHPへ。いつもは郵送してもらっている『プロジェクトぴあの』の次号分のゲラを直接受け取り、その場でチェック。
 連載は今回も含めてあと4回。結末がどうなるかは『地球移動作戦』を読んでる人なら誰でも知ってるわけで、その予想を裏切るため、ラスト前に別のスペクタクルを用意することにした。このために最初の方から伏線張ってたのよ、ふっふっふ。

 翌朝早く、ふと思い立って、ホテルから東京スカイツリーへ。
『MM9―invasion―』の舞台にしたものの、書いたのは完成前だったので、一度も昇ったことがなかった。完成当初は大変な行列だったらしいけど、もう1年以上経ったし、平日の朝一番なら並ばずに昇れるんじゃ……と思ったのである。
 目論見は大当たり。当日券を買うのに少し並んだだけで、スムーズに入場することができた。
 しかも、この日は素晴らしい晴天。うん、来て良かった。



 執筆中、ネットでスカイツリーに関する情報を調べまくったのはもちろん、テレビの特集番組は欠かさず視聴したし、建設中の現場も訪れたし、模型も買ったし、東武タワースカイツリー株式会社に電話かけて質問したりもした。位置関係を確認するのに、グーグルアースにもずいぶんお世話になった。
 それでも分からない部分が多かったので、そのへんは想像で書くしかなかった。 たとえば「天望デッキ」「天望回廊」という名称はまだなかったので、作中では「第一展望台」「第二展望台」という呼称で通している。
 そこで僕が想像で書いた文章が、どれぐらい実際と一致しているか、確認しようと思ったのである。
 まずは第一展望台(天望デッキ)に昇るエレベーター内の描写。

> エレベーターはスカイツリー内部を上昇してゆく。側面はガラス張り。白い鉄骨群が滝のように流れ落ちてゆくのが見える。その向こうには東京の眺望が広がる。(P.147)

 これは予想がはずれた。実際には外は見えない。これはもったいない気がする。天望デッキから天望回廊に上がるエレベーターでは外が見えるんだけど。

>「それにしても速いエレベーターだねえ。耳がツーンとなっちゃうねえ。ははははは」(P.148)

 これは当たり。やはり気圧変化で耳がツーンとなった。
 さて、天望回廊から実際に見下ろした風景はこんな感じ。 (写真をクリックすると拡大します)



> 真下を見下ろす。一〇〇メートル下に、第一展望台の円形の屋根が見えた。その向こう、四五〇メートル下の地上には、周辺の商業施設群が積み木のように並んでおり、その間をほとんどゴマ粒でしかない人々が大勢うごめいている。
(中略)
> 一騎はタワーの西側、水族館のある六階建てのビルに狙いを定め、〈卵〉を放り投げた。〈卵〉は正確な放物線を描いて落ちてゆく。展望台から遠ざかるにつれて急速に小さくなり、黒い点になって、ついには見えなくなった。(P.189)

 角度的にはまさに「真下」。真樹が破ったのはこのあたりのガラスなわけだ。一騎が機械憑依体を投げ落とした、水族館のある東京ソラマチ(この名称も執筆時にはまだなかったはず)の屋上も見える。
 しかし、この高さだと、「ゴマ粒」どころか、人間はほとんど見えない。




> 爆発のような大音響とともに、何千トンもの膨大な水しぶきが上がった。すぐ近くにあった桜橋が、まともに水をかぶる。水は三囲神社やその隣の小学校、周囲の住宅地にも、雨のように降りかかった。
> 高さ数メートルの大きな波が、対岸の台東リバーサイドスポーツセンターや区立隅田公園に襲いかかった。陸上競技のトラックや野球のグラウンドを水浸しにし、立木や標識をなぎ倒し、ベンチを押し流す。建物にぶつかった水流はドアや窓を吹き飛ばし、屋内にまでなだれこんだ。晴れた日曜日で、少し前まで多くの都民で賑わっていたのだが、幸いにも警報が出たためにほとんどの人が避難しており、最悪の事態は避けられた。(P.211)

>「スカイツリー!? まだ逃げてなかったのか!?」
>『はい。エレベーターが止まってて――そんなことはどうでもいいんです。今、ここから、落下した物体が見えるんです』
>「何!? どこだ!?」
>『隅田川の真ん中です。ええと、ここからは北西ですね。手前には学校みたいな建物が見えます。対岸には野球のグラウンド……』
>「ちょっと待て。そんなにはっきり見えるのか!?」
>『はい。ここからだと一望できます』
(中略)
>「正確な位置を教えてくれ。その小学校の近くの隅田川の中なんだな?」
>『そのもうちょっと上流です。H形の橋があるんですけど――』
>「H形?」
>『名前は知りません。上から見ると、H形というか、両側が二股に分かれてる形の橋です。その橋の少し下流側です』(P.217-218)

 6号(ゼロケルビン)の落下地点。本当にびっくりするほどよく見えた。一騎が見てたのはこのアングルなのかと思うと、感慨深い。
 画面中央にあるのが一騎が「H形の橋」と形容した桜橋。その左側、手前にある森が三囲神社、その左が小学校。対岸にあるのが台東リバーサイドスポーツセンターである。




>『群集です! 橋の上にどんどん人が集まってきてます!』一騎の悲痛な声が気特対本部に響く。『危ないです! 下がらせてください!』 (P.223)

 野次馬が集まっていた言問橋。6号の先進波メーザーの一撃で全滅する。
 朝早い時刻だったため、スカイツリーの影が北西側にくっきり落ちていて、思いがけないベストショットになった。




> 一五〇メートルほど前方に、一九階建ての隅田区役所のビルがそびえていた。視覚を持たない6号だったが、5号と同じく電波の反射で障害物を見ることはできた。自分よりも背の高いビルが通せんぼしていることに腹を立てたのか、立ち止まり、前方に先進波メーザーを放射する。(P.233)

> 包丁が豆腐を切るように、6号の平たい身体は高層マンションを水平にまっぷたつに切断し、通り抜けた。それでも勢いは止まらず、マンションの向こうに立つアサヒビールのスーパードライホールの屋上に衝突、悪趣味な金色の巨大オブジェをはじき飛ばす。その後方では、マンションが灰色の粉塵に包まれて倒壊してゆく。
> 隅田川にかかる吾妻橋の上に差しかかったところで、ついに6号は完全にバランスを崩し、空中で九〇度横転した。わずかに針路を左に変え、浅草の雷門通りに突入する。(P.243)

 画面に映っている三つの高層ビルのうち、右端が6号に凍らされた隅田区役所。6号はこの手前でコースを変更、スカイツリーに向かってきた。
 中央がアサヒビール本社ビル、左が6号に切断されて倒壊したリバーピア吾妻橋ライフタワー(お住まいの方、ごめんなさい)。 ライフタワーの向こう側にちらっと見えるのが、スーパードライホール屋上の金色の巨大オブジェ。さらにその向こうには吾妻橋があり、その奥が6号とヒメが戦った雷門通りである。
 雷門通りに突入するためには、吾妻橋の上で「わずかに針路を左に変え」る必要があるのがお分かりだろうか。




> 山際がキーボードを叩き、メインモニターに怪獣の進路予想図を表示した。
> 久里浜はそれを見上げた。6号は浅草から南西方向へ、台東区を斜めに横切り、ほぼ一直線に進行してくる。春日通りを通過し、現在は三筋町と小島町の間あたり。細い扇形をした予想進路は、JR秋葉原駅の東側をかすめ、神田川を横切る。その先には……。
>「これは……!」
> 久里浜は絶句した。その図を目にした部員たちもみな、ショックで口をぽかんと開ける。
> 怪獣が向かっているのは、千代田区の中心部――この気象庁本庁ビルや、東京国税局、東京消防庁のある地区を直撃するコースだった。(P.254-255)

 6号の進行コース。吾妻橋の西岸側から、秋葉原を経て、最終決戦が行なわれた皇居東御苑に向かうルート。残念ながらこの写真では、自衛隊との攻防が繰り広げられた秋葉原駅や、皇居の東の気象庁のビルなどはよく見えない。
 この日は晴れていて、富士山までよく見えた。

 想像で書いた描写なので、間違っていたところもあるけど、自分ではけっこういい線いってたと思う。
  
タグ :PRMM9怪獣


Posted by 山本弘 at 17:30Comments(1)PR