2013年09月05日

『パシフィック・リム』と『RWBY』

『パシフィック・リム』、初日の午前中に観てきた。
 途中までは割と地味な展開が続くけど、後半の香港防衛戦のあたりからどんどん盛り上がる。
 仲間の危機に駆けつけるジプシー・デンジャーのかっこいいこと!
 香港の街中で、巨大怪獣と巨大ロボットがビルを盛大にぶち壊しながら、ガツンガツン殴り合う!
 これまで日本の怪獣映画やロボットアニメがさんざんやってきたことのはずなのに、こうして金かけて真面目にきっちり映像化したものを見せつけられると、新鮮な驚きだらけだ。
 公開前から『エヴァンゲリオン』とか『ジャンボーグA』とか『マジンガーZ』とかいろいろ言われてたが(設定的にいちばん似てるのは『ゴーダンナー』だと思うんだけど)、実際に見てみると、『ガメラ 大怪獣空中決戦』への明らかなオマージュとか、探せばいろんなネタがちりばめられている。
 しかし、表面上のパロディじゃなく、それら日本作品の魂が作品の中にきっちり溶けこみ、オリジナル作品として昇華されている。

 特撮以外で注目したいのは、マコの少女時代の回想シーン。「小さな女の子が巨大怪獣に追われて逃げる」という場面が、芦田愛菜の演技力によって、リアルに仕上がっている。この子、この若さで、よくこんな演技できるな。
 映画全体を見ても、人類が追い詰められ、滅亡の縁に立たされているという重苦しい雰囲気が、話を盛り上げていた。
 難点を挙げるなら、夜間や水中のシーンが多くて、怪獣やロボットがはっきり見えにくいこと。昼間の戦いももっと見てみたかった。
 あと、クリムゾン・タイフーンはもっと活躍してほしかったな。あれのギミックがいちばん面白いんだもの。

 はっきり言おう。これは日本の「怪獣文化」「ロボ文化」の危機だ。

 だって、今の日本じゃこれ、作れないよ。
 仮にこの映画のおかげで怪獣ブームが来て、また東宝がゴジラ映画作ったとして、それがいつもの平成ゴジラ・シリーズみたいな水準の作品だったら……って想像してごらんよ。情けなくなるから。
 予算の問題だけじゃない。怪獣を縦まっぷたつにするシーンとかも、昔は『ウルトラマンA』とかでやってたけど、残酷な描写がいかんとかで、最近はやらなくなった。好きなんだけどな、バーチカル・ギロチン。
 言ってみれば、そうした今の日本の映画界・テレビ界が忘れてしまった精神を受け継いだのが『パシフィック・リム』なのだ。
 これから、怪獣映画は何を作っても、『パシフィック・リム』と出来を比較されることになる。かと言って、これを超えるものを日本人が作るのは、とてつもなく難しいだろう。
 もしかしたら、優れた怪獣映画を作れるのは外国人ばかりになり、もう「怪獣」「巨大ロボ」は日本の誇る文化じゃなくなってしまうかもしれない。

 初回は字幕版だったが、後で日本語吹き替え版も観た。杉田智和の「ロケットパーンチ!」も良かったけど、司令官の玄田哲章はまさにハマリ役だし、林原めぐみ、古谷徹、三ツ矢雄二、池田秀一、千葉繁、浪川大輔と、『エヴァンゲリオン』『ガンダム』『コン・バトラーV』『トランスフォーマー』などロボットアニメに縁のある声優を集めたのが嬉しい。特に古谷徹のニュートンが実に上手くて聞き惚れる。ただハーマン役の三ツ矢雄二だけは、歳のせいかちょっと舌が回っていないのが気になった。
 ハンニバル・チャウ役のケンドーコバヤシもいい味出してた。
 やっぱり声は大事だなあ……と、『風立ちぬ』を観た後なんでよけいにそう思う(笑)。


 もうひとつ、今、僕がハマってる作品が、先日のMMD杯で知った『RWBY』というアニメ。
 ニコニコ大百科によると、

http://dic.nicovideo.jp/a/rwby

>様々なゲーム動画やマシニマ(FPS等のグラフィックエンジンを用いて制作する動画のこと)、自作アニメーションや実写映像等を世に送り出してきたRooster Teeth Productionsが、『Dead Fantasy』等を手がけた人気アニメーターのMonty Oum氏を迎えて企画・制作したオリジナルアニメーション作品。

>2012年11月に最初のトレイラー「Red」、翌年2月に「White」、3月に「Black」、6月に「Yellow」が発表され、7月18日に待望のEpisode1「Ruby Rose」が発表された。公開はRooster Teeth公式サイトとYouTubeの専用チャンネルにて行われている。

 おおっ、あの『Dead Fantasy』作った人か!?
 まだ観てない人は観た方がいい(検索すれば一発で出る)。『デッド・オア・アライブ』と『ファイナル・ファンタジー』の女性キャラたちが壮絶なバトルを繰り広げるCGアニメ。アクションの組み立て方が凝りに凝っていて、何度観ても楽しめる。
 その作者がいよいよ二次創作じゃなく、オリジナルに乗り出してきたのだ。しかもバリバリの日本アニメ風の美少女キャラで!
 こんなすごいものを最近まで知らなかったのは、我ながら不覚だった。

 まず観たのが4本のトレイラー。

RWBY "Red" Trailer
http://www.youtube.com/watch?v=pYW2GmHB5xs
RWBY "White" Trailer
http://www.youtube.com/watch?v=Vt9vl8iAN5Q
RWBY "Black" Trailer
http://www.youtube.com/watch?v=ImKCt7BD4U4
RWBY "Yellow" Trailer
http://www.youtube.com/watch?v=QCw_aAS7vWI

 4人の女の子のイメージ、武器や戦い方のコンセプトがみんな違う。武器に魔力の弾丸をリロードするのはやっぱり『なのは』かなとか、たぶん『ソウルイーター』も見てるよなとか、ちょっと『デビルメイクライ』っぽい?とか、いろんな日本製のアニメや格闘ゲームの影響は指摘できるけど、それらを吸収して、一段とすごいアクションに仕上げている。つーか、日本のアニメでもここまで見せてくれるのはなかなかないぞ。
 やっぱりいちばんしびれるのがルビーのアクション。大鎌を振り回す女の子とか、銃にもなる接近戦用武器というのはよくあるけど、発射の反動で敵をぶった斬るのが最高に快感。
 4本とも素晴らしくて、何回観直したことか。『Dead Fantasy』で培ったモンティ・オウムの演出の才能が、存分に発揮されている。
 なんかもう、「美少女バトルもの」の完成形を提示されちゃったって感じだ。

 その後、本編も見た。
 ハードな戦闘が満載だったトレイラーとは対照的に、こっちはわりと脳天気な学園コメディ。それでも第1話の魔法バトルがやっぱりかっこいい。

RWBY Episode 1: Ruby Rose
http://www.youtube.com/watch?v=-sGiE10zNQM

 現在は7話まで公開中。しばらくは学園での話が続くらしい。
 武器フェチで人づき合いが苦手なルビーは、オタク心をくすぐるキャラ。
 おとなしいイメージかと思っていたワイスが、実は典型的な高飛車お嬢様キャラだったというのは意外。お嬢様キャラ定番の「これで完璧ですわ、おほほほ」妄想まで(笑)。で、性格の合わないルビーとの掛け合いが、やっぱり定番なんだけどすごく楽しい。
 暗い過去のありそうなブレイク。やっぱりあの不自然なリボンは獣耳を隠しているのか? 3話でヤンとルビーに読書を邪魔された時のツンなリアクションが、個人的にツボにはまった。
 そして、かわいい顔してやることがえげつないヤン。その落差がやっぱり魅力的。
 あと、男性キャラでは、ジョーンくんの空回りとヘタレっぷりが、逆に好感持てちゃうんだよね。

 しかし、こいつらほんと、徹底的に日本のアニメ研究しやがったな。
『ティーン・タイタンズ』とかだと、日本のアニメを取り入れようとしてるけど表面的な模倣にとどまっているぎこちなさがもどかしく感じられたんだけど、『RWBY』に関してはまったくそれがない。ごく自然に「日本のアニメ」として見れる。
 今、日本のどのTVアニメよりも、『RWBY』の更新が待ち遠しい。

『パシフィック・リム』もそうだけど、日本の作品に影響を受けたクリエイター(ギレルモ・デル・トロはメキシコ人、モンティ・オウムは東洋系アメリカ人)が、日本人以上のものを創ってきてるのは驚異である。いや、脅威と言うべきか。
 うかうかしてられないぞ、日本人。
  


Posted by 山本弘 at 16:04Comments(14)アニメ

2013年09月05日

『風立ちぬ』吹き替え版希望

 宮崎駿の飛行機好きが大爆発した映画。とにかく飛行機だらけ! 一次大戦と二次大戦の合間の航空機開発史が、虚実織り交ぜて語られる。飛行シーンもいいんだけど、ディテールがたまらない。沈頭鋲の採用とか、空母への着艦とか、ユンカースG38の翼の中とか。波形外板のアップなんて、美しくてため息が出る。設計のシーンで計算尺が頻繁に出るのもいいなあ。
 飛行機以外の描写も素晴らしい。大正から昭和初期にかけての日本が見事に再現されている。
 関東大震災のシーンの演出にも感心した。東日本大震災を想起させないようにという配慮なのか、アニメ的誇張とリアリティがうまくミックスされている。
 ゼロ戦の開発者の話でありながら、太平洋戦争の開戦から終戦までをすっぱりカットしたのも大胆だ。凡庸な監督なら、真珠湾攻撃とか原爆投下とか玉音放送とかの場面を入れたくなるであろうに。
 宮崎駿が描きたかったのはあくまで美しい飛行機であって、戦争じゃないのだ。
 しかし、戦争を真正面から描かなくても、声高に「戦争反対!」と叫ばなくても、随所に反戦メッセージは明瞭に織りこまれている。(96式陸攻が登場するシーン、作中で明言されてないけど、あれ重慶爆撃だよね?)
 特にゼロ戦が飛ぶラストが感動的。ここは涙が出た。
 本当にいい映画なんだよ。
 ただ一点を除いては。



 そう、庵野の演技!



 危惧していた通りだった。素人にしては少しはましだけど、『トトロ』の糸井重里とどっこいどっこいという程度。ラブシーンでもコミカルなシーンでも緊迫したシーンでもみんな棒読みなもんで、もうイライラしてイライラしてイライラして~っ!
 それでも途中までは、「こういう喋り方をするキャラクターなんだ」「きっとこれが演出の意図なんだ」となんとか思いこんで観ようとしてたんだけど、貧しい子供たちにシベリア(カステラに餡をはさんだ菓子)を恵んでやろうとするシーンで、もうだめ。擁護できなくなった。
「感情を抑えた喋り方」と「演技が下手で感情がこめられない喋り方」はぜんぜん別だろう!
 そもそも庵野秀明の演技の経験なんて、昔、バグジェルと戦った程度のはず。何でそんなド素人に映画の主役やらせんだ。
 おかしいだろ。
 宮崎監督って実は「声オンチ」なんじゃないかという気がひしひしとする。オンチの人に音楽の良し悪しが、味覚オンチの人に料理の良し悪しが分からないように、声による演技の良し悪しが分からない「声オンチ」の人がいて、それは作画や演出の才能とはぜんぜん別なんじゃないかと。
 そうとでも考えないと説明つかないのだ。
「本職の声優にやらせろ」なんて狭量なことは言いません。実際、この映画でも、野村萬斎や西村雅彦や大竹しのぶの演技はちっとも悪くなく、違和感なしに聴けた。
 ダメなのは主役だけ。
 主人公の声だけ吹き替え直したバージョン、出してくれませんかね。出たらDVD買うから。

 あと、映画本編とは関係ないんだけど、映画館で600円で買ったパンフレットにがっくり。
 飛行機の映画なのに、出てくる飛行機についての解説がまったくない!
 立花隆が七試艦戦と九試単戦について、ちらっと触れてる程度。劇中にあれだけ長く出てくるユンカースG38やカプロニCa60について、一行も説明がないの。
 たとえて言うなら、怪獣映画のパンフレットで、出てくる怪獣についての解説がないようなもの。
 このパンフ作った奴、この映画の内容をまったく理解してないんじゃないか? これ、飛行機映画ですよ?

 話題になった喫煙シーンについても触れておく。
 確かに劇中、しつこいぐらいにタバコを吸うシーンが出てくる。僕は観ながら、「これは監督の計算の内だな」と思ってた。「戦争に協力した人間を美化するとは」という、当然出てくるであろう批判をかわすために、「この時代は現代とは善悪の判断基準が違うんだ」というのを強調してるんだろうと。
 今でこそ喫煙は悪とされてるけど、あの時代はそうじゃなかった。喫煙が悪いことだなんて、ほとんどの人は思ってなかった。戦争も同じ。
 つまり「戦争に協力」と「喫煙」はパラレルな関係になってる。「当時の人間の考えや行動を今のモラルで批判するな」と言外に述べてるんである。
 実際、日本禁煙学会の抗議に対し、ほとんどの人は「何をバカなこと言ってんだ」と逆に笑ったり腹を立てたりしたはず。その点では、みんな監督の意図を正しく受け止めたと思っている。

 繰り返すけど、映画本編は大変に良かったと思う。
 主役の声を除いては。
  
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Posted by 山本弘 at 15:48Comments(39)アニメ