2012年11月23日

韓国の即席ラーメンの「発がん物質」続報

 先月の30日に書いた記事の続きである。

それってすごく安全なんじゃね?
http://hirorin.otaden.jp/e258055.html

 昨日、産経新聞に、このニュースの続報が載っていた。

発がん性物質で韓国製ラーメン回収指導 食べても健康への影響なし
http://sankei.jp.msn.com/life/news/121122/trd12112207560003-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/life/news/121122/trd12112207560003-n2.htm

> 日本では、いずれの食品にもベンゾピレンの基準値はなく、今回のラーメンが食品衛生法に違反しているわけではない。

> 農林水産省の調査では、ベンゾピレンについては日本のかつお節の多くが韓国の基準値を上回っている。韓国で基準値超のかつお節が日本では何の問題もなく使われていることになる。

 何ですとぉ〜!?(笑)
 驚いて調べてみたら、本当だった。農林水産省が発表しているこんなデータがあったのだ。

有害化学物質含有実態調査結果データ集(平成15〜22年度)
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/survei/pdf/chem15-22.pdf

 これの189ページに、日本のかつお削り節に含まれるベンゾピレン(BaP)の量が書かれていた。
 50品目のうち、最小値0.16μg/kg、最大値200μg/kg、平均値29μg/kg。
 韓国の基準値は10ppb。重量にすると10μg/kgだから、最大値だけでなく平均値さえ軽くオーバーしてる。
 日本のかつお節の大半は、韓国では基準値違反だったのだ!

 まあ確かにかつお節は製造時に何度も熱を加えるから、ベンゾピレンが発生するんだろう。
 日本のかつお節の方がベンゾピレンが多いというのは、日本と韓国では製法が何か違うのかもしれない。温度が高いとか加熱時間が長いとか。

 つまり、このニュースに「中韓の食品なんざ絶対食わんわ」「家にここのメーカーのやつあったから捨てるか」「こんなもん食えるはずがないだろ」とかコメントつけてた連中は、それ以上にベンゾピレンの入った日本製のかつお節を使ったラーメンのスープやらだし汁やらを、普段から平気で飲んでたわけだ。
 いやー、笑えるわー。笑うしかないわこりゃ。

 前回、「加工食品に対するベンゾピレンの基準を設けている国は韓国だけらしい」と書いたのだが、今回の記事によると、韓国でも即席ラーメンのような加工食品に関しては、ベンゾピレンの基準値はないらしい。
 ただ、燻製の食品に関する基準値はあり、問題のかつお節はそれにひっかかかった。そして、それをスープの原料に使っていたラーメンも回収された……ということらしい。

> 農心ジャパン(東京都千代田区)によると、対象のラーメンは6千個。だが、このラーメンを食べたときに摂取するベンゾピレンの量は、焼き肉など調理した肉類を食べたときの摂取量の1万6千分の1という。

 1万6千分の1という数字が正しいのかどうかは分からないが、確かにかつお節が数グラム入ったラーメンのスープより、焦げ目のついた焼肉の方がベンゾピレンははるかに多そうだ。

> 韓国の食品医薬品安全庁も「食べても人体に影響しない」としているが、原材料のかつお節が基準値を超えていたため、その原材料を使った食品を回収。しかし、韓国内では「消費者に不安を与えた。科学的根拠によらない食品の回収は判断ミスではないか」との声も上がっているという。

 確かにこれは判断ミスだ。 問題のラーメンを流通させたところで、健康被害はまったく発生しなかったんだから。
 むしろ、ラーメンに含まれているベンゾピレンの量をきちんと示して、焼き肉などと比較し、「これなら何の問題もない」と消費者に説明すべきだった。

 思うに、今回の騒ぎの原因のひとつは、「ベンゾピレン」という聴き慣れない名前が、何となく恐ろしそうに見えたからではないだろうか。しかも「発がん性物質」だという。それで「こわい!」と思ってしまった人間が大勢現われた。
 僕もどんな物質か知らなかったんだけど、検索したらすぐに、特殊な物質などではなく、肉や魚の焦げに普通に含まれていることを知った。
 しかし、ほとんどの人は化学物質の名前で検索なんかしない。名前の印象だけで判断してしまうのだろう。

 たぶん、

「韓国から輸入されているマッコリには、ジハイドロジェンモノオキサイドという化学物質が大量に含まれていることが判明」
「マスゴミは決してこの事実を報じない!」


 とかツイッターで流したら、たちまち拡散して、「こわい!」「そんなもん飲めるはずがないだろ」と言い出す奴が大勢現われることだろう。
 言うまでもないけど、マッコリにジハイドロジェンモノオキサイドが入ってるのは、以前から知られていた事実だからね? 嘘はついてないよ。
  


Posted by 山本弘 at 13:29Comments(46)メディアリテラシー

2012年11月16日

SF&トンデモNight #16「あなたの怖がり方、正しいですか?」

山本弘のSF&トンデモNight #16
「あなたの怖がり方、正しいですか?」


 危険なものを怖がるのは当たり前。でも、あなたの抱いているその危機感、本当に正しいですか? マスメディアやネットに氾濫するトンデモ情報に踊らされていませんか? 間違った常識に毒されていませんか? 本当に怖がらなくちゃいけないことに気がついてないんじゃないですか?
 星雲賞受賞SF作家・山本弘が、ユニークな話題を熱く語るトークライヴ。今回のテーマは「リスク」です。大地震、原発事故、地球温暖化、スーパーフレアなどの超特大の危機から、こんにゃく入りゼリー、食品添加物、ひのえうまの迷信、マンガの悪影響などの身近な話題まで、ありとあらゆるリスクを検証します。
 データから明らかになる意外な事実の数々に、あなたの常識がひっくり返ること間違いなし!

[出演] 山本弘(SF作家/と学会会長)
[日時] 2012年11月30日(金) 開場・19:00 開始・19:30
[会場] なんば紅鶴(大阪市中央区千日前2-3-9 レジャービル味園2F / Tel. 06-6643-5159)(地図)南海なんば駅より南海通り東へ180m・駐車場有
[料金] 1500円(当日券500円up)
 ※飲食代別途

 チケットはこちらから。↓
http://boutreview.shop-pro.jp/?pid=51358337



「何をどれぐらい怖がるべきか」というのは、なかなか難しい問題なんですよね。「詩音が来た日」でも書いたけど、人間というのはいちいちリスクの大きさをデータから判断してそれを回避しているわけじゃない。適当に「このリスクは重視する」「このリスクは無視する」としている場合が多いんです。だいたい、この世にあふれているあらゆるリスクの大きさを正確に判断するなんて、事実上不可能な話です。
 だから、放射線にせよ食品添加物にせよ、小さな危険を過剰に怖がってる人を必ずしも非難はできない。
 ただ、間違った怖がり方──あるリスクを極度に恐れた結果、人を傷つけたり、別のリスクをそれ以上に上げてしまうような怖がり方はやめるべきだと思います。
 あと、かなり大きな危険のはずなのに、メディアが大きく取り上げず、ほとんどの人が知らないか無視しているリスクというのもあります。今のうちに警戒して準備をしておかないと、大変なことになるかもしれませんよ……。
 というような話をしようと思っています。
  
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Posted by 山本弘 at 18:09Comments(11)PR

2012年11月16日

『トンデモ本の新世界 世界滅亡編』

と学会編『トンデモ本の新世界 世界滅亡編』
文芸社 1500円+税


第1章 トンデモ終末予言の世界 「えっ、あの人も?」有名人編

『秘伝ノストラダムス・コード』(竹本忠雄)――山本弘
『未来仏ミロクの指は何をさしているか』(五島勉)――多田克己
『聖書の暗号』『聖書の暗号2』『Bible Code III: Saving the World』(マイケル・ドロズニン)――クララ・キイン
『ニュートン・コード』(塚原一成)――皆神龍太郎
『「みろくの世」―出口王仁三郎の世界―』(上田正昭監修)――原田実
『清少納言の大予言』(谷地淳平)――原田実
『日出づる日、災い近し』(麻原彰晃)――クララ・キイン

コラム 予言獣と予言(その1)――多田克己

第2章 トンデモ終末予言の世界 その他、個性的な方々が続々と…編

『的中王・海龍のとてつもない予言』(海籠)――唐沢俊一
特集「破滅学入門」(特集構成・野坂昭如)――唐沢俊一
『純正律は世界を救う』(玉木宏樹)――唐沢俊一
『「日月神示」夜明けの御用 岡本天明伝』(黒川柚月)――原田実
『2000末世紀之謎』(星座小王子)――原田実
『この地名が危ない』(楠原佑介)――多田克己
『美しき「聖騎士」たちの黙示録』(万師緑姫)/『天網恢恢疎にして漏らさず』(伯壬旭)――稗田おんまゆら
『量子進化――脳と進化の謎を量子力学が解く!』(ジョンジョー・マクファデン)――川口友万

コラム2 予言獣と予言(その2)――多田克己

第3章 トンデモ終末後の世界 コミックス編

『大ぼら一代』全11巻(本宮ひろ志)――新田五郎
『60億のシラミ』全5巻(飯森広一)――新田五郎
『メギドの火』全2巻(つのだじろう)――新田五郎
『餓鬼の惑星』全1巻(原作・滝沢解、劇画・小島剛夕)――新田五郎
『愛と希望の人類滅亡BLアンソロジー』全1巻ほか――新田五郎

第4章トンデモ終末後の世界 映画・ゲーム編

『原子怪獣と裸女』(監督=ロジャー・コーマン)――寶来誠
『原爆下のアメリカ』(監督=アルフレッド・E・グリーン)――寶来誠
『地球は壊滅する』(監督=アンドリュー・マルトン)――寶来誠
『第三次世界大戦 四十一時間の恐怖』(監督=日高繁明、脚本=甲斐久尊)――唐沢俊一
『奇蹟人間』(制作=アレクサンダー・コルダ、原案・脚本=H・G・ウェルズ、監督=ロタール・メンデス、主演=ローランド・ヤング)――唐沢俊一
『機械人間 感覚の理失』(監督=アレクサンドル・アンドリエフスキー)――唐沢俊一
『ファイナル・ジャッジメント』『ノストラダムス戦慄の啓示』『マンガノストラダムス戦慄の啓示』――稗田おんまゆら
「イルミナティカード」――山本弘

 と学会の新刊です。今回はご覧のように「世界滅亡」がテーマです。マヤの予言によればいよいよ来月は世界の終わりなんだそうで、それに便乗しようという商法であります。(笑)
 いつもの楽工社のシリーズではないので、執筆陣もかなり違います。妖怪に詳しい多田克己さんによる「予言獣」の話や、聖書に詳しいクララ・キインさんによる『聖書の暗号』批判はためになりますし、「人ととして最低教教祖」の稗田おんまゆらさんによる「幸福の科学」映画のレビュー、ぶっとびマンガ研究家の新田五郎さんやB級映画コレクターの寶来誠による紹介も楽しいです。
 僕は今回、2本しか書いてません。1本は昨年出た最新のトンデモノストラダムス本(厚い!)。もう1本はこのブログでも前に取り上げた「イルミナティカード」の話です。
『聖書の暗号』にせよノストラダムスにせよ「イルミナティカード」にせよ、こういうバカ話に騙される人が一人でも減ることを望みます。


  


Posted by 山本弘 at 17:44Comments(25)PR

2012年11月09日

「地震雲」について考える(後)

 誤解しないでいただきたいのだが、僕は地震の前兆現象そのものを全否定したいとは思わない。地震についてはまだ分からないことが多すぎる。地震の直前に発生するイオンや電磁波や低周波が、雲の生成に影響を与える可能性だって、ゼロではないだろう。
 しかし、それはあくまで可能性であって、科学的に証明されたわけではない。
 そして今のところ、「地震雲」は科学とはほど遠いところにある。というのも、「地震雲」を信じている人の多くは、地震や雲について無知なのだ。

 googleで画像検索してみると分かるが、「地震雲」としてネット上にアップされている雲の多くが、明らかにただの飛行機雲波状雲放射状雲だ。
 僕は子供の頃、よく飛行機雲を眺めていた。最初は細かった飛行機雲が、時間が経つにつれて横に広がり、広い帯になるのを見てきた。前にも書いたが、今は伊丹の近くに住んでいるので、飛行機雲は頻繁に見られる。
 ところが、世の中には飛行機雲を見たことがない、あるいは見た経験が少ない人がいる。そうした人がたまに飛行機雲を見ると、「おかしな雲だ!」「地震雲ではないか」と思ってしまうらしい。

「でも、地震雲が観察されて数日以内に地震が起きたという例が多いんじゃない?」

 あなたはそう言うかもしれない。しかし、それはよく考えてみると、不思議でも何でもないのだ。
 日本各地には大勢の地震雲ウォッチャーがいて、ほとんど毎日、「地震雲」(厳密に言えば、撮影者が「地震雲ではないか」と思った雲)の写真を撮ってネットにアップしている。
 そして日本国内では、M8以上の地震が年平均0.2回、M7.0~7.9の地震が3回、M6.0~6.9の地震が17回、M5.0~5.9の地震が140回、M4.0~4.9の地震が約900回、M3.0~ 3.9の地震が約3,800回も発生している。

http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/faq/faq7.html#9

 M5以上の地震に限定しても年160回。1日平均0.44回である。つまり「地震雲」が撮影されたかどうかに関係なく、ある日から数日以内に日本のどこかでM5以上の地震が発生する確率は、かなり高いのだ。
 地域を「東北」とか「関東」とかに限定すると、確率は数分の一になる。仮に北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州の8つの地域に分割し、それぞれの地域の確率がおおざっぱに日本全体の1/8だとしても、年平均20回、1日で0.055回。10日間なら0.55回。やはり半分ぐらいの確率で地震が起こることになる。
 こういうたとえで言うと分かりやすいだろうか。

「このクラスで授業中にチョークが折れたら、10日以内にクラスの誰かが病気で欠席するだろう」

 この予言が当たる確率がかなり高いことは、誰でも分かるだろう。授業中にチョークが折れることも、誰かが病気で欠席することも、しょっちゅうあるからだ。だからといって、「チョークが折れること」と「誰かが病気で欠席すること」の間に、何か因果関係があるわけではない。
 東日本大震災のような大きな地震の前に撮影された「地震雲」があるのも、やはり不思議なことではない。「地震雲」の写真は一年中、ほぼ毎日のように、日本のどこかで撮影されている。大地震がいつ起ころうと、その何日か前にその地域で撮影された「地震雲」が必ずあるはずなのだ。大地震が起きてから、「これが地震の●日前に撮影された地震雲です」と出してくることができるのである
 しかし、その逆──地震が起きる前に「地震雲」から大地震の発生を予言することは、かなり難しい。大きな地震ほど起きる確率が小さくなるからだ。前述の矢田氏のように、地震雲研究の専門家でも、大きな地震の予言ははずすことが多い。
 たとえば今年の6月25日には、北陸地震雲予知研究観測所・所長の上出孝之氏が「6月25日から7日以内に関東でM7以上震度6-7の地震が起きる」と発表したことが、日刊ゲンダイで報じられた。もちろん、そんな地震など起きなかった。

http://matome.naver.jp/odai/2134088505332049701

 上田氏は東日本大震災を予知していたと言われている。「3月1日より10日以内に東北地方に大きな地震が起こる」と警告して的中させたというのだ。しかし、規模に関しては、「あんなに大きな地震になるとは思いませんでした」と言っている。M9の地震を予言していたわけではないのだ。
 先の教室のチョークのたとえで言うなら、

「チョークが折れたのを見て、『10日以内にクラスの誰かが病気で欠席するだろう』と予言したら、病欠どころか事故で急死する子供が出てびっくりした」

 といったところだろうか。
 地震雲研究家以外の「地震雲警報」となると、さらにあてにならない。

【地震雲】東京の空がヤバイ!!!!! ヤベーのが来るぞ ━━━━!!!
http://blog.livedoor.jp/rbkyn844/archives/5521590.html

 これは今年の5月21日に起きた騒ぎである。
 えーと、すいません、どのへんがヤバイんでしょう? ありきたりの巻雲にしか見えませんが。

 10月13日には、やはり関東地方の広い範囲で、「地震雲が出た」と騒がれた。

地震雲ヤベー!
http://www.negisoku.com/archives/54212076.html
【速報】東京から千葉にかけて秋のいわし雲が綺麗 Twitterでは「地震雲」と話題
http://itaishinja.com/archives/3581964.html

 いやー、実にきれいないわし雲だわ(笑)。
 もちろん、冷静に「秋によくある雲だよ」「普通の雲にしか見えない」「こんなんしょっちゅう見てたわ」「すっかり秋ですな~」とツッコんでる人も多いのだが、「やべぇ」「気持ち悪い」「こんなのみたことないけど」と真剣に怖がってる奴もいて、頭が痛くなる。
 日本の秋の風物詩を見たことがないとは、お前らはいったい日本で何年生きてきたんだと。

 10月29日には衛星写真が騒がれた。

今日の気象衛星写真がやばすぎると話題に「時は・・・きた!」
http://togetter.com/li/398290

 前線ではよくこういう空を直線状に二分する雲が見られるんだが。僕は何回も見てるぞ。
 ちなみに29日の気圧配置はこんな感じ。

低気圧と前線抜け弱い冬型へ。来月にかけゆっくり気温低下(121029)
http://blog.livedoor.jp/kasayan77/archives/19480416.html

 このように、「地震雲警報」は頻繁に発生している。そして、頻繁にはずれている。当たったものだけが注目されているため、信憑性があるかのように思われているのだ。
 他にも、こういう現象もある。

 これは僕が今年の1月22日の午後3時、大阪で撮影したもの。昼間の空の天頂近くに虹が出ている。
 これは「環天頂アーク」という現象で、太陽の高度が32度以下の時、太陽から上方46度の位置に出現するらしい。珍しい現象だが、やはり地震とは関係がない。

 赤い月を見て「不吉だ」とか「地震の前触れじゃないか」と騒ぐ人もいる。
 僕は毎晩、午後7時頃に仕事場から帰宅するので、帰り道、東の空によく昇ってきたばかりの月を見る。血のように赤い月は、年に1回ぐらいは必ず見ている。その直後に大きな地震が起きたことは一度もない。
 赤い月を見て不安に思うのは、普段から月を見ることの少ない人だと思う。

 最後に、「地震雲」の存在を信じている方にお願いしたい。
 まず、普通の雲について学んでください。雲には放射状雲、波状雲、房状雲、蜂の巣状雲、乳房雲、尾流雲、アーチ雲、K-H波雲、消滅飛行機雲など、いろんな美しいバリエーションがあることを知ってください。また、普通の虹の他にも、彩雲、反薄明光線、ハロ、環天頂アーク、環水平アーク、タンジェントアークなど、様々な光学現象があることも知ってください。


 そして何より、普段からもっと空を見てください。そうすれば、飛行機雲や巻雲やいわし雲がちっとも珍しくないことも、赤い月がしばしば見られることも分かるはずです。
 地震雲を信じるなとは言いません。しかし、それならせめて、普通の雲とは解釈できない、明らかに異常な雲だけに注目してください。飛行機雲やいわし雲を見て「こんな雲見たことがない」などと騒ぐのは、とても恥ずかしいことです。
  
タグ :地震雲


Posted by 山本弘 at 16:22Comments(11)サイエンス

2012年11月06日

「地震雲」について考える(前)

 先月の話になるが、『週刊現代』(2012年11月3日号)にこんな記事が載った。

>本誌は警告する 不気味な地震雲も出始めた
>そろそろやってくるM7クラスの首都直下型地震
http://www.bitway.ne.jp/kodansha/wgendai/sannet/article/121022/top_04_01.html

 ……あのー、『週刊現代』さん?
 貴誌は2005年にも、地震雲などを根拠に、「関東にもうすぐ大地震が起こる!」とさんざん騒いだんですが、もうお忘れですか?


・2005年4月7日号
 福岡沖地震が警告!!「東京&名古屋」
 次にくる巨大地震

・2005年4月30日号
 南関東大地震「GWが危ない!」

・2005年6月18日号
 5・25に“予兆雲”が発生
 地震雲を追い続けてきた本誌だから書ける
 関東・東海大地震「6・18までが危険日」

・2005年7月9日号
 迫り来る東京大地震!「7月の危険日」

・2005年8月13日号
 首都“縦断ベルト地帯”が最も危険
 この夏「巨大地震」が東京を襲う!
 恐怖!「平成の関東大震災」へのカウントダウン

・2005年9月3日号
 9・11衆院選を目前に無気味な前兆現象を確認
「巨大地震が“選挙”に起こる!」

・2005年9月17日号
 雲から動植物の変化、ラジオのノイズまで前兆現象を網羅
 巨大地震「9月のXデー」

・2005年11月5日号
 東海大地震か超台風の襲来か!?
 10・30 火星大接近で「地球大異変!」

・2005年12月3日号
 南海トラフが誘発する「恐怖のM8」のシステム
「12月大地震」に備えよ

・2006年2月18日号
 豪雪が「2月大地震」を呼ぶ! 東京・仙台

 ほとんど毎月、「地震雲が出た」とか「もうじき大地震が来る」って言ってましたよねえ?
 大はずれに終わったこれらの記事は、無かったことにしてるんですか?

 今回の記事の中では、大気イオン地震予測研究所(e-PISCO)の矢田直之氏が、10月9日に中央自動車道の土岐(岐阜県)あたりで撮影されたという「地震雲」の写真について、こんなことを述べている。

>(前略)確実なことは言えませんが、私の経験に照らすと、岐阜、愛知付近でM(マグニチュード)7クラスの直下型地震が発生する危険があります。
>震源が深ければ震度5ですみますが、万が一浅ければ、M7でも震度6強の地震が愛知・岐阜エリアを襲う可能性があるのです。

> 通常、地震雲が観測されてから数週間以内に地震が発生する可能性が高い。実際、10月16日にも岐阜では珍しい地震が起きた。M2.9の小さな地震でしたが。愛知・岐阜エリアでは10月いっぱい、十分な注意が必要です」


 岐阜では地震は珍しいのだろうか? 調べてみたら、今年の8月、愛知や岐阜を震源とする有感地震(M1.9~3.4)が11回も観測されているのだが。

http://www.jma-net.go.jp/gifu/gaikyo/632_08.html

 だいたい、矢田氏は岐阜の地震を警戒しているのに、記事のタイトルが「そろそろやってくるM7クラスの首都直下型地震」というのも変な話である。

 矢田氏が10月9日に岐阜で撮影された雲が「地震雲」だと信じた理由は、阪神淡路大震災の8日前に神戸で撮影されたという「地震雲」に似ていたからである。


>「言うまでもありませんが、この地震雲が観測された8日後、阪神淡路大震災が発生しました。あの時は野島断層が動いたと言われていますが、雲の位置は震源地の真上に相当する。まさに震源地からまっすぐ立ち昇るように伸びている。

 矢田氏をはじめ、「地震雲」の存在を信じる人々はみな、この雲が「震源地からまっすぐ立ち昇るように伸びている」と言う。
 しかし、ちょっと待っていただきたい。この雲は本当に垂直なのか? 撮影者の頭上から地平線方向へと水平に伸びている飛行機雲ではないのか?
 こんな指摘をしている人もいる。


http://sky.geocities.jp/takotako_m8/tarumi.htm
>どちらの写真が先に撮られたのかは、別として・・・そう、明らかに雲は移動しているのである!これは何を意味しているのか!!??
>そう、少なくとも地下の断層・1点から、噴出しているのではない。1点から噴出しているのだから、垂直に立ち上るのであって、であれば、強風によって上端は移動するにしても、下端は同じ場所に固定されるはずである。 噴出口が移動しているとしたら、もっと幅広い扇状に広がるはずである。どうみても、地震雲と考えると不自然だ。

http://mmasamurai.blog100.fc2.com/blog-entry-793.html
>写真を見れば分かる通り,この時刻は完全に日没後であり,明石海峡大橋も淡路島も黒くシルエットになっている.しかし,くだんの雲は下端とされる部分まで陽が当たっており,美しく輝いている.このため,雲が垂直になっているのではなく,奥に向かって水平にたなびいていると考えた方が無理がない.

 まことにもっともである。
 もしこの雲が本当に明石海峡大橋の上に出ているのなら、雲の下端は橋の高さ(298.3m)よりほんの少し高いだけ、ということになる。それなら橋と同様、真っ暗に写っていなくてはならない。
 この写真は神戸の垂水港から明石海峡大橋の方向を撮影したものだという。明石海峡大橋は垂水港から見て南西にある。
 すると、雲は明石海峡の西側にあることになる。しかし、阪神淡路大震災の震源地は明石海峡の東である。つまり、どう考えても、この雲は「震源地の真上」にはないのだ。
 地上は真っ暗なのに雲にはまだ陽が当たっているということは、この雲はかなりの高空、おそらく高度10km以上にあると推測される。とすると、手前に写っている明石海峡大橋との位置関係から見て、この雲は明石海峡大橋より何十kmも向こうにないとおかしい。
 ということは、雲の西の端(画面では下端)が存在するのは四国の香川県の沖合の上空である。

(写真をクリックすると拡大します)

 この雲が飛行機雲だと考え、グーグルマップ上で垂水港から明石海峡大橋へ線を引き、それをさらに延長してみると、東の端が大阪国際空港(伊丹空港)の位置に到達することが分かる。西側に延長すると、四国の松山空港、九州の長崎空港・熊本空港・大分空港などが位置している。
 当時の時刻表は分からないが、現在でも午後5時台に何本もの旅客機がこの航路を飛んでおり、1995年当時もそのはずである。

伊丹空港フライト情報
http://osaka-airport.co.jp/timetable/

 実は我が家も伊丹空港の近くにあり、何日かに一度は、きれいな飛行機雲が見られる。
 明石海峡の上を毎日5時台に旅客機が飛んでいるのだから、垂水港から見て明石海峡大橋の上に、何日かに一度、西南西へと伸びる飛行機雲が必ず出ているはずだ。つまり阪神淡路大震災の8日前に飛行機雲が撮影されていても、何の不思議もないことになる。

 矢田氏は言う。

> 飛行機雲だと反論する人もいますが、絶対に違う。飛行機雲が高度1万mくらいのはるか上空でつくられるのに対し、地震雲は5000mくらいの高度から伸びていくのです。

 この説明は三重におかしい。
 第一に、飛行機雲は高度5000mぐらいからできるとされている。
 第二に、1枚の写真から、雲の高度が5000mだなんて、どうやって分かるのだろうか? まず神戸で撮影された写真の「地震雲」が、高度5000mであることを証明してもらわねば困る。
 第三に、この雲の高度が5000mだとすると、明石海峡大橋より何十キロも向こうの香川県沖にあることになり、逆に地震雲ではないことになってしまうのだ。

 もちろん岐阜で10月中に大きな地震は起こらず、矢田氏の予言ははずれた。
 10月9日に撮影されたという「地震雲」は、やはりただの飛行機雲だったのだろう。
  
タグ :地震雲


Posted by 山本弘 at 14:14Comments(19)サイエンス

2012年11月04日

『やりすぎ都市伝説スペシャル』に「イルミナティ・カード」が!

 いやー、ひどい番組だった!
 11月2日に放映された『ウソかホントかわからない やりすぎ都市伝説スペシャル2012秋』である。
 この中で『ILLUMINATI:NEW WORLD ORDER』が紹介されたのだ。このゲームについては、前に書いたことがあるので参照していただきたい。

http://hirorin.otaden.jp/e164900.html
http://hirorin.otaden.jp/e175801.html

 予告を見た時から懸念していたのだが、番組内での解説はまったくデタラメなものだった。

関暁夫「イルミナティには様々な都市伝説があるんだけどね。その中でもさ、何の目的か分からないカードゲームがさ、アメリカで発売されてたんだよね」

 何の目的か分からないカードゲーム!(笑)
 だからトレーディング・カードゲームだって言ってるだろうが。じゃあ『ポケモン・カードゲーム』とか『モンコレ』とか『遊戯王』とかも「何の目的か分からないカードゲーム」なのか?

関「その名もさ、イルミナティ・カードっていうものなんだよね」

 正しい名称は『Illuminati: New World Order』である。

ナレーション「イルミナティ・カードとは、闇の支配者となって世界を征服するというカードゲーム。1995年にアメリカで発売され、わずか1年で、何者かの圧力によって販売中止となった幻のカード」

 1998年に拡張キットが発売されてるんですが(笑)。

http://www.amazon.com/INWO-SubGenius-Steve-Jackson/dp/1556343388
http://www.amazon.co.jp/Inwo-Assassins-Steve-Jackson/dp/1556343124

 スターター・キットも今でもAmazonで手に入る。つーか、番組内で使ったカードだって、どうせAmazonで買ったんだろう(笑)。どこが「幻のカード」なんだよ。

http://www.amazon.com/1994-1995-ILLUMINATI-WORLD-Factory-SEALED/dp/1556343027/ref=pd_sim_sbs_t_5
http://www.amazon.com/Illuminati-Everything-Factory-Collectible-Original/dp/1556342993

 番組内ではこのゲームが「販売停止になった」という間違った前提で話を進め、このゲームはイルミナティによって秘密の計画を公表する目的で作られたのではないか……と主張していた。
 この番組しか見ていない人は、『Illuminati: New World Order』が正体不明の謎の組織によって作られたと思いこんだのではないだろうか。
 作ったのはスティーブ・ジャクソン・ゲームズですから!

http://www.sjgames.com/

『マンチキン』とか『トゥーン』とか『ニンジャバーガー』とか、ふざけたゲームいろいろ出してる会社ですから!

http://www.worldofmunchkin.com/
http://www.sjgames.com/toon/
http://www.sjgames.com/ninjaburger/

 この会社の商標が「ピラミッドから覗く眼」なのは、INWOの前身であるカードゲーム『イルミナティ』の人気が出たからだ……というのは、公式サイトのFAQにちゃんと書いてある。

http://www.sjgames.com/general/faq.html#FNORD

 番組中では、〈Combined Disasters複合災害〉〈Tidal Wave津波〉〈Nuclear Accident原発事故〉の3枚のカードが紹介され、あたかもこのカードの予言か当たったかのように見せかけられていた。しかし、他のTCGと同様、INWOには何百枚ものカードがあって、思いつく限りのありとあらゆる有名人・団体・災害・事件のカードが存在することは隠されていた。〈Meteor Strike隕石衝突〉〈World War Three第三次世界大戦〉〈Tornado竜巻〉〈Volcano火山噴火〉などのカードもあるのだ。

http://www.omni.to/upload/illuminati-cards/
http://www.omni.to/upload/illuminati-cards/subgenius/
http://www.omni.to/upload/illuminati-cards/assassins/

 こんなカードもある。


 悪い予感がするなあ。
 またこんなトンデモ陰謀説を信じる奴が増えるんじゃないか。
 バラエティ番組にマジにならなくても……と笑う人がいるかもしれないが、この手のバラエティ番組の影響力ってバカにならないのだ。日本でアポロ陰謀説が広まったのだって、爆笑問題の『これマジ!?』やビートたけしの『世界はこうしてだまされた!?』がきっかけだったことを忘れてはいけない。
 これだけインターネットが普及し、ググればいくらでも情報が出てくる時代なのに、多くの視聴者は、テレビで紹介された話のソースまでたどろうとはしない。バラエティ番組の中のいいかげんな話であっても、「テレビで言っていたから本当だろう」と思ってしまうものなのだ。

 番組中ではスターバックスやビル・ゲイツへの中傷もひどかった。ネットからつまみ食いしたらしいいろんな陰謀説を無批判に垂れ流すのである。
 スターバックスの本社ビルの屋上の商標が「星」と「眼」だからイルミナティだとか。

http://blogs.yahoo.co.jp/rocket_bus_company/65520560.html

 いやいや、「星」とか「眼」なんてモチーフはそこらじゅうにあるよ! それにスタバの場合、顔の上半分であって「眼」ですらない。こんなのでイルミナティだって言っていいなら、世界中どこもかしこもイルミナティだよ。
 ウルトラ警備隊のマークも、よく見たら「眼」みたいだぞ! 科特隊のマークには五芒星があるぞ!

http://m-78.jp/news/n-1497/

 上記のブログの作者、案の定、『やりすぎ都市伝説スペシャル』を「なかなか突っ込んだ内容で面白かったですね」と評価している。

http://blogs.yahoo.co.jp/rocket_bus_company/65991583.html

 いや、もしかして関暁夫はあなたのブログからネタ拾ったんじゃないですか?(笑) 「スターバックス イルミナティ」で画像検索かけたら、真っ先にヒットしたのがあなたのブログなんですけど。

 OKサインが悪魔のサインだという話もひどい。うっかりOKサイン出したら、悪魔主義者にされてしまうのだ!

http://sekainoura.net/ok-666.html

 しかもひっくり返すと「911」に見えるって……そこまでこじつけますか!?(笑)
 イルミナティは「そう言えばOKサインって逆にすると911に見えね?」「じゃあ9月11日に事件起こそうぜ」とか、そういうノリで陰謀企ててるんですか?

 中でもひどかったのが、ビル・ゲイツに対する中傷。もうゲイツはテレビ東京に対して訴訟起こしてもいいレベル。
 ビル&メリンダ・ゲイツ財団の建物が、上から見るとV字形が二つに見える。これはフリーメーソンのシンボルのコンパスと定規だ……というのだ。

http://satehate.exblog.jp/14274543/

 V字形が二つあっただけでフリーメーソン! もうコンパスと定規ですらなくていいし、重なってなくてもいいの!?
 んなこと言ったらこれだってフリーメーソンってこと?

 仮面ライダーXなんて、主題歌からして「額に輝くVとV」って歌ってるし、コン・バトラーVなんて「VVV、ビクトリー」だし。あっ、V2ガンダムってのもあったな。
 Vが二つなんて、いくらでも見つかるよ。

 関暁夫によれば、ビル&メリンダ・ゲイツ財団は世界の人口を削減する陰謀を企んでいるというのである。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%83%AB%26%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BB%E3%82%B2%E3%82%A4%E3%83%84%E8%B2%A1%E5%9B%A3

 立派な活動としか思えないが、この番組にかかると、こんなことにされてしまう。

関「2010年、彼の口から驚くべき発言がされました」
ビル・ゲイツ「世界の人口は現在68億人。近い将来90億人に達します。もし私たちがワクチンや健康問題、そして生殖問題に取り組めば、増加し続ける人口を10%から15%抑えることができます」
関「アメリカではこう言われています。ビル・ゲイツの真の目的、それはワクチンによる世界人口調整!」
ナレーション「人口調整計画。ビル・ゲイツはこうも言っている」

ビル・ゲイツ「私たちのこれから10年間の新たなワクチンの生産、またそれを必要とする子供たちへの供給に関して、大きな進歩を遂げることができると信じています。成功すれば、1年間で死亡する子供たちを900万人以上減らすことができます」


 ……ええっと、これのどのへんが「驚くべき発言」で、どのへんが「ワクチンによる世界人口調整」なんですか?
 病気で死んでゆく発展途上国の子供たちをワクチンを使って救いましょう、一方で、このままだと90億人にまで増えてしまう人口を、80億人ぐらいに抑えるように努力しましょう……って話でしょ?
 そりゃやらなきゃいけないことだよ。
 もしかして、こういう陰謀論者たちって、発展途上国の爆発的人口増加が、貧困や飢餓の主要な原因だってことを知らないのだろうか? 人口を抑制するのが悪いことだと思ってる?
 ちなみに発展途上国で多産が多い理由のひとつとして、子供の死亡率が高いため、たくさん子供を作らないと将来の労働の担い手が減る、という不安が挙げられる。日本でも昔は女性が何人もの子供を産むのが普通だった。しかし、医学の進歩によって子供の死亡率が減ったことで、そんなに多くの子供を作らなくてもいいことが分かってきて、だんだん出生率も減少してきたのだ。
 逆説的だけど、医療を整備して子供の死亡率を減らすことが、人口を抑制することにつながるのだ。

 この後、ワクチン反対運動家マイケル・ベルキン氏が登場、彼の生後5週間の娘はワクチン接種の副作用で死亡したという。
 確かにワクチンの副作用で死ぬ子供はいる。しかし、それはごく一部。今でもポリオやはしかなどで苦しむ子供が多い発展途上国では、ワクチンによって救われる命の方がはるかに多いのだ。

 発展途上国の人々を救う立派な活動をしているビル・ゲイツに対して、関暁夫は何をしているのか。以下、僕が『トンデモ本の世界X』(楽工社)で書いた文章を引用させてもらう。


「都市伝説本で被害なんか出るわけないだろ」と思われるかもしれない。そうだろうか? たとえば『ハローバイバイ! 関暁夫の都市伝説』の中では、世界各地の大地震は地震兵器による攻撃だという話に続いて、こんなことが書かれている。

 また、軍以外で、なにが被災地に集まるのか? それは莫大な支援金です。ここでみなさん、ひとつ疑問に感じませんか? 日本でも“24時間テレビ”などでチャリティー募金をやれば、一日で数億円集まりますよね。これを世界規模で考えてください。毎日、世界中でこの手の支援募金活動を一体何十年やっていると思いますか? チャリティーイベントのように一日数億円とはいわないまでも、相当の集金力だと思いませんか? それなのに、いまだに支援金が不足しているとか、世界中の医療設備が整わないのはおかしいと思いませんか? 果たして、集まった金はどこへ流れているのでしょうか? さすがに、僕がそのお金の行き着く先をここで公表することは控えさせていただきますが……。(強調は原文ママ)

 被災者救援のためのチャリティーが、フリーメーソンの資金源になっていると匂わせているのである。これはかなり悪質なデマと言わざるを得ない。
 言うまでもないが、世界には飢えや病気や貧困で苦しんでいる人が一〇億人以上いる。年間何百億円の募金があったしても、一人あたりにすると数十円しかならず、すべての人を救うのは難しい。「世界中の医療設備が整わない」のは、おかしくも何ともない。
 だからと言って、募金が無意味というわけではない。募金によって救われる命もある。
 一~二巻だけで累計一三〇万部ということは、『関暁夫の都市伝説』の読者は少なく見積もっても六〇万人。「服部半蔵=松尾芭蕉」なんてバカ話を信じてしまう者がいるぐらいだから、こんな陰謀説だって信じる者はかなり多いはずだ。当然、彼らは募金をするのをためらうようになるだろう……。
 仮に六〇万人の読者の一割の六万人が、一人あたり一〇〇円の募金をためらったとすると、募金額は六〇〇万円も減ることになる。
 関暁夫の広めた「都市伝説」のせいで失われる命があるのではないか、と僕は懸念している。  


Posted by 山本弘 at 13:21Comments(69)メディアリテラシー