2012年10月24日

副島隆彦先生に謝罪します

 最近、むちゃくちゃ腹が立つことがあった。
 ここ数年、これほど怒ったことはない。
 事情を説明するために、まず2年前、2010年6月26日に書いた僕のmixi日記からそのまま引用する。6月22日に新宿のロフトプラスワンで行なわれたトンデモ本大賞後夜祭での出来事である。


 先日のトンデモ本大賞後夜祭、ネタがそこそこ受けたもんで、まあ成功だったと思っているのだが。

 ひとつだけ、ひどく不快だったことが。

 終了後、知らない人が楽屋に入ってきた。いや、もしかしたら前に会ったことがあるのかもしれんけど、僕は軽い相貌失認で人の顔を覚えられないもんで(編集者の顔なんか、5回ぐらい打ち合わせをやらないと記憶できない)、僕にとっては知らない顔なんである。
 その人が「これ、山本先生に差し上げます」と言って差し出したのが、副島隆彦『人類の月面着陸は無かったろう論』。
 その瞬間、「これはヤバそう」と直感した。

僕「いや、要りませんよ、こんなの。持ってますから」

 と断るのだが、その人は「いや、違うんです」と本の最初のページを開いた。
 そこには、

  山本弘様
  副島隆彦

 というサインがあった。
 つまりこの人、副島氏のサイン会に行って、僕の名前でサインをもらってきたのだ。

 あの……。

 何でそんなことするの?

 僕は「副島氏のサイン貰ってきて」なんて頼んでないよ。だいたい有名人のサインを集める趣味もないし。
 原田さんみたいに自分で出かけて行って自分の名前で本にサインしてもらうならいいけど、何で他人の名前でサインを求めるの?
 しかも、その人は自慢そうにこう言うのである。

X「これが例の騒動の発端になったサインです」
僕「えっ? 何か騒動があったんですか?」
X「……え?」

 よく分からんけど、この人が「山本弘」という名前で副島氏にサインを求めたことで、何か騒ぎが起きたらしいんである。
 僕はそんなことぜんぜん知らなかったのだが、この人は「例の騒動」について僕が当然知っているものと思っていたらしい。
 そして、このサイン本を渡せば、僕が喜ぶと思ったらしい。

 やめてよ、そんなこと。

 僕はそんなこと一度でも望んだか? 「副島氏のサイン会に行って騒ぎを起こせ」なんて頼んだか?
 むしろ自分の知らないところで名前を勝手に使われて、迷惑だよ。

 いちおう礼儀として本は受け取っちゃったけど、こんなのは突き返すべきだったかと後悔している。

【コメント欄より】

 某氏より指摘あり。問題の人物は、と学会員らしいとのこと。
 ごめん、100人以上いる会員の顔なんて、とても全員覚えてないよ。
 2008年10月28日のメーリングリストで、副島氏のサイン会に行って「山本弘」という名前でサインを貰ったと報告しているという。そんなことがあったのか。記憶から完全に抜け落ちてたよ。まあ、あの頃は他の問題で大変だったからな……。
 で、そのメールの中では、彼は申し訳ないことをしたと繰り返し謝罪しているのだが。

 でも、先日、楽屋に現われた彼には、反省の態度など微塵も感じられなかった。それどころか、サインを貰ったことや「騒動」を起こしたことを自慢しているように、僕には感じられた。
 ……実は反省してないんじゃねーの?
 本気で反省してたら、こんな「証拠のブツ」を僕に渡そうなんて思わないんじゃないの?
 何度も言うけど、僕はこんなもん、欲しくないですから!

 この「副島氏のサイン会」というのは、2008年10月12日、品川で開かれた「船井幸雄オープンワールド」だとのこと。
 文中にもあるが、この2008年10月というのは、と学会内部で大きな騒動が起きていた頃。僕は他の問題を考えている余裕がまったくなかった。だからKのメールにも注意を払わず、完全にスルーしていたのである。
 ロフトプラスワンの楽屋での一件も、その後、すっかり忘れていた。

 ところが先日、副島隆彦『陰謀論とは何か』(幻冬社新書)という本を買ったら、5ページ目にいきなりこんなことが書いてあったのだ。


 かつて5年くらい前に、山本弘という、その「と学会」なる奇妙な団体の会長を名乗っている人が、突然私の前に現れたことがあります。その日は、他の数人と一緒の私の講演がありました。その講演後のサイン会の列に、その山本君が並んでいました。そうやって山本弘なる、何を職業にしているか分からない不思議な人物が、目の前に現れました。
 私は自著に署名(著作への署名は正しくはオートグラフautographと言う。サインではない)する時には、希望者にはその人の名前も書きます。それで「名前を書きますか」と尋ねたら、「山本弘」と名乗ったのです。それで私が見上げたら、大きな熊さんのような顔をした人だった。「きみが山本君かー」と私が言ったら、彼は耳の横で両手を開いて、ベロベロバーという仕草を私にした。ピョンピョンピョンと跳ねながら。
──それが本当なら、ちょっと変ですね
副島 いや、もともとそういう人(たち)なんでしょう。それで私が、「君が山本君かー。冗談であれ何であれ、私に賞をあげると言うなら、君たちの授賞式に行くから、招待ぐらいしなさい」と言った。「なぜそういうことをしないの」と言いました。
 彼は何も答えないで、あとずさりして向こうへ行ってしまいました。
 向こうはおちゃらかしでお遊びでやっているかどうか知りませんが、変な人たちです。

 何だとー!
 今の今まで、てっきり僕に代わって副島氏にサインを貰いに行っただけ(これだけでも僕にとっては十分に不愉快なことだけど)だと思ってたよ。
 実は副島氏に、自分が山本弘本人であるかのように誤解させたというのである。
 それどころか、副島氏の言葉によれば、ベロベロバーして飛び跳ねたというのである。

 これを読んだ瞬間、顔から血の気が引いた。
 そしてむらむらと怒りが湧き上がってきた。

 副島氏がこのエピソードを本に載せたことで、日本中の読者に、僕に関する間違った印象を与えてしまったではないか!
 今さら副島氏に何を言われてもかまわない。でも、まさかと学会員の中に、僕になりすまして僕の名誉を毀損する奴がいたとは思わなかったよ!

 さっそくその人物(仮にKと呼ぶ)を問い詰めようと思ったのだが、彼はどういう事情なのか、現在はネットに接続していないのでメーリングリストも読めないという。彼の知り合いに仲介してもらって、どうやら事情が判明するのに何日もかかってしまった。
 Kの言葉によれば、ベロベロバーはやっていないという。ただ、副島氏に「君か。と学会は」と言われ、とっさに両手を振って否定のしぐさをしたのが、副島氏にはベロベロバーに見えたのではないか、ということである。
 このサイン会には原田実氏も行っている。原田氏によると、副島氏の著書に自分の名刺を重ねて差し出し、サインを求めたところ、原田氏がと学会のメンバーだと気づいた副島氏は、サインしながら「君たちは陰でこそこそ言っているだけだ。正々堂々、私を招きなさい」と言ったという。つまり副島氏の記憶は、Kに関するものと原田氏に関するものがごっちゃになっている可能性がある。
 ただ、原田氏もKがサインを貰うところは見ていないらしい。なにぶん4年も前のことなので、当事者たちの記憶も曖昧になっており、実際にどんな会話が交わされたのか、真相はよく分からないところがある。
 ただひとつ、はっきりしているのは、Kが自分は山本弘本人ではなく本人の代わりにサインを貰いに来ただけだと、副島氏にきちんと説明しなかったことだ。
 それどころか、山本弘本人と間違われ、とっさに「いいえ、同姓同名です」と嘘をついてしまったという。そんな見え透いたことを言ったら、逆に誤解されるのは当然だ。副島氏はおそらく、「嘘をついてごまかすということは、こいつは山本弘本人だな」と思いこんだのだろう。
 これは副島氏を責められない。むしろ彼はKの言葉に翻弄され、著書の中に間違ったことを書いてしまった被害者だ。

 Kは僕に謝罪した。彼も悪気があったわけでなく、「なりすまし」も故意にやったことではないと分かったので、僕は彼を赦し、処分はしないことにした。
 その代わり、僕はKに、副島氏に謝罪の手紙を送り、サインを貰いに行った自分が山本弘ではないことを説明するように命じた。
 10月23日、Kから連絡が来た。副島氏に謝罪文を発送したという。

 もちろん僕も、と学会会長としての責任があるので、これから副島氏に謝罪文をメールで送ることにしている。また、この場を借りて、副島氏に謝罪するものである。

 副島先生、会員がご迷惑をおかけして申し訳ありません。と学会会長として、監督不行き届きでした。謹んで謝罪いたします。
  

Posted by 山本弘 at 12:16Comments(14)