2012年06月26日

日本のアニメは昔からそうです!

 5月下旬、mixiのアニメ関係のいくつものコミュに、こんなマルチトピが立てられた。僕が確認したのは6箇所(うち1箇所はすでに削除)。mixi以外の掲示板にもいくつか書きこまれていた。
 その後も増え続け、6月26日現在、トピが立てられたコミュの数は14になっている。ちなみに書きこんでいる「うすらん」という人物のプロフィールは真っ白。あからさまな捨て垢である。

>民主党政権になってからこっち、アニメのエンディングのテロップに、韓国人の名が目立ってくるようになりました……。
>これは政府が「韓国に仕事を発注しろ」と、アニメ会社に圧力をかけてるためであり、在日組織の圧力もあるでしょう。そのためにアニメ会社は韓国人に優先的に仕事を与えてます。「人件費が安いから」というのは建前です。テロップでは韓国人の名前に限ってローマ字で書かれてます。これは「日本のアニメは韓国と共同作業で作っている」とう印象を海外に与えることによって、韓国のアニメを向こうで売りやすくすることを目的としています。
>とにかく、このままでは日本のアニメ技術は韓国に盗まれていきます。このままでは日本のアニメは韓国に乗っ取られてしまいます。
>なので、そのことでアニメ会社に抗議の電話、メールを送る協力をお願いします。
>地味でベタな方法ですが、これが一番効くんです


「民主党政権になってから」(爆笑)
 最初、喫茶店でケータイで読んでて、コーヒー噴きそうになったわ。
 昔からそうだよ!
『黄金バット』とか『妖怪人間ベム』とかは韓国で動画作ってたんだよ!
 1980年代、『超時空要塞マクロス』をリアルタイムに見ていた世代のアニメファンなら、「スタープロ」の名をご記憶のはずである。数回に一度、作画の下請けをやっていた韓国のプロダクション。スタープロ担当の回は作画崩壊がすさまじかった。当時、アニメファンの間で、「スタープロ」はひどい作画の代名詞だった。
『マクロス』はタツノコプロの作品だが、他にも80年代のタツノコアニメでは、何回かに一度、EDクレジットに韓国人の名前が出る回があった。タツノコだけではない。東映動画、葦プロダクション、国際映画社なども韓国に下請けに出していた。
 海外に下請けに出す理由は予算の問題が大きい。人件費の安い国に発注することによって、製作費を節約することができたのである。
 日本のアニメはもう何十年もずっと、韓国をはじめとする海外への下請けによって支えられてきたのだ。

アニメ制作の国際分業化
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%8B%E3%83%A1%E5%88%B6%E4%BD%9C%E3%81%AE%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E5%88%86%E6%A5%AD%E5%8C%96

 もっとも、Wikiにも書いてあるように、80年代後半から韓国の人件費も高騰してきて、東映は海外分業の拠点をフィリピンやタイに移している。他の会社でも韓国以外の東南アジア諸国に下請けに出す例が多くなっているらしい。『ワンピース』とか『プリキュア』とかで、EDに外国人の名前がずらっと並ぶことがあるが、あれがそうなんである。
 つまり日本のアニメにおける韓国作画のパーセンテージは、昔よりは減っているはずなのだ。「アニメ会社は韓国人に優先的に仕事を与えてます」なんてのは、まったく事実に反している。
 当然、政府の圧力なんてものもあるわけがない。だいたい「韓国人に仕事を与えろ」と要求したって、ペイしないんじゃどこのアニメ会社も従わないだろう。

 もうひとつ、「このままでは日本のアニメ技術は韓国に盗まれていきます」というのも笑えた。もうとっくに全部盗まれてるよ!(笑) 『テコンV』とか『スペースガンダムV』とか『宇宙黒騎士』とか知らんのか?
 もっとも、日本のアニメの露骨なパクリの低レベルな作品がはびこったのも80年代あたりまでで、近年の韓国では、日本の影響を色濃く受けつつも、質の高いオリジナル作品が多くなってきているらしい。

Wonderful Days(2003年)
http://www.youtube.com/watch?v=9EqA0NmKTak

Ghost Messenger(2010年)
http://www.youtube.com/watch?v=HZydsdood_c
http://www.youtube.com/watch?v=sbAAMeldBZY

 見ての通り、作画技術に関しては、韓国は完全に日本に追いついている。もう日本から盗むものなんてほとんど残っていない。(あとはセンスだけだが、センスというのは盗めるものではない)
 だから「このままでは日本のアニメ技術は韓国に盗まれていきます」という危惧は、70年代、『テコンV』が作られる前だったら意味があっただろうけど、今となってはまったくの手遅れ。とんちんかんもいいところなのだ。

 こうしたことは、「オタク」「マニア」と呼べるほどアニメに興味のある人間だったら、基礎知識として必ず知っているはずである。
 僕が腹が立つのは、この「うすらん」という奴がアニメ製作について初歩的な知識すらないくせに「このままでは日本のアニメは韓国に乗っ取られてしまいます」などと、日本のアニメの将来を憂えているようなことを言っていることだ。
 実際はアニメになんか興味がなくて、単に韓国の悪口を言う口実が欲しかっただけなんだろう。
 もちろん、過去の韓国アニメのひどいパクリの横行に関しては、批判されるべきだ。しかし、ありもしないことまで捏造して中傷するのは許されない。

 アニメをお前らのプロパガンダのダシにするな。
  


Posted by 山本弘 at 14:24Comments(35)アニメ

2012年06月23日

トンデモ放射線デマいろいろ(後編)

【2012年1月】
●『福島産の奇形トマト』はただの規格外品!!また画像 up 主が「福島第一原発全滅!死者は4300人だった!」というデマのネタ元である件!!
http://togetter.com/li/243103
 ただの規格外品のトマトが「福島産の奇形トマト」と呼ばれて騒ぎに。
 普段、スーパーに並んでいる野菜は、形や大きさの揃ったものだけが選別されて出荷されているのである。大きすぎたり小さすぎたり形が変だったりで、スーパーに出荷されない規格外品もたくさんある。荒川弘『百姓貴族』にも書いてあるが、ジャガイモなどは収穫されたものの半分近くが規格外品だという。

●【デマ】雪国まいたけの受難【誤解】
http://togetter.com/li/238127
 雪国まいたけは2011年の11月15日にこんなプレスリリースを出した。

>当社では震災後の4月から、原料や製品の放射性物質の自主検査を開始、日々モニタリングを実施してきましたが、お客様からの検査結果公開のご要望が多数寄せられたこともあり、精密な放射性物質検査が可能なゲルマニウム半導体検出器・波高分析装置を導入し、9月15日よりその結果をお客様に公開してきました。以来、2か月間の毎日のモニタリングの結果、当社検査限界値(20ベクレル/kg)を超えた放射性物質は検出されませんでしたが、消費者の皆様により安心して当社製品を召し上がっていただくため、40 ベクレル/kgを出荷基準値に定めました。これは、世界で最も厳しいとされるウクライナの基準値と同じレベルとなります。
http://www.maitake.co.jp/press/index_4.php

 ところがこれがなぜか「出荷基準を20Bq/kgから40Bq/kgに引き上げた」「セシウムが検出された」というデマに発展。雪国まいたけを非難する声が続出した。
 元の文章をちゃんと読めば、まったく逆のことが書いてあるのが分かるはずなんだけど……日本にはこんなにも読解力のない人間が多いのか。愕然となる。

●【誤解】「雪に振り切れるほどのセシウムのピークが!危険です!」→その線はカーソルです【放射性物質】
http://togetter.com/li/246496
 東京に降った雪の放射線量を計測したスペクトルを見て「セシウム137が一番のピークを示している」「振り切れるほどのピークがありますよね?」と主張する人が現われ、東京の雪は危険だと警告する。実はその人が見ていた線はカーソルだった。
 この人には「カーソルさん」という仇名がついたが、その後も珍発言や問題発言を頻発する。『シオン賢者の議定書』を信じてたり、SI単位系に挑戦したり。

【2012年4月】
●友人の父の友達の息子のJA職員からの情報。「兵庫県産の米には2割福島産が混じってる。」どこのJAかは言えない。
http://togetter.com/li/290609
 タイトル通り。都市伝説の定番の「友達の友達」どころか、「友人の父の友達の息子」って……。

●【放射能汚染】「人口が8000万人へ?放射能で関東・東北全滅!?」→以前から統計で人口減少はわかってますけど…
http://togetter.com/li/295565
 野田総理が記者会見で「だんだんと残念ながら日本は人口が減っていきます。8000万人になるかもしれません」と発言。
http://www.youtube.com/watch?v=Z-gzX9_Udgo
 それを「放射能汚染のせいで4000万人が死ぬ」と誤解した人が続出!
 日本の人口が減少に向かってるって、てっきり常識だと思ってたんだが、そんなことも知らないうえにこんなトンデモない勘違いをする人が多いとは……。

●「園児が感謝のポスト清掃で活動」→「福島県で幼稚園児たちが除染活動」に勝手に変えて騒いでいる人たち
http://togetter.com/li/293917
 4月20日の郵政記念日に、福島県伊達市で園児が感謝をこめてポストの清掃をした、という微笑ましいニュースが、「幼稚園児除染チーム」とツイートされたことから、「園児に除染活動をさせた!」と思いこんで激怒する人続出。だから元のニュースちゃんと読もうよ……。

●木下黄太「関東圏のふとんで足がつる」が大人気
http://togetter.com/li/289027
>最近関東圏で製造されたふとんに寝ていて、足がつるなどの身体症状が出るケースがあります。注意してください。

 なんかもうギャグとしか思えないんですけど、この人。

●『東北大学に被“爆”者が搬送され、既に700名近くが死亡』というデマ
http://togetter.com/li/290608
●『東北大学に被“爆”者が搬送され、既に700名近くが死亡』というデマ の発言者の発言で意識が遠くなった
http://togetter.com/li/290608
 典型的な電波さんでした。

【2012年5月】
●ホルムアルデヒドにあの方々が反応するとこうなる。
http://togetter.com/li/306649
>放射性物質によって塩素が変質し、ホルムアルデヒドが発生した可能性がある。

>化学の世界ではベータ線を発する放射性物質が塩素が結合すると、ホルムアルデヒドと クロロホルムが発生するのは常識とのこと。


 知らねーよ、そんな常識(笑)。そもそもホルムアルデヒド(CH2O)って塩素入ってないじゃん!
 こんなデマを拡散してるのは誰かと思ったら……わあ、またバルパンサーか!

http://kobayashiasao.blog65.fc2.com/blog-entry-3681.html

 引用されている文章はこれ。

環境負荷化合物の分解・除去における放射線利用
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=08-03-03-04

 タイトル通り、放射線によって排気ガス中や水中の有害な化合物を分解できるんじゃないか……という、まったく逆のことが書いてあるんですけど。

> ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンなどの有機塩素系炭化水素の濃度が数十ppb~数百ppb程度の水溶液に放射線を照射(線量2kGy)すると、殆どの有機塩素化炭化水素が分解され、検出されなくなり、四塩化炭素とトリクロロエタン水試料のみ1ppb程度残留している(表1、文献12-13)。分解生成物として塩化物イオン(図1)、分解中間物としてアルデヒドとカルボン酸が検出されている(文献12)。

 線量2キログレイ。
 つまり2000シーベルト。
 ああ、まあ、それぐらい浴びせりゃ化合物も壊れるわなー……(遠い目)。
 つまりこの人たちは、「クロロホルムなどの有機塩素系炭化水素に大量の放射線を浴びせたら分解して、アルデヒドとカルボン酸が検出された」という話を、「微量の放射性物質と塩素が結合すると、ホルムアルデヒドとクロロホルムが発生する」と「超訳」してしまったわけである。

●『私がグーグルマップとフォトショップを使って「おそらくこんな感じだろう・・・」と作図したものです。数値的な根拠はありません』
http://togetter.com/li/308995
「北九州、瓦礫焼却による放射能拡散予想図(季節風を考慮)」と称して、おかしな図を発表した人。ソースを問われて「私がグーグルマップとフォトショップを使って「おそらくこんな感じだろう・・・」と作図したものです。数値的な根拠はありません」と返答。それは普通、「デタラメ」と言います!(笑)
 しかもこの絵がすごく雑。明らかに同じサイズのブラシをちゃっちゃと滑らせただけ。10秒もあれば描けるぞ、こんなもん。
 ちなみにこの人、イラストレーターなんだそうだ。ええーっ(笑)。

【2012年6月】
●「菊地直子の逮捕は大飯原発再稼動の目くらまし」
http://togetter.com/li/314645
 一人や二人が言っているならともかく、こんなに大勢の人が言っているという事実に愕然。何でもかんでも原発と結びつけないと気が済まないのか?

●海洋汚染ですか?いいえ、津波です。
http://togetter.com/li/319567
 NOAA(アメリカ海洋大気庁)が発表した、東日本大震災で発生した津波がどのように太平洋に広がったかを示す図が、「フランスの専門機関」が発表した「福島第一による太平洋海洋汚染のシミュレーション」として拡散。
 海洋汚染なら日本近海の海流に乗って広がるはずだから、こんな風に海流を無視して拡散するわけないって、すぐに気づくと思うんだけど。

●Twitterがダウンした理由とは
http://togetter.com/li/325628
>昨晩Twitterダウンしてた。これは高い確率で権力の横暴。今日行われる官邸前の再稼働抗議を連携を取りにくくし、邪魔するつもりだったのだろう。原発利権がここまで露骨だと本当に呆れる。

 高い確率でシステムの問題だと思います(笑)。
 ネタにして楽しむ人も多い反面、信じて拡散する人もいてあきれる。

 誤解を受けないように言っておくが、僕は昔から反原発派である。
 だったら何で放射能デマを批判するかというと、理由は簡単で、「「奴らを貶めるためならウソをついてもいい」という考え方は、断じて正義ではない。悪である」というのが僕の基本スタンスだからだ。
 こういうデマを生み出す卑劣な人間や、よく考えずにデマを拡散する頭の悪い人間がいることは、反原発派の恥だし、原発推進派の格好の攻撃材料である。だから反原発の姿勢を貫くためには、こうした「放射能デマ」と戦わねばならないと思っている。
  


Posted by 山本弘 at 17:39Comments(11)メディアリテラシー

2012年06月23日

トンデモ放射線デマいろいろ(前編)

 僕は昔から都市伝説とかデマといったものに興味を持っている。
 このブログでもこれまで、いろんなデマを取り上げてきた。僕も信じてしまって拡散に手を貸してしまったものもあるし、僕自身がターゲットにされたものもある。

今度は「神舟7号の宇宙遊泳もなかったろう論」
「オーケン伝説」はやっぱり都市伝説だった!
「谷岡敏行氏殉職事件」の拡散過程【都市伝説】
「ちきゅう」陰謀説のバカさ加減
デマ:蓮舫の子供が海外に留学
これがイルミナティ・カードだ!
エレーニン彗星衝突説が爆笑ものだった件
鼻血効果
『突然、僕は殺人犯にされた』
またデマ流されました
「ベルギーで朝放送されている性教育番組」はやっぱりデマだった

 厳密に言うと、「デマ」の本来の意味は「扇動」であり、何らかの意図をもって大衆を扇動するために流される虚偽情報のことである。もっとも近年では「うわさ」「誤情報」「ガセネタ」「都市伝説」などと混同して使われることが多い。僕もあまり区別せずに使っている。
 そもそも、デマの発信者の意図は不明な場合が多い。大衆を扇動する目的で故意に虚偽情報を流す者もいるだろうし、自分でも虚偽を真実だと信じて善意で拡散する者もいるだろう。どちらなのか、表面上は区別がつかない。
 だからここでは、ひっくるめて「デマ」という言葉で語ることにする。

 昨年3月以来、爆発的に増えたのが、原発・放射線関連のデマである。
 もちろん「安全デマ」というものもある。しかし、「危険デマ」に比べると圧倒的に少ないし、拡散力も弱い。「××は安全だ」というウソと「××は危険だ」というウソでは、どちらの方が衝撃が大きく、拡散力が高いかは言うまでもない。
 震災直後に流れたデマについては、荻上チキ『検証 東日本大震災の流言・デマ 』(光文社新書)という本にまとめられている。しかし、その後も実に多くのデマが流れているのだ。



 ここでは、過去1年間に主にツイッターで流れた原発・放射線関連のデマの中から、あまりにもひどいものや、笑えるものを選んでみた。これでもデマのすべてではない。

【2011年7月】
●アングルの違いじゃないすかね
http://togetter.com/li/159437
「JNN福島第一原発情報カメラ」に映っている大型クレーンが、東電の「ふくいちライブカメラ」には映っていなかったことから、「ライブカメラの映像は合成」というデマが広がる。原子炉から水蒸気が発生しているのをごまかすため、CGを使っているというのだ。単にアングルが違っていて、クレーンがカメラの視界に入っていなかっただけだった。
 だいたい、JNNのカメラでも写されてる以上、そんな細工したって意味ないんじゃない? 働いてる作業員も大勢いるから、目撃されちゃうよね?

●セブンイレブンのお弁当の食材について衝撃のツイート→ソースは今から探します #genpatsu
http://togetter.com/li/156887
「セブンイレブンのお弁当は放射能汚染地域の食品つかっています」 というデマを発信しておいてから、「情報ソースお持ちの方いらっしゃいますか?」と呼びかける。何なの、この人……。

●急性被曝?この場合は(ヾノ・∀・`)ナイナイ
http://togetter.com/li/165513
 福島第一原発に近い大熊町で発見された遺体から高い放射線量が検出されたことから、大熊町と双葉町で発見された数百体の遺体が「溺死でなく放射能急性被曝死だった」というデマが拡散。
 大熊町の死亡者・行方不明者は47人。双葉町の死亡者・行方不明者は56人。
http://n-switch.upper.jp/eq20110311.html
 つまり見つかった遺体の多くは、この町の人ではなく、津波に呑まれて他から流されてきたものと推測される。そしてもちろん、原発事故が起きるのは津波よりもずっと後だ。
 ちなみに、11日の午後8時50分の時点で福島県対策本部により2km圏内に避難指示が、12日の午前5時44分に総理指示により10km圏内に避難指示が出されているので、1号機で水素爆発が起きた12日午後3時36分の時点では、10km圏内にほとんど住民はいなかったはずである。
 だいたい原発内部にいた職員でさえ死んでいないのに、どうして何kmも離れたところにいる人が何百人も死ぬのか。そんなに早く死ぬのなら、被曝量は何百シーベルトとかいう単位のはずなんだけど。

【2011年8月】
●「被曝について診断書を書くと,文科省が医師免許を剥奪すると脅迫している」というデマについて。
http://togetter.com/li/171916
 ある人が主治医に「放射能については診断書は書けない。医師免許を剥奪されたくない」と言われたという話から、「文科省が医師を脅している!」というデマに発展、たちまち拡散する。そもそも医師免許を出すのは厚労省だということも知らない人が多いのにはびっくり。
 おそらく元々の医師の発言(本当にあったとすれば)は、「放射能のせいでもないのに放射能が原因だなんて書けない。診断書に嘘を書いたら医師免許を剥奪される」というニュアンスだったのだろうと思われる。

●アンパンマンカレー
http://togetter.com/li/176831
 永谷園のアンパンマンカレーにガイガーカウンターを当てた人が、放射線が検出されたと言い、「今後一切買いません」と宣言した。その情報が爆発的に拡散。
 おそらくカレーの中に含まれる天然のカリウム40の出すベータ線を拾ったものと思われる。しかも製造年月日は震災前だったらしい。
 しかし流した本人は反省の色なく、「風評被害を生まない為に、企業は努力して、放射能検査を徹底するべきだと思います」などと、のうのうと言っている。風評被害生んでるのはあんただってば(笑)。

●放射線蛍光プラスチック「シンチレックス」の誤解が広まっている
http://togetter.com/li/178218
 放射線が当たると光るプラスチックなのだが、なぜかメガネにしてかけると放射性物質が光って見えると誤解した人続出。
 じゃあ、光に当たると色が変わるサングラスをかけたら、太陽だけが黒く見えるわけ? 理屈で考えればおかしいってすぐ分かるだろうに。

【2011年9月】
●8000Bq/Kg以下の汚泥焼却灰をセメントに使用すること、という厚生省通達が各セメント会社に出たようです(セメント会社の友人から聞きました)
http://togetter.com/li/184641
>夫の会社に厚生省通達で、8000Bq/Kg以下の焼却灰をセメントに使えと言ってきたそうです。通達は絶対で、これからはセメントは全部セシウム入りになるそうです。。。肥料、瓦礫焼却、セメント、、どこにいても放射線から逃れさせないぞ!という国の強い意思を感じます…友人Yさんから。

 そもそも「厚生省」は厚労省の間違いだろうし、厚労省がセメント会社に通達というのは根本的におかしい。無論、9ヶ月以上経った今も、こんな「通達」があったという証拠はどこからも出てこない。

●拡散中の「岐阜の何千メートル級の穴」の件
http://togetter.com/li/188907
>これは言っていいのか。重大なことを知ってしまった。今、岐阜県の山中に巨大な何千メートル級の穴を掘っている。福一の燃料を埋める穴だ。

 おそらく瑞浪超深地層研究所のことが誤って伝えられたものと思われる。この記事にもあるが、放射性廃棄物貯蔵施設などに転用してはいけないことになっている。
http://www.asahi-net.or.jp/~zq9j-hys/040415TONO.htm
 真相が指摘された後の展開も頭が痛い。デマを拡散した人は反省もせず、「原発&放射線の情報収集でしてるだけ」「私がどれほど慎重にしているからかさえ、推して頂けない?」と猛烈に開き直るわ、デマ発信源の人はあくまで事実を認めようとしないわ……。

●スリーマイル奇形情報まとめ
http://togetter.com/li/182827
 2009年にコロラド州で生まれた奇形の牛が、なぜか1979年のスリーマイル原発(ペンシルベニア州)事故の影響にされていたり、バラの貫生花、金魚葉椿、イチョウの葉の切れ目、シロバナマンジュシャゲなど、福島第一原発の事故以前から普通にあるものが、ことごとく放射能の影響にされている。

●産地偽装のために、福島県で他県産の米袋が売られている?
http://togetter.com/li/184915
 他県産の使用済みの米袋をリサイクル利用することは、以前から日本各地で行なわれていたのだが、福島のホームセンターで米袋が売られていたことから「産地偽装のために売られている」というデマに発展。

●八王子市の土壌からアメリシウム241検出の報、でもどうしてα線でなくγ線で検出?
http://togetter.com/li/188790
「プルトニウムより毒性の強いアメリシウム241が、八王子の土壌から1kgあたり74ベクレル検出された」という情報がネットで流れる。
 実際の検査結果はこう。

「Am-241 : < 3.7」

 検出限界値である3.7Bq以下だった。つまり不検出という結果だったのだが、不等号の意味を理解できない誰かがそれを抜いて発表。それを見た別の誰かが、50gのサンプルから3.7Bqのアメリシウムが検出されたと解釈し、その数字を20倍して「1kgあたり74ベクレル」にしたらしい。
 この誤報、すぐに打ち消されたものの、その後も何度か復活している。

【2011年10月】
●【放射性物質汚染】モスバーガーの受難【誤報】
http://togetter.com/li/201023

>モスバーガー、問い合わせに対して「原材料については一切公表する気はない、不安があるなら利用しなくて結構」被災地の野菜をこれからも使い続けると断言。

 ある人がツイッターでこうつぶやいたら、そのソースが確認されないまま拡散。流した人は間違いに気づいてツィートを削除したが、時すでに遅く、拡散しまくっていた。
 モスバーガーは以前から食材の産地をちゃんと公開している。

モスバーガーHP/今月の産地情報
http://www.mos.co.jp/quality/vegetables/farm_info/

●ある若者の死が“原発事故の犠牲者”としてネットで広がり、否定されるまで
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1111/29/news100.html
 9月に急性リンパ白血病で亡くなった釣り師の男性が、「福島原発30km圏内で野宿し池や川で釣った魚を食べていた」というデマが流れた。実際には男性は福島を通過しただけで、野宿したことも魚を食べたこともなかった。
 そうした事実を指摘されてもなお、嘘をついてまで故人を貶めようとする者もいる。これはもう「人間のクズ」と言っていいレベル。↓
http://togetter.com/li/222071

【2011年11月】
●福島第一原発全滅!死者は4300人だった!
http://togetter.com/li/210282
「原発作業員の死者は既に4300人いるが、各遺族3億円で口止めされてるから、その事実はまだ世間に漏れてないそうです」という途方もないデマが拡散! 何でこんなの信じられるの? 4300家族に3億円ずつ払ったら1兆円オーバーしちゃうんですが。
 こういうデマを信じる人は、「現代日本で4300人の人間が死んでも隠蔽できる」とか「1兆円以上の金がどこからともなく魔法のように湧いて出てこっそり使える」と思っているらしい。そんな思考能力の欠如した人間が大勢いる事実の方が怖い。

●白血病患者数が前年7倍と急増 このデマはなぜ広がったのか
http://www.j-cast.com/2011/11/30114796.html
 新聞記事からの引用を装い、「各都道府県の国公立医師会病院の統計によると、今年の4月から10月にかけて、「白血病」と診断された患者数が、昨年の約7倍にのぼったことが21日に判明した」とするデマが2ちゃんねるに書きこまれ、確認されないまま拡散。実際にはそんな発表はなかった。
 記事へのリンクが貼られていない時点で、怪しいと気づけ。

【2011年12月】
●『スリーマイル化する奇形作物』は完璧なデマ!!桜島大根に失礼です!!
http://togetter.com/li/226976
●野菜が大きいのは気候の影響!!巨大ゴボウは「大浦ごぼう」、もともと大きなゴボウです!!
http://togetter.com/li/222002
 放射能の影響で野菜が巨大化しているというデマが流れる。しかし、そこに貼られていた写真は、ごく普通の桜島大根や大浦ごぼうだった(笑)。しかも、写真はいずれも2011年より前のもの。
 また、2011年の秋は好天だったため、白菜がとてもよく育ち、規格外の大きさになるものが多かったという。
 こういう話を信じてしまう人間は、50年代B級SF映画の見すぎである
(つづく)
  


Posted by 山本弘 at 16:45Comments(5)メディアリテラシー

2012年06月21日

「『SFマガジン』を創刊号から読んでみる part.3」

山本弘のSF&トンデモNight #11
「「幻の名作・怪作を発掘! 『SFマガジン』を創刊号から読んでみる part.3」

【出演】山本弘(SF作家/と学会会長)
【時間】6月29日(金)
     開場19:00〜 開演19:30〜(約二時間)
【場所】トークシアターなんば紅鶴
大阪市中央区千日前2-3-9 『レジャービル味園』2F
南海なんば駅より南海通り東へ180m
【入場料】前売り¥1500- (当日500円up)
 ※飲食代別途

http://go-livewire.com/index.html#

 グレッグ・イーガンやテッド・チャンもいいけれど、昔のSFだって面白かった!
 1959年12月に創刊され、すでに半世紀の歴史がある『SFマガジン』。80年代以前のクラシックSFを深く愛する山本弘が、その初期の号の中から、今となっては読めない幻の名作、心温まる佳作、奇想天外な怪作、爆笑の珍作の数々を、主観と偏見でピックアップ。素朴だけれど楽しいクラシックSFの魅力を語り尽くします。
 今回はついに100号からを紹介します。日本人作家も出揃い、世は万国博覧会景気に酔う未来論盛んなりし70年代。SFブーム到来で誌面も充実。クラークやアシモフなどの大御所と違い、決してスポットの当たらないマイナーな作家たちの、想像力の競演をお楽しみください。
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 もうそろそろ1年になりますね、「SF&トンデモNight 」。そんなに続けられないだろうと思ってたんだけど、けっこうネタはあるもんです。
 ちなみに前回のLiveWireのイベントの映像。 テーマは「同人誌」。

http://www.ustream.tv/recorded/22837130

(プロジェクターの映りが悪いんで、声だけ聴いて想像していただけるとありがたいです)
「星群」から「あすたりすく」から「と学会」、『トランスフォーマー』に『赤ずきんチャチャ』、『Speed Fighter』、『プラモ狂四郎』、『オトナ帝国の興亡』、『さよなら絶望先生』、女ターザンと、いろいろ作ってたなあ。
『ようこそようこ』の同人誌が見つからなくて、持ってこれなかったのが、本当に残念。
 買う方もいろいろ買ってきたなあ、こうして見ると。

 こちらは前々回の「『SFマガジン』を創刊号から読んでみる part.2」。51号から100号を取り上げて紹介してます。

http://www.ustream.tv/recorded/22243596
  


Posted by 山本弘 at 17:05Comments(0)PR

2012年06月21日

「スカイツリーは地下も含めると666m」というのはデマ

634mスカイツリーに666m説出る 「陰謀めいてる」との声
http://www.news-postseven.com/archives/20120617_119790.html
  5月に開業した東京スカイツリーでは、数々のミステリーがささやかれている。

 スカイツリーの高さは、武蔵野国の名にちなんで634mに決めたとされている。ギネスブックにも634mと記録されている。だが、本当は666mだという説がある。超常現象に詳しいUFO研究家の並木伸一郎さんはこう語る。

「スカイツリーは地下に頑丈な土台が築かれていますが、これが深さ10階建て以上に相当するといわれています。10階建ての建物の高さは、一般的に31mほど。10階建て以上ということは31m以上掘ってあるということで、これが32mだとすると、高さ634m+地下32m=666mということになるのです。

 666は新約聖書では不吉な数字とされていますから、日本のシンボルとなるスカイツリーが666の数字をもとに造られているとしたら、どこか陰謀めいたものを感じずにはいられません」(並木さん・以下同)
(中略)
※女性セブン2012年6月28日号

 ああ、また並木さんが口からでまかせのええかげんなことを(笑)。
 はい、大林組のサイトを見てみよう。

http://www.obayashi.co.jp/news/skytreedetail22

 基礎の深さは50mだってしっかり書いてあるよ!
 だいたい「10階建て以上」だから32mって、論理がむちゃくちゃだろう。
「深さ10階建て以上に相当する」という話はどこから出てきたのか。元ネタを探してみたら、こんなのが見つかった。 昨年の7月24日にアップされている。「東京スカイツリー 世界最難関への挑戦」という番組はこの日に放映されているので、この人が言い出しっぺと考えていいだろう。

http://d.hatena.ne.jp/goro358/20110724
今晩、NHKスペシャルでスカイツリーの建設ドキュメントをやっていた。
「東京スカイツリー 世界最難関への挑戦」
地下に土台部分を掘削する様子が出た!
~10階建て以上に相当する深さ~とナレーションが出た!

10階建てで高さ31m、というのが一般的だ。
地上634m+地下31mで、665m。
10階建て以上、ということで、地下は32mにしているのでは?
634+32=666。

 うわ、「10階建てで高さ31m、というのが一般的だ」→「10階建ての建物の高さは、一般的に31mほど」、「10階建て以上、ということで」→「10階建て以上ということは31m以上掘ってあるということで」と、言い回しまでそっくりだ! 並木さん、明らかにこのブログ読んでるだろ!
 このブログ主、「+マクロビオティック+小林正観+水と食の健康法クラブ+エコロジー+中丸薫+ニューエイジ+ 」なんだそうで、

http://d.hatena.ne.jp/goro358/20120514
シナ(中国)は尖閣諸島を日本から略奪したくて日本に敵対。
偉そうにチューコクってか。
イイ加減にシナさい。
チョーセンは慰安婦だかで謝罪と賠償の言いがかりで日本に敵対。
偉そうにチョーセンってか。
コリァあきれた。

 ネトウヨでオカルトマニアで陰謀論者のうえにダジャレ好きかよ!(笑)数え役満だな。
 コリァあきれた。並木さん、こんなのネタにしてんのか。

 ちなみにビルの1階あたりの高さは、ビルによってかなり差がある。
 僕の仕事場のマンションは、前に測ったことがあるけど、1階あたり約3m。実はこれはかなり低い。前にアメリカからテレビの取材班が来た時、スタッフが戸口で頭ぶつけていた(笑)。あくまで日本人向けの、それも低層マンションにおける数字なのだ。
 大きなビルではもっと高いのが普通だ。日本で最も高いマンションである大阪のThe Kitahamaは、54階で209.4 mなので、1階あたり約3.9m、サンシャイン60は60階建てで239.7mなので、1階あたり約4.0m。NEC本社ビルは43階で180mなので、1階あたり4.2m。
 だから深さ50mを「10階建て以上に相当する深さ」と形容するのは間違いではない。それを「32m」と解釈するのが間違いなだけで。

 スカイツリーについては、2年前、『MM9─invasion─』の舞台にするためにいろいろ調べた。ネットで検索したのはもちろん、テレビで特集組んだら欠かさず録画したし、建設途中の現場にも足を運んで、下から見たらどんな感じに見えるかを実感した。
 もっとも、けっこう基本的なことが分からなくて苦労した。エレベーターが展望台の何階に到着するのかとか、料金はいくらぐらいかとか。当時はまだ正確な完成予定日さえ決まっていなかった。
 わざわざ東武タワースカイツリー株式会社に電話かけて、「エレベーターは何階に到着するんですか?」と訊ねたこともあったけど、「まだ決まっておりません」という返事だった。しょうがないので、かなり想像でごまかすしかなかった。
 だから完成した実際のスカイツリーとはかなり違っている。たとえば作中ではオープンしたのは2012年の3月ということなっているし、当時はまだ「天望デッキ」「天望回廊」という名前もなかったので、作中では「第一展望台」「第二展望台」と呼ばれている。
 かなり混むことは予想していて、作中でもそういう描写は入れてるけど、チケットが完全予約制になるというのはさすがに予想外だった。実物に登れるのはいつなんだろうか。
  


Posted by 山本弘 at 14:56Comments(5)メディアリテラシー

2012年06月21日

「史上最強にレベルの高い「男の娘」」はデマでした(涙)

史上最強にレベルの高い「男の娘」の全裸写真がネットで話題に! ネットの声「これはやばいだろ」
http://rocketnews24.com/2012/06/19/222456/

近年、漫画・アニメ、そしてコスプレの世界で大きな注目を浴びている「男の娘」。この男の娘とは、女の子ような容姿を持つ男性のことを指し、「男でありながら女子よりも可愛い」というそのギャップに多くの人が萌え悶えている。

そんな男の娘ブームが巻き起こっているなかで、史上最もレベルが高いと思われる男の娘の全裸写真が、現在ネット上で大きな話題になっている。

「【裸注意】女装男子なんてレベルじゃない」というタイトルのもとアップされた写真には、それはもう完璧に近い男の娘 ”らしき”人物が写っている。なぜ ”らしき” という文言を付けたかというと、記者(私)はどうしてもこれが男性だと信じられないからだ。

「こんな女の子みたいな男性がいるなんて信じられない! きっとこれはただ胸が小さい女の子なんだ!」。そう思いたくなるほど、この人物の女子度は高い。

ネットではこの写真を見て、「これはやばいだろ」など驚きの声が多く上がっており、ぜひみなさんにもその驚愕の写真を自分の目で確認して頂きたい。記者が感じたようにきっと多くの人が、この写真の人物が男であるという可能性を否定したくなるに違いない。

 白状します! 僕も最初、このニュース見た時、信じました!(笑)
 世の中にはかよぽりすみたいなきれいな人もいるんだし、これぐらいの男性がいても不思議じゃない……と素直に思っちゃったんだよね。
 ところが。
 じゃあこの人っていったい何者なの?……と思って検索したら、実は希志あいのというAV女優(けっこう有名な人らしい)の写真だったと発覚。

 本人のツイッター。
https://twitter.com/kishi_aino/status/214765465141116928
>あ、なんかちょっとした話題になってるみたいですが、この男の娘は私ですね。たぶん… 一応中身は女です( ´ ▽ ` )ノてへ

 証拠写真。(注意! ヘアヌードです)
http://www.wadaino.com/erogazoudx/img/erogazou/av/kishiaino/025.jpg

 いやー、短い夢だったな(笑)

 そう言えばこの前の「ベルギーで朝放送されている性教育番組」もロケットニュースだったっけ。
http://hirorin.otaden.jp/e240578.html

「ニュース」とは名がついてるけど、まともな新聞社や通信社が配信しているんじゃないこの手のニュースは、ネットで流れている話を検証もせずに載せることが多く、どんなガセネタがまぎれこんでるか分からない。「ネットを流れる突拍子もないニュースは、まずソースを確認すべき」ということを、あらためて思い知らされた。
  


Posted by 山本弘 at 14:36Comments(6)メディアリテラシー

2012年06月13日

レイ・ブラッドベリ逝く

 僕がブラッドベリ作品でいちばん好きなのは「対象」 Referent(1948) という短編。

 少年の前に宇宙から降りてきたのは、形も名前も持たない純粋な“対象”だった。だが、人間にレッテルを貼られることによって姿を固定されてしまう。少年がそれをボールだと思えばボールに、母親だと思えば母親に。そのため、“対象”は地上に縛られ、宇宙に帰ることができなくなってしまう。

「わたしに名前なんぞつけないでくれ、レッテルなんぞ貼らないでくれ!」
 と“対象”は叫ぶ。
「わたしは対象なんだ!」

>(前略)「ほんとうなんだよ、子供さん! 何世紀も何世紀も重ねられてきた思考が、君の原子をこねあげて、現在のきみの姿を形造ったのだ。だからもしきみがその信念を、きみの友だちや先生や親御さんの信念を、すっかりひっくりかえし、ぶちこわすことができたら、きみだって姿を変えることができるんだ。つまり、きみも純粋な対象になることができるんだ! 自主独立、正義、自由、人間性、あるいは時間、空間、そしてまた幸福の追究者といった、なににでもなれるのだよ!」
(川村哲郎・訳)

 初めて読んだ時、「レッテルなんぞ貼らないでくれ!」という“対象”の悲痛な叫びが僕の心を揺さぶった。
 ブラッドベリの寓意は明瞭だ。この世界には、人間を鋳型にはめようとする力がある。物語の中で少年がやったように、誰かに自分の思いついたレッテルを貼る。「あいつは××だ」とか「○○ってのはみんな△△なんだ」とか。そうやって自由を奪い、可能性を奪い、地上に縛りつける。
 レッテルを剥がしてみれば、その下には豊かな可能性があることが分かるのに。


 しかし、これでもう、40~50年代の欧米SFを支えた巨匠は、みんな行ってしまったことになるなあ……。
  
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Posted by 山本弘 at 13:36Comments(10)SF

2012年06月13日

第21回日本トンデモ本大賞決定!

 6月9日、新宿ロストプラスワンで「第21回日本トンデモ本大賞」が開かれました。
 と学会エクストラの途中、発表に用いる書画カメラが故障するというトラブルがあり、どうなることかと思いましたが、何とか乗り切ることができました。ご来場者のみなさま、ニコ生でご覧になっていたみなさま、ご迷惑をおかけして申し訳ありません。
 故障の原因は不明です。リハーサルでは機材に問題なかったはずなんですが……もしかしたら、その前にやった川口友万氏によるイオノクラフトの実演の際に発生したノイズのせいではないか、というのが、仲間内のもっぱらのうわさです。川口氏の解説にもありましたが、あれ、高電圧使ってるんですよね。楽屋裏では「なるほど、これがUFOの電磁効果か!」と冗談を言ってました。
 イオノクラフトというのは、帯電した空気を下向きに加速することによって浮上するという、きわめて単純な原理の飛行物体です。60年代に日本で「空飛ぶ円盤の飛行原理ではないか」と言われていて、何度かテレビでも紹介されていました。『空中都市008』にも「アイオノクラフト」という名で登場してましたね。 最近は「リフター」とか呼ばれてるらしいんですが……まあ、50年も前から研究続けてて、いまだに実用化しないようじゃ、望みは薄そうですけどね。
 僕は実物を目にするのは初めてで、リハーサルで見て「これがイオノクラフト!」と興奮しておりました。ちなみに本番では一発で浮上しましたが、リハーサルではなかなかうまくいかず、電極の間でバチバチ放電してました。
 ちなみにUFO=イオノクラフト説を唱えていた内田秀男氏(工学博士)は、あのヘンリー・C・ロバーツ『ノストラダムス大予言原典 諸世紀』(たま出版)の監修をやっています。監修者まえがきを読むと分かりますが、バリバリのトンデモさんです(笑)。

 閑話休題。
 投票結果は次のようになりました。カッコ内はニコ生での投票数で、1パーセントを1票として数えています。

●泉パウロ『本当かデマか 3・11[人工地震説の根拠]衝撃検証』(ヒカルランド)
 53(+55) 計108票
●大川隆法『宇宙の守護神とベガの女王』(幸福の科学出版)
 32(+16) 計48票
●小松正広『UFOと日本人の惑星』(文芸社)
 36(+23) 計59票
●竹本忠雄『秘伝ノストラダムス・コード』(海竜社)
 3 (+7) 計10票

【ノミネート外作品】
「はりきり切手大将」 1票

 というわけで、今年度の日本トンデモ本大賞は、泉パウロ『本当かデマか 3・11[人工地震説の根拠]衝撃検証』と決定しました。
 著者は純福音立川教会の牧師さん。東日本大震災はフリーメーソンが起こした人工地震だとか、9・11同時多発テロは自作自演だとか主張する本です。同様の本はベンジャミン・フルフォードやリチャード・コシミズも出していますが、この本がユニークなのは、列挙されている陰謀の証拠の数々です。
 たとえばACの「ポポポポーン」のCM。著者によればACとは「アンチキリスト」であり、「ポ」はポロニウムの略で、4回の「ポ」は4基の原子炉の破壊を意味するのだそうです。 出てくる動物にしても、ウナギはナマズに似ているから地震を意味しているとか、ネズミは食糧難だとか、マンボウは津波による死者だとか、いちいちこじつけています。
 映画『世界侵略:ロサンゼルス決戦』のポスターに「03.11.11」という公開日が書いてあるのも、ドラマ『HEROES』のOPで「O」の字がぴかぴか光るのも、東日本大震災を事前に予告していたのだそうです。『ターミネーター2』に「CAUTION 9'11"」という文字が出てきたり(9フィート11インチの高さ制限なのですが)、ハリウッド版『Godzilla』の一場面で時計の針が9と11を指しているのも(8時55分です)、9・11同時多発テロを陰謀組織が事前に警告していたのだそうです。
 秘密のはずの計画をなぜわざわざ映画にして事前にバラさなきゃいけないのかは、さっぱり分かりません。
 他にも、原発が爆発するシーンのある黒澤明監督の『夢』はもちろん、『新世紀エヴァンゲリオン』『秘密結社鷹の爪』『ザ!鉄腕!DASH!!』などもフリーメーソンの作った番組で、震災や原発事故を事前に予告していたのだそうです。『宇宙戦艦ヤマト』は放射能除去装置が実在することを示しているらしいです。
 最新刊の『驚愕の対策 3・11人工地震でなぜ日本は狙われたか[Ⅱ]』(ヒカルランド)では、さらにエスカレートして、『ドラゴンボール』『ONE PIECE』『アンパンマン』『ウルトラマン』『魔法のプリンセス ミンキーモモ』などもフリーメーソンの陰謀にされています。「円谷」という名はコンパスと定規を意味し、フリーメーソンのシンボルなのだそうです。フリーメーソンは『ミンキーモモ』の放映に合わせて地震を起こしているのだそうです。


 その他のノミネート作についても簡単に。

●『宇宙の守護神とベガの女王』は、大川隆法氏が中学生の次女の過去世である「宇宙の守護神」を呼び出して語らせるという内容。宇宙の守護神の姿は、二本の腕があってお尻から火を噴くモスラで、惑星連合とALSOK契約を結んでいて、敵と戦う時には宇宙戦艦ヤマトみたいな姿に変身するそうです。目から光線を出したり、口から超音波を出したり、お尻からうんち爆弾を落とせるそうです。
 僕が言ってるんじゃないですよ。宇宙の守護神が自分でそう言ってるんですから。娘さんも「私が誤解されてしまいます」と困ってしまっています。女の子なのに、前世がお尻から火を噴くモスラじゃねえ。
 長女の過去世である「ベガの女王」の方は、さすがに女王だけあって美しいのですが、ブタに囲まれて踊っています。

 
●『UFOと日本人の惑星』は、子供の頃から何回もUFOに誘拐されては記憶を消されていたことに気づいた著者が、よみがえった記憶を書きつづった本。これだけならよくある話ですが、この本がユニークなのは、全編、5・7・5・7・7で書かれていること。「UFOで/欠席したから皆勤が/飛んだと抗議すでにしていた」といった具合。何の必然性があるのかよく分かりません。著者はこれを「叙事詩」と呼んでいます。
 UFOの中でヒトラーに出会ったというくだりもあるのですが、なぜかヒトラーは食べるものに困っているらしく、ホテルの残飯をあさっていたそうです。


●『秘伝ノストラダムス・コード』は、ヴライク・イオネスク『ノストラダムス・メッセージ』の訳者が、自分でもノストラダムス解釈に挑戦した本。日本で出たノストラダムス本の中でも最高の厚さを誇ります。しかし内容はハチャメチャで、碑文を縦読みして「SIPR」という文字列を見つけ、それを根拠にノストラダムスがシオン修道会の総長だったと結論します。他にも、「ローザンヌ」という地名がアメリカのことだと言ったり、nepveuとPontifeという単語を合わせて「ニッポン」と訳したりします。
 ノストラダムスは福島第一原発の事故も予言していたと主張しているのですが、著者の訳文は、16世紀のフランスの詩のはずなのに、「原子核」「ウラン238」「中性子」「原子炉」「ベータ線」「核分裂」といった単語が頻出する、むちゃくちゃな超訳です(もちろん原文にそんな単語はありません)。
 ちなみに著者は筑波大学名誉教授です。


 ノミネート外で投票されていた「はりきり切手大将」は、と学会エクストラで新田五郎氏が発表した子供向きのホビーマンガ。1981年に『少年チャレンジ』に掲載された作品です。プラモとかゲームとかだと盛り上がるけど、切手収集はマンガの題材としては無理があるのがよく分かります。
  


Posted by 山本弘 at 13:20Comments(7)トンデモ