2011年07月29日

小松左京氏死去

 第一報を聞いたのは昨日の昼、編集者からの電話だった。慌ててネットで調べて事実だと知った。
 以前からお体が悪いらしいということは耳にしていたので、「ああ、やっぱり」という印象だ。
 人間が不老不死ではない以上、しかたのないこととはいえ、時代を担った偉大な人が次々に亡くなっていくのは悲しい。

 前に小松氏の短篇集『すぺるむ・さぴえんすの冒険』(福音館書店・2009年)のために書いた解説(以前にも一部をこのブログに載せたことがあるが)があるので、それを引用して弔辞に代えたい。
 この文章を書くために小松氏の作品リストを調べていて、短篇の本数を数えるのがやたらに大変だったのを記憶している。その作品のほとんどがデビューから20年以内に書かれていることと、自分も処女長編から20年経っていることに気づいて、あまりの差に愕然となったことも。
 なお、収録作品を選出したのは僕ではない。いや、いいセレクトだとは思うけど。
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解説 偉大なSFの巨人
                山本弘


 小松左京さんは間違いなく日本で最高のSF作家です。
 一九三一年生まれ。雑誌記者やラジオの漫才台本の作者などの職業を経て、一九六二年、『SFマガジン』一〇月号に掲載された「易仙逃里記」でプロ作家としてデビューされました。代表的な長編には、『日本アパッチ族』『エスパイ』『復活の日』『明日泥棒』『果しなき流れの果に』『見知らぬ明日』『継ぐのは誰か』『こちらニッポン…』『さよならジュピター』『首都消失』『虚無回廊』などがあります。一九七三年の『日本沈没』は大ベストセラーになり、二度も映画化されました。短篇はデビューから二〇年間に約二五〇本も発表されており、同じぐらいの数のショートショートもあります。
 その作品傾向もバラエティに富んでいます。現代日本を襲う異常事態を描いた『日本沈没』『首都消失』のような社会派SFや、『果しなき流れの果に』『さよならジュピター』『虚無回廊』のような壮大なスケールの本格SFがあるかと思えば、爆笑のドタバタ・コメディやパロディや社会風刺、ぞっとするホラーやサスペンス、軽いオチのついたショートショート、しんみりした人情話、子供向けのSF童話、大人向けのエロチックな小説……小松さんが書いていないジャンルを探す方が難しいぐらいです。しかも苦手なジャンルというものがないのか、どんな話もとても上手いのです。小説だけでなく、エッセイやノンフィクションもたくさん書かれています。
 僕の場合、小学校高学年の時に、父が買ってきた小説誌に載っていた、「子供たちの旅」や「模型の時代」といった短篇SFを読んだのが最初です。特に「模型の時代」は、人々がプラモデル作りに熱中している未来世界を描いたコメディで、子供心に「こんな面白いものを書く人がいるんだ」と感心したものです。それ以来、多くの作品を読んできて(それでも膨大な全作品の三分の一ぐらいでしかないのですが)、いろいろな影響を受けました。
 今では僕もSF作家です。しかし、最初の長編の出版から二〇年以上になるのに、作品の数でも質でも、この巨人の足元にも及びません。この先も当分、小松さんを上回るSF作家は現われないのではないかと思います。
 その小松さんの短篇の中から、ここに紹介するのはたった六作品です。本当はこの何倍もの数の傑作がひしめいているのですが、一冊の本に載せられる分量には限りがあるので、しかたありません。いわば“小松左京入門編”として、その才能の一端を味わっていただきたいと思います。
 各作品について解説していきましょう。

●「夜が明けたら」
 初出は『週刊小説』一九七四年一月四日号。
 小松さんにはホラー・タッチのSFが多いのですが、中でも特に秀逸なのがこれ。ある夜、平凡な家庭で起きた奇妙な停電を発端に、何が起きたのかがしだいに分かってくるにつれ、じわじわと恐怖が広がっていきます。
 幽霊も怪物も殺人鬼も出てこないし、血の一滴も流れませんが、そんなものなくても、十分すぎるほど恐ろしい話です。なぜこんなことになったのかという説明がまったくないのが、かえって不安をかきたてます。特に、静かだけれど息詰まるラストシーンは、一生忘れられないことでしょう。

●「お召し」
 初出は『SFマガジン』一九六四年一月号。
 SFには「突然、世界中からほとんどの人間が消えてしまう」という話がよくあります。僕も「審判の日」という話を書いていますし、小松さんにも長編『こちらニッポン…』や短篇「霧が晴れた時」があります。
 この「お召し」では、異星人か何かのしわざで、一二歳以上の人間がすべて消えてしまった世界での、子供たちによるサバイバルが描かれます。「夜が明けたら」と同じく、わけも分からずに異常な状況に投げこまれてしまうという、不条理と絶望感に満ちています。最後に語り手の少年が遺すメッセージが、せつない余韻を漂わせます。

●「すぺるむ・さぴえんすの冒険」
 初出は『野性時代』一九七七年二月号。
 こちらは本格SF。遠い未来、人類の運命を背負った一人の男の決断が描かれます。
「夜が明けたら」「お召し」などもそうですが、小松さんの作品には、神のような力を持つ高度な存在が人類に干渉してきたり、原因不明の大規模な異変が世界を襲うという話がよくあります。短篇だと「蟻の園」「人類裁判」「新趣向」「物体O」など。時間と空間を股にかける壮大な物語『果しなき流れの果に』などもそうですが、“宇宙規模の巨大な力vsちっぽけな人間”というテーマが、小松さんはお好きなようです。
 旧約聖書の「ノアの箱舟」の話では、堕落した人類を滅ぼすために神が世界に大洪水を起こし、神からのメッセージを受けたノアとその一家だけは、箱舟を作って洪水から逃れます。この「すぺるむ・さぴえんすの冒険」でも、主人公はノアと同じような状況に置かれるのですが、「私はノアほど素直じゃないし、ノア自身でもない」と言い放ちます。絶望の底にあってもなお、自分の責任と“地球ローカルのモラル”を貫こうとする主人公の行動が胸を打ちます。

●「牛の首」
 初出は『サンケイスポーツ』一九六五年二月八日号。
 元は作家仲間に伝わっていた話を、小松さんが小説にアレンジしたもの。今では多くの人に知られるようになった都市伝説ですが、世間に広まったのはこの作品がきっかけです。近年では、同じパターンの「地獄の牛鬼」「鮫島事件」という話も、ネット上で語られています。
 当然、本当にそんな話があるんだと信じてしまう人もいます。ネット上では、「ついに『牛の首』のルーツを見つけた!」とか「これこそ本物の『牛の首』だ!」というふれこみで、誰かの創作した物語を実話であるかのように語っている人が何人もいるのですが……うーん、正直言ってあまりこわくない(笑)。だいたい、気軽に他人に語れるようなものなら、すでに「牛の首」じゃないだろう、と思うんですが。

●「お糸」
 初出は『SFマガジン』一九七五年二月号。
 最初は「ああ、江戸時代を舞台にした時代小説なのか」と思って読みはじめると……あれれ? 何だかおかしなことになってきます。そう、ここはあなたが教科書で知っている江戸時代ではないのです。下手すればギャグになりかねない話なのに、リアルな描写を積み重ねることで、美しく味わいのある話に仕上がっています。
 それにしても、この世界の魅力的なことときたらどうでしょう。ヒロインのお糸のセリフではありませんが、なぜこんな世界であってはいけないのか、本当の歴史の方が間違っているんじゃないか、という気がしてくるではありませんか。
 別の歴史を描く話としては、他にも「地には平和を」という傑作があります。こちらは昭和二〇年に太平洋戦争が終わらず、本土決戦に突入した日本を描いた話です。

●「結晶星団」
 初出は『SFマガジン』一九七二年九月臨時増刊号。
 遠い未来、地球から一〇〇億光年も離れた遠い宇宙の一角を舞台に、一四個の恒星が結晶状に並んだ奇妙な星団の謎を探る力作です。表面的には本格SFですが、ストーリーはむしろホラー。古代文明の遺跡に残されたメッセージ、不吉な予言、よみがえる邪悪な存在といった、ホラーでおなじみのモチーフがちりばめられており、のちに日本でもメジャーになるクトゥルー神話を連想させます(まったくの偶然でしょうが、この作品が掲載された『SFマガジン』はクトゥルー神話特集でした)。
 しかし、単にホラーの舞台を宇宙に移し変えた話ではありません。ムム族やズス第六惑星人などのユニークな異星人たちや、ワープ装置や無機脳のような超未来のテクノロジーが登場し、驚きに満ちた物語が展開します。まさにSF本来の魅力にあふれた作品と言えるでしょう。

 どの作品についても言えるのは、三〇年以上前に書かれたというのに、ちっとも古くなっていないことです。傑作は時代を超えて面白いのです。
 くり返しますが、ここに収録された作品以外にも、小松さんには優れた短篇がたくさんあるのです。こわい話が好きな方には、「影が重なる時」「召集令状」「くだんのはは」「骨」あたりをおすすめしておきます。「すぺるむ・さぴえんすの冒険」が気に入った方なら、「神への長い道」「人類裁判」「袋小路」なども気に入ると思います。笑える話が読みたい方なら、「新趣向」「模型の時代」「タイム・ジャック」などがおすすめです。
 小松さんのSFを一作も読まずに一生を終えるのは、人生かなり損しています。
  
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Posted by 山本弘 at 18:59Comments(10)SF

2011年07月27日

『結晶銀河』

 1年に1回出る、創元の年刊SF傑作選、今年は僕の「アリスへの決別」が収録されました。

http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488734046

【収録作品】
冲方 丁「メトセラとプラスチックと太陽の臓器」
小川一水「アリスマ王の愛した魔物」
上田早夕里「完全なる脳髄」
津原泰水「五色の舟」
白井弓子「成人式」
月村了衛「機龍警察 火宅」
瀬名秀明「光の栞」
円城 塔「エデン逆行」
伴名 練「ゼロ年代の臨界点」
谷 甲州「メデューサ複合体」
山本 弘「アリスへの決別」
長谷敏司「allo, toi, toi」
眉村 卓「じきに、こけるよ」
酉島伝法「皆勤の徒」(第2回創元SF短編賞受賞作)

 日下三蔵氏もまえがきで書いてるけど、去年までは「これははたしてSFなのか?」と疑問に思う作品が多かったんだけど、今年はストレートなSFが多くなったという印象です。
 実はまだ全部読んでないんだけど、伴名練「ゼロ年代の臨界点」がすごく気に入りました。20世紀初頭を舞台にした架空の日本SF史! 3人の若き女流作家が書いたSFが、どれも面白そう。腕木信号のネットワーク知性!
 最初から最後まですべて嘘っぱちなのに、もっともらしくて、わくわくしちゃうんですよねえ。こういうタイプの話、僕は好き。
 作中に明示されていない裏設定を推理するのも楽しい。フジの最後の言葉の意味とか。


 ところで創元の近刊予告を見てびっくり。笹本祐一さんの『妖精作戦』、復刻するんだ!

http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488741013

 しかも、解説がやっぱり有川浩さんだ! ああ、そりゃもう、解説頼むならこの人以外ありえないわ!
(分からない人は『レインツリーの国』を読むように)
  
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Posted by 山本弘 at 15:02Comments(4)PR

2011年07月27日

『僕の妹は漢字が読める』の感想がひどい件

 かじいたかし『僕の妹は漢字が読める』(HJ文庫)というライトノベルが話題になっている。
 日本人の国語力が衰退し、漢字を読める者がほとんどいなくなっている23世紀の日本。そこで生まれ育った少年が主人公のコメディだ。
 まず最初に言っておくと、僕はこの作品を評価しない。
 5点満点で2点ぐらい。
 なぜかというと、せっかくの面白い設定をぜんぜん使いこなしていないからである。
 まず、主人公の生きている23世紀の日本の描写。アニメやラノベ的な感性が当たり前になっているという設定なんだけど、そこの描写が甘い。「二次元総理」というネタには笑ったけど、笑えるのはそこぐらい。
 こういうのは、もっといろんなディテールをぶちこんで、この世界のおかしさをたっぷり見せれば、はるかに笑える作品になっていたはずだ。だが、作者はそこまで深く考えなかったようだ。そのへんがSFを読みなれた人間には、ものすごく歯がゆい。
 たとえば主人公が「童貞」という昔の言葉を知らないというシーンがある。じゃあ、この世界では「童貞」はどう呼ばれているのだろうか。いや、そもそもこの世界では、童貞という概念は現在の我々のそれとはまったく異質なものになっているのではないか。たとえば、2次元の方が3次元より重視されている世界では、むしろ肉体を持った女性との性交渉が異端とされているのではないか。そのせいで人口は減少に向かっているのでは……と、いくらでも想像は広がるはず。
 また、妹が「童貞」という言葉の意味を質問されて恥ずかしがるというのも、よく分からない。この世界でも童貞は恥ずかしいことなのか? 彼女は漢字が読めるというだけで、この世界で生まれ育ったんだから、感性は基本的に23世紀人のそれのはずなんだが。
 あと、主人公が精巧なロボットを見て「これは凄い」と感心したりするのも変。2世紀経ったらそんなものは当たり前だろう。
 しかも、この時代になってもまだ本は紙でできていて、主人公が尊敬する作家に見せてもらう原稿も、紙にプリントアウトしたものなのである。ないない、それはない。「30世紀にちゃぶ台」並みにありえない。
 主人公が21世紀のエロゲのポスターを見て「宗教画だ」、美少女フィギュアを見て「マリア像だ」と勘違いするというのも、明らかに作品の世界観に反している。むしろ宗教画を見てエロゲのポスターだと勘違いするべきではないのか。
 まあ、ギャグ作品で細かいところまでつじつまを合わせろとは言わないが、主人公の考え方が作品の設定と矛盾しているのは、さすがにいただけない。
 この作品を「ラノベ批判だ」と早とちりしている者もいる。そんなことはない。僕の目には、むしろ作者はラノベの定石に忠実すぎて、そこから飛躍できていないと感じる。
 後半、21世紀にタイムスリップしてきた主人公が高校に通うようになるのだが、その展開に無理がありすぎるうえ、必然性がまったくない。漢字の読み書きができないので苦労するのを見せたいなら、学校でなくても、日常生活で十分だろう。どうも「ラノベの主人公は学校に通うもの」という定石に縛られているだけのように見えるのだ。
 主人公と妹の関係も、さすがに見飽きた。新味がない。

 つーか、この設定だけくれ! 僕に書かせろ!
 頭からすべて書き直して、面白い作品にしてやるから!

 ……とまあ、いろいろ書いてきたけど、僕はべつにこの作品に腹は立たない。シオドア・スタージョンが言うように、どんなジャンルでも90%はクズなのだ。ハズレに当たるたびに、いちいち腹立ててなんかいられない。
 僕が腹が立ったのは、むしろこの作品を批判している連中の方である。

http://blog.livedoor.jp/goldennews/archives/51641055.html

>地の文が酷いw
>ラノベってこんなレベルばっかりなの?

>設定以上に文章がひどい
>これでプロの作家を名乗れるんだから、ラノベはマジキチ

 ……あのさあ。
 君ら、一ページ目に書かれている設定、ちゃんと読んだ?
 これは漢字の読み書きができない主人公が書いたハチャメチャな文章を、現代の読者に向けて「意訳」したっていう設定なんだよ。それで文章が上手かったら、逆におかしいだろう。
「我輩」の一人称のパートを読めば分かるように、作者はちゃんとした日本語を書ける人なのだ。わざと下手な文章にしているのである。

>このものがたりちゅうにつかわれている『じゅうこうだ』のひとことをとりあげてもいみがとくていできない。
>ぜんごぶんのつながりで、そのいみをはんだんするしかなく、にじゅうさんせいきせかいではあるいみどくしょのちからはこうじょうしているのだろう。

 もちろん「重厚だ」というのも原文では「ずっしりん」とか書いてあったのを意訳したということなんだろう。それぐらい分からんのか。

>隙のない美貌の妹を持つ兄が何でこんなB級顔なんだよ

 義理の妹だって、ちゃんと説明されてるだろ!?

> こんなのが許せられる時代って・・・・

 うん、確かに「許される」という言葉もまともに書けない奴がいる時代って悲しいよね(笑)。

>それとも俺が知らないだけで、こういう良い意味で阿保なラノベって多いの?

 無理して慣れない漢字使うことないぞ。阿呆はカタカナで書け。
 もしかしたらスラングのつもりで使ったのかもしれないが、阿保(あぼ)という姓の人は実在するので、こういう使い方をしてはいかんと思う。

>ラノベやケータイ小説なんかが面白いとか言ってる馬鹿が増えれば、いずれ日本はこんなアホみたいな世界になるぞって、警笛を鳴らしてるわけだ

 鳴らすのは「警鐘」な。警笛鳴らしてどうする。

>発想は良かった、のだと思う。過去形。
>「現代文学」とやらが、日常会話とかけ離れている時点でもはや「韻文」なのだろうか、これはまさに「読めません」だ。文学ならばそれでいいのだろう。読めないが。

 お前の文章の方が読めません(笑)。日本語が崩壊している。そもそも「韻文」の意味を分かってるのかも疑問。

>なんかブラッドベリの「華氏411」思い出した。

 有名なタイトルを間違えるな。

>この程度のやつと筒井康孝を比べるなよ

 筒井康隆氏を引き合いに出すなら、名前ぐらいちゃんと書け。失礼だ。

>何がどうすごいかすげえ気になるけど長すぎて読む気分になれない・・・

 ギャグだよな!? ギャグだと言ってくれ!
 かと思えば、変な深読みしている連中もいる。

>もしかしてこれって漢字教育廃止した某半島国家を揶揄してるんじゃないのか・・・?

>というより、どう考えても元ネタはハングルと漢字が読めない韓国人をネタをしているとしか思えん。

 いや、そんな意図、ないない(笑)。

>「自分は文筆業である。
> 漢字を繰り、
> 言葉を紡ぐ者である。」
>という自負に溢れた文章書きが放つ、
>独特の自己(と同類)への陶酔を伴った
>自慰作品であると感じた。

>ケータイ小説とかラノベを皮肉ってるように思わせて、実は村上春樹を始めとした現在の純文学を皮肉ってるんじゃないか

 だからそんな高尚な意図ねえって!
 君ら、赤いパンツが「重税に苦しむ日本国民の心情を表現している」と言った、作中のオオダイラ先生と同じ間違い犯してるよ!

>これラノベを暗に否定(危惧?)してるわけだよね。
>普段からラノベ通読してる人達はこれ読んでどう思うんだろう…

 どうも思いません。ジャンルの定石を皮肉った自虐ネタなんて、ラノベには珍しくないよ。
 これで「すごい」と騒ぐのは、ラノベにどんな作品があるかを知らない人間ではなかろうか。

>ラノベは文学じゃない
>絵の書けない漫画家の逃げ道

 はいはい、ラノベを読んだことのない奴の典型的な偏見ね(笑)。
 ついでに言うと、絵は「書けない」じゃなくて「描けない」って書くんだよ。「描」は小学校で習う漢字だと思うけど?

>こんな引き込まれない導入は始めてだが、ラノベってみんなこうなのか?
>普通の小説は最初の半ページでガッツリ掴んでくれるぞ?

 普通の小説でも半ページでがっつりつかんでくるものなんて、そうそうないんだが。お前はいったい何冊ぐらい小説を読んだうえで言ってるのかと、小一時間ほど(以下略)。

>イラストが致命的にダメだ。もうその時点で読む気せぇへん

 イラストで否定!

>内容に主義・主張があればこんなどこかで見たようなタイトルにはなるまい。

 タイトルすら否定!
「僕の妹」というフレーズが入っているだけで、便乗作品だと思いこんでいるらしい。

>他人の作ったものを踏み台にするような作品はちょっと

 パロディとかオマージュとか全否定!?
 いや、参った。あきれた。
 頭の悪いラノベを笑っているつもりかもしれないが、実はそのラノベの設定や作者の意図を理解する読解力さえない(難解な文学作品ならともかく、ラノベだよ?)。
 作者の文章を笑っているつもりかもしれないが、実は自分もまともな日本語が書けない。
 さらには、中身すら読まず、タイトルやイラストの印象で評価する。
「普通の小説」と比べてラノベをバカにしてるけど、実は決定的に読書量が少ないことが露呈しているではないか。おそらく普段、ラノベすら読まず、マンガばっかり読んでるんじゃないかしらん。
 これでは2世紀ぐらい経ったら、本当にこの作品のような世界になってしまうんじゃないだろうか。心配だ。
  


Posted by 山本弘 at 14:00Comments(58)ライトノベル

2011年07月27日

スタンフォード大の科学者が地球空洞説を支持!

 ……というデマが流れている。

 時系列を逆にたどってみよう。まずはこちらの7月23日のリアルライブの記事。

地球内部にある『もう一つの地球』 再燃する『地球空洞説』
http://npn.co.jp/article/detail/60091094/
 それでは、21世紀となった現在、この説が忘れ去られてしまったのかというと、実はそうでもない。未だにこの説を研究し続けている科学者も多くいる。アメリカはスタンフォード大の物理学者によると、宇宙を創造したと言われる『ビッグバン理論』より考えられる仮説的な宇宙の数を計算した結果、惑星にはその内部にもう一つの大地、パラレルワールドを内包する可能性が高いというのだ。勿論それは、我々の住む地球にも当てはまる。

 かねてより、UFOは地下世界の住人の乗り物で、極地方に開いたワームホールより出入りしているのだ、という説があった。今回の理論は、それを裏付けているようで興味深い。
 パラレルワールドと地球空洞説は何の関係もありません!(笑)
 そもそもパラレルワールドってどういうものか分かってないだろ、この記事書いた奴。
 注目すべきは「スタンフォード大の物理学者」というだけで、名前が書かれていないこと。これだけでかなり怪しい記事だと分かる。新聞記事などからの直接の引用なら、名前が載っていないとおかしい。おそらくどこかのサイトからの孫引きだなと見当がつく。
 さかのぼって調べてみると、7月17日のカラパイアの記事が見つかった。

地球内部に隠されたパラレルワールド、もうひとつの地球が存在する可能性(米研究者)
http://karapaia.livedoor.biz/archives/52026001.html
 米スタンフォード大学の物理学者によると、ビッグバンの結果として形成された仮説的な宇宙の数を計算した結果、惑星には内部に隠されたパラレルワールドが存在する可能性が高いという。それは我々の地球も例外ではなく、地球の内部には、もうひとつの隠された別の地球がある可能性があるというのだ。

 この記事からリンクされていたサイトがここ。

THE TRUTH BEHIND THE SCENES
http://thetruthbehindthescenes.wordpress.com/2011/06/07/parallel-world-hidden-inside-earth/

 めちゃくちゃ怪しいサイトだな、おい!(笑)
 問題の記事の最初の部分を読んでみると、
 It seems that scientists find more and more evidence to prove the existence of parallel worlds. Physicists at Stanford University managed to calculate the hypothetical number of universes that were formed as a result of the Big Bang. According to them, the Big Bang created 101016 universes. It is quite possible, though, that they may exist inside one another, including our planet. Therefore, there is probably another Earth hidden inside planet Earth.

 つまりスタンフォード大の科学者が宇宙の数は10の1016乗個ぐらいだと計算したのを、この記事を書いた奴が、「だったら地球の内部に宇宙があってもおかしくない」と曲解して、地球空洞説を紹介する記事の枕に使った。それをカラパイアの記者が訳す際、スタンフォード大の科学者が地球空洞説を支持しているかのように誤訳したのだ。(リアルライブの方は、カラパイアからの孫引きかもしれない)
 さらに元記事を検索してみたら、

Physicists Calculate Number of Universes in the Multiverse
http://www.physorg.com/news174921612.html

 科学者の名前はAndrei Linde と Vitaly Vanchurin。どうやって計算したのか、読んでも今ひとつよく分からないけど、たぶん宇宙のすべての粒子の取り得る状態の数を求めたんじゃないかと思う。
 案の定、本来のニュースには地球空洞説のことなんかまったく出てこない。「THE TRUTH BEHIND THE SCENES」の記事を書いた奴がつけ加えただけだ。

 あと、パラレルワールドがたった「10の1016乗個」ってえらく少ないなと思っていたら、これも間違いだった。「10の(10の16乗)乗個」以上、最大で「10の(10の(10の7乗)乗)乗個」らしい。
「10の1016乗」だと、1の後に0が1016個並ぶ。それに対して「10の(10の16乗)乗」だと、1の後に0が1京個並ぶ。「10の(10の(10の7乗)乗)乗」はさらに大きい。10の(1の後に0が1000万個並んだ数)乗である。「桁違い」なんてもんじゃない。

 それにしても、この前のエレーニン彗星の件もそうだが、こういう海外のトンデモ系サイトに載ってるヨタ話をさらに誤訳して、信憑性があるかのように広める奴って、どうにかならんもんか。
 個人ならともかく、ニュースサイトだぞ?
  


Posted by 山本弘 at 12:46Comments(8)メディアリテラシー

2011年07月20日

鼻血効果

 1954年4月14日から15日にかけて、アメリカのシアトルの警察署が、「自動車がたった今傷つけられた」という市民からの電話による通報を200件以上も受け取った。
 合計で3000台もの車が傷つけられていた。傷はもっぱらフロントガラスに集中しており、ぎざぎざの小さな傷が無数に付いていた。
 シアトルの市長は、この被害は警察の理解を超えていると考え、ワシントンの政府長官に訴え、長官はアイゼンハワー大統領に報告した。事件は地方紙でも報じられた。
 人々の間に流れていたうわさによれば、この傷は3月1日にビキニ諸島で行なわれた核実験の影響だとされていた。核爆発で空中に巻き上げられた放射能を帯びた土砂やサンゴの破片が降ってきて、車を傷つけているというのだ。多くの市民が車を傷つけられるのを恐れ、フロントガラスを新聞紙など覆ったり、車をガレージの中に入れたままにした。
 ワシントン大学環境調査研究所が調査に乗り出し、6月10日にその結果を発表した。問題の傷の数は、自動車の使用年数に正確に比例しており、古い車ほど傷が多かった。すなわち、つい最近になって付いたものではなく、何年も前から少しずつ付いていたのだ。専門家の報告によれば、アスファルトの細かい破片が巻き上げられ、走っている車にぶつかってできたものだという。
 多くの車が何年もの間、フロントガラスにたくさんの傷をつけたまま走り回っていた。その年の3月まで、誰もそれを気にしていなかった。
 ところがビキニの核実験の直後、誰かが自分の車のフロントガラスに傷を発見し、それを隣人に伝えた。この発見はたちまち口コミで広まり、多くの市民が自分の車のフロントガラスを調べるようになり、そこに傷を発見した。そして、それが最近になって核実験でできた傷だと思いこんで、パニックが起きたのだ。
――ジャン=ノエル・カプフェレ『うわさ もっとも古いメディア』(法政大学出版局)より要約

 こんな話を思い出したのは、3.11の後、日本で似たような例が頻発しているからである。
 たとえば、関東地方で子供が鼻血を出すようになったのは放射線被曝のせいだというデマが流れている。

 子供って鼻血を出すもんだよ!

 僕なんか子供の頃、何回鼻血出したか分かんないよ。学校でも授業中に鼻血出す奴、よくいたし。珍しくもない。
 もちろん、3.11以降に鼻血を出す子供が増えたという統計もない。
 確かに何シーベルトという単位の大量被曝なら、下血や下痢という症状が出るが、低線量被曝で鼻血が出るなんてありえない。たとえば5マイクロシーベルト/時ぐらいの線量の地域でさえ、100日間での累積線量は12ミリシーベルトぐらいにしかならないわけで、まだ人体に影響なんか出るわけがないのだ。仮に影響が出るとしたら、何年も先だ。
 放射線科医の方も明確に否定しておられる。バセドウ氏病の治療のために大量のヨウ素131を投与することはあるが、患者に鼻血が出るなんて症状は見られないという。

http://togetter.com/li/149186

 こちらは血液内科医の方による解説。やはり低線量被曝と鼻血の関連を明確に否定。

http://togetter.com/li/150517

 車のフロントガラスの傷と同じで、これまで子供が鼻血を出してもぜんぜん気にしていなかったお母さん方が、原発事故の後、「放射能のせいでは!?」と心配するようになったのだろう。

 6月24日にはアラスカでマグニチュード7.2という大きな地震があった。
 この地震の記事について書かれたmixi日記をざっと見たのだが、騒ぎ立てている人が何人もいてあきれた。「世界規模での地殻変動が起こっていることは明白」とか「地殻変動激しいな」とか「ニュージーランドの地震も含めると、太平洋全体で揺れているようです」とか……。

 マグニチュード7以上の地震は全世界で毎年平均18回起きてます。

気象庁/地震について
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/faq/faq7.html

 もちろんこれは極秘情報なんかではない。世界のどこかで大地震が起きれば新聞でも報じられる。僕らはそれをしょっちゅう目にしているはずなのだ。
 試しに理科年表に載っている2001~2010年の間に世界で起きた大地震の中から、死者が出たものを抜き出してみよう。いずれも日本の新聞やテレビで報じられたはずである。あなたはいくつ覚えておられるだろうか?

2001.1.13 エルサルバドル M7.8 死者852人
2001.1.26 インド M8.0 死者20023人
2001.6.23 ペルー M8.2 死者132人
2002.3.25 アフガニスタン M6.2 死者1000人
2003.5.21 アルジェリア M6.9 死者2266人
2003.12.26 イラン M6.8 死者43200人
2004.12.26 インドネシア M8.8 死者283100人以上
2005.3.28 インドネシア M8.4 死者1303人
2005.10.8 パキスタン M7.7 死者86000人以上
2006.5.26 インドネシア M6.2 死者5749人
2007.4.1 ソロモン諸島 M7.9 死者52人
2007.8.15 ペルー M7.9 死者514人以上
2007.9.12 インドネシア M8.5 死者25人
2008.5.12 中国 M8.1 死者69227人
2009.9.29 サモア諸島 M8.1 死者192人以上
2009.9.30 インドネシア M7.1 死者1117人以上
2010.1.12 ハイチ M7.3 死者222570人
2010.2.27 チリ M8.5 死者521人以上
2010.4.13 中国 M7.0 死者2220人以上

 恥ずかしながら、僕は5つしか覚えていなかった。我ながら情けない記憶力である。
 しかも、これは死者が出た地震だけである。死者が出なかった大地震はこの何十倍もある。大地震の多くは人口過疎地帯で起きるので(地球の面積の大半は海洋と砂漠と草原と山岳地帯とジャングルなのだ)、被害はほとんどなく、記事の扱いも小さい。だからこれまで、みんな注目してこなかっただけだ。
 東日本大震災が起きたことで、地球の他の地域で起きる大地震のニュースも注目されるようになり、「地震が増えている」と錯覚する人が出てきているのだ。

 地震の前兆現象を見たという報告もいろいろある。
 僕がいちばん笑ったのは、「地震の前日の夕焼けが赤かった」というものである。

 夕焼けは赤いよ!

 他にも地震の前兆現象としては、「地震雲」とか「赤い月」とかもよく言われている。
『ニセ科学を10倍楽しむ本』や『謎解き超常現象』でも書いたが、地震雲と呼ばれるものの多くは、単なる飛行機雲である。普段から空を見ていれば、何日かに一度かは必ず目にできるものだ。
 ところが、普段、あまり空を見ない人が、たまたま飛行機雲を見てしまうと、「異常な雲だ!」と思ってしまうらしい。
 赤い月もそう。僕は夕方に仕事場から家に帰るので、毎月一度ぐらい、東から上ってくる満月を目にする。そもそも地平線近くの満月は(夕日が赤く見えるのと同じ原理で)赤っぽく見えるものなのだが、たまに血のような赤い色に染まることもある。中国から流れてくる黄砂などの、大気中の塵が増えることによるものらしい。
 これまで10回以上は真っ赤な月を見ているが、直後に大きな地震が起きたことなど一度もない。
 他にも、阪神淡路大震災の時には、やはり前兆現象として、「カラスが群れをなして飛んでいるのを見た」という報告もある。

 カラスって毎日、夕方になったら群れをなして山に帰っていくよ!

 僕はそんな光景、もう何十回も見てるけど、これも普段、カラスになんか興味のない人がたまたま目撃したら、不気味に見えるのかもしれない。

 こういう、「普段からよくあることなのに、無知や観察力不足のために、最近になって急増したと錯覚する現象」を総称して、「鼻血効果」と名づけてはどうかと思うのである。
  


Posted by 山本弘 at 22:01Comments(25)メディアリテラシー

2011年07月20日

『MM9―invasion―』

 早いところではもう書店に並んでるかな? 『MM9』の続編『MM9―invasion―』が発売です。
 前作の表紙には、編集部の意向で怪獣は描かれなかったんですが、今回はもろに怪獣が表紙です。作中にで大暴れする怪獣6号(のちに「ゼロケルビン」という固有名がつきます)を、開田裕治氏がすごくかっこよく描いてくださいました。

 僕のイメージでは、6号はボスタング+ガラモン+ガンダー+ベムスター+ガゾートなんですが、この絵では白と黒の配色がゼットンっぽくて、さらに素敵ですね。

 ストーリーは――

 前作から6年後の2012年。眠りについたヒメを北海道に輸送しようとしていた自衛隊のヘリコプターが、謎の青い火球と衝突して霞ヶ浦に落下する。
 深夜、謎の声に導かれて霞ヶ浦に向かった高校一年生の案野一騎は、そこで復活したヒメと宇宙怪獣の戦いを目撃する。
 ヒメに憑依した地球外知性体ジェミーは、テレパシーで一騎に告げる。チルゾギーニャ遊星人が地球侵略を企んでいると……。

 ぶっちゃけた話、前作を書いた時は、あの世界に宇宙怪獣がいるかどうかは決めていませんでした。というのも「神話宇宙」という設定(当然、天動説的世界観のはずなんですが)の中で、他の惑星や地球外生物の存在をどう位置づけていいのか、まだよく分からなかったからです。だからとりあえず、宇宙怪獣の存在には触れないようにしました。
 また、続編を書くつもりはまったくありませんでした。あの結末の後では何をつけ足しても蛇足になる、と思ったからです。それに、前作と同じことをやるのでは、続編の意味がありません。続編を書くのなら、まったく違う話、前作を上回る内容でなければいけない、と。

 続編の構想を思いついたのは2年前のことです。
 ある同人誌でも書きましたが、実は『MM9』はドラマ版より先にアニメ版の企画があったんです。いろいろあって現在はペンディングになってますけど。
 しかし、2クールぐらいのテレビアニメにするとなると、原作だけではまったく分量が足りません。だいたい原作の1話分がテレビの30分ぐらいの分量ですから。
 そこで最初の打ち合わせの後、シナリオの叩き台として、26本分のプロットを自分で書いてみました。2009年の1月のことです。なるべくバラエティに富んだ内容にしようと、ホラーとかコメディとか、いろんなパターンの話を考えました。
 ちなみに、この時にテレビアニメ用に考えたプロットのうちの3本は、かなりアレンジして、『ザ・スニーカー』に連載された『MM9 怪獣のいる風景』に流用しています。(こちらもいずれ単行本化の予定。現在、加筆中)

 その26本のプロットの中に、邪悪な異星人が地球侵略のために宇宙怪獣を送りこもうと企んでいて、それを知った善意の精神生命体が、地球人の女性に憑依して警告を発する――という話があったんですね。ヒントになったのは『三大怪獣 地球最大の決戦』と『ウルトラQ』の「宇宙指令M774」です。
 さらに、その精神生命体が二度目に地球にやって来た時、ヒメに憑依し、ヒメの頭が良くなって言葉を喋れるようになる……という展開も思いつきました。
 そこで、はっと気がつきました。

「これ、小説に使える!」

 さらに、異星人や宇宙怪獣が存在する理由や、なぜ異星人が怪獣を使って侵略してくるのか、といった謎も、多重人間原理を応用すればきれいに説明できることにも気づきました。しかも、すごく面白い話になりそうなのです。
 これはもう書くしかない!

 しかし、前作と同じく気特対が主人公では、作品の雰囲気も前作に似てしまいます。そこで案野悠里の息子の一騎(前作では小学生でした)を主役にし、開き直って徹底的にライトノベル的展開にしてやろうと思いつきました。
 ですから今回、一騎とヒメと掛け合いとか、一騎のクラスメートの亜紀子との三角関係とか、ベタベタなラブコメ要素が大きなウェイトを占めています。いやもう、書いてて楽しかったですね。一騎がそのうちフォークでヒメを刺しそうで(笑)。

 もちろん、怪獣も出てきます。
 前作での心残りは、怪獣の都市部での大暴れと、自衛隊とのバトルという、怪獣ものの定番展開を書けなかったことです。今回、クライマックスでは東京に宇宙怪獣6号が出現、ド派手なバトルを繰り広げます。このへんも自分ですっかり楽しんでしまいました。
「ああ、僕が書きたかったのはこれだったんだ!」
 と思ったもんです。

 ちなみに、東京には何度も足を運んで、バトルの舞台になる場所を選びました。
 フィクションの中で初めてあそこを破壊したり、これまで怪獣が襲ったことのないあそこでラストバトルをやったり、いろんなアイデアを盛りこんで、燃える展開になったと自負しています。
 僕と同じく、怪獣の好きな方におすすめします。
  


Posted by 山本弘 at 20:48Comments(8)PR

2011年07月10日

星雲賞受賞

「そうか、星雲賞か。いいなあ……」
「あなたも受賞してるでしょ?」
「『トンデモ本の世界』と『トンデモ本の逆襲』でな。でも、あれは僕一人が書いた本やないし、ノンフィクション部門やし。やっぱり小説で獲りたいよ」
 それから僕は、ずっと気になっていたことを――未来の僕が教えてくれなかったことを訊ねた。
「なあ、『神のメッセージ』――じゃない、『神は沈黙せず』か。あれは星雲賞、獲れたんか?」
「正直に答えていいの?」
「というと、あかんかったん?」
「二〇〇四年度の星雲賞日本長編部門受賞作は、小川一水さんの『第六大陸』」
「小川さんかーっ!?」
 僕は思わず、その場にしゃがみこんでしまった。〈ソムニウム〉で親しく話していたが、まさかライバルだったとは。
「『神は沈黙せず』もノミネートはされたんだけどね」
 僕は顔を上げた。「じゃあ……じゃあ、日本SF大賞は?」
「押井守監督の『イノセンス』」
「『SFが読みたい!』は?」
「一位は冲方丁『マルドゥック・スクランブル』。二位は『第六大陸』。『神は沈黙せず』は三位」
「ウブカタ……?」
「一九九六年に一九歳でデビューした人。今はライトノベルを書いてる」
「まだ二〇代? そんな新人にまで負けたんか!?」
 ショックだった。あの小説は面白いという自信があって書きはじめたはずだった。結局は中断したものの、途中までずいぶん苦しんで書いた。完成したら星雲賞ぐらい獲れて当たり前だと思っていたのに。
――『去年はいい年になるだろう』11章「雨の松江城」

 いつもはSF大会で発表される星雲賞ですが、今年は大会の2か月前に発表になりました。

http://www.sf50.jp/award.html

【日本長編部門(小説)】
『去年はいい年になるだろう』
著者:山本弘 発行:PHP研究所

【日本短編部門(小説)】
『アリスマ王の愛した魔物』
著者:小川一水発行:早川書房「SFマガジン2月号」掲載

【海外長編部門(小説)】
『異星人の郷』
著者/訳者:マイクル・フリン/嶋田洋一 発行:東京創元社

【海外短編部門(小説)】
『月をぼくのポケットに』
『宇宙開発SF傑作選 ワイオミング生まれの宇宙飛行士』(ハヤカワ文庫SF)収録
著者/役者:ジェイムズ・ラヴグローヴ/中村融発行:早川書房

【メディア部門】
『第9地区』
監督:ニール・ブロムカンプ
製作総指揮:ケン・カミンズ、ビル・ブロック
製作:ピーター・ジャクソン、キャロリン・カニンガム

【コミック部門】
『鋼の錬金術師』
著者:荒川弘
発行:スクウェア・エニックス

【アート部門】
加藤直之

【ノンフィクション部門】
『サはサイエンスのサ』
著者:鹿野司
発行:早川書房

【自由部門】
探査機「はやぶさ」(第20号科学衛星MUSES-C)の地球帰還
独立行政法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)

 というわけで、「星雲賞が獲れなくて悔しかった」という想いをぶつけた『去年はいい年になるだろう』が、今年の星雲賞を受賞してしまいました(笑)。長いこと小説を書いてきたけど、初めての星雲賞で、感無量です。
 正直言って、『SFが読みたい!2011版』での順位が低かったもんで、「今年は無理だろうな」と思ってたんですけど、意外にも逆転してしまいました。
 2004年度は日本長編部門を受賞、作中にも登場していただいた小川一水さんが、今回は日本短編部門で受賞というのも、面白い縁であります。
 言うまでもなく、この作品は僕一人の力で書けたものではありません。小川一水さんをはじめ、作中への出演を許諾いただいた、あるいはアイデアを提供していただいた方々、みなさんのご協力のおかげです。執筆中に亡くなられた志水一夫氏、出版後に亡くなられたはぬまあん氏も含めて、ここにあらためて感謝の意を表します。

 秋田みやび、石原美紀子、植木不等式、小川一水、開田あや、開田裕治、葛西伸哉、加藤ヒロノリ、かに三匹、唐沢俊一、桐生祐狩、酒井和彦、シ、篠谷志乃、志水一夫(故人)、主藤雅章、白山隆彦、杉並春男、田中公侍、友野詳、中川善之、新田五郎、はぬまあん(故人)、原田実、稗田おんまゆら、松尾貴史、松岡秀治、皆神龍太郎、眠田直、森本有美、安田均、山本真奈美、山本美月(アイウエオ順・敬称略)

 ありがとう! そしてありがとう! 
\宣/

  
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Posted by 山本弘 at 20:15Comments(36)PR