2011年06月25日

『Dororonえん魔くんメ~ラめら』

 AMAZONでブルーレイ&DVDを検索してたら、けなしているレビューがあった。

http://www.amazon.co.jp/dp/B004VSNC66/

>昔、再放送されているドロロンえん魔くんを見て感動したことを覚えています。その感覚で見たら大失敗しました。
>全然面白くない。
>雪子姫など女性キャラがやたらと色気のあるシーンが多く視聴者に媚を売っているようでガッカリ。
>ブヒアニメはその手の専門アニメがあるのだからそちらに任せていればいい。
>リメイクするなら流行に流されずこの作品の良さをもっと引き出せたはず。
>あとOP。戦隊ものみたいで違和感あり過ぎ。著名な人が歌っているのかは知らないけどこの作品にはまったく合っていないと思った。
>自分の中で良い思い出だった作品が、こんなゴミとして世に出たことが残念で仕方がありません。

 おーい(笑)。
 違うよ! こっちの方が原作のイメージに忠実なんだよ!
『ドロロンえん魔くん』って、もともとこういう話なんだよ!

 今期のアニメ、『花咲くいろは』とか『あの花』とかも良かったんだけど、実はテンションがいちばん上がったのがこの作品だった。
 正直、放映開始前は、「何で今頃『えん魔くん』なんだよ」とバカにしてたんだけど、イヤハヤなんとも、ここまで盛り上がるとは想像もしなかった。
『タイバニ』も米たにヨシトモ氏がコンテを切った第一話がいちばん面白かったし、やっぱりこれは米たに監督の才能なんだろうな。

 あ、未見の方に言っておきますが、このアニメ、むちゃくちゃくだらないです(笑)。とてつもなく下品です。エロいです。
 でも、そのくだらなさに全力投球しているところがいい!

 これを見ていると『そらのおとしもの』とか『To LOVEる』に欠けてたのは「勢い」だというのがよく分かる。ギャグのひとつひとつはしょーもないんだけど、それがすごい密度で機関銃のように打ち出されるもんで、しらけてる余裕がないのだ。変にシリアスとか感動とかを混ぜようとせず、下品なギャグに徹していることに、逆に好感が持てる。
 個人的にいちばん好きなのは、第7話のすってん童子の話。いちおう原作にある話なんだけど、ここまで暴走はしてなかったはず。冒頭、世界中の人間や動物がみんなひっくり返ってるというものすごいビジュアルでいきなり大爆笑、最後は珍しく感動的に終わるかと思いきや、ひどいオチで締める。参った。
 炎天狗と寒天狗の話もすごかった。あの短い話をどうアレンジするのかと思ってたら、やっぱり後半が原作から離れて大暴走。「炎」と「氷」でシンメトリカルドッキングという、米たに監督のセルフパロは、まったく予想外でひっくり返った(いや、えん魔くんの必殺技はゴルディオンハンマーっぽいなとは思ってたけど)。
 他にも、山口勝平に『ジャイアントロボ』のセルフパロをやらせたり、原作では一瞬でやられたエビ天狗・イカ天狗・トコロ天狗が「下駄マシン」に乗ってきたり(OPで3人が「ゲッター走り」してる!)、とことんフリーダム。「ギルギルガンボングランゲンピグドラゴノロンザウルス」という名前が覚えられなくて、「ジェットジャガーチタノザウルス」とか「エロトピアヘイボンパンチザウルス」とかみんなが勝手なことを言い合っているのもおかしかった。
 あと、炎天狗と寒天狗の声が、大塚周夫と銀河万丈だったのはシビレた。
 この番組、ゲスト声優がけっこう豪華なんである。石丸博也、飯塚昭三、家弓家正、大塚芳忠、檜山修之、石田彰、岩田光央、加藤清三……第4話なんて、三ツ矢雄二と日高のり子(タッチと南)だったし。すごい贅沢な使い方してる。

 AMAZONではこんなことを言ってる人もいる。

>個人的な意見で申し訳ないが、一言いいたい。
>大人版もそうだけどさ。
>シャッポじいの声優が、昔のままなら買ったのに…
>ヤッ○ーマンを見習ってくれ。

 えええええーっ!?
 シャポーじいの声が滝口順平じゃないのが不満?
 どんだけ贅沢なんだよ。

 エロいシーンも毎回必ずある。何せ、「セクハラ」なんて言葉がまだ存在していなかった時代の作品ですから。そりゃあもう、アグネスや石原慎太郎にケンカ売ってんじゃないかと思えるほど(笑)。
 先の炎天狗と寒天狗の話でも、原作の「まっかっかだー」をちゃんとやってくれたのは嬉しかった。そうだよ! あそこはカットしちゃだめなんだよ!
 しかし、ここまで堂々とやっちゃうと、逆にいやらしくないんだよね。艶靡ちゃんなんて常に全裸なもんで、見てると感覚がマヒしてきて、逆に服を着てるシーンの方がエロく感じられたりする(笑)。

 でもって、毎回毎回、詰めこまれている、すごい量のおっさんホイホイ。挿入歌が「老人と子供のポルカ」とか「学生街の喫茶店」とか「燃えろいい女」とか「ハチのムサシは死んだのさ」とか、もー泣けてくる。
 背景の看板に「おはようございますの帽子屋」と書いてあったことも。
 毎回、OPの前にやるなつかしの番組のパロディも楽しみ。『ミラーマン』『ファイヤーマン』『ジャンボーグA』『スペクトルマン』『鉄腕アトム』『マグマ大使』……『サンダーバード』のパロの時は、1号役の雪子姫が上昇する時に、ちょっとだけ横に回転するのが芸コマである。
 なんか完全に「若い奴は分からんでいい」というシフトになってないか?

 最終回もすごかった。
 いきなり『幻魔大戦』パロや『チキチキマシン猛レース』パロで幕を開け、その後は怒涛の永井豪パロの連発。『獣神ライガー』とかまで!
 これまでも『マジンガーZ』とかのパロはいろいろやってたけど、残ってたネタを一挙に大放出した感じである。
 でもって、クライマックス。

 よっしゃあ、野沢雅子キターッ!!!!!!

 豪華ゲスト声優陣の中に、旧・えん魔くん役の野沢雅子がいないもんで、「最終話のために温存してるのでは?」と予想してたんだけど、その予想が見事に的中して、思わずガッツポーズ。
 しかし、旧・雪子姫役の坂井すみ江まで呼んでくるとは予想外。声がすっかりお婆ちゃんになっちゃってて……まあ、38年前だからなあ。
 とっくに引退してたかと思ってたら、まだ現役でした。そうか、『HEROMAN』のジョーイのお祖母ちゃんか! 気がつかなかった!

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9D%82%E4%BA%95%E5%AF%BF%E7%BE%8E%E6%B1%9F

 まあ、あまりにカオスすぎて、結局、どういう話だったかよく分からなかったりするんですが(笑)。そういういいかげんなところも含めて、永井豪の世界を見事に再現していたと思うのである。

 古いマンガの映像化、昔のアニメのリメイクというと、変に現代風にアレンジしようとして原作をぶち壊したり、原作とぜんぜん別物に改変してしまったり、あるいは逆に原作を忠実になぞっただけのつまらないものになっちゃったり、失敗作が死屍累々なのだけど、『Dororonえん魔くん メ〜ラめら』はその罠に陥らなかった。
 原作を(派生作品まで)しっかり読みこんだうえで、その精神を踏襲し、カットしてはいけない重要な部分は残し、なおかつ拡大・暴走させてみせた。
 原作リスペクトの最も良い例と言える。

 これからこういうリメイクものを創る人間は、『Dororonえん魔くん メ〜ラめら』を教科書にすべきだと思う。
 もちろん反面教師は映画版『デビルマン』(笑)。
 両者をそれぞれ原作と比較してみると、「何をすべきか」「何をやっちゃいけないか」がよ~く分かると思うんだよね。
  


Posted by 山本弘 at 17:52Comments(17)アニメ

2011年06月25日

『スーパー戦隊199ヒーロー大決戦』

 面白かったーっ!
 僕だけじゃなく、僕の周囲の戦隊シリーズのファンは、軒並み高評価である。

 まあ、ストーリーはあって無いようなもんなんだけど、お祭り映画としては最高の出来と言っていい。とにかく全編、アクションまたアクションの連続で、まったく中だるみがない。
 下手にドラマ性を盛りこんで失敗するよりは、むしろそんなもんバッサリ省略した方がいい場合もあるんだよ。娯楽映画なんだから。観客を楽しませることが第一の目的なんだから。

 とは言うものの最低限のドラマ性はある。
 特に海賊と天使という最悪の組み合わせのゴーカイジャーとゴセイジャーが、最初は反目しながらも、戦いの中でしだいにお互いを認めるようになり、最後は力を合わせて敵に立ち向かう……という展開は、なかなか上手い。
 あと、人生に絶望していたしょぼくれた中年男が、クライマックスで戦隊ヒーローたちを応援するシーンは、ちょっと泣けた。

 やっぱり、脚本の荒川稔久氏をはじめとして、スタッフの戦隊シリーズへの愛がこもっているのがいい。
 いつぞやの『ディケイド』の映画で歴代ライダーが勢ぞろいした時など、単に頭数を揃えただけという感が強くて、過去のヒーローへの思い入れが感じられなかった。でも、この映画は違う。過去のシリーズへのリスペクト、オマージュがぎっしり詰まっている。
 昔の役者さんが顔出しで登場するのも良かったけど、個人的には、ちらっとしか出てないドギーやシグナルマンやウルザードの声が、ちゃんとオリジナルの声優さんを使ってるのに感心した。
 冒頭のレジェンド大戦のシーンもいいんだけど、秀逸なのが、黒十字王がレンジャーキーの力を悪用して作り出した33の悪の戦隊と、ゴーカイジャー&ゴセイジャーが戦うシーン。これが倒しても倒しても倒しても終わらない(笑)。こんなに多かったんだな。このシーン、EDクレジット見たら、スーツアクターだけでとんでもない人数だった。
 しかも、いちいちネタがマニアックで面白い。悪のデンジマンがデンジブーメラン投げてきたり、悪のジャッカーがジャッカーコバック仕掛けてきたり。
 他にも、最初の方のシーンで、ダイナマンのキーの使い方に爆笑した。

 でも、このノリって何か既視感があるよなあ……と、ずっと思ってたんだけど、帰りの電車の中で、はたと思い当たった。

 長谷川裕一のマンガだ!

『超電磁大戦ビクトリーファイブ』とかのノリで、戦隊シリーズをマンガ化したら、こんな感じになるよね。
  
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Posted by 山本弘 at 16:32Comments(5)特撮

2011年06月22日

今月の『SFマガジン』は初音ミク特集

『SFマガジン』2011年8月号は初音ミク特集です。発売日は6月25日。
http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/721108.html

特集・初音ミク
 世界的な人気を得るにいたった日本発の「歌姫」、初音ミクのSF的想像力に迫る。山本弘、野尻抱介、泉和良による小説のほか、エッセイ、インタビュウなどで構成する。
表紙イラスト:KEI(描き下ろし)

[特集内容]
小説
○「喪われた惑星の遺産」 山本 弘
○「DIVAの揺らすカーテン」 泉 和良
○「歌う潜水艦とピアピア動画」 野尻抱介

インタビュウ
佐々木渉インタビュウ インタビュアー&構成:新見 直(KAI-YOU)
内海 洋インタビュウ インタビュアー&構成:卯月 鮎
前山田健一インタビュウ インタビュアー&構成:編集部

エッセイ
○「ミライのクルマ――未来派からミクへ」 飯田一史
○「初音ミク、その越境するキャラクター的身体について」 濱野智史
○「初音ミクを縛るのは誰?──ヴォーカロイドを巡る法律問題」 小倉秀夫
○「しまった!~または、ボカロ現象に、今からでも遅くない、SF大賞メディア部門賞を!」 難波弘之

○初音ミク・イラストレーションズ・ギャラリー bob / usi

 僕も長編『輝きの七日間』の連載を1回お休みして、ミクを題材にした短篇SFを書かせていただきました。
「もしも人類滅亡後に太陽系を訪れた異星人が金星探査機〈あかつき〉を拾ったら」
 という話です。ギャグのつもりで書きはじめたら、最後は意外に感動的な話になってしまいました。

 編集さんの話によれば、今号は予約が殺到しているとか。さすがミク、人気すごいです。つーか、『SFマガジン』が特集組むのが遅すぎたのでは? ミクって3年も前に星雲賞を受賞してるんですが。

 僕はこの時、観客席にいました。「本日、初音ミク様はご欠席です」には笑いましたね。
 初音ミクという、単なるソフトウェアを超えた特異なムーブメントには、この前年の9月、発売直後あたりから注目していました。この年のSF大会でも、野尻抱介氏やクリプトンの方を招いて、「ボーカロイドが世界を侵蝕する」と題したパネルをやったんでした。『地球移動作戦』を連載していたのもこの頃。あれから3年か。早いなあ。

 なんか「流行りものに便乗するのはよろしくない」みたいなストイックなことを言う人がいるみたいなんですが、僕はSF界はもっとあざとく売ってもいいと思うんですよね。むしろ、SFファンだからこそ、こういう新しい概念に注目すべきなんじゃないのかなと。
 だいたい、ミクはすでに単なる流行じゃなくなってます。これから何十年、ひょっとしたら何百年も生き残るキャラクターじゃないかと思うのです。サンタクロースやドラキュラやシャーロック・ホームズのように。
 今回の小説も、そういう想いをこめて書きました。

 そうそう、『地球移動作戦』のマイカの名前の由来がミクだろうと言う人がよくいるんですが、マイカの元ネタは『サイバーナイト』の人工知能MICAですので、お間違えなく。
 
  


Posted by 山本弘 at 14:55Comments(20)PR

2011年06月17日

日本トンデモ本大賞2011ダイジェスト、ニコ生で放送 

 6月11日に行なわれた日本トンデモ本大賞2011&と学会20周年ベスト・オブ・ベストの模様をダイジェストにしたものが、ニコニコ生放送にて放送されます。

【と学会】日本トンデモ本大賞2011&と学会20周年ベスト・オブ・ベスト 大会ダイジェスト (番組ID:lv52981921)
http://live.nicovideo.jp/gate/lv52981921

2011/06/19(日) 開場:19:50 開演:20:00

 録画でそのうえダイジェストじゃ「生放送」じゃないだろ、というツッコミはご勘弁(笑)。
 どの部分が流れるのかは、実は僕もよく知りません。高須先生のアレとかは、さすがに流せないだろ、と思うんですけどね。
 ご覧になりたい方はチェックするか、今のうちにタイムシフト予約してください。
  


Posted by 山本弘 at 18:26Comments(2)PR

2011年06月16日

日本トンデモ本大賞2011

 発表が遅れて申し訳ありません。東京から帰ってから、遅れてる原稿を必死になって書いてたもんですから。やっぱ連載3本はきつい。(その間に単行本のための書き下ろしとか、『メガミマガジン』に『まどか☆マギカ』についての原稿書いてたりしてたし……)
 6月11日に行なわれた日本トンデモ本大賞2011の結果の発表です。
 4月に行なわれた前々月祭では、ロフトプラスワンでの投票に加え、ニコ生で視聴していた方々にも投票していただきました。ただ、ニコ生の視聴者数は会場の人数の数十倍なんで、そのまま票数を加算すると、お金を払って会場に来ていただいた方々に不公平になります。
 幸い、ロフトプラスワンでの投票者数は100人に近い(正確には110人)ので、ニコ生の投票者数は、1%=1票として加算させていただくことにしました。
 ()内がニコ生でのパーセンテージです。

『あなたは常識に洗脳されている』 32票(+32)
『宇宙人との対話』 47票(+39)
『ゴジラ 特撮未発表資料アーカイヴ』 19票(+21)
『この国のために今二人が絶対伝えたい本当のこと』 3票(+8)

【ノミネート外作品】

『メガネっ娘陵辱大戦』 7票
大川隆法 1票
都の青少年健全育成条例改正案 1票

 というわけで、第20回トンデモ本大賞は、大川隆法『宇宙人との対話』(幸福の科学出版)に決定いたしました。

 また、この20年間で最高のトンデモ本を決める「トンデモ本ベスト・オブ・ベスト」の方は、次のような結果になりました。

『植物は警告する』38票
『世界の支配者は本当にユダヤか』85票
『発情期ブルマ検査』67票
『人類の月面着陸は無かったろう論』219票
『人類の黙示録』24票

【ノミネート外作品】

『ガチンコ心霊交遊録』1票
『新UFO入門』1票
『メガネっ娘陵辱大戦』1票
『平和宇宙戦艦が世界を変える』1票
『量子ファイナンス工学入門』1票
高須克弥先生 1票

 というわけで、この20年間で最高のトンデモ本は、副島隆彦『人類の月面着陸は無かったろう論』(徳間書店)に決定いたしました。
 投票していただいたみなさま、ありがとうございます。
  


Posted by 山本弘 at 18:55Comments(7)トンデモ

2011年06月16日

『AERA』に載った放射線の数値(続報)

 トンデモ本大賞からこっち、つい昨日まで原稿に追われまくってて、他のことをやってる余裕がなかったんだけど、今日ようやく、「そらまめ」の園長さんと電話で話し、事情を聞くことができた。
 5月6日にグリーンピースの人たちが高価な機械を持って放射線値の測定に来たのは本当だと。
 ただ、その機械はcps(1秒あたりの粒子放出率)しかカウントできなかったらしい。
 で、ここから先がよく分からないのだが、その人たちは、

 測定されたcpsの数値をマイクロシーベルト/時に換算するのに、5.5で割ったんだと。

 はあ?
 専門家ではない園長さんに専門的な説明を求めても無理だろうと思ったので、それ以上詳しくは聞かなかったのだが、『AERA』に載った数値はすべて、機械が表示した数値を5.5で割ったものであり、現場で線量計の表示に「27.27」などと出たわけではないという。
 つまり、

 27.27――。
 線量計の表示を見て、その場にいた一同は息をのんだ。

 という『AERA』の記事は、明らかに嘘なのだ。
 9.09は0.11の逆数なので、「100倍して11で割った」という可能性も考えてたけど、11の半分の5.5だったとは思わなかった。
 試しに、『AERA』に載った数字をすべて5.5倍してみると、

0.90 → 5
1.45 → 8
1.81 → 10
2.25 → 12.4?
2.53 → 13.9?
2.72 → 15
3.63 → 20
5.45 → 30
7.27 → 40
9.09 → 50
12.72 → 70
16.36 → 90
18.18 → 100
27.27 → 150
45.45 → 250
90.90 → 500

 やっぱり2.25と2.53だけが他の数字と違う。ここだけ別の機械で測定したのかもしれない。
 この数字を見て分かるのは、この機械の性能が、1桁、もしくは「15」「150」「250」というアバウトな数字しか表示できないものであったことだ。だから有効数字はせいぜい2桁。
 それを5.5で割って、4桁の数字を出すという、初歩の初歩の大間違いをやっている。「有効数字」という概念は、確か中学1年で習うはずなんだけどなあ……? 
 あと、ネットで調べてみたところ、cpsからマイクロシーベルト/時への換算というのは、単純にはできないものらしい。「5.5で割る」という操作がどういう根拠なのかよく分からない。

 とりあえず測定値が誇張されているという疑惑は晴れたものの、誰だか知らないが中一の数学も知らない奴が雑誌に数値を発表していることは明らかになった。
  


Posted by 山本弘 at 18:34Comments(5)メディアリテラシー

2011年06月04日

【クイズ】『AERA』に載った放射線の数値が変【解答編】

 前回の正解発表。
【A-1】【B-1】【B-2】についてはかなりの人が正解しているが、【A-2】が分からなかった人が多かったのが、ちょっと意外だ。てっきりほとんどの人が正解するかと思っていたのだが。

【答A-1】
 同じ数字が多い。「9.09」が5箇所、「27.27」が3箇所、「18.18」と「0.90」が2箇所ずつある。
 3桁の数字が偶然に一致する確率は1000分の1、4桁の数字が一致する確率は1万分の1であり、これほど多くの数字が一致することはありえない。

【答A-2】
「2.53」と「2.25」以外の数字はすべて、キリのいい数字を9.09倍したもの(小数点以下3桁は切り捨て)。

0.90 = 9.09 × 0.1
1.45 = 9.09 × 0.16
1.81 = 9.09 × 0.2
2.25 = 9.09 × 0.25
2.72 = 9.09 × 0.3
3.63 = 9.09 × 0.4
5.45 = 9.09 × 0.6
7.27 = 9.09 × 0.8
9.09 = 9.09 × 1
12.72 = 9.09 × 1.4
16.36 = 9.09 × 1.8
18.18 = 9.09 × 2
27.27 = 9.09 × 3
45.45 = 9.09 × 5
90.90 = 9.09 × 10

 記事には3~4桁の数字が出てくるが、本来の測定値の有効数字は1~2桁にすぎなかったことになる。本来の測定値が「9.09」「27.27」「18.18」ではなく、「1」「3」「2」であったのなら、偶然に一致してもおかしくない。
 つまり、これらの測定値は一律に9.09倍されている疑いがあるのだ。
 もっとも、なぜ「2.53」と「2.25」が例外なのかは不明。9.09倍というのは100倍して11で割ったのかもと思うが、何にしても、なぜそんなおかしな操作をしたのかさっぱり分からない。

 気になって「こどものいえ そらまめ」のブログを調べてみると、5月18日にこんな記述があった。

http://kodomonoie-soramame.blogspot.com/2011/05/blog-post_18.html

 14日の除染作業後、園庭の放射能数値が大分下がり、現在0.5マイクロシーベルト/時です。作業前は3.0ありました。

 3.0の9.09倍は27.27である。これは『AERA』の記事で園庭の木製ブランコの数値が「27.27」になっているのに符合する。
 ヨウ素131の半減期を考慮に入れても、5月6日から14日までの8日間で、放射線量が9.09分の1に下がるというのは考えにくい。しかも、きっかり9.09分の1である。
 すなわち、5月6日での園庭での測定値は、正しくは毎時3マイクロシーベルトであり、測定時に居合わせたであろう「そらまめ」の関係者もそれを認識していたと思われる。
 測定が行なわれた後、『AERA』に記事が掲載されるまでの間に、何者かが測定値を9.09倍した疑いが濃い。

 この際、「何者か」の正体は問わないことにする。これだけの証拠からでは、誰が犯人かは特定できないからである。(ブログを書いた「そらまめ」の園長さんは本当のことを言っていると思うが)

【答B-1】
 16.7%、33.3%、50%、66.7%、83.3%……これらの数字はすべて「1/6」(16.7%)の倍数である。

【答B-2】
「中学生レベルと判定された学生」の数は6人である可能性がきわめて高い。
 12人いて、どの選択肢を選んだ者も偶数だったという可能性はあるが、その確率はかなり低い。18人や24人である確率はもっと低い。

 調査は平成十六年度に入学した三十三大学・短大の学生約一万三千人を対象に、中一から高三相当の問題を盛り込んだテストを行い、十四年度に中高生に実施したテスト結果と照らし合わせてレベルを判定した。
 その結果、中学生レベルと判定された学生は、五年前に行われた調査と比較して国立大が0・3%から6%、私立大が6・8%から20%、私立短大が18・7%から35%と、数年間で大きく増加していることが分かった。
 この記事の文章からすると、数千人の学生が「中学生レベル」と判定されたはずなのだが、載っているのはたった6人のデータなのである。どういうことなのだろうか。

 これも犯人が誰なのか分からない。だが、こうなると、「国立大が0・3%から6%、私立大が6・8%から20%、私立短大が18・7%から35%」という数字も、本当なのかどうか疑問だ。たった5年でこんなに急激に国語力が低下するものだろうか。
 ゆとり教育を原因に挙げる人もいるかもしれないが、ゆとり教育が実質的に開始されたのは、この記事のたった2年前、2002年なのである。つまり調査の対象者は、ゆとり教育開始時には高校二年だったのであり、大きな影響があるとは思えない。
 何にしても、こんなあからさまに怪しいデータが、新聞に、それも一面に堂々と載ったというのは、驚くべきことである。産経新聞の見出しは「大丈夫?国語力」だったが、むしろ記者の算数力が心配である。


 いかがだろう?
 こうしたことに気づいたのは、べつに僕の頭がいいからではない。これらはとてもやさしい問題で、掛け算割り算を知っていれば小学生でも解ける程度のものである。
 問Aの場合、「9.09」がやけに多いことには誰でも気づくだろうし、「18.18」「27.27」という数字の不自然さに注目し、18は9の2倍、27は9の3倍だということを思い出せば、9.09の倍数だとすぐ気づくだろう。「だとしたら他の数字もみんなそうなのかも?」と確認したくなるはずである。
 なのになぜ気がつかない人が多いのか?

 おそらく、ほとんどの人は数字を見ただけで「自分には分からない」と思って、目をそむけてしまうのではないか。だから簡単に気づく程度のことに気づかないのではないだろうか。実際は小学生でも分かる問題なのに。
 また、普段からあまり暗算をやっていないので、「18は9の2倍、27は9の3倍」という基本的なことを、とっさに思い出せないのかもしれない。
 考えてみると、『買ってはいけない』のようなニセ科学に多くの人が騙される背景には、「計算できそうな数字が出てきたら計算してみる」という習慣がないことがあると思う。複雑な計算ならまだしも、掛け算や割り算ぐらいはやってみるべきだろう。『買ってはいけない』の場合、ちょっと計算してみるだけで、著者たちが訴える食品添加物の害が、とてつもない量(1日に1000リットルの酒とか1日に1トン以上のオレンジとか)を摂取した場合の話であるのは、すぐに分かるはずだ。
 ちょっと計算してみる――そのほんの少しの手間を惜しまないことで、メディアに騙される危険は確実に減るはずだ。
  


Posted by 山本弘 at 19:00Comments(18)メディアリテラシー

2011年06月02日

【クイズ】『AERA』に載った放射線の数値が変

 今回はクイズである。どれも数学の得意な人なら1分以内で解ける問題なので、気軽にチャレンジしていただきたい。

【問題A】
 僕のマイミクの「UFO教授」さん(元・大学助教授だった方)が、『AERA』5月30日号の「子を放射能から守れ」という記事を読んでいて、おかしなことに気がついたのである。

 27.27――。
 線量計の表示を見て、その場にいた一同は息をのんだ。
 福島県渡利にある私立の保育園「こどものいえ そらまめ」を、環境NGOグリーンピースのメンバー5人と「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」のメンバー5人が訪れたのは5月6日。福島第一原発事故で園内にどれだけの放射能が滞留しているかを調べるためだ。

枯れ葉から90以上

 測ったのは、園庭の土や遊具など屋外の20ヵ所以上。冒頭の数字はブランコの木製部分から出た。毎時27.27マイクロシーベルト。マイクロはミリの千分の1を表す。国が4月19日に定めた校庭の利用基準値である毎時3・8マイクロシーベルトより、はるかに高い。園の裏側に積んでいた枯れ葉からは90以上、水道横の土からも45以上という高い値が測定された。(12ページの図参照

 さて、「UFO教授」さんはこの図の中に出てくる数値を見て「あれ? 何か妙だぞ」と気がついたのだそうである。僕も言われてすぐに気がついた。確かにこれはおかしい。
 分かりやすいように、上の図から数字だけを抜き出してみた。


【問A-1】
 この数字にはぱっと見ておかしなところがある。それはどこか?
 なお、この問題に放射線の知識はまったく関係ない。
(制限時間1分)

【問A-2】
 この図の中の赤で示した「2.25」と「2.53」以外の数字は、ある規則に従っている。その規則は何か?
(制限時間1分)


【問題B】
 上の話を読んで、思い出したことがある。産経新聞の2004年11月24日の朝刊一面に載った記事である。


 大丈夫?国語力
4年制私大生 2割が中学レベル
「憂える」の意味→3人に2人が「喜ぶ」と回答
メディア教育開発センター調べ

 大学生の「日本語力」が低下し、中学生レベルの国語力しかない学生が国立大で6%、四年制私立大で20%、短大では35%にのぼることが、独立行政法人「メディア教育開発センター」(千葉市)の小野博教授(コミュニケーション科学)らの調査で分かった。「憂える」の意味を「喜ぶ」と思いこんでいる学生が多いなど、外国人留学生より劣る実態で、授業に支障が出るケースもあるという。同教授は「入学後の日本語のリメディアル(やり直し)教育が必要」と指摘する。
 調査は平成十六年度に入学した三十三大学・短大の学生約一万三千人を対象に、中一から高三相当の問題を盛り込んだテストを行い、十四年度に中高生に実施したテスト結果と照らし合わせてレベルを判定した。
 その結果、中学生レベルと判定された学生は、五年前に行われた調査と比較して国立大が0・3%から6%、私立大が6・8%から20%、私立短大が18・7%から35%と、数年間で大きく増加していることが分かった。
 テストでは「憂える」の意味を問う質問で、「中学生レベル」と判定された学生の三人に二人が「うれしい」に音感が近いためか「喜ぶ」を選択。「大学生レベル」とされた学生の中でも正答率は50%にとどまり、文字通り“憂える”結果となった。「懐柔する」は「賄賂をもらう」を選ぶ学生が多く、「大学生レベル」の学生でも正答率は46%にとどまった。


 この記事の中で、「中学生レベルと判定された学生が回答した割合」として、次のような数字が示されている。

問題の例
■露骨に
 ①ためらいがちに (0%)
 ②おおげさに (83.3%)
 ③あらわに (16.7%)
 ④下品に (0%)
 ⑤ひそかに (0%)
■憂える
 ①うとましく思う (16.7%)
 ②たじろぐ (0%)
 ③喜ぶ (66.7%)
 ④心配する (0%)
 ⑤進歩する (16.7%)
■懐柔する
 ①賄賂をもらう (50.0%)
 ②気持ちを落ち着ける (33.3%)
 ③優しくいたわる (16.7%)
 ④手なずける (0%)
 ⑤抱きしめる (0%) 

 僕がこの記事をスクラップしておいたのは、この数字をぱっと見て「おかしい」と気がついたからである。

【問B-1】
 上の記事に出てくる数字には、おかしなところがある。それは何か?
 なお、この問題に国語力は関係しない。
(制限時間1分)

【問B-2】
 問B-1の答から、「中学生レベルと判定された学生」の数を推測せよ。
(制限時間1分)

 ちなみにこれ、「UFO教授」さんに見せたら、たちまち答えられた。さすがだ。
 回答は土曜日あたりに。

【訂正 6月3日】
「国が4月19日に定めた校庭の利用基準値である毎時3・8シーベルト」という誤記を「3.8マイクロシーベルト」訂正させていただきました。
  


Posted by 山本弘 at 18:05Comments(19)メディアリテラシー