2011年06月04日

【クイズ】『AERA』に載った放射線の数値が変【解答編】

 前回の正解発表。
【A-1】【B-1】【B-2】についてはかなりの人が正解しているが、【A-2】が分からなかった人が多かったのが、ちょっと意外だ。てっきりほとんどの人が正解するかと思っていたのだが。

【答A-1】
 同じ数字が多い。「9.09」が5箇所、「27.27」が3箇所、「18.18」と「0.90」が2箇所ずつある。
 3桁の数字が偶然に一致する確率は1000分の1、4桁の数字が一致する確率は1万分の1であり、これほど多くの数字が一致することはありえない。

【答A-2】
「2.53」と「2.25」以外の数字はすべて、キリのいい数字を9.09倍したもの(小数点以下3桁は切り捨て)。

0.90 = 9.09 × 0.1
1.45 = 9.09 × 0.16
1.81 = 9.09 × 0.2
2.25 = 9.09 × 0.25
2.72 = 9.09 × 0.3
3.63 = 9.09 × 0.4
5.45 = 9.09 × 0.6
7.27 = 9.09 × 0.8
9.09 = 9.09 × 1
12.72 = 9.09 × 1.4
16.36 = 9.09 × 1.8
18.18 = 9.09 × 2
27.27 = 9.09 × 3
45.45 = 9.09 × 5
90.90 = 9.09 × 10

 記事には3~4桁の数字が出てくるが、本来の測定値の有効数字は1~2桁にすぎなかったことになる。本来の測定値が「9.09」「27.27」「18.18」ではなく、「1」「3」「2」であったのなら、偶然に一致してもおかしくない。
 つまり、これらの測定値は一律に9.09倍されている疑いがあるのだ。
 もっとも、なぜ「2.53」と「2.25」が例外なのかは不明。9.09倍というのは100倍して11で割ったのかもと思うが、何にしても、なぜそんなおかしな操作をしたのかさっぱり分からない。

 気になって「こどものいえ そらまめ」のブログを調べてみると、5月18日にこんな記述があった。

http://kodomonoie-soramame.blogspot.com/2011/05/blog-post_18.html

 14日の除染作業後、園庭の放射能数値が大分下がり、現在0.5マイクロシーベルト/時です。作業前は3.0ありました。

 3.0の9.09倍は27.27である。これは『AERA』の記事で園庭の木製ブランコの数値が「27.27」になっているのに符合する。
 ヨウ素131の半減期を考慮に入れても、5月6日から14日までの8日間で、放射線量が9.09分の1に下がるというのは考えにくい。しかも、きっかり9.09分の1である。
 すなわち、5月6日での園庭での測定値は、正しくは毎時3マイクロシーベルトであり、測定時に居合わせたであろう「そらまめ」の関係者もそれを認識していたと思われる。
 測定が行なわれた後、『AERA』に記事が掲載されるまでの間に、何者かが測定値を9.09倍した疑いが濃い。

 この際、「何者か」の正体は問わないことにする。これだけの証拠からでは、誰が犯人かは特定できないからである。(ブログを書いた「そらまめ」の園長さんは本当のことを言っていると思うが)

【答B-1】
 16.7%、33.3%、50%、66.7%、83.3%……これらの数字はすべて「1/6」(16.7%)の倍数である。

【答B-2】
「中学生レベルと判定された学生」の数は6人である可能性がきわめて高い。
 12人いて、どの選択肢を選んだ者も偶数だったという可能性はあるが、その確率はかなり低い。18人や24人である確率はもっと低い。

 調査は平成十六年度に入学した三十三大学・短大の学生約一万三千人を対象に、中一から高三相当の問題を盛り込んだテストを行い、十四年度に中高生に実施したテスト結果と照らし合わせてレベルを判定した。
 その結果、中学生レベルと判定された学生は、五年前に行われた調査と比較して国立大が0・3%から6%、私立大が6・8%から20%、私立短大が18・7%から35%と、数年間で大きく増加していることが分かった。
 この記事の文章からすると、数千人の学生が「中学生レベル」と判定されたはずなのだが、載っているのはたった6人のデータなのである。どういうことなのだろうか。

 これも犯人が誰なのか分からない。だが、こうなると、「国立大が0・3%から6%、私立大が6・8%から20%、私立短大が18・7%から35%」という数字も、本当なのかどうか疑問だ。たった5年でこんなに急激に国語力が低下するものだろうか。
 ゆとり教育を原因に挙げる人もいるかもしれないが、ゆとり教育が実質的に開始されたのは、この記事のたった2年前、2002年なのである。つまり調査の対象者は、ゆとり教育開始時には高校二年だったのであり、大きな影響があるとは思えない。
 何にしても、こんなあからさまに怪しいデータが、新聞に、それも一面に堂々と載ったというのは、驚くべきことである。産経新聞の見出しは「大丈夫?国語力」だったが、むしろ記者の算数力が心配である。


 いかがだろう?
 こうしたことに気づいたのは、べつに僕の頭がいいからではない。これらはとてもやさしい問題で、掛け算割り算を知っていれば小学生でも解ける程度のものである。
 問Aの場合、「9.09」がやけに多いことには誰でも気づくだろうし、「18.18」「27.27」という数字の不自然さに注目し、18は9の2倍、27は9の3倍だということを思い出せば、9.09の倍数だとすぐ気づくだろう。「だとしたら他の数字もみんなそうなのかも?」と確認したくなるはずである。
 なのになぜ気がつかない人が多いのか?

 おそらく、ほとんどの人は数字を見ただけで「自分には分からない」と思って、目をそむけてしまうのではないか。だから簡単に気づく程度のことに気づかないのではないだろうか。実際は小学生でも分かる問題なのに。
 また、普段からあまり暗算をやっていないので、「18は9の2倍、27は9の3倍」という基本的なことを、とっさに思い出せないのかもしれない。
 考えてみると、『買ってはいけない』のようなニセ科学に多くの人が騙される背景には、「計算できそうな数字が出てきたら計算してみる」という習慣がないことがあると思う。複雑な計算ならまだしも、掛け算や割り算ぐらいはやってみるべきだろう。『買ってはいけない』の場合、ちょっと計算してみるだけで、著者たちが訴える食品添加物の害が、とてつもない量(1日に1000リットルの酒とか1日に1トン以上のオレンジとか)を摂取した場合の話であるのは、すぐに分かるはずだ。
 ちょっと計算してみる――そのほんの少しの手間を惜しまないことで、メディアに騙される危険は確実に減るはずだ。
  


Posted by 山本弘 at 19:00Comments(18)メディアリテラシー