2011年05月29日

『日本トンデモ本大賞2011』

 前にも告知しましたが、『日本トンデモ本大賞2011』が2週間後の6月11日にに迫っております。

http://www.togakkai.com/taisyou/index.html

 リンク先の画像にもありますが、イベントの他に、会員の出版物の販売や、リンクファクトリーさんの「宇宙人くじ」なんてものもあります。限定100本なんで、あっという間に売り切れそうですけどね。

 今回はゲストも充実しています。

・高須克弥(高須クリニック院長)
・西原理恵子(マンガ家)
・桃井はるこ(声優・ラジオパーソナリティ)
・飯塚昭三(声優)
・矢追純一(UFOディレクター)

 正直、どんな話が出てくるのか、僕もよく知りません(^^;)。当日のお楽しみですね。
  


Posted by 山本弘 at 13:50Comments(11)PR

2011年05月24日

エレーニン彗星衝突説が爆笑ものだった件

 前回に続いて、デマの話。
 こんなデマが流れているというのを、J-CASTニュースで知った。

10月接近の彗星が地球衝突  だれがこんなデマを流したのか
http://www.j-cast.com/2011/05/20096157.html?p=1
http://www.j-cast.com/2011/05/20096157.html?p=2

 昨年の12月10日に発見されたエレーニン彗星が、今年の秋に地球に衝突するかもしれない、というのである。
 調べてみたら、デマを広めているところが分かった。「防災グッズマガジン」という、名前だけ見るとまともそうなサイトだ。5月13日にこんな記事が載ったのである。

エレーニン彗星が地球に接近
http://www.disaster-goods.com/news_skWrI6miJ.html

NASAのレポートによると、現在、エレーニン彗星(Comet Elenin)が地球に接近しているという。地球をはじめとする天体に重力の影響はおきている事からエレーニン彗星は彗星の名がついてはいるが非常に大きな天体である可能性があるという。

以下天文学者Mark Sircus博士の記事より。

Mark Sircus博士

NASAの分析モデルを見ると、巨大な天体がすでに太陽系の中に侵入しているという事がわかる。エレーニン彗星は現在内太陽系に入ろうとしている。このまま今のコースを進めば2011年秋に地球すれすれを通るか最悪の場合地球に衝突する危険性がある。

エレーニン彗星が最も太陽に接近するのは2011年9月上旬だという。地球に最接近する時期は2011年10月16日ころ、 地球からおよそ2100万マイル離れたところを通過するだろうと専門家は予測している。

エレーニン彗星と東日本大震災 
東日本大震災、ニュージーランド大地震、チリ大地震はこのエレーニン彗星が原因であるという可能性がある。エレーニン彗星、地球、太陽が直列する事で大地震がおきたという可能性があるという。

 天体直列で大地震(笑)。なんかもうこれだけでダメダメって感じだよね。彗星の質量がどれぐらいか分かってんのか? 彗星はガス状の頭部(コマ)は直径何万kmもあるけど、本体(核)はせいぜい直径数km~数十kmしかない。有名なハレー彗星の場合、1986年の探査機ジオットの観測によって、核の大きさは15×8×8kmであることが判明している。しかもその成分の80%は氷であり、岩石でできた天体より密度が低い。
 たとえば月は直径3476km。その100分の1の直径35kmの核を持つ彗星の場合、体積は100万分の1。そして月の密度は水の3.3倍だから、彗星の質量は月の数百万分の1ということになる。
 すなわち、ハレー彗星よりも大きな直径35kmの核を持つ彗星が、月と同じ距離まで接近したとしても、その引力が地球に及ぼす影響は、月が地球に及ぼす影響の数百万分の1なのである。
 しかも最接近時の距離が2100万マイルって……3400万km? 月-地球間の距離の88倍? むちゃくちゃ遠いじゃん。これが「地球すれすれ」?
 それに「現在内太陽系に入ろうとしている」ということは、今はまだ3400万kmよりさらに遠いところ、火星軌道のあたりにいるってことである。
 何で月の数百万分の1の引力しかない天体が、月よりはるかに遠いところを通過するだけで地震が起きるの? バカじゃないの?

 まともな天文学者がこんなアホなことを言うとは思えない。Mark Sircus博士ってどういう人物なのかと思って検索してみたら、彼のブログが見つかった。彼がこの話の発信源であることは間違いない。

Dr.Sircus's Blog
http://blog.imva.info/

 でもって、彼のプロフィールがこれ。

http://director.imva.info/

I am a prolific writer, poet, medical researcher, doctor, psychologist, musician,
 
 どこが「天文学者」やねん!?
 いい加減なこと書くなよ、「防災グッズマガジン」!

 さらに「防災グッズマガジン」は、5月26日にもこんなアホな記事を載せた。

ホワイトハウスが文書を発表「エレーニン彗星衝突の危険あり 」
http://www.disaster-goods.com/news_snMvaRf7m.html?recommend

ホワイトハウス、エレーニン彗星対策はじめる
エレーニン彗星(Elenin彗星、Comet Elenin) が現在太陽系の中心に接近してきているという。この情報に伴いホワイトハウスは対策をはじめる模様。

ホワイトハウス科学技術政策局長官John Holdren氏は「現在地球に接近している小天体から地球をまもる計画(protecting the United States from a near-Earth object that is expected to collide with Earth) 」を発表した。

Comet C / 2010 X1(Elenin彗星、Comet Elenin) は2010年12月10日にLeonid Eleninによって発見された。

2011年3月11日におきた東日本大震災を引き起こした原因はエレーニン彗星の引力だといわれる。この日エレーニン彗星と地球と太陽は一直線上に並んだ。

現在のエレーニン彗星の位置はまだ地球から離れている。しかし刻一刻接近しており、今年9月26日ごろエレーニン彗星は地球と太陽の間を通ると予測されている。

この時もエレーニン彗星と地球と太陽はもう一度一直線上に並ぶ。しかしこの時は3つの天体の距離は小さく地球が受ける引力の影響は東日本大震災の比ではないという。

 上に紹介したJ-CASTニュースの記事でも書かれているが、これはまったくのデタラメ。「現在地球に接近している小天体から地球をまもる計画」という訳からして間違っている。「protecting the United States from a near-Earth object that is expected to collide with Earth」――この程度の英語は中学生でも訳せると思うが、「地球に衝突すると予想される地球近傍天体から合衆国を守る」である。これのどこが「現在地球に接近している」なのだ?
 地球近傍天体(near-Earth object)というのは、地球に接近する軌道を持つ小惑星や彗星の総称である。以前からそうした天体が地球に衝突する可能性については警告されていて、ホワイトハウスがそれに関するレポートを、昨年10月(エレーニン彗星の発見前)に米議会に提出した……ということらしい。つまりエレーニン彗星とはまったく関係ない話なのだ。
 これで「ホワイトハウスが文書を発表「エレーニン彗星衝突の危険あり」」というタイトルをつけちゃうんだから、ひどい話である。これはもう「誤報」とかいうレベルを超えている。
 どうも「防災グッズマガジン」の元ネタはこのへんらしい。

Bad News from NASA: Proof That Comet Elenin Is Affecting Earth
http://www.activistpost.com/2011/05/bad-news-from-nasa-proof-that-comet.html

 怪しい~っ!!(笑)
 惑星ニビルとかマヤの暦がどうこうって書いてあるよ!
 しかも今年の8月3日に地球の軌道が褐色矮星と交差するって。
 褐色矮星~っ!?(爆笑)
 あー、笑った笑った。ありえなさすぎるだろ。褐色矮星というのは恒星と惑星の中間、木星型惑星よりも大きいけれど恒星にはなれなかった天体のことで、当然、そのサイズは木星よりもでかい。そんなもんが太陽系に侵入してきてたら、もうとっくに世界中で観測されてるって!

 実は『地球移動作戦』でも、最初、シーヴェルを褐色矮星にしようと思っていた。だが、検討したところ、無理だと分かった。褐色矮星は熱を帯びているから赤外線を発している。太陽系のすぐ近くにそんなものがあったら、すでに赤外線観測で発見されているはずなのだ。そこで木星の約2倍の質量で、なおかつ光学的に観測できないミラー天体だという設定にしたのである。

 しかも3つ目の動画がバカすぎる。
 日本で4月20日に撮影されたビデオにエレーニン彗星か惑星ニビルらしきものが写ってるというのだ。朝なのにだんだん沈んでいっているから太陽ではないと。

Nibiru Elenin or a very bright star over Japan Volcano 04/20/11 ITS NOT THE SUN April 20 2011
http://www.youtube.com/watch?v=mm6e23lQi44

 検索してみたら、これは輝北から西の桜島を撮影した定点カメラの映像だと分かった。つまり、ここに写っているのは西の空だ。

国土交通省 九州地方整備局 大隈河川国道事務所
http://www.qsr.mlit.go.jp/osumi/camera_sabo.htm

 さらに、国立天文台のサイトで、この日の鹿児島での月齢と月の出・月の入りを調べてみると、

国立天文台 天文情報センター 暦計算室
http://www.nao.ac.jp/koyomi/

鹿児島(鹿児島県)
2011年4月20日(水)
日の出 5:45
日南中時 12:17
日の入り 18:50
月の出 21:30
月南中時 1:41
月の入り 6:55
正午月齢(16.5)

 ……月だろ?
 月が西の山に沈んでいってるんだよね。
 だいたい、こんな明るい天体が空に浮かんでたら、日本だけでなく世界中から肉眼で見えてるだろ。そんな当たり前のことも分からんのか。
 それともあれですか、やっぱりイルミナティが情報を隠蔽してるんですか(笑)。

 どうもMark Sircusの頭の中では、エレーニン彗星は褐色矮星または中性子星(!)で、それが例の「惑星ニビル」の正体だということになっちゃってるらしいんである。
 彗星と惑星と褐色矮星と中性子星……ぜんぜん違う天体をよくまあ、ごっちゃにできたもんだ。
 天文学を知らない人には、このおかしさは分からないかもしれない。たとえて言うなら、チョウチョを見て「あれはプテラノドンだ」と言ってるぐらいムチャクチャである。
 彼はどこからこんなトンデモ説を思いついたのか? どうやら鍵はこのへんにありそうだ。

Here Comes Elenin
http://blog.imva.info/world-affairs/elenin

>the part they can see is 50,000 miles in diameter. Yes a big rock!

 はあ? 直径5万マイルの「大きな岩」?
 そう、こいつ、「彗星のコマの直径が8万km」というのを読んで、直径8万kmもある巨大な岩のかたまりだと誤解してしまったらしい。で、こんなに大きいのだからきっと惑星じゃなく褐色矮星だ!と思いこんだわけだ。
 彗星のコマのサイズとしては、8万kmというのは特に大きいわけではない。コマが100万kmを超えることだってあるのだ。ちなみに木星の直径は14万kmだから、エレーニン彗星のコマは木星より小さい。

 要するに、Mark Sircusが天文学の初歩の初歩も知らないトンデモさんだったうえに、それを紹介した「防災グッズマガジン」の記事を書いた奴が、とてつもないアンポンタンだったということだ。
 でもなあ、「エレーニン彗星」で検索すると、ずいぶん信じちゃってる人、多いんだよなあ。
 天文に興味のない一般人は、そもそも彗星というのがどんな天体なのかすら知らないから、こんなデタラメな話を本気にしちゃうのだろうか。あるいは「NASA」とか「ホワイトハウス」とかいう固有名詞が出てくるだけで信憑性があると思っちゃうのか。
 何にしても、もうちょっと頭を使ってほしいもんである。
  


Posted by 山本弘 at 14:09Comments(34)トンデモ

2011年05月22日

デマ:蓮舫の子供が海外に留学

 先日の「ちきゅう」陰謀説もそうだが、今回の東日本大震災では、ものすごい数のデマが飛び交っている。
 幸い、そのデマを検証し、火消しに回っているサイトもいくつもある。そのおかげで、早めに終息したデマも多い。ありがたいことである。

ず's デマの検証サイト一覧
http://wiliki.zukeran.org/index.cgi?%a5%c7%a5%de%a4%ce%b8%a1%be%da%a5%b5%a5%a4%a5%c8%b0%ec%cd%f7

 中でも秀逸なのはアンサイクロペディアの「東日本大震災」の項。なんと、デマだけを集めて記事を作ってしまった! どれほどバカバカしいデマが出回っていたかが一目で分かる仕掛け。

東日本大震災
http://ja.uncyclopedia.info/wiki/%E6%9D%B1%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%A4%A7%E9%9C%87%E7%81%BD

 さて、そんな震災関連デマに、また新しいものが加わったらしい。マイミクさんの日記で知ったのだが、こういうやつである。

蓮舫さんが国民から「ご子息の留学は放射能汚染のせいですよね?」と質問攻めに / デマ拡散の危険性アリ
http://rocketnews24.com/?p=96826

民主党・東京都総支部連合会副会長の蓮舫さん(本名: 村田蓮舫)がインターネット上で国民から質問攻めにあっている。蓮舫さんのご子息が、この時期に海外に留学したという情報がインターネット上に出回っており、「放射能汚染のせいですよね? きちんと答えて下さい」と疑われているのである。
この件がインターネット上で広まったのは5月17日のことで、インターネットコミュニケーションサービスTwitterで蓮舫さんに質問攻めをする人たちが続出。ご子息を安全な海外に逃がしたのではないかという声も出ているが、蓮舫さんは無言のままその質問に返答はしていない(5月18日午前4時現在)。以下は、国民から蓮舫さんへの質問をまとめたものである。
 
・この件に関する蓮舫さんへの質問
「お忙しいところすみません。最近、蓮舫さんのご子息が留学されたという情報が出回ってますが、これは本当ですか? もし本当なら意図は別にあるとしてもとってもまずいことに様な気が・・」
「お子さんが留学したって本当ですか?このタイミングはやはり、放射能汚染のせいですよね?きちんと答えて下さいね」
「お子さんの留学、いいと思います。逆に予定されていた事を自粛するのは理不尽です。むしろ、疎開を検討する被災地の人たちへのいいメッセージになります。批判に負けず、お子さんの夢をかなえてください」
「お子さんが留学という書き込みを見たのですが本当ですか?」(引用ここまで)
 
なかには「蓮舫さんがお子さんを留学という名目で海外に脱出させる、というツイートが出始めました。くだらないデマは大嫌いです。お子さん達のためにも事実かそうでないかを発言していただけませんか?」と語っている人もおり、事実を知りたがっている人が多くいることがわかる。
ほかにも、「蓮舫の子供が留学とかなんとか…そろそろ政治家や官僚、経済界の大物たちのご子息ご令嬢の動向をみんなでチェックしていった方がいいのかな…逃げ遅れないように…まったくいやな世の中になってしまった…」とコメントしている人もいた。
真相は不明だが、「蓮舫の息子さんは2010年末(原発事故前)に北京大学に留学しました」という情報がインターネット上にあることから、もし誤解であれば蓮舫さんの公式なコメントを待ちたいところである。
とにかく、Twitterで重大なことにつながるデマを流すのだけはやめておこう。書き込むにしても、未確認の情報は「未確認」であることを明記して書き込むべきであり、蓮舫さんの件についても真実がわかるまで確定的なことを書くのは絶対にやめよう。

 このロケットニュースの記事がどれほどマヌケかというと、記事中に引用されている蓮舫のツイッターのプロフィールに「14歳の男女の双子の母でもあります」とはっきり書いてあることなのだ。
 彼女の公式サイトで見ると、出産は1997年4月だったと分かる。つまり、昨年末の時点では13歳である。

http://www.renho.jp/profile/profile3.html

 どうやって13歳で北京大学に留学できるんだよ!?(笑)よほどの超天才児なのか?
 まあ、中学生でも海外留学は不可能ではないが、5月12日のツイートには、彼女が2人の子供のためにお弁当を作っていることも書かれていて、子供たちが日本にいることは明白なのだ。

http://twitter.com/#!/renho_sha/status/68436638346387456
http://twitter.com/#!/renho_sha/status/68439590893142016

 だいたい、質問者の全員が「お子さん」「ご子息」と単数形で書いているところを見ると、彼らはみんな、蓮舫に子供が2人いることさえ知らないようである。
 何で質問に答えないって? そりゃあ、こんなアホな質問にいちいち答える義理なんかないだろ。
 このニュースの記者、「蓮舫さんの件についても真実がわかるまで確定的なことを書くのは絶対にやめよう」と文を結んでいるが、その記者自身が、蓮舫のプロフィールも見ず、ちょっと検索するだけで分かる基本的な事実関係を調べずに記事を書いたのがモロバレなのである。
 まるっきり素人じゃん!
 しかしまあ、何でこういう話をホイホイ信じちゃうかねえ。

 こういうことを書くと必ず現われるのが、「じゃあ何を信じればいいの?」とか「だって政府や東電だって嘘ばっかり言ってるじゃん」とか言う奴。それは論点のすりかえというものだ。
 誰かが間違ったことをしているからといって、自分も間違ったことをしていいという理屈にはならない。
 確かに原発事故のことなどは素人にはなかなか検証できないものである。しかし、この件は違う。サーチエンジンというものさえ知っていれば、誰でも簡単に検証できて、「怪しい話だ」と気づくはずだ。調べても裏が取れなければ、信じなければいいだけのことである。
「ちきゅう」陰謀説もそうだったが、ちょっとした確認も怠ってデマを信じこみ、誰かを中傷するのは、間違った行為、悪しき行為である。

 断っておくが、僕は蓮舫の味方ではない。例の「2位じゃダメなんでしょうか?」の件以来、彼女のことは好きではない。
 しかし、だからと言ってデマを流していいことにはならない。前にも書いたが、「奴らを貶めるためならウソをついてもいい」という考え方は、断じて正義ではない。悪である。
 デマに騙されるだけなら被害者だが、デマを流せば加害者、つまり悪になるのだということを自覚していただきたいものである。

【余談】
 アンサイクロペディアでは「ノストラダムス」の項も同じ手法が使われている。ノストラダムス本に書いてある嘘だけを集めて記事にしてあるのだ(「ミシェル・ド・ノートルダム」の項はちゃんと別にある)。これは凝っていて笑った。一読をおすすめする

ミッシェル・ド・ノストラダムス
http://ja.uncyclopedia.info/wiki/%E3%83%8E%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%80%E3%83%A0%E3%82%B9
  


Posted by 山本弘 at 17:37Comments(16)社会問題