2010年11月13日

「谷岡敏行氏殉職事件」の拡散過程【都市伝説】

 尖閣事件がらみで広まっている都市伝説(と言ってよかろう)について、とりあえず今までに分かったことをまとめておこう。
 なお、マイミクのgalleryさんの日記をおおいに参考にさせていただきました。感謝します。


●9月7日
 漁船衝突事件を報じる中国BBCニュースの中に、「事故沒有造成人員傷亡」という箇所があった。これが後で問題になる。


http://www.bbc.co.uk/zhongwen/trad/china/2010/09/100907_china_japan_diaoyu_crash.shtml

●10月11日
 2ちゃんねるにこんな内容の投稿があった。


http://2nnlove.blog114.fc2.com/blog-entry-2973.html
837 :名無しさん@十一周年:2010/10/11(月) 00:55:14 ID:mErDVXEz0
>いまはWikileaks と交渉中。
>映像はそっち経由で欧米メディアから出るらしいです。

>海保船舶が横付け。海保職員が乗り込む。
>その後、中国船舶が突如離船。
>取り残された海保職員が、中国船舶から突き落とされる。
>海に落ちた海保職員を潰すように、中国船舶が進路変更。
>海保職員が必死に泳いで逃げるのを、銛で突く仕草あり。
>海保船舶が、海保職員を救出するため、停船し救助に乗り出す。
>その後ろから迫る中国漁船。海保職員は押しつぶされそうになる。
>間一髪で海保職員は海保船舶に後部から担ぎ上げられる。その数秒後に漁船が海保船舶の後部から衝突。

 この文章は即座に多くのスレッドやブログにコピペされ、拡散する。
 この時点ではまだ「殉職者が出た」という話がどこにもないことに注意。


●10月中旬
 先の記事の中の「事故沒有造成人員傷亡」という文は「事故による死傷者はなかった」という意味なのだが、googleの翻訳では「事故は死傷者が発生していました」という誤訳になる。このことから「死傷者が出ていることを海保が隠蔽している」という説が複数の人間によって唱えられる。
http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20101108/1289231277
http://blogs.yahoo.co.jp/tarismanaspect/35048127.html
http://blog.livedoor.jp/mikachan_1980/archives/1277011.html
http://minkara.carview.co.jp/userid/240136/blog/20028073/

●10月24日
 石原慎太郎氏がフジテレビ系『新報道2001』で「政府の関係者から聞いた。日本の巡視船の乗組員が何かの弾みに落ちたのを、中国の漁船(の漁師が)モリで突いてるんだって。それは『仄聞ですが』と、数人の人から聞いた」と発言。
「仄聞」(ほのかに聞くこと。うわさに聞くこと)と言っているように、ソース不明の情報である。
 海上保安庁の広報担当者は26日、「そういう事実はない。巡視船の乗組員は海に転落していないし、誰もケガをしていない」とコメント。


http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20101027/plt1010271610003-n1.htm

●11月4日
 尖閣ビデオがYouTubeに流出。

●11月5日
 尖閣ビデオと『真夏の夜の淫夢』というAV(一部では有名な作品らしい)を組み合わせたMADがニコニコ動画に投稿される。


尖閣流出ビデオ 中国船員が海保職員谷岡氏を銛で突く問題のシーン抜粋
http://www.nicovideo.jp/watch/sm12649580

 説明文にはこうある。

>中国側の理不尽な攻撃によって臀部に重傷を負った海保職員の谷岡俊一氏は殉職されたそうです・・・中国人は二度とこの世界にいられないようにしてやりたいです。なお、谷岡氏殉職の情報元は彼の先輩の田所氏による勇気ある迫真のリークです。

「谷岡俊一」というのは『真夏の夜の淫夢』の中で、尻を銃で撃たれる男の通称。「二度とこの世界にいられないようにしてやる」「先輩の田所氏」というのもパロディだった。


http://anond.hatelabo.jp/20101108220759

 そういう元ネタを知らなくても、映像を最後まで見ればネタだと分かるのだが、なぜか本気にした人間が続出。

●11月7日
『たかじんのそこまで言って委員会』に出演した元自衛官の惠隆之介氏が「乗員が海に落ちたらしいという情報ですね。それをモリで突こうとしたという関連も、私は聞いております」と発言。ただし情報の出所については口をつぐむ。

 同日、2ちゃんねるにまたまた書きこみ。重傷だった海保職員が死亡して殉職者が2名になったという話。

http://plaza.rakuten.co.jp/ABABA/diary/201011080001/
>659 名前:名無しさん@十一周年[] 投稿日:2010/11/07(日) 00:48:26 ID:ixEU1SH90
>あのな、おととい、即死じゃなかった入院中の乗組員が亡くなってたんだよ。
>これで殉死者2人出たことになった。

>515 名前:名無しさん@十一周年[] 投稿日:2010/11/07(日) 17:06:21 ID:ixEU1SH90
>殉職した 佐〇氏、〇岡氏の両名の名誉のために言っておく。
>彼らは両名ともに入庁8年のベテランである。今案件の事案は国際的にも大変な悪影響を及ぼすことは十分承知していたはず。しかしながら内閣は隠蔽を指示。
>命をはって領海を警邏する海保にとってこれほどの屈辱はない。
>彼らは果敢にも相手船に乗り込み、憲法9条に縛られて抵抗できぬまま
>相手の鉄パイプにより海原に落とされた。そのあと、中国漁船のスクリューで一名は即死、もう一名は助け上がられるも11/4深夜、帰らぬ人となった。


●11月8日
 テレビ朝日『ワイド!スクランブル』に出演した佐々淳行氏が「検挙活動の際に、中国船に(海保職員が)3人乗ったところで、離れて、1人突き落としているという、複数の、確実と思われる情報があります。それが一生懸命泳いでいるのをモリで突いた。さらにはね、乗り切っちゃって沈めようとした」と発言。


 同日、またまた2ちゃんねるに書きこみ。

http://p2.chbox.jp/read.php?url=http://kamome.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1289186679/150
>150 :名無しさん@十一周年 :sage :2010/11/08(月) 14:44:24 ID:ua9pxoPw0
>尖閣ビデオ内部告発の義憤

>入庁8年のベテランで殉職した 佐藤氏、谷岡敏行氏
>彼らは果敢にも相手船に乗り込み、憲法9条に縛られて抵抗できぬまま、
>佐藤さんは機銃?(自動小銃か?)で撃たれて即死だったらしい。
>死体は素巻きにされて海に捨てられた。
>谷岡敏行さんも撃たれたが致命傷ではなく海に飛び込み逃げようとしたが
>中国船の船員(中国海軍工作員?)は銛で突き殺そうとした。
>それを逃れようと泳ぐ谷岡さんを殺すため、中国船は船体で轢き殺そうとして乗り上げ、
>スクリューに巻き込んで重傷を負わせた。
>谷岡さんを救出しようとして日本側の巡視船が近付き、引き上げようとしたところに、
>谷岡さんを挟みこんで殺そうとして中国船がぶつけてきた。
>谷岡さんはぶつけられずに援け出されたが、巡視船の船体は破損した。
>その後、巡視船は漁船を制圧して中国船の乗員たちを逮捕。
>谷岡敏行さんはヘリで石垣島の病院に搬送されたが、後日11/4深夜に八重山病院で亡くなった。

 殉職者の名前「谷岡俊一」が「谷岡敏行」に変わっている。同名の競馬の騎手が殉職したことにひっかけたらしい。おまけに先の話では「佐〇氏」はスクリューで即死だったはずが、こっちは機銃で殺されて簀巻きにされて海に投げこまれたことになっている。

 さらにその日の夜には、「佐藤氏」が「佐川穂波」という女性ということにされ、三人目の「坂田政巳」という負傷者もいることにされる。これらもAVにひっかけたネタ。


http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1450051259
>谷岡敏行(殉職) 佐川穂波(殉職) 坂田政巳(負傷)
>と出ています。
>ちなみに佐川さんは
>女性とのことです。


 こうして色分けすると分かるが、青系統の話と赤系統の話は別物である。
「海に落ちた」「モリで突こうとした」という話に関しては、まだすべてのビデオが公開されたわけではないので、事実である可能性もないではない。ただ「間一髪で海保職員は海保船舶に後部から担ぎ上げられる。その数秒後に漁船が海保船舶の後部から衝突」というのは、明らかに流出ビデオの内容と食い違っており、かなり疑わしい。
 一方の赤系統の「殉職」という話に関しては、誤訳とMADが原因となったデマであることは間違いない。
 そもそも、常識で考えて、人が死んでいるのに隠蔽できるわけがない。海保内だけに緘口令を敷いたって無駄である。当然、搬送された病院の医師や看護師も事情を知っている。だいたい遺族にはどう説明するのか。「あなたのご子息は中国人に殺されましたが、国益に反するので黙っていてください」と言われて、黙っている人間がいると思うのか。
「憲法9条に縛られて抵抗できぬまま」というのもムチャクチャである。機銃で攻撃され、仲間が殺されているのに、反撃しないわけがなかろう。2001年に北朝鮮の不審船と海上保安庁の巡視船が交戦したことがあるのを忘れたのか。

九州南西海域工作船事件
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B9%9D%E5%B7%9E%E5%8D%97%E8%A5%BF%E6%B5%B7%E5%9F%9F%E5%B7%A5%E4%BD%9C%E8%88%B9%E4%BA%8B%E4%BB%B6

 それに青系統の話では、中国漁船員は海保職員を殺そうとしたというだけで、殺してはいないのだから、話が矛盾している。

 最初からビデオを公開していれば、こんなデマが流れることもなかっただろう。だからと言って、デマを信じて拡散した者の迂闊さが免責されるわけではない。ちょっと調べるだけでデマだということは分かったはずだ。
 デマはネズミ講と同じだ。騙された人間がみんな被害者とは言い切れない。ただ信じただけなら被害者だが、それを拡散したら、被害者が新たな加害者になる。

「テレビで偉い人が言っていたから」という理由で信じてはいけない。その人もデマに騙されているだけという可能性がある。その人が明確なソースを口にしない場合は疑ってかかるべきだ。アポロ陰謀説だって有名人が何人も信じてしまったことを忘れてはいけない。

「2ちゃんねるに書いてあったから」という理由で信じるなんて言語道断。ネット上には、デマを流して喜ぶ人間がいくらでもいるのだから。

「いかにもありそうな話だから」という理由で信じるのもダメ。「ありそうな」と「ある」はぜんぜん違う。

「火のないところに煙は立たない」という格言はウソ! 社会学者ジャン=ノエル・カプフェレの研究によれば、噂の大半は火のないところに立っているという。実際、ジャン・ハロルド・ブルンヴァンの都市伝説本を読めば、この手の話のほとんどは根拠がないことが分かる。

「疑問に思ったらまず検索」
「怪しい話は裏が取れるまでは信じない」

 デマの加害者にならないようにするには、この2点を心がけるべきだろう。

【参考】
青き清浄なる海のために
http://blog.zaq.ne.jp/blueocean/article/719/
http://blog.zaq.ne.jp/blueocean/article/668/

  


Posted by 山本弘 at 17:57Comments(15)都市伝説

2010年11月13日

【尖閣ビデオ流出】笑えるニュース集

 この事件についてはもうほとんどの方がご存知だろうと思うので、細かい解説は省き、個人的に笑っちゃったニュースをいくつか集めてみた。(中には笑えないのもあるけど)

【尖閣ビデオ】2度目の視聴も6分50秒バージョン 進次郞氏「笑えない笑い話」
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/101108/plc1011082134023-n1.htm
> 衆院予算委員会は8日、沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件の衝突場面を収録したビデオ映像を、野党の委員ら約20人を対象に公開した。ただ、インターネット上に40分以上の映像が流出した後にもかかわらず、今回の映像は1日に衆参の予算委理事らが視聴したのと同じ6分50秒に編集されたもの。野党議員は「笑えない笑い話。クリーンでオープンな民主党と言ったのとは全く逆の隠蔽(いんぺい)体質だ」(自民・小泉進次郎氏)とあきれ顔だった。

> 自民党は同日午前の同委理事会で、報道陣も同席した上で、委員会で公開するよう求めたが、民主党は拒否した。自民党は未編集の映像の全面公開も求めているが、民主党は「全面公開するかどうかは政府の判断になる」(中川正春同委筆頭理事)と難色を示した。

 国民はYouTubeで44分のバージョンを自由に視聴できるというのに、わざわざ6分50秒に編集したバージョンをたった20人に密室で見せることに何の意味があるんだ? 茶番としか言いようがない。

【尖閣ビデオ流出】民主平田氏、「ビデオ限定公開は将来評価される」
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/101109/stt1011091802008-n1.htm

> 民主党の平田健二参院幹事長は9日の記者会見で、尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件のビデオ映像を一部国会議員に限定して公開し、インターネットに流出した後も映像を国民に公開しない方針を政府・与党がとっていることについて、「日本の国益のために限定的にビデオを見るのは当然だ。将来必ず菅政権が抑制的に対処したことが評価される。それが日本の国益にかなっている自信を持っている」と擁護した。

 だから流出済みの映像を隠すことの「国益」って何なんですか。ぜひ論理的に説明していただきたい。

【尖閣ビデオ流出】「出た場所は日本じゃない」 石原慎太郎都知事が持論展開
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/101108/plc1011082109020-n1.htm
> 沖縄・尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件の映像流出問題について、石原慎太郎都知事は8日、「(データが)出た場所を良く考えてみなさい。あれは日本じゃないよ」などと海外からの意図的な流出もあり得るとの持論を展開した。同日、都庁で記者団の質問に応えた。

> 石原知事は、出所の固有名詞は明かさないとした上で、「アメちゃんはアメちゃんで世界戦略を考えている。ああいうものをああいう形で出せば中国がどういうことになるかちゃんと分かっている」などと米国からの流出も示唆。その上で、「本当に国はバカなことをやっている」と政府の対応を批判した。

 出ましたよ、尖閣ビデオ流出陰謀論! 誰か言い出すだろうなと思ってたら、石原慎太郎が一番手だった。
「出た場所を良く考えてみなさい。あれは日本じゃないよ」ってどういうことなのか。8日の時点で、すでに海保からの流出だというのはほぼ決定的だと言われていたのだが。
 まさかとは思うが「YouTubeだからアメリカ」とか思ってる?
 

【尖閣ビデオ流出】中国逆ギレ「映像は日本の俳優が演じているに違いない」
http://sankei.jp.msn.com/world/china/101106/chn1011062101007-n1.htm
>「小舟がどうして故意に大きい船に衝突する必要があるのだ!?」
>「(映像は)日本の俳優が演じているに違いない!!」

 中国にも陰謀論者がうじゃうじゃ。 いやあ、事実をありのまま受け取れない人間って、どの国にもいるもんだな。

【尖閣ビデオ】視聴議員コメント集
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/101101/plc1011012157036-n1.htm
>福島瑞穂社民党党首「車が道路でちょっとコツンとぶつかるような、あてて逃げるという映像だ。(挑発行為は)離れてるし、分からなかった。反日デモがエスカレートしている状況だ。国民に公開することは慎重であるべきだ」

 あの映像をどう見たら「ちょっとコツンとぶつかるような」という印象になるんですか(笑)。ゴーンって音してましたけど。

>小林興起(こうき)衆院議員(民主党)「向こうが逃げまどって、当たっちゃったということだ。衝撃があるような当たり方じゃない。ぶつかる瞬間はカメラの位置からして見えない」

「向こうが逃げまどって」って、明らかにこっちに舵切ってきてるじゃん! 同じビデオを観た共産党の議員でさえ「明らかにぶつかってきている」って言ってるのに。
 この2人はよほど目が節穴なのか、それとも「国民はこのビデオを観ることはあるまい」と思って故意にウソを流したのか。どっちにしても政治家として失格だろう。


【尖閣衝突事件】仙谷氏「日本が中国に迷惑」対中観で不一致
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/101004/plc1010042317014-n1.htm
> 仙谷由人官房長官は4日の記者会見で、民主党の枝野幸男幹事長代理が沖縄・尖閣諸島沖で起きた中国漁船衝突事件をめぐり、中国を「悪(あ)しき隣人だ」などと批判したことに反論。戦前の日本が「侵略によって中国に迷惑をかけた」ことを理由に中国を擁護した。「対中観」で不一致が露呈した形だ。

> 仙谷氏はこの中で「古くから中国から伝来した文化が基本となり日本の文化・文明を形成している」と歴史を説きおこし、「桃太郎などの寓話(ぐうわ)も中国から取ってきたようなものが多い」と中国の文化的優位性を強調した。

 いや、『桃太郎』なんてこの問題に何の関係もねーし(笑)。
 とりあえず仙谷氏が中国が大大大好きだってことはよ~く分かりましたが、「文化的優位性」なんてものを持ち出したり、過去の問題と現在の問題をごっちゃにしたらいかんだろう。


なぜか中国に敬語連発 仙谷長官
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100929/plc1009291808012-n1.htm
> 仙谷氏は28日には、東シナ海・白(しら)樺(かば)ガス田付近を航行中の中国の海洋調査船について「周辺にいらっしゃることは確認している」と述べていた。

「いらっしゃる」って(笑)。そこまで低姿勢でなくてもいいだろうに。

【尖閣ビデオ流出】海保「激励」電話に仙谷氏が不快感 「犯罪を称揚するのか」
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/101108/plc1011082022017-n1.htm
> 仙谷由人官房長官は8日の記者会見で、沖縄・尖閣諸島沖での漁船衝突事件を撮影したとみられる映像がインターネット上に流出して以降、海上保安庁に「激励」の電話が相次いでいることについて、「公開して『よくやった』というのか。犯罪行為を称揚することで、そういう気分は日本国中に少々あるかも分からないが同意はしない」と不快感を示した。

「少々」ではない。「よくやった」と思っているのは国民の大多数だ。僕の妻も「よくやった!」「流出させた人、英雄やん!」と大喜びしていたし、僕も「快挙」と受け取った。ネットでの意見を見ても、支持する声が大半である。

【尖閣ビデオ流出】ネット上アンケートは8割超が流出支持
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/101106/crm1011062057021-n1.htm

 仙谷氏が本気で「少々あるかも分からない」などと言っているのだとしたら大変なことだ。官房長官ともあろうものが、世論をまったく把握していない、新聞もネットも見ていないことになる。
 本気でなかったとしても、こんなたわけた発言で世論をごまかせると思ってるんだとしたら、国民をバカにしているとしか思えない。

 無論、「情報を漏洩したのは悪いことなのだから罰しなくてはならない」という意見があるのも、理解できる。 僕もすべての情報漏洩を肯定する気はまったくない。
 たとえば警察の内部資料流出事件なんて、尖閣ビデオ流出以上の大問題である。特に捜査員の名前や住所、テロ捜査の協力者の名前や住所が流出したというのは、背筋が寒くなる。名前が出た人物に危害が及ぶ可能性があるし、こんなことが続いたら誰も捜査に協力しなくなってしまう。それこそ日本の治安に関わる一大事。徹底的に究明して再発を防止しなくてはなるまい。
 もちろん、警察関係でなくても、個人情報の流出は一大事だ。それは一般庶民に害となる可能性があるからだ。
 しかし、尖閣ビデオ流出はそれとは本質が異なる。一般庶民は誰も害を受けておらず、むしろ大歓迎している。

 それに「罪を犯した者は罰するべき」という観点に立った場合、そもそも当て逃げした中国人船長を罰するべきではなかったのか? という矛盾が生じる。
 一方を「罰するべき」と強硬に主張して、もう一方は見逃すというのは、明らかにダブルスタンダードだ。筋が通らない。アンフェアである。

 そもそも日本にとっての大きなダメージは、尖閣事件のビデオを隠したことではなかろうか。そしてビデオの流出でダメージを受けたのは、日本という国家ではなく、国民でもなく、ビデオを隠蔽すること決めた連中だけなのではないか?
 犯罪をもみ消すという卑劣なことをやって国家の顔に泥を塗ったのは、その連中なのではないか? 彼らこそ日本の国益を損ねているのではないのか?
  
タグ :政治


Posted by 山本弘 at 15:35Comments(10)社会問題

2010年11月03日

オーケストラ姉さん(仮名)のダイダロス・アタック

 先日は湿っぽい話題だったので、今回は陽気な話題を。
 10月30日土曜日、友人ら三人と『映画ハートキャッチプリキュア! 花の都でファッションショー…ですか?』を見てきた。
 ちなみに僕が劇場版『プリキュア』を見るのは、無印の時以来5年ぶり。今年はテレビ版が面白くてハマっちゃったんである。

 さほど期待してなかったけど、これがけっこう面白かった。毎年プリキュア映画を観に行っている友人の話でも、今年は特に出来がいいらしい。
 アクション・シーンも迫力あって楽しめたけど(世界遺産が盛大にぶっ壊されます。いいのか?)、ゲストキャラであるオリヴィエ少年とサラマンダー伯爵の心理がていねいに描かれているのに感心。オリヴィエがつぼみたちと一人ずつ接し、彼女たちの境遇を聞くうちに、頑なな心が開いてゆくという構成は、テレビ版の設定をフルに活かしていて、好感が持てる。(まあ、狙われているオリヴィエを街に連れ出すのは不用心だろとは思うが……)
 今回の敵であるサラマンダーは、藤原啓治の名演が冴える。「この世界を滅ぼしてやる」とか言ってるけど、内心ではその空しさに気づいていることが、声の調子だけで分かるのだ。敗北した後も清々しくて良い。
 一方、それ以外の説明は徹底的に省略してある。なぜつぼみたちがパリでファッションショーをやるのかという説明すらないのである。オリヴィエが日本語が喋れるのはかつて日本に来ていたからだろうけど、それも回想の絵で見せるだけでいちいち説明しない。ラストバトルにしても、あの場所にいきなり4人が出現したのは、ハートキャッチミラージュでワープしたんだろうけど、そのへんの説明もばっさり省略。
 でも、それでストーリー上は特に支障がないのだ。むしろそうした細かい部分をすっ飛ばしたおかげで、最後の方は勢いで一気に突っ走っている。前に見た別のアニメで、必要な説明まで省略されていたうえに、悪役の動機が分からなくて困っちゃったんだけど、この映画の場合、どこを省略するかという見きわめが上手くいった例だろう。

 鑑賞後、3人でレストランに入って感想を話し合う。

「コッペ様が美味しいとこを持っていきましたね」
「あそこで出てくるとは予想外やったな」
「僕もてっきり、サンシャインがサンフラワーイージスで防ぐもんやと思った」
「ピンチを救った後で、『後はまかせた』って感じで、こてっと倒れるのがまた……」
「コッペ様は強いけど稼働時間が短い」
「ほとんどセブンガー(笑)」
「ああ、そうやね。ミクラスやウィンダムじゃなくてセブンガー」
「しかもエンディングでまた……(笑)」
「何でやねん、コッペ様!?」
「あれ、えりかのお母さんとか、どうやって説得したんやろ?」

「キュアアンジュの背後に歴代のプリキュアがずらっと並ぶところで、何か振袖っぽいデザインのがいたんですけど……」
「やっぱり江戸時代にもいたんちゃうの、プリキュア(笑)」
「何百年も前から砂漠の使徒と戦ってきたという設定やから、当然、江戸時代や明治時代にもいたに違いないよ」
「あの設定書、見たいよな~」

 しかし、いちばんすごかったのは、クライマックスで炸裂した新必殺技、ハートキャッチオーケストラである。
 テレビに登場したのは10月31日放映分からなんだけど、僕らが劇場に行ったのはその前日。だもんで、予備知識なしに、いきなり大画面でアレを見せられたのである。てっきりいつものようにビームを放つか体当たりだろうと予想していたら……いやはや、こんな衝撃的な必殺技は、石破ラブラブ天驚拳以来である(笑)。

「あのお姉さん……正式な名前が分からんからオーケストラ姉さん(仮名)と呼ぶけど、でかかったよなあ」
「あのドラゴンが30mぐらいあったでしょ? それを手で包みこんでたから……」
「ダンガードAぐらい?」
「もっと大きい。マクロスか……」
「いや、さすがに1200mはないやろ」
「でも、マクロス・クォーターぐらいはありそうですよ」

(その後、テレビでも見たが、デザートデビルとの対比からすると、ゆうに身長1200mはありそうである)

「しかし、来年の春の大集合映画はどうするんですかね」
「というと?」
「いつもは歴代プリキュアが全員で必殺技を出して、力を合わせてボスキャラを倒すというのがパターンなんですよ。でも今回、オーケストラ姉さん(仮名)がすごすぎるから……」
「ああ、そうか。他のプリキュアとのバランスがなあ……」
「だったらダイダロス・アタックやで!」
「はあ?」
「最後にプリキュアたちの前に、全長何kmもある巨大な敵が現われるんや。そこでハートキャッチの4人以外の全員を、オーケストラ姉さん(仮名)が右手で握るねん。でもって敵にパンチをぶちこむ。めりこんだ拳を相手の体内で開くと、プリキュアたちがいっせいに攻撃して、内部から破壊する!」
「うわあ、それ見てえ!」
「それをやったら神ですよ」

 というわけで、来年の劇場版ではぜひダイダロス・アタックを希望します。
  
タグ :アニメ


Posted by 山本弘 at 18:54Comments(7)アニメ

2010年11月01日

追悼・首藤剛志氏

 初めて「首藤剛志」という名前を意識したのは、『宇宙戦士バルディオス』の「地球氷河期作戦」というエピソードだった。
「webアニメスタイル」の連載で、この回のシナリオがアップされているので、未見の方は参考にしていただきたい。

http://www.style.fm/as/05_column/shudo30_2.shtml

 科学的には問題おおありのエピソードなんだけど(そもそも地球より小さいガニメデの影で地球全土が覆われることはありえない)、地球を攻撃するために木星の衛星を持ってくる発想に、まず度肝を抜かれた。さらに、下手するとウヨク臭くなる「巨大な敵を倒すために特攻」という話(『さらば宇宙戦艦ヤマト』はこの2年前)が、脚本しだいでここまで化けるということに、僕は驚いた。「こんな話を書ける人がいるのか」と。
 初見の時、「今夜はあなたと一緒にいたい」と言ったデビットが、なぜドアの鍵が開いていることだけを確認して去っていくのか、一瞬、分からなかった。だが、彼の立場になって考えてみれば、それが正しい選択なのだと納得できた(詳しくは書かない。あなたも考えてみてほしい)。彼にとっては、愛する女性が鍵を開けてくれているという事実だけで十分だったのだ。
 いい話である。

 その後、首藤氏が新番組『戦国魔神ゴーショーグン』のメインライターを務めると知り、僕の期待は高まった。
 その期待は裏切られなかった。『ゴーショーグン』はそれまでのロボットアニメの概念をぶち破る、ものすごくしゃれていて面白い番組だった。特に「さらば青春の日々」と最終話「果てしなき旅立ち」には感動した。

http://www.style.fm/as/05_column/shudo41_02.shtml
http://www.style.fm/as/05_column/shudo43_02.shtml

 余談だが、この最終話、僕の住んでいた京都では放映が三ヶ月ぐらい遅れて、悶々となったもんである。待っただけの甲斐はあったけど。

 その後番組『魔法のプリンセス ミンキーモモ』については、多くの人が語っているので、もはや僕が何も言わなくてもよかろう。
 他にも、『ビデオ戦士レザリオン』の「休日戦争」というエピソードは抱腹絶倒の面白さだったし、『さすがの猿飛』の最終話の「愛する人のために死ぬんじゃなく、愛する人のために生きるべきだよ!」という台詞には(「地球氷河期作戦」を思い出して)ひっくり返ったもんである。
 80年代のアニメオタクにとって、首藤剛志という脚本家はとてつもなく偉大な人だった。僕らより下の世代にとっては、『機動戦艦ナデシコ』のホシノ・ルリ三部作の人なのだろうけど。

 そして『アイドル天使ようこそようこ』である。今から20年前、僕はこの番組にハマった。当時、ビデオを全巻買って、同人誌を2冊出した。
 アニメのモデルになった場所を探索するため、仕事で上京するたびに渋谷を何時間も歩き回った。今で言う「聖地巡礼」というやつである。もっとも、今のようにインターネットなどない時代だから、画面を撮影した写真を手に現地を歩き回って、根性で探すしかなかった。〈ムルギー〉でカレーを食べたし、名曲喫茶〈ライオン〉を発見できたのは嬉しかった。おかげで他のどの同人誌よりも詳しいマップが作れたと自負している。
 直後にスタートした『妖魔夜行』シリーズで、舞台を渋谷にしたのも、『ようこ』の影響である。ちなみに妖怪たちの拠点になっている道玄坂のバー〈うさぎの穴〉は、『ようこ』に出てきたバー〈アリス〉がヒント。他にも、「井神かなた」はひっくり返すと「たなか」になり、さらにタヌキだから「た」を抜いてアナグラムすると「かないみか」になるとか、「山杜サキ」→「守崎摩耶」、「山下秀樹」→「八環秀志」、「吉秋久美子」→「九鬼美亜子」……などという名前の由来も、今ならバラしても支障ないだろう。また、『サーラの冒険』の番外編「時の果てまでこの歌を」でモチーフに使った「Singing Queen」という歌は、『ようこ』の挿入歌である。
 特に印象的だった首藤脚本は、第8話「すてきなハンズロフト」。冒頭のようことサキの会話は、あまりの素晴らしさに、何十回聞き直したか分からない。「首藤節」とでも言うべきリズミカルな台詞の妙!
 その首藤節は、のちの『ポケットモンスター』の初期エピソードでも味わえる。特に第1話のサトシやオーキド博士の台詞は、『ミンキーモモ』や『ようこそようこ』にハマった人間なら、そのリズムや言葉遊びに既視感を覚えるはず。

 首藤剛志という人がいなければ、『妖魔夜行』はまったく違う形になっていたことは間違いない。その意味でも、僕にとっては忘れがたい人である。
 その才能とアニメ界に残した業績の大きさに、あらためて敬意を表したい。
  
タグ :アニメ


Posted by 山本弘 at 19:07Comments(9)アニメ