2010年10月07日

「可能性を生み出しただけでアウト」問題つづき

 前回の記事に関するコメントや、ネット上での反響を(すべてではないが)ざっと見たのだが、やはり僕の言っていることを理解していない人が多いと感じた。
 確認する意味で僕の前回の文章の一部を引用する。


>1.律子、亜美、あずさ、伊織の4人はNPC扱いでプロデュースできない。
>2.ライバルとしてイケメン男性ユニットが登場。

> いや、こりゃダメだ。そんなに熱心な『アイマス』ファンではない僕でも、「そらあかんわ」と思うよ。特に1。普通、新作は前作より機能がアップしてるもんなのに、前作よりキャラクターを削ってどうする。律子や伊織のファンは泣くだろ。
> こういうファンの想いを踏みにじる決定を下せる人間がいるというのは、信じがたいことである。
> 2もダメだ。そんな新要素、ファンの誰も望んでないだろう。女性層を開拓したかったのかもしれないが、それなら別のゲームを作ればいいではないか。
> さらに1と2の合わせ技で、「何で律子や亜美やあずさや伊織をリストラして、代わりにこんな連中を入れるんだ!?」と、ファンの怒りが爆発するのは必至。そんな当然のことも予想できなかった制作者たちは、いくら非難を浴びてもしかたなかろう。

 僕ははっきりこう書いている。
 にもかかわらず「キャラクターが削られたことの方が問題だろ」とか「男性キャラを出したのは間違いだ」とか言われても、「はい、そうですね。僕もそう書きましたが?」としか言いようがない。

 僕が言っているのは「事実と妄想の区別をつけろ」ということである。
 この問題に関して、事実と妄想の線引きは簡単である。

A.『アイマス2』にはライバルとして男性ユニットが登場する。
――これは事実。

B.アイドルが男性ユニットの誰かとくっついてエッチなことをする。
――これは妄想。

 ほら、区別は簡単でしょ?
 そもそも「可能性を生み出した」という表現が変である。公式にはBが現実になる「可能性」なんてものはゼロである。
 もちろん同人誌などの二次創作でBが描かれることはあるだろうが、それはあくまでファンの妄想にすぎない。
 僕が言いたいのはこういうこと。

 事実を元にして批判するのはいいが、事実でないことを元にして批判してはいけない。

 男性ユニットが登場するのが嫌なら、「そんなものは望んでいない」と言えばいいだけのことである。僕もそれについてはまったく同感だから「(ゲームの制作者が)批判されて当然だ」と書いた。
 しかし、「アイドルが男とくっつく可能性がある」などという、事実に反したことを元に批判するのは間違っている。

 簡単なことでしょ?
 どこか間違ってますか?

 多くの人の反応を読んで痛感したのは、この問題について、創作を生業とする者とそうでない者の温度差である。
 たとえば僕が書いた小説を元に、誰かがエロ同人誌を作り、本編中ではありえないカップリングによるSEXシーンを描いたとする(これは仮定ではなく、実際にあった)。
 その内容に腹を立てた人が、「お前がこんな可能性を生み出したのが悪い!」と僕に噛みついてきたら、それはとてつもなく不条理だ。そんな抗議は同人誌を作った奴に言え、と言いたい。
 今回すでに、男性ユニットがアイドルとHしているコラージュが出回っている。それは確かにひどいと思う。しかし、その怒りをバンナムにぶつけるのは間違っている。怒りはそんなコラージュを作った奴に向けるのが筋ではないのか?

 やはりみんな「可能性を生み出しただけでアウト」という言葉が自分に向けられた場合の恐ろしさを想像できないのだろう。
 そんな言葉が自分に向けられると夢にも思っていないから、平気で使えるのだろう。
 だから前回、表現規制問題を例に挙げ、それが敵方からあなたに向けられたらどうしますか、と説いたのだが……そういう意図も理解してもらえなかったようだ。

 もうひとつ、「わざわざ公式で男性キャラを出すまでもなく、すでに『アイマス』のエロ同人誌なんて山ほどあるんじゃないの?」と書いたことに対して、「あれは女同士だからいいんだ」みたいな反論があった。
 でも、女同士のSEXやマスターベーションを描くことだって、キャラクターを穢していることには変わりないでしょ?
 すでに自分たちがキャラクターを穢しまくっているのに(あるいはそうした同人誌が氾濫している状況を許容しているのに)、男とのSEXを妄想しただけで「許さん!」となっちゃうのは、ぜんぜん理屈に合ってないと思うんだけど。

 あと、これも不思議なんだけど……

 誰も武田さんについて触れようとしないのね?

 ちなみに僕はプレイしながら「あー、武田さんと涼がムニャムニャするエロ同人誌出そうだなー」とにやにやしてたもんである。
 たとえそんな同人誌なんかなくても、「可能性」ならあるわけだし。

 どうです、『アイマス』ファンのみなさん。武田蒼一というイケメン男性が登場するというだけで、『アイドルマスターDS』はアウトですか?
 それとも男同士だからセーフ?
(「武田さんはそんなことしない!」というのはなしね。あくまで「可能性」だから)

 平野綾問題についても補足しておく。
 確かに声優も一種のアイドルだから、アイドルとしてのイメージを守ることは大切だろう。
 でも、idol(偶像)というのはまさに偶像であって、事実ではないんだということを認識していなくてはいけない。

・サンタクロースはいない。
・『川口浩探検隊』はヤラセ。
・Mr.マリックの超魔術はトリック。
・プロレスはシナリオのあるショー。

 こうしたことを知ったうえで楽しむ分にはいいだろう。無邪気な子供がサンタクロースを信じているのも、べつにかまわない。
 しかし、いい年した大人が川口浩探検隊を実話だと信じてたり、プロレスにシナリオがあると知らされて怒り狂ったりするのは、あまりにも痛すぎるのではなかろうか。
 アイドルだってそうだ。男とくっつかず、いつまでたっても処女のアイドルなんて、それこそ『アイドルマスター』の中にしか存在しない。それを認識すべきではないのか。
 現実世界において、「アイドルはいつか色褪せる」というのは、「人間はいつか死ぬ」というのと同じで、避けられない定めなのだと思う。
 がっかりするのはしかたない。腹も立つだろう。
 でも「殺す」と言うのはやりすぎ。それは犯罪である。
 ファンならばむしろ、平野綾の幸せを祈るべきなのではないかな?

 最後に、僕が処女厨を批判したことに対する批判について、お答えしておく。
 非処女を「中古」と罵倒することは、(ナギのように非実在のキャラクターだけではなく)世に実在する多くの女性を傷つけることである。それは立派なヘイトスピーチである。
 日本では未だにヘイトスピーチは法律違反ではない。言論の自由の範囲内とみなされている。だから彼らの言論を取り締まれない。
 しかし、その「言論の自由」の中には当然、「差別主義者のことを『大嫌いだ』と言う自由」も含まれるのである。僕はその自由を行使しているだけだ。
  


Posted by 山本弘 at 16:59Comments(60)社会問題