2010年07月13日

人類が消えるとキムチの蓋が音を立てる?

 最近、僕が毎週見ている番組のひとつが、テレ東系の『空から日本を見てみよう』である。
 タイトル通り、日本各地を空中撮影で紹介する番組。変わった形の建物やモニュメント、変わったことをやっている人を見つけては、地上での取材で、それがどういうものなのかを紹介する。
 先日の放送では茨城県を空から紹介。ばかでかい牛久大仏や、ダイダラボッチ像、鵜飼いに使うウミウを捕獲する意外な方法、鉄の圧延工程などを紹介していて、なかなか面白かった。知的好奇心を刺激する、かと言ってシリアスすぎない、気軽に楽しめる娯楽番組なんである。

 チーフプロデューサーへのインタビューが興味深い。
http://www.tvco.tv/interview/?action=detail&id=160

>ただ、ちょっとうれしいリアクションがあって。「日光」の回の“分計”(毎分ごとの視聴率)で下がってた部分の全てが、日光を紹介するときには必ず取上げるところだった。つまり東照宮とか、いわゆる観光名所ですよ。「他番組でもよくやってるからいいよ、君達はヘンなもの探して来いよ」って視聴者から言われてる気がして。これはある意味視聴者からの応援だと思ってます。それで今は「ここは押さえておこう」とか「そろそろグルメスポット入れとくか」みたいな、よくある小賢しいテレビマン的なものの考え方にとらわれずに番組作りができるようになっていますね。

 ああ、それは分かる。日光で東照宮、要らんわ。

 しかし、けっこう手間がかかってるんだな。空撮も1テイクではないだろうとは思っていたが、平均5テイクも撮っていたとは驚いた。その手間を感じさせないところが、またいいんだけど。
 さらに、この番組が楽しめる大きな理由がある。

 スタジオでのタレントのトークがないのだ。

 番組は、くもじい(伊武雅刀)とくもみ(柳原可奈子)というキャラクターのかけ合い、それにナレーターによる簡潔な解説で進む。くもじいもくもみも、番組の最初から最後まで、 声だけで淡々と紹介を続ける。
 のんびりとした雰囲気なのだが、次から次に名スポット珍スポットが紹介されるもんで、見ていて飽きる暇がない。
 裏番組の『奇跡体験!アンビリバボー』との最大の違いは、山場になるたびにスタジオでのタレントのトークをはさんで、番組を寸断したりしないこと。

『アンビリバボー』だけじゃない。『ザ・ベストハウス123』『世界まる見え!テレビ特捜部』『ザ!世界仰天ニュース』……ああいうの見てて、イライラすることありません?
 何で合間にタレントのトークを入れなくちゃいかんの?
 いや、タレントがメインの番組なら別にかまわないんだけど、明らかにVTRがメインでタレントはおまけ。なのに、そのVTRを途中で何度もぶった切って、ありきたりの感想を述べ合ったり、「○○さんは何か××したことありますか?」などと、番組内容と無関係なタレントの体験談を語らせたり、あるいはクイズやゲームで時間を潰し、せっかく盛り上がったテンションを落としてくれるんである。
 まあ、『アンビリバボー』や『世界仰天ニュース』の場合、スタッフの用意したVTRだけでは尺が持たないんで、トークで水増ししてるかな……という気がするんだが。
 でも、『世界まる見え』に、トークとかゲームとかは必要なのか?
 正直言って、ビートたけしや所ジョージ目当てで『世界まる見え』を見ている人って、あんまりいないんじゃなかろうか? メインはあくまで海外の面白い番組の紹介なんだから、トークを削ってその番組を1分でも2分でも長く見せてくれよ、と思う。
 最近は番組改編期に、世界の衝撃映像や珍事件を集めた特番をよくやる。それらもたいてい、タレントが出てきて、適当なコメントを述べ合い、時には寒いギャグを飛ばしたりする。その部分がものすごく退屈だ。
 僕はそういう番組を見る場合、ビデオに録画して、タレントの出てくる部分は早送りですっ飛ばす。ストレスが軽減できて、時間の短縮にもなる。

 最近、腹が立ったのは、日本テレビ系で6月28日に放映された『人類ZEROの未来!』という番組。
 ヒストリーチャンネルが制作した『LIFE AFTER PEOPLE』と、イギリスで制作された『THE FUTURE IS WILD』という2本の科学ドキュメンタリーを編集した番組。前者は人類が消滅したら文明はどのように崩壊してゆくかをシミュレートしたもの。後者は未来の地球の生物がどのように進化するかを想像したもの。どちらも前にケーブルテレビで見たが、なかなか面白い番組である。

 そのままの形で放映されていれば。

 やっぱりね、寸断するんだよ、タレントのしょーもないトークやクイズで。世界の有名なランドマークを五つぐらい見せて、「この中で最も長く残るのはどれでしょう」とかいうクイズをやるんだよ。
 いや、クイズなんかいらんから! 先を見せろよ先を!
 そもそも何でタレントを呼ぶの? 「上田晋也とテリー伊藤が出てるから見なくちゃ」なんて思う視聴者いないだろ!(笑)

 さらに最低だったのは、東京から人間が消えたらどうなるかを、日本でスタッフが撮り足したVTRである。
『LIFE AFTER PEOPLE』は、多くの専門家の助言を仰いだり、都市が自然に浸食されて崩壊してゆく過程をCGでシミュレートしたり、手間と金をかけて作っている。ところが、日本のスタッフが作るとどうなるか。
 まず予算をかけない。CGなんか使わない。
 舞台は一軒の焼き肉屋である。たぶんスタッフの行きつけの店なんじゃないかしらん。(笑)
 人間が消えた店内で、肉が網の上でじゅうじゅうと焼けている。「人間がいなくなるとこの店内で何が起きるだろうか」というナレーション。
 なんと、厨房にあるキムチの容器の蓋が持ち上がっては元に戻り、パックンパックンと音を立てはじめるのである。
 どうして? 人間がいなくなると、キムチが発酵して二酸化炭素が発生し、容器内の圧力が上がって、蓋が持ち上がるというのだ。

 あのさ(笑)。

 それって常温で何日とか何週間とか放置しておいたら、圧力が上がってそうなるってことだよね? しかもいったん蓋が持ち上がったら、二酸化炭素が抜けてしまい、また圧力が上がるまで何日もかかるはずだよね?
 でも、画面上では、網の上の肉がまだ焦げてもいない。つまり人間が消えて数分しか経っていないはずなのである。なのに、キムチの蓋が動き出しているのだ。パックンパックンと。
 つまりこの番組のスタッフは、人間がいなくなったとたん、キムチはものすごい勢いで発酵しはじめると思っているのだ!
 ここまで科学知識も論理的思考力も欠如したスタッフが番組を作ってるかと思うと、頭がくらくらしてくる。だいたい、キムチ以外に注目するところあるだろうが。
 さらに、人の消えたコンビニにゴキブリが現われるシーンもすごかった。
 スタッフは本物のゴキブリを使わなかった。CGも使わなかった。なんと、棒の先にゴキブリのおもちゃをつけたものを、手でへろへろと動かしてみせただけ!
 ヒストリーチャンネルが作った部分とのすさまじい落差に、またもくらくら。腹が立って、もうその先は見なかった。
 こんな非科学的でしょぼい映像を追加することは、オリジナルへの冒涜である。

 もうね、日本で撮り足さなくていいから! タレント出さなくていいから!
 ディスカバリーチャンネルやヒストリーチャンネルやナショナルジオグラフィックで作った番組を買ってきて、そのまま放送してくれればいいから! その方がタレントのギャラが浮いて安上がりだし、あんたらだってその方が楽でしょうが。
 ディスカバリーチャンネルの『怪しい伝説』なんて、地上波でゴールデンで放送したら、きっとかなりの視聴率が取れると思うよ。だって日本の同種のバラエティ番組よりはるかに面白いもの。

 なぜ日本のテレビ局はそうしないのか? 
 いろいろ理由を考えたんだけど、やっぱり「俺たちがこの番組を作ってるんだ」というスタッフの意地というか、見栄なんじゃないかという気がする。
 違うと思うぞ。番組が面白いのは、あんたらの力じゃなく、オリジナルの番組を作った海外のスタッフの功績だぞ。
 まして『人類ZEROの未来!』みたいに、オリジナルの番組に不必要なものをつけ足して改悪する行為に、僕は何の正当性も認めない。

 その点、『空から日本を見てみよう』は、タレントのトークで水増しをしたりせず、さくさくと番組が進む(CMが入るのはしかたないけど)。たったそれだけで、見る側のストレスがずいぶん軽減されるのだ。

http://www.tv-tokyo.co.jp/sorakara/

 おお、次回(7月15日放送)は「ゆりかもめ」だ。絶対見なくちゃ!
  


Posted by 山本弘 at 16:48Comments(19)テレビ番組