2009年05月17日

「オーケン伝説」はやっぱり都市伝説だった!

 その大槻ケンヂ氏の最新のエッセイ集『人として軸がブレている』(ぴあ)を読んでいたら、「オーケン伝説」に関する記述があった。

 Googleで「オーケン」を検索すると一発で出てくる。「大槻ケンヂが自分のエッセイで自作歌詞を載せたところ、JASRACから使用料を払えと連絡があり、払ったが大槻には印税は還元されず、問い合わせてもなしのつぶてだったと大槻が憤った」というもの。
 それをライブで言葉として言った、という書き込みもあれば、エッセイで書いていた、というものもあった。ぴあのエッセイだった、という説もあるが、「オーケンの、私は変な映画を観た!!」という本にあったようだ、という人もいる。楽曲については、筋肉少女帯の「高円寺心中」であるとの説があるそう。「オーケン事件」を事実としてJASRACに怒りを爆発させているかの書き込みもあった。逆に、ソースがはっきりしないので、都市伝説のたぐいなのではないか? と事件の存在自体に疑問を投げかける書き込みもあった。
 当事者たるオーケンから真相を告げるなら、おそらく後者である。都市伝説だと思う。
 僕は自作詞を著作に多数引用している。どころか、自作詞を中心に集めた二冊の詩集も発売しているが、それらについてもJASRACから徴収義務をうったえてきたという話は覚えがない。「私は変な映画を観た!!」にJASRACについてボヤいた記述はない。オーケン事件自体、ネットで初めて知った。
「高円寺心中」は「大槻ケンヂのお蔵出し」というエッセイ集でも引用している。確認したところ、なるほど前出の二詩集にはなかった日本著作権協会の許諾を示す番号が、こちらには奥付に記載されている。ただこれはおそらく「高円寺心中」とは別に同著の中で引用した、郷五郎さんの歌詞に対してのものではないかと思う。

 そうだったのかー!
 ごめんなさい、僕もそれ、都市伝説だとは気づかずに広めちゃってました!
『史上最強のオタク座談会② 回収』(音楽専科社・2000)の123ページで、「有名な話で、大槻ケンヂが自分のエッセイの中で、自分の作詞した歌の歌詞書いたら、JASRACに金取られた」と言っちゃってるんである。
 その後、気になって調べ直してみたがどうしてもソースが見つからず、僕自身、どこでその話を読んだか思い出せず、「あれは都市伝説だったのかしらん?」と疑っていたのである。今回、大槻氏自身によって、明快に否定されたのである。
 僕はジャン・ハロルド・ブルンヴァンの『消えるヒッチハイカー』(新宿書房・1988)が出た直後に読んでハマった、いわば古株の都市伝説ファンである。『妖魔夜行』シリーズも、僕の都市伝説趣味が反映されている。
 だから都市伝説のたいていのパターンは知っているし、ソース不明の怪しげな話は「都市伝説じゃないの?」と疑うことにしているのだが、この時ばかりはコロッとひっかかってしまった。やっぱり「JASRACならやりそうだ」という偏見が心の中にあったのだろうな。人間は信じたいものを信じるものである。

『オタク座談会』シリーズはとっくに増刷はストップしてるし、文庫化の予定もないので、もはや訂正は不可能な状態。 だからこの場で謝罪しておく。
 大槻さん、そしてJASRACのみなさん、間違った話を広めてしまって申し訳ありません!

 JASRACについてはいろいろ批判したいことはあるけど、今後、「オーケン事件」を根拠として持ち出すのは不当である、ということははっきりさせておくべきだろう。
  


Posted by 山本弘 at 18:26Comments(1)社会問題

2009年05月17日

5月10日(日)「リンゴ送れ、C」

 この日は秋葉原のホテルに宿泊。イベントまでまだ時間があるので、アキバのヨドバシカメラへ。
 関西では手に入らなかった食玩のシンケンオーをゲット。ついでに完全変形メサイアバルキリーも買ってしまう。あああ、また荷物が増える~。

 午後2時半より、ムーブ町屋の「日本トンデモ本大賞前月祭2009」へ。 司会は成田優介(JJポリマー)、出演は僕のほかには、皆神龍太郎氏、大槻ケンヂ氏。
 大槻さんの話はやっぱり面白かった。アニメの『さよなら絶望先生』の第3期がはじまるので、その主題歌を作詞したのだが、タイトルが「リンゴ送れ、C」になるはずだったのだそうだ。
 会場の半分は大爆笑、残り半分はぽかーん。分からない人は「 リンゴ送れ、C」でググっていただきたい。
 なんかM資金(笑)を手に入れて地球脱出の準備を整え、「リンゴ送れ、C」という指令が来るのを待っている……という歌になるはずだったのだそうだ。サビで大槻ケンヂと絶望少女たちが「リンゴ送れ、シー~っ!」と熱唱するのだろう。うわ、想像するとすげえ。
 結局、いろいろな事情で「M資金」と「リンゴ送れ、C」は変えることになったとか。エルバッキーがドルバッキーになったようなもんですか。

大槻「後から考えてみたら、深夜にテレビから『リンゴ送れ、シー!』っていう歌が聞こえてきたら、元CBAの爺さんたちがいっせいに『キターッ!』と思っちゃうんじゃないかと」

 わははは。でも、70~80ぐらいの爺さんや婆さんが夜中に『さよなら絶望先生』見てたら、そっちの方がすごいと思うぞ。

 他にも、UFOをめぐるシンクロニシティの話になり、成田氏が変な体験を披露。
 沖縄に旅行した時、繁華街で空を見ていたらUFOが見えた。光が上下に揺れているように見えて、どうも飛行機のようには思えない。あれはいったい何だ……と仲間たちを空を指差して騒いでいたら。
 突然、タクシーが目の前に停まり、具志堅用高が降りてきて、「トカちゃんでーす」と言って去っていったのだそうだ。
 その「トカちゃんでーす」の衝撃にみんなポカーンとなり、UFOのことはすっかり頭から飛んじゃったんだそうだ。
 ううむ、ハイ・ストレンジネス事例。て言うか、『絶望先生』に出てきた、「本筋以外が気になる」ってやつじゃないか?

 後半は映像による紹介。
 大槻氏は、ヘンな格闘技をいろいろと。触るだけで相手をころころ倒しちゃう爺さんや、触れもしないで倒しちゃうおっさんやら、すごい世界であるな。

 僕はゲストが大槻氏ということで、音楽系のトンデモ本を紹介。レイモンド・ムーディー・Jrの『エルヴィス・アフター・ライフ』である。
 エルヴィス・プレスリーの死を予知したとか、エルヴィスの霊に遭ったとか、エルヴィスの生まれ変わりだという少年やら、エルヴィスにまつわるトンデモ話を集めた本。超常現象だけではなく、「エルヴィスは生きている」という陰謀論や、それに翻弄されたオリオンという覆面歌手(声がエルヴィスそっくりなもんで、「死んだふりをしていたエルヴィスが帰ってきた」と騒がれた)のエピソードなんかも興味深い。

 皆神氏はフリーメーソンをめぐる話をいろいろ。今度からケンタッキー・フライド・チキンの前を通ったら、あの人形の胸のところをよく見よう。
  


Posted by 山本弘 at 18:08Comments(1)トンデモ

2009年05月17日

8日(金)それは抗議されるのは当たり前

 この日は2時より、東京駅の近くの店で、『コミックバンチ』の編集さんとマンガ家の玉越博幸氏の3人で、『魔境のシャナナ』の今後の展開を話し合う。
「大バカなことを全力でやる」というのがこのマンガのコンセプトなのだが、打ち合わせも真剣である。アンケートの結果は、第1回ではけっこう良かったのだが、その後はちょっと苦戦気味。何しろ毎週新連載がはじまっている入れ替わりの激しい雑誌だけに、さらに順位が下がると打ち切られかねないのだ。
 どうすれば読者の興味を惹くことができるか、どうすればもっと面白くなるか、3人の男が頭を寄せ合って大真面目に論議する。

 その後、4時半からは文藝春秋の女性編集者と会う。エッセイを渡したついでに、原稿を頼まれる。作品の発表の場が増えるのは嬉しい。

 6時半からは八重洲ブックセンターで、東京創元社のトークイベント。大森望氏との対談で、創元SF文庫のベスト10作品について語るというもの。
 事前に二人で別々にベスト10を選んだのだが、10位までの中で二人とも入れているのが、フレドリック・ブラウンの『天使と宇宙船』1冊だけというのが面白い。
 いやー、いいんだよね『天使と宇宙船』。特に「ミミズ天使」! 高校の頃に読んで、あのものすごいオチに、「こんな話、書いていいんだ!?」とひっくり返ったもんである。
 大森氏の話によれば、「ミミズ天使」のオチについて、「SFじゃなくファンタジーじゃないのか」という意見もSF界にはあるらしい。そりゃメインのアイデアを成立させている設定はファンタジーだけど、わけの分からない超常現象を理詰めで解き明かしてみせる手法は、まさにSFのそれだと思うのだが。
 前の席で「オチを教えて」と言っている女の人がいたけど、「だめ! あれは自分で読まないと面白くない!」と力説した。
 他にも、ハミルトンの「プロ」について熱く語ったり、ベスト10には入ってないけどハーバートの『鞭打たれる星』が大好きだ、てな話を。
 思ったんだけど、『鞭打たれる星』って、今流行の「萌え改変」ができるよね?

 イベント終了後、二次会へ。創元だけじゃなく、僕や大森氏とつき合いのある他の出版社の関係者もいっぱいで、総勢20人以上に。
 飲み食いしながらいろいろ話しているうちに、出版界における表現規制の話になった。やっぱりどこの出版社も、差別表現に過敏になっているらしい。
 ただ、僕の印象だとどうも、編集者の中には、この問題に不勉強だったり、問題の本質を理解していない印象のある人がいるんだよね。
 たとえば早川の編集さんは「最近は『屠殺』という言葉が使えなくて」とぼやく。はて? カート・ヴォネガット・ジュニアの『屠殺場5号』が『スローターハウス5』と改題されたのは、「最近」じゃなく、30年も前の話だったはずだが。
 僕の前に座った別の編集者はこう言った。

「うちもよく抗議が来ますよ。特にユダヤ人団体から」
「へえ、ユダヤ人団体ってそんなにうるさいですか?」
「ええ。ユダヤ関係の本を出すたびに抗議してくるんですよね」
「へーえ、大変ですねえ」

 ……と、同情しかけて気がついた。

「ちょっと待て! あんたのとこ、徳間じゃん!!」

 そう、その人は徳間デュアル文庫で新しくスタートするシリーズ『ダイノコンチネント』の担当さんだったのだ。
 いやー、それは抗議来るわー。徳間は宇野正美の『ユダヤが解ると世界が見えてくる』とか、ヘンリー・フォードの『国際ユダヤ人』とか、インチキなユダヤ陰謀本をさんざん出してきたんだもん。今でも三百人委員会がどうのイルミナティがどうのって本、出しまくってんだもん。ユダヤ人団体にマークされて当たり前だわ。
 たぶん、徳間から陰謀本の新刊が出るたびに、ユダヤ人団体が内容をチェックしてるんだろう。過去の経緯を考えたら、さすがに同情できないね。
  


Posted by 山本弘 at 17:47Comments(5)トンデモ