2009年04月21日

『謎解き超常現象』

 このブログで紹介するのを忘れていた。
 僕も所属しているASIOS(超常現象の懐疑的調査のための会)という団体。その最初の本が出版されている。

 テレビ、書籍、ネットなどで世に広まっている、超常現象に関する伝説やうわさの数々を、資料を調べ、時には実験や実地検証も交えて解き明かしていこうという本。今のところ売れ行きはけっこういいらしく、早くも増刷がかかった。
 本書で取り上げられている題材は次の通り。

【第1章】 超能力の真相
1. 御船千鶴子の千里眼
2. 不食の聖者、長南年恵
3. ゲイル・セントジョーン
4. ジョー・マクモニーグル
5. ナターシャ・デムキナ
6. 誰でもできる「磁石人間」
7. アポロ14号の超能力実験

【第2章】 超古代文明の真相
8. クリスタル・スカルの謎
9. バールベックの巨石
10. 伝説の大陸「アトランティス」
11. ムー大陸の真相を追う
12. 与那国島の海底遺跡
13. ヴォイニッチ手稿の謎

【第3章】 超自然現象、怪奇現象、UMA、陰謀論の真相
14. チェーンメール「神の手雲」
15. ウェブで話題の心霊動画
16. 心霊写真の謎を暴く
17. オオカミ少女、アマラとカマラ
18. モントーク・モンスターの正体
19. 謎の生物、スカイフィッシュ
20. 本当にいたUMA
21. 聖痕現象の真実を追う
22. 地震雲は信用できるか
23. ファフロツキーズは本物か
24. フィラデルフィア実験
25. 911陰謀論の真相

【第4章】 UFO事件の真相
26. ロズウェル事件の真相を追う
27. MJ-12文書の真実
28. オバマ大統領就任式に現れたUFO
29. メキシコシティの巨大UFO
30. WTCに現れたUFO
31. メキシコ上空に現れたUFO群

【第5章】 エイリアン事件の真相
32. 宇宙人解剖フィルムの正体
33. エイリアン・アブダクション
34. メン・イン・ブラックの正体
35. ウンモ事件
36. 衝撃映像、隕石から宇宙人が!
37. 月の裏側にいたサンタクロース

【第6章】 大予言の真相
38. ジュセリーノの予言のウソ
39. 人類滅亡を予告するマヤ暦
40. フォトン・ベルトとは何なのか?
41. ニュートン・コード
42. アインシュタインの予言

 以前に出した『トンデモ超常現象99の真相』とかぶっているネタもあるが、大半が新ネタ。僕はこのうち4、5、6、22、29、40、41を執筆している。

 最近、書店の「精神世界」の棚に行くと、「フォトン・ベルト」「2012年」「アセンション」とかいう単語の入った本が着実に増えてきていることに気づく。フォトン・ベルトなんて何の根拠もないし、誰も発見してはいないし、存在しないことははっきりしているのに、何でそんなものの実在を信じられるのかが不思議である。

参考:フォトン・ベルトは存在しない 
  国立天文台HP

「ジュセリーノの予言」とかも、とっくにウソが暴かれてるのに、いまだに信じている人が多い(ちなみに、その中には自民党議員が1人、民主党議員が3人(笑))。ちょっと検索すれば正しい情報はすぐ手に入るのに、そういう人たちは調べようともしないらしい。

参考:ジュセリーノ予言の真実 
  Wikipedia「ジュセリーノ・ダ・ルース」の項 


「国際政治」の棚に行くと、911同時多発テロに関して、最近はまともな本より陰謀本の方が多いという現状。彼らの主張は、とっくに論破されている話ばかりである。
 科学的にデタラメで荒唐無稽な説という点では、911陰謀説やアポロ陰謀説も、一種のオカルトや疑似科学だと思う。(実際、オカルト信者と陰謀論信者はしばしば重なる)

参考:分解『911ボーイングを捜せ』


 本書の31で取り上げられているメキシコの空軍の撮影したUFOや、36の隕石から飛び出してくる宇宙生物なども、とっくに真相は判明しているのに、テレビではそれを隠し、本物であるかのように紹介されることが多い。
 ジョー・マクモニーグルの透視にいたっては、日本テレビのスタッフによる明白な捏造である。僕はそれを実際に現地まで行って検証し、すでに2冊の本に書いている。

参考:


 超能力、心霊、UFO、予言……どの話題についても言えることだが、超常現象については、読者に大ウソを教える本は、真実を書いた本より圧倒的に多い。
 だからこそ、このような形できちんと真相を伝えることに意義があると思う。

 当然のことながら、本書に対しても、早くも反論のメールが来た。911陰謀説信者からだ。案の定、決着済みの話題を蒸し返す内容だった。
 僕の経験から言うと、すでに何かのトンデモ説の泥沼にどっぷり浸かってしまっている人は、救い上げることは困難である。どれほど証拠を突きつけても、論理的に説得しても、彼らは決して納得しない。事実から目を背け、終わった話を蒸し返し、議論をループさせる。そういう人たちには、本書は役に立たないだろう。
 だが、まだ泥沼に足を踏み入れたばかりの人、これから足を踏み入れる人に対しては、この本はワクチンとして効果的ではないかと自負している。
  
タグ :トンデモ本


Posted by 山本弘 at 11:58Comments(6)オカルト

2009年04月21日

告知「日本トンデモ本大賞前月祭2009」

 毎年恒例となったトンデモ本大賞前月祭! 今年は、大槻ケンヂさんをゲストに迎え、ムーブ町屋で開催!
 大賞では出来ないどんなトークやネタが行われるか!?
【司会】成田優介(JJポリマー)
【出演】山本弘(と学会会長)、皆神龍太郎(と学会運営委員)
【ゲスト】大槻ケンヂ
【日時】平成21年5月10日(日) Open14:00/Start14:30(16:30終了予定)
【場所】ムーブ町屋
荒川区荒川7-50-9 センターまちや 3・4F
地下鉄千代田線、京成線、都電・町屋駅より徒歩1分

 前売¥2500 / 当日¥2800(全席自由。前売券の番号順のご入場となります)
 前売券はe+で4/11(土)から発売

と学会公式HP
http://www.togakkai.com/
  
タグ :トンデモ本


Posted by 山本弘 at 11:34Comments(2)トンデモ

2009年04月21日

告知「山本弘×大森望 トークショー」

東京創元社の文庫創刊50周年記念企画>「特別対談〈SF編〉 山本 弘×大森 望トークショー」


  SF大好きな2人が選んだ創元SF文庫のベスト10などを中心に、SFの面白さを語ります。



【日時】 5月8日(金) 午後6時30分~午後8時(開場:午後6時)

【場所】 八重洲ブックセンター本店 8階ギャラリー

 *トークショー後、サイン会をおこないます。


募集要項
【募集人数】 80名(申込先着順) *定員に達ししだい締め切らせていただきます。
【参加費】 無料
【申込方法】 お電話
(03-3281-8201)でお申し込みいただくか、または、八重洲ブックセンター本店店頭で配布している申込書をご利用のうえ、1Fレファレンスコーナーへお持ちください。


【八重洲ブックセンター告知ページ】

http://www.yaesu-book.co.jp/events/index.html#yamamoto-ohmori  
タグ :SF


Posted by 山本弘 at 11:22Comments(1)SF

2009年04月14日

女ターザン・コミック始動!

『週刊コミックバンチ』(新潮社)にて、僕が原作を書いた『魔境のシャナナ』というマンガの連載がはじまった。絵は『BOYS BE…』の玉越博幸氏。



 コミックバンチ公式HP

 時は1947年、舞台はアマゾン流域。ジャングルで育った美少女シャナナが、邪悪な呪術師やら怪獣やらナチスのマッドサイエンティストやらと戦うというストーリーだ。
 アメリカでは1940年代から女ターザン・コミックというのはわんさかあったが、日本にはあまりなかった。永井豪の「ビバ!女ターザン」やMEIMUの「ネオ昆虫世紀コーカサス」のような短編、石ノ森章太郎の『ワイルドキャット』や青沼貴子の『ペルシャがすき!』のように野性で育った女の子が文明社会にやってくる話ばかり。長編でなおかつ最初から最後までジャングルが舞台の女ターザンものというのは、日本ではたぶんこれが初めてのはずである。

 誕生のいきさつは昨年夏にさかのぼる。
 接触してきたのは『バンチ』の編集部の方から。玉越さんが『MM9』に惚れこんでしまって、ぜひマンガ化したいということだった(すでにヒメのイラストまで描いていた)。
 あいにく、マンガ化の企画はすでに角川の方で進んでまして……と、お断りしたのだが、向こうはそれでも僕と仕事がしたいみたいで、「それなら『MM9』以外に山本さんの原作で何か連載を」という話になってきた。
 そこで、過去に別のところに企画を提出してボツられた『機装妖精チャイカ』だとか、『詩羽のいる街』の作中作である『戦場の魔法少女』だとか、いろいろ企画を見せたのだが、どうも反応がイマイチだった。
 編集部や玉腰さんとしては、ヒメの印象が強かったので、怪獣と戦う少女がいいらしいのだ。でも、巨大化して戦うんじゃ、『MM9』といっしょになっちゃうし……。
 と、考えているうちに、ふと思いついた。

「あのー……女ターザンものはどうですか?」

 そしたらOKだって言うのよ! 女ターザンでもOKだって! まあ確かに、肌もあらわな女の子が猛獣とか怪獣と戦うシーンがいっぱい描けるわけだし。
 いやあ、言ってみるもんだね。
 たちまち玉越さんと意気投合。

「山本さん、ヒロインは何歳ぐらいがいいですか? 僕は16歳がいいんですけど」
「僕は15歳かな。黒髪か金髪かどっちがいいですか? それによってヒロインの国籍が決まるんですけど。僕は金髪の方が好きなんですが」
「どっちでもいいですよ。あと、『ナディア』のジャンみたいな感じのメガネの少年を出しましょうよ。あと、原住民の色黒の女の子も」
「いいですね、それ。いただきです」

 という具合に盛り上がってしまった。
 大阪に帰って、さっそく企画書を書きまくった。そりゃもう猛然と! だって女ターザンものは昔からずっとやりたかったのだ。
 キャラクターの設定やプロットは、A4用紙25枚の分量になった。難しいテーマなんか抜きにして、ひたすらシュミに走った。美少女の裸はもちろんのこと、怪獣、UMA、古代文明、オカルト、超科学などなど、僕の好きなネタをぶちこめるかぎりぶちこんだ。
 当然のことながら、固めシーンもある。それもほぼ毎回! 石化、水晶化、彫像化、凍結、硬直、ガラスチューブ、縮小などなど、ありとあらゆるパターンの固めを入れた。目標は「世界一固められるシーンの多いヒロイン」だ!
 それを送ったところ、しばらくしてGOサインが出たので、シナリオの執筆にかかった。

 上がってきたネームを見てびっくり。僕の書いた原作より大幅にHなシーンが増えている!

「なんかかなりHになってますけど」

 と言ったら、

「コミケで買った山本さんの同人誌(『チャリス・イン・ハザード』)を読んだら、かなり過激だったもので、これぐらい過激にやっていいのかな、と思ったんですが」

 しまったあ! 僕か!? 僕のせいか!?(笑)
 自業自得か。こりゃ文句つけられんわ。
 というわけで、第一話を読まれた方、Hなシーンの7割ぐらいは玉越さんのアイデアだと思ってください(3割は僕だけど)。
 こりゃ玉越さんに合わせた方がいいのかなと思い、第2話からエロを大幅に増量したのだが、玉越さんはそれをさらに上回るエロいネームを描いてきた。なんか中年2人の妄想が増幅し合って暴走して、これからどうなることやら。

 でもねえ、玉越さんの描くシャナナがかわいくてかわいくてかわいくて。思わずハートマークつけちゃいたくなるほどですよ、この表情。
 



 戦う時のきりりとした(でも愛らしさを失わない)顔とか、すねた顔とか、にこやかな笑顔とか、みんないいんだよねえ。
 で、この娘がこれからあんな目やこんな目に遭わされるかと思うと、原作者としてはもうたまりません。
 とりあえず、「シャナナは最後まで処女であること」「処女膜さえ無事なら何をやってもいい!」という申し合わせをしてはいるんだけど。
  
タグ :女ターザン


Posted by 山本弘 at 19:17Comments(3)マンガ

2009年04月06日

「月をなめるな」

 もう9年も前の話である。
 以前から一部で有名な話だったらしいんだけど、僕は知ったのはつい最近である。2000年頃と言ったら、まだ接続が遅かったせいで、インターネットはほとんどやっていなかったのだ。

「間歇日記」
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/ray_fyk/diary/dr0010_3.htm#001026

『その日の試験は“グループディスカッション”でした。
採用希望者が何人か集まって、与えられたテーマについて議論する。
審査官は黙ってその様子をチェックする、という試験です。
私が部屋に入ると、そこには一人の審査官と、7人の大学生がいました。
最初に全員の自己紹介。いわゆる“名門大学”の学生も何人か混じっていたのを覚えています。
自己紹介が終わると、審査官は一枚の紙を全員に配りました。そこに記されていたのは以下のリストです。

・酸素ボンベ(40kg×8)
・飲料水(30L×8)
・パラシュート
・4平方メートルの白い布
・ビスケット
・粉ミルク
・非常用信号弾
・宇宙食
・ライター
・45口径の拳銃
・方位磁石
・無線機(受信のみ)
・救急用医療セット

なんだこりゃ、と私が顔をあげると、審査官は宣言しました。
「あなた方8人が乗っていた宇宙船が故障し、月面に不時着することになりました。
着陸の際の衝撃で宇宙船は大破。あなた方にお渡ししたのは、中から持ち出すことができた品物のリストです。救助隊とのランデブー地点まで180km、あなた方はその距離を自らの足で進まなければなりません。現在の状況下でリストの品物に優先順位をつけてください。質問は一切受け付けません」』

 これ、以前から新人研修や就職試験でよく出る問題だったらしい。(知り合いにも「やった」という人がいる)
 細かいことを言えば、これはずいぶんアバウトな問題である。「質問は一切受け付けません」というのは、ちと困る。この宇宙服はヘルメットをかぶったまま水を飲んだり宇宙食を食べたりできる仕様になっているのか、通信機はどれぐらいの重さで周波帯は何ヘルツなのか、そもそもここは月のニアサイドなのかファーサイドなのか、今は月の昼なのか夜なのか……といった条件が分からないと、必要かどうか判断できないものが多いのだ。天文学や宇宙開発に詳しい人ほど悩むかもしれない。
 しかし、この場合、大学生たちの反応は予想の斜め上を行っていた。

『まさか就職活動中に月面で遭難することになろうとは。
予想外の展開に、私はわくわくする心を抑えられませんでした。
まず、これらの品物は宇宙空間仕様になっているのかを考えねばなるまい。そうでなかったら、ライター、拳銃は使い物にならない。おそらく信号弾もだめだろう。そしてさらに重要な点として、装着している宇宙服は、外部から食料を供給することが可能なのかという問題がある。月面で顔をむきだしにしたらどうなるかなんて考えたくもない。

といったことを私が一人で考えていると、他のメンバーが手をあげて自分の主張を始めました。
……その内容は、驚くべきものでした。
「パラシュートはあったほうがいいでしょう。崖があったら降りられない」
「この白い布ですけど、ライターで燃やせば救助隊への目印になりますよね」
「酸素ボンベは重すぎて持ち運べない。海にもぐる必要はないだろうし、おいていきましょう」
「水も最小限でいいんじゃないですか? 足りなくなったら途中でくめばいい」

途中まではジョークに違いないと思いながら聞いていましたが、誰もにこりともしません。
どうやら彼等は本気のようです。
やがて私の番がまわってきたとき、すでに私は冷静さを失っていたのでしょう。
「月をなめるな」
それが私の第一声でした。
その後、えんえんと月面について語り、そのままタイムアップ。
当然のように不合格でしたとも。ええ』


 今ならこのリストに「GPS機能つき携帯電話」を入れてもいいかもしれない。「これは持って行きましょう。地球と電話で話せるし、GPSで現在位置も分かるし」とか言い出す奴が絶対いると思う。
 日本の大学生だけではない。アメリカでも似たような「月の哲学者」という話がある。

http://www.dianahsieh.com/blog/2003_08_10_weekly.html#106055564229502302

(試訳。英語は苦手なので、間違いがあるかもしれませんが、ご容赦)
 6~7年前のこと、僕はマディソンウィスコンシン大学(科学/工業系の良い学校です)の哲学のクラスにいました。TA(教育助手)はデカルトについて説明していました。彼は物事は必ずしも思った通りになるわけではないということを説明しようとして、こう言いました。地球でペンを放せばいつでも下に落ちる。しかし、月では漂い出してしまう、と。
 僕の顎はがくっと落ちました。「何で!」と口走りました。部屋を見回すと、僕の友人のマークと、もう一人の学生だけが、TAの言葉に混乱していました。他の17人の学生は、「何か問題でも?」という顔で僕を見ていました。
「だって、月でペンを落としても下に落ちますよ、すごくゆっくりだけど」と僕は抗議しました。
「いや、違うよ」TAは穏やかに説明しました。「だって地球の重力から遠く離れているからね」
 考えろ、考えろ、そうだ!「アポロの宇宙飛行士が月面を歩いているのを見たことがあるでしょう?」僕は言い返しました。「なぜ彼らは漂って行かなかったんですか?」「それは重いブーツを履いてたからさ」完全に筋が通っているかのように、彼は答えました。(思い出してください。彼は多くの論理学のクラスを受け持つ哲学のTAなのです)
 僕はあきらめました。僕たちは完全に別々の世界に住んでいて、自分たちとは異なる言語を理解できないのだと。部屋を出る時、友人のマークは激怒していました。「何てこった! あの連中はどうやってあそこまで愚かになれるんだ!」
 僕は理解しようとしました。「マーク、彼らも一時はこうしたことを知っていたんだよ。でも、彼らの基本的な世界観の一部じゃないので、忘れてしまったのさ。ほとんどの人々がたぶん同じ誤解をしてるよ」僕たちは寮の部屋に戻ってくると、僕の論点を証明するために、キャンパス用の電話帳から名前をランダムに選択し、約30人に電話をして、こんな質問をしました。

1. あなたは月面でペンを持って立っています。それを放したらどうなりますか? a)遠くまで漂ってゆく。b)その場に浮かんでいる。c)地面に落ちる。

 約47パーセントがこの質問に正解しました。間違っていた人に対して、僕たちは追加の質問をしました。

2. あなたはアポロの宇宙飛行士が月を歩き回っているフィルムを見たでしょう。彼らはなぜ漂い出さなかったのですか?

 これを聴くと、約20パーセントの人は最初の質問の答えを変えました! しかし、最も驚くべきなのは、彼らの約半分が自信たっぷりにこう答えたことです。「彼らは重いブーツを履いてたんだ」


「いくら何でもこんなのはネタだろ?」と思われる人も多いかもしれない。僕はそうは思わない。科学に興味のない一般人の、天文学や物理学に関する知識の欠如については、実例をいっぱい見てきたからだ。
 スペースシャトルや宇宙ステーションの中が無重力なのは「地球の引力が届かないほど遠いからだ」と思っている人。
 小惑星帯には見渡すかぎり無数の岩のかけらが漂っていると思っている人。
 彗星の尾は進行方向と反対方向にたなびくと思っている人。
 彗星と流星の区別がついていない人。
 夏が暑いのは、地球が太陽に近づくからだと思っている人……。
 僕はそういう誤解をさんざん見てきた。
 ちょうど今、フィリップ・プレイト『イケナイ宇宙学』(楽工社)という本が出ている。素人が誤解しがちな天文学の常識を解説した本なのだが、これによると、欧米では「月の裏側はいつも暗い」と思っている人や、「夜空でいちばん明るい星は北極星」だとか「空が青いのは海の色を反射しているからだ」とかと思っている人も多いらしい。


 当然のことながら、「宇宙で写真を撮ったら必ず星が写る」と思っている人も多い。そういう人たちがアポロの月面写真に星が写っていないのを見て、「捏造だ!」と言い出すわけである。(『イケナイ宇宙学』の中でも、ひとつの章がアポロ陰謀説への論破に当てられている)

 つい先日も、アポロ陰謀説の信者とまではいかなくても、疑問を抱いている人に出会ったばかり。某有名小説誌の編集者である。
「アポロで撮られた写真が嘘だっていう話、あれはどうなんですかねえ? 影の向きがバラバラなのは、ライトがいくつもあるからだっていうのは」
 と訊ねられたので、遠近法や地面の凹凸によって影の向きが平行にならないこともあるのだと説明し、
「だいたい、光源がいくつもあったら、影もいくつもできなきゃおかしいでしょ」
 と言うと、
「ああ、言われてみればそうですねえ」
 と、おおげさに感心していた。
 光源が複数あったら影も複数できる……という当たり前のことでも、言われるまで気がつかない人がいるのである。
 ちなみに、その人がアポロ捏造説に初めて接したのは、例のビートたけしの番組だそうだ。

 これが陰謀説信者となると、さらにひどい。今、mixiの「人類は月に行っていない!?」というコミュに入っているのだが、陰謀説信者の知識の欠如ときたら、まさに絶望的。
 ほんの一例を示すと、アポロの月着陸船の写真を貼りつけて、「NASAが発表したこんなちゃちな宇宙船で、月面に降りたり、月面から地球に向けて飛び立ったり、地球に着陸したりできるかな」などという人がいるのだ。この人はアポロの飛行士たちが月着陸船に乗って地球まで戻ってきて、地球に「着陸」したと思っているのだ!
 中学生程度の計算もできない連中も何人もいる。きちんと計算を示してやっても、「数字なんか信じられない」「直感で十分」と開き直られるので、まったく手がつけられない。
 彼らは天文学や物理学や宇宙開発について完璧なまでに無知であり、自分で計算もできないのに、アポロの映像に科学的な間違いを指摘できると思い上がっている。

 無知そのものはしかたがない。僕もそうだが、一人の人間は世の中のことの一万分の一も知らないものだ。分からないことは調べればいい。それでも分からないことは、判断を保留しておけばいい。
 必要なのは謙虚さだと思う。「専門家ではない無知な自分には理解できないことが多いのだ」と思うこと。専門家ではない人間の言葉は疑ってかかること。それがトンデモ説にひっかからない秘訣だろう。
  
タグ :宇宙


Posted by 山本弘 at 18:18Comments(15)サイエンス