2017年09月06日

『ビーバップ!ハイヒール』出演裏話

 番組の放映から1週間が経ったので、番組の裏側をお話ししましょう。

https://www.asahi.co.jp/be-bop/

「常識を超越している。科学的に説明不可能。そんな言葉に騙されてはいけません」
「超常現象の多くには、調べてみると意外な真相が隠されています」

 これは僕が考えたんじゃなく、台本に書いてあった台詞です。当たり前ですけど、こういう「かっこつけた台詞」は、あらかじめ台本で決められていて、出演者はその通りに喋ることを要求されるんです。もちろん、あまりにも自分の意図と違う場合は改変させてもらいますけど。
 この場合も、言い回しがなんか僕の言いたいことと違うので、何箇所か修正をお願いしましたが、だいたい台本通りに喋ってます。
 もっとも、トチって何度もリテイクしましたけどね(笑)。台本通りに喋るのってすごく苦手。あと、自分の演技力のなさにがっくりきます。まったく棒読みです。

 このシーンで画面にちらっと映る本の一冊は、ポピュラサイエンス臨時増刊、ジェラルド・ハードの『地球は狙われている』(講談社・1951)。〈BISビブリオバトル部〉の2巻『幽霊なんて怖くない』に出したので、ご存知の方も多いのでは?

 あと、パソコンのキーを叩いているシーンが映りますけど、実はあそこはテレビ局の会議室で撮影されています。ノートパソコンも僕のじゃなく、スタッフの私物。おまけにロックがかかっていて、キーを叩いても画面に文字は出ません(笑)。叩いてるふりをしてるだけです。
 小説家がこんな風にバラエティ番組に出演する時には、必ずと言っていいほど、パソコンで何かを打っているふりをさせられるんです。僕なんかもう何回やらされたことか。小説家の仕事風景のつもりなんでしょうが、当たり前ですけど、すべてヤラセです。TV局の取材が来てるのに、その前で仕事する小説家なんていません(笑)。
 学者の方の場合、分厚い本を読んでいるカットがよく映りますよね。こんな映像に何の意味があるのかなと、いつも疑問に思うんですが。

 たむらけんじがスペインで撮影したUFOの話。放映ではカットされてますけど、実は彼はかなりしつこかった!
 僕が「手ぶれでしょ?」と言うと、僕の席まで来て、スマホの画面を見せつけるんですよ。「これは絶対に手ぶれじゃありません」と、力強く。でも、僕は相手にしませんでした。
 というのも、その直前、「(手ぶれしないように)がっつりと脇を締めて」と撮影の模様を実演しているまさにその瞬間、彼の手が動いているのを目にしちゃったからです(笑)。でも、彼は自分の手が動いていたことにまったく気がついていませんでした。
 だからUFOを目撃した瞬間もそうだったんでしょう。本人は「スマホを固定していた」と思いこんでるけど、実際は興奮して揺れてたんじゃないかと。

 UFOの正体については、「凧じゃないですか」と推理を口にしました。海外にはLEDのついた凧があって、日本でも2011年に荒川で、それがUFOと誤認されて騒ぎになってるんです。それに似てるなと。でも、そこもカットです
https://www.youtube.com/watch?v=8754uaV_h_c
 あと、大晦日のカウントダウンの最中に撮影されたというのもひっかかります。カウントダウンの時には、他にも住民がいろんなものを飛ばしてるんじゃないでしょうか? 凧が飛んでいてもおかしくない気がします。
 まあ、正体が分からないという点では、まさにUFO(未確認飛行物体)ではあるんですが。

 お分かりでしょうけど、番組中で紹介されている謎解きは、ほとんど僕がやったものじゃありません。海外のニュースから拾ってきたネタや、ASIOSのメンバーが解明したやつばかりです。
 例外は最初から2番目の「トワイライト・フェノメノン」。あれはフジテレビの『ザ・ベストハウス123』で放映されたネタなんですが、当時、番組が終わった直後にすぐにインターネットで検索かけたら、2時間ほどで、日時や場所、原因から、なんというロケットかまで、すっかり特定できました。
 テレビでは「謎」と呼ばれていても、実はその程度の調査で真相が判明することが多いんです。ほとんどの人は、そんな調査をやらないだけで。

 三田光一の念写した「月の裏側」。
 僕はこの時、写真の背景の星空を指差して、江川達也氏に「これランダムじゃなく、手で打ってますよね?」と話を振りました。マンガでは星空を描く場合、黒いバックにブラシにつけたホワイトを散らすのが普通です。マンガ家さんならこの星の分布の不自然さにすぐ気がつくだろうと。
 実際、江川さんも「手で描いてますよね」と同意してくださったんですが、そこもカットされました。


 ノストラダムスの話だけは、僕の方からスタッフに、「このネタは受けるんじゃないんですか」と提案したもの。案の定、「五島勉」という人名は具体的に出せませんでしたし、構成は向こうにおまかせしたので、再現ドラマの考証がいろいろおかしいんですが、「実はインチキでした」というのは視聴者に伝わったと思います。
 オイルショックやトイレットペーパー騒ぎなんてものがあったことは、今の若い人は知らないでしょうし。

 ちなみに今発売中の『RikaTan(理科の探検)』という雑誌の10月号に、『ノストラダムスの大予言』という本のインチキを解説した記事を載せています。興味のある方はお読みいただければ幸いです。

 というわけで、どうにか本番は乗り切れた……思ってたんですが、最後の最後でハプニングが。「奥様は超常現象というのを信じておられるんですか」という質問を振られて、嘘をつくわけにもいかず、「我が家のトイレにドイツの幽霊がいる」という話をするはめになっちゃいました(笑)。
 前にも本に書きましたけど、妻は実は霊媒体質なんですよ。幽霊は見えないけど感じられるんだそうで。新婚直後、妻は友人たちとドイツに観光にいったんですが、帰ってからしばらくして「トイレに幽霊がいる」という話をしだしたんですよ。たぶん古城観光に行ったんで、その時についてきたらしいと。
 ドイツの古城の幽霊! それはかなり由緒正しい奴なんでは?
 妻の話によれば、特に悪い霊ではなかったらしく、お祓いをすることもなく、気がつくとどっかに行ったらしいんですけどね。

 その後、さらに放送ではカットされた部分があります。
「お子さんはどう思ってらっしゃるんですか?」と問われて、またも「娘も小さい頃は妖精さんや幽霊さんが見える子で……」という話をしちゃいました。
 いや、ほんと。小学校に入る前までは、当たり前のように妖精が見えてたり、亡くなったお祖父ちゃんが見えたりする子だったんですよ。今はもう大人になって、見えなくなってますけど。
 たぶん子供というのは誰でも、小さい頃は「見えない友達」がいるんじゃないかと思うんですよ。大きくなるにつれて見えなくなって、忘れてゆくだけで。

 というわけで、僕は家ではオカルトに関しては寛容なスタンスを貫いています。「そんなの見えたってたいしたことないよね」と。
 ですから我が家は、結婚以来20年以上、とても平和です。

  


2017年03月06日

LiveWire:またしてもニセ科学を楽しもう!

山本弘のSF秘密基地LIVE#66
またしてもニセ科学を楽しもう!



『ニセ科学を10倍楽しむ本』(楽工社/ちくま文庫)出版からもう7年。ニセ科学はいっこうに衰退する様子はなく、また新たなニセ科学がいくつも台頭してきています
 今、どんなニセ科学が流行っているのか?
 どこがどう間違っているのか?
 そして、小中学校の理科を知っていれば見破れる程度のウソに、なぜ多くの人があっさり騙されてしまうのか?
 ニセ科学の現状に触れるとともに、それらから目を背けるんじゃなく、そのバカバカしさを笑って楽しんじゃおうという企画です。ニセ科学に毒される前のワクチンとして、ぜひ聞きに来てください。


[出演] 山本弘

[日時] 2017年3月24日(金) 開場・19:00 開始・19:30

[会場] なんば紅鶴(大阪市中央区千日前2-3-9 レジャービル味園2F)南海なんば駅より南海通り東へ180m・駐車場有

[料金] 1500円  
(店内でのご飲食には別途料金がかかります。入場時に別途ワンドリンクをご購入いただきますのでご了承ください)

ご予約はこちらに
http://boutreview.shop-pro.jp/?pid=114140246
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 こちらはいつものLiveWire。今回は久しぶりにニセ科学を取り上げます。
『ニセ科学を10倍楽しむ本』を書いた後も、いっこうにニセ科学は廃れません。それどころか、EM菌、ナノ銀除染、親学、誕生学などなど、政治や教育の世界にまではびこっているニセ科学もいろいろ。江戸しぐさのような「ニセ歴史」も台頭してきています。
 そういうものを「興味がない」「分からない」と無視するのはきわめて危険。でも、「論破するには深い専門知識が必要なんじゃない?」としりごみする必要もありません。ニセ科学・ニセ歴史の多くは、小中学校程度の知識があれば間違いと分かるもの、「そんなアホな!」と笑って楽しめるものばかりですから。
 むしろ、何でそんなものに騙される人がいるの? という点を問いたいと思います。また、中学生へのアンケート調査の結果を通じて、ニセ科学が若者たちの間にどれだけ浸透しているかも紹介します。
 小難しい理屈は抜き、笑って楽しめる企画です。気軽な気持ちでお越しください。
  
タグ :ニセ科学PR


2017年01月31日

最近のデマ・2017

 このブログではこれまで何度もデマの話題を取り上げてきたが、最近、続けていくつもの大きなデマが登場して話題になった。
 僕がこの2ヶ月ほどの間に見たデマを、ざっと並べてみる。

大量拡散の「韓国人による日本人女児強姦」はデマニュースか サイトは間違いだらけ
https://www.buzzfeed.com/kotahatachi/korean-news-xyz?utm_term=.ad52LJM536#.jmXg9lJBNL

「韓国、ソウル市日本人女児強姦事件に判決 一転無罪へ」という架空のニュースを流して大規模に拡散させた「大韓民国民間報道」を名乗る偽サイト。その運営者が取材に応じた。

韓国デマサイトは広告収入が目的 運営者が語った手法「ヘイト記事は拡散する」
https://www.buzzfeed.com/kotahatachi/korean-news-xyz-2?utm_term=.esL7QOBE4M#.uc5KGwZ5Nz

ハイスペックで、礼儀正しい若者がデマサイトを作る 就活の失敗からそれは始まった
https://www.buzzfeed.com/daichi/fakenews-about-korea-interview?utm_term=.swn47o1Jg0#.xg2Ewv29yl

 記事の内容を信じるなら、こいつは明らかに異常というわけではないし、そこそこ頭も良さそうだ。思想性や狂信性は感じられない(モラルは欠如しているが)。
 僕が驚き、感心したのは、これまで嫌韓デマでここまで手間をかけた奴はいなかったということだ。たいていのデマはソースへのリンクが貼られていないか、関係のない記事にリンクが貼られているというお粗末なもので、リンク先を見ただけで一発で見破れた。(それでもリンク先を読まず、あっさり騙される奴も大勢いたのだけど)
 しかし、こいつは違う。サイトに載せていた普通の記事までもすべてフェイクだったとか、わざわざ機械翻訳で作った韓国語のページも作成して、あたかもソースがあるかのように見せかけていたというのだからたいしたものだ。それでも韓国語ネイティブの人間には「自動翻訳を使っているのがバレバレ」だったそうだが、韓国語の分からない人間には、一目で見破るのは難しそうだ。僕もいきなりこの記事を読まされてたら、信じていたかもしれない。
 もちろん、こんな奴を擁護するつもりはまったくないが、彼の言い分のいくつかにはうなずかざるを得ない。

「それがフェイクであれ、韓国についてはどんな話題でも信じたいという思いの人、拡散してやろうという人がネット全体にいた。さらに、それを望んでいる人たちも。コンテンツを作りやすいですよね」

「釣られても仕方ないですよね。FacebookやTwitterが身近になった以上、シェアすることは、隣の席の人に『こんな話題があったんだ』というのと変わらない。そのときに、『ソースは正しいの?』と聞くことはないですよね。そういう軽い気持ちで広がっていったのでは」

「デマや噂なんてこの世にありふれている。それに踊らされるのは個人の問題ではないでしょうか。噂を流した側の責務ではない。これからもデマはでき続けるはず。収益化できるかは別ですが」

 そう。こいつが最後の一人ではありえない。きっと今後も、同様の偽サイトを作ってデマを拡散する人間は必ず出てくる。
 だから一人の人間だけを糾弾しても、あまり意味がない。デマは次から次に生まれてくる。次に現われるデマに対して警戒を怠らないことが大切だ。
 デマにひっかからないための心得については、前に書いたことがある。

http://hirorin.otaden.jp/e273766.html

 ある意味、今回の件は幸いだった。こいつは単独犯だったし、平均より頭はいいものの天才というほどではなかったから、賢い人がデマを見破ることができた。
 だが、もし、もっと頭のいい奴が現われ、もっと巧妙な手口でデマを生み出したら?
 あるいは単独ではなく、複数の人間が協力して、デマの信憑性を高めるような別のデマをいくつも流したら?
 そういうことが起きないという保証はない。

 もちろん、ネットに流れているのは嫌韓デマだけじゃない。

「日本のマスコミが捏造報道」が捏造 トランプ大統領の就任式でデマ
https://www.buzzfeed.com/eimiyamamitsu/inauguration-debunk?utm_term=.yf2xz6JrpB#.hebQxm5aYM

 驚いたのはこの記事に「この記事は残念ながら、もう少し整理しないと一読では内容が頭に入りません」「確かに何を言いたいのかすぐに把握できなかった。ひどい記事」というコメントがついていたこと。いや、確かにややこしいタイトルだけど、一読すれば内容は分かるはずなんだけど?

 他にもこんなにデマがあった。単なる誤解によるものから悪質な捏造まで、国際政治の問題から個人的な誹謗中傷、日本のものも海外のものも、右寄りも左寄りもいろいろだ。
「デマなんて自分には関係ない」と思わない方がいい。ネットをやっていたら、誰でも必ずこうしたデマに遭遇するはずだから。

シリア内戦:ホワイト・ヘルメットの人命救助を「ねつ造」とするプロパガンダのうそ
http://bylines.news.yahoo.co.jp/kawakamiyasunori/20161230-00066068/

「トランプ抗議デモ参加者に2500ドル支給の広告」
http://www.washingtontimes.com/news/2017/jan/17/ads-two-dozen-cities-offer-protesters-2500-agitate/

「龍角散のど飴」がドーピング指定? 事実誤認によりデマが広がる
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1701/11/news072.html

「マクドナルドの肉の正体が明らかに」の根拠は そもそもの裁判がなかった?
https://www.buzzfeed.com/kantarosuzuki/mcdonalds-pinkslime-debunk?utm_term=.yg2z01M2D4#.wgD5Wo4Qql

アパホテル会長の「中国人の予約は受けない」発言、海外メディアの誤報だった
https://www.buzzfeed.com/eimiyamamitsu/apa-hotel-global-times?utm_term=.wgD5Wo4Qql#.loG5mLOGJx

宮城県の巨大カキが「原発事故の影響か」と中国で物議、日本大使館が中国版ツイッターで“真相”説明
http://www.recordchina.co.jp/a160818.html

ソニー・ミュージック乗っ取り、スピアーズさん死亡の偽ツイート
http://jp.reuters.com/article/sony-twitter-cyber-idJPKBN14F15A

「コミケでスリをしたオタクの顔と住所が特定される」とツイート→実際は無関係の別人
http://bylines.news.yahoo.co.jp/shinoharashuji/20161230-00066084/

 あと、この虚報新聞さんのインタビュー記事も読んでおこう。

虚構新聞「ネットの良識を信頼する」 真実が大切にされない時代にジョークは成り立つか?
https://www.buzzfeed.com/takumiharimaya/kyoko-np?utm_term=.xi22XopE0b#.jsxb7JBK1D

「『ファクトチェックを参考にする』『聞いたこともないようなニュースサイトや変なURLの記事を安易にシェアしない』など、デマを拡散させないようできることはたくさんあります」

「ただ、いくら頑張ってもネットから完全にフェイクニュースを失くすことは不可能でしょう。結局のところ、真偽の最終判断は個々人に委ねるしかないです」

「そのファクトチェックですら、今後『フェイクファクトチェックサイト』という悪夢のような虚偽サイトが生まれる可能性もあるので、『ネットの集合知と良識を信頼しています』としか答えられません。ネットユーザーの良識に支えられたからこそ、続けられた13年なので」

  
タグ :デマ


2016年11月22日

と学会がやっていたことは「弱い者いじめ」だったのか?・4

 僕はもう、と学会を辞めている。
 http://hirorin.otaden.jp/e312496.html

 理由はいろいろあるが、ひとつの理由は「つまらなくなった」ということだ。
 トンデモ本が少なくなったわけではない。今も多くのトンデモ本が出版され続けている。ただ、新しいものが少なくなってきた。
 日本トンデモ本大賞の候補作は、毎年、僕が選んでいたのだが、ノミネート作のリストを見ても、バラエティが豊富だったのは『人類の月面着陸は無かったろう論』が受賞した2005年の第14回あたりがピークだった。

http://kokorohaitsumo15sai.la.coocan.jp/tondemotop.htm

 以後は、『富を「引き寄せる」科学的法則』のような1世紀も前のトンデモ本や、『新・知ってはいけない!?』のように前に出た本の続編、『秘伝ノストラダムス・コード』のような時代遅れのノストラダムス本、『超不都合な科学的真実』『小説911』『本当かデマか 3・11[人工地震説の根拠]衝撃検証』のように著者本人が唱えているのではなく世間にあふれている陰謀説を寄せ集めた本など、独創的なものが明らかに減ってきている。2012年の第21回、2013年の第22回などは、と学会の会員に呼びかけてもトンデモ本が集まらず、かなり苦しんだ。大川隆法、苫米地英人、中丸薫らの本が何度もノミネートされているのも、ノミネート作が揃わないための苦肉の策だった。
 おそらく僕らは、乱獲によってトンデモ資源を枯渇させたんじゃないかと思う。トンデモってもっと奥が深いかと思っていたら、意外に浅かったんだなと。
 1950年代に書かれたガードナーの『奇妙な論理』を読めばわかるように、現代のトンデモ説の多くは昔から存在しているものか、その焼き直しにすぎない。だからこれから出るトンデモ本の多くも、すでにある説の焼き直しにすぎないんじゃないだろうか。
 だからと学会をはじめた頃と比べて、トンデモ本への関心はひどく薄れている。

 もっとも僕はまったく関心をなくしたわけじゃない。ニセ科学やデマ関連のウォッチングはASIOSの本で続けている。と学会の本と違って、積極的に笑いを取りに行くことは控えるようになったが、それでも多くの人に読んでほしいから、「面白い」と感じさせる文章にする努力は怠っていない。
 世の中には、放置しておくのは危険なニセ情報がまだまだたくさんあるからだ。
 ほんの一例を挙げるなら、「阪神淡路大震災の時に強姦が多発した」というのは悪質なデマで、信じる人が増えたら危険だから、データを挙げて否定している。

http://hirorin.otaden.jp/e427750.html

 ネットの普及により、デマの拡散速度も飛躍的に速くなった。特に、見ず知らずの多くの人を傷つけたり、新たな災厄のタネになるかもしれないデマに対しては、見つけしだい大急ぎで否定する必要がある。だからこのブログでもデマの否定を頻繁にやっている。
本人に直接言うなり手紙やメールを出すなり」などと、のんびりしたことを言っていては手遅れになるかもしれないから。

  


2016年11月22日

と学会がやっていたことは「弱い者いじめ」だったのか?・3

 そもそも『トンデモ本の世界』が出版された1995年はどんな年だったか思い出してほしい。
 そう、地下鉄サリン事件のあった年だ。
 あの事件がどれほど日本を騒がせたか、ご記憶の方は多いはずだ。オウム真理教はオカルトや超能力、フリーメーソン陰謀説や、様々なニセ科学にハマっていた。それらは、マスメディアが無視していたか、あるいは逆に持ち上げていたものだった。(『超能力番組を10倍楽しむ本』でも書いたが、90年代前半まで、超能力を肯定的に扱う番組は実に多かったのだ)
 1995年のあの日まで、ほとんどの日本人はオカルトや超能力や陰謀論やニセ科学にさほど関心がなかったか、あっても「たいしたことじゃない」と侮っていたと思う。
 そこにあの事件が起きた。
 多くの人が存在に気がつかなかった、あるいは何もしないで見過ごしていたものが、気がついたら恐ろしい怪物に成長していた。
「あれはいったい何なんだ!?」と狼狽し、説明を求めていた人たちに、僕らがタイミングよく「トンデモ」という概念を提示した。だから『トンデモの世界』はベストセラーになったのだと思う。
 もちろん、オウム事件に便乗したわけじゃなく、出版予定は前から決まっていて、地下鉄サリン事件がたまたまそれに重なっただけなんだけど。

 これは『トンデモノストラダムスの世界』で書いたけど、僕は五島勉氏が『ノストラダムスの大予言』という本を書かなかったら、オウム事件は起こらなかったと思っている。
 無論、『ノストラダムスの大予言』を読んだ時点で、オウムの台頭を予想するのは誰にも無理だったろう。でも後知恵で見て、因果関係があるのは否定できない。
 言い換えれば、今はまだたいしたことがないように見えるトンデモ説でも、将来、怪物に成長する可能性があるということだ。
 今も日本には、多数のトンデモ説が乱れ飛んでいる。そのどれかが新たなオウム事件の萌芽になるのか、今の段階ではまったく予想できない。でも、常に誰かが目を光らせていなければいけないんじゃないだろうか?

 実際、僕も予想できなかったことがいくつもある。
 たとえば『トンデモ本の世界R』(2001)で、石橋輝勝『武器としての電波の悪用を糾弾する!』という本を紹介した。自分は世界を支配する組織から電波攻撃を受けていると主張する、典型的な関係妄想の本だった。だが、自費出版されたマイナーな本であり、大きな影響力などないと思っていた。
 まさか著者が2003年に民主党推薦で千葉県八街市議会議員選挙に立候補して当選したり、「テクノロジー犯罪被害ネットワーク」なんてものを結成したりするなんて、まったく予想していなかった。

 あるいは『トンデモ本1999』で取り上げた谷口裕司『宇宙からお母さんへのメッセージ』という本。著者は育児文化研究所という団体を主催しており、全国に10万人以上の会員がいるという。この本は、おなかの中の赤ちゃん、それどころかまだ妊娠さえしていない赤ちゃんがテレパシーで語りかけてくるという本だ。地球にはすでに大勢の宇宙人が来ていて、人類を指導しているとも書かれていた。
 僕は育児文化研究所という団体がUFOカルト化していることに漠然と不安は抱いた。
 だが、この時点で、すでに誤った指導のせいで犠牲者が出ていたなんて思いもしなかった。

http://www.jaog.or.jp/sep2012/JAPANESE/MEMBERS/TANPA/H12/000403.htm

『トンデモ本の世界R』(2001)では、谷口祐司氏の別の著書『緊急!マリア様からのメッセージ』を取り上げ、「しかし、笑ってばかりもいられない。この育児文化研究所をめぐって、実は悲惨な事件が起きていたことが明らかになったのだ」(89ページ)と書いて、事件に触れている。
 読み返していただければ、この文章の前後で、僕の文体ががらっと変わっていることに気づかれると思う。『緊急!マリア様からのメッセージ』は笑えるトンデモ本だが、両親が谷口氏の誤った指導を信じために赤ん坊が死んだという事実は、笑ってはいけないと思った。
 しかし、谷口氏の著書を「笑ってはいけない」とも言いたくなかった。むしろ、谷口氏の著書を読んだ人たちが、これがトンデモ本であることに気づかず、笑いもせずに信じこんでしまったことが、悲劇を招いたのだと思う。
 こんなのは笑い飛ばすべきだった!
 もっと早くみんながトンデモさに気がついて笑い飛ばしていれば、悲劇は阻止できたんじゃないだろうか。

 あるいは『トンデモ本の世界W』(2009)で取り上げた『胎内記憶』。胎内の赤ちゃんが母親のへそから外を見ているなどと主張するとびきりのトンデモ本だが、著者の池川明氏が当時よりさらに有名になって、各地で講演会を開いているばかりか、親学推進協会の特別委員や誕生学協会のサポーターをやっているという事実に、育児文化研究所の事件を連想し、軽く戦慄している。
 池川氏一人が信じているだけでなく、いい年した大人、しかも高い地位にある人たちまでもが大勢、「赤ちゃんが母親のへそから外を見ている」などという話を本気にしているらしいのだ。これは十分すぎるほど恐ろしいことではないだろうか?

 正直に言うと、僕もいつも笑っているわけではない。話があまりにもシリアスすぎて、矛先が鈍ることは何度もあった。
 たとえば『トンデモ本の世界U』(2007)で、小出エリーナ『アメリカのマインドコントロール・テクノロジーの進化』を紹介した時のこと。CIAの電波攻撃「マイクロウェーブ・ハラスメント」を受けている(と思いこんでいる)人たちについて、僕はこう書いた。


 どうやら苦しい体験をしている著者たちを支えているのは、自分と同じ体験をしている人が大勢いるという連帯感と安心感、そして巨大な悪と戦っているという怒りと使命感のようである。
(中略)
 だが、僕にはそれこそ「個人の一時的な解消でしかない」ようにしか見えない。ミもフタもないことを言わせてもらえば、「早く病院に行きなさい」と言いたい。現代では統合失調症に効く薬がいくつもある。それらで治癒できるか、症状が改善される可能性は高い。
 だが、マイハラ被害者同士の連帯は、適切な治療から彼らを遠ざけているように思われる。仲間の話を聴くことは、自分の体験が幻覚や妄想ではないと確信させてくれるし、中には「体内にインプラントを埋めこまれるから病院に行ってはいけない」とアドバイスする者もいるからだ。
 だから僕は、最初は笑って読んでいたものの、だんだん笑えなくなってきた。心の病気だからしかたがないとはいえ、治療を受ければ助かるかもしれない人が、自ら救いを拒否して苦しみ続ける姿は、胸が痛む。

 これは僕の嘘偽りない本音である。
 罪もない赤ん坊が愚かな指導のせいで死ぬなんてことはあってはいけない。
 病気に苦しんでいる人には、ぜひ良くなってほしい。
 そのためには、明らかに間違っていることに対して、誰かが「間違っている」と声を上げないといけないと思う。
本人に直接言うなり手紙やメールを出すなり」なんて甘っちょろいことを言っている間に、誰かが死ぬかもしれないのだ。

 最初の『トンデモ本の世界』を出した頃から、僕は『トンデモノストラダムスの世界』という本を必ず1998年に出そうと心に決めていて、ずっと資料の収集を続けていた。
 今の若い人にはピンとこないかもしれないけど、1990年代の日本人の中には、ノストラダムスの予言を信じこみ、「1999年に人類は滅亡する」と思っていた人間がかなり多かったのだ。彼らが1999年になったら、不安になってパニックを起こし、犯罪に走ったり自殺したりするかも……という懸念は、決して杞憂ではなく、当時としてはリアルな危機感があった。
 だから僕は、そうした事態を予防するために、1998年に『トンデモノストラダムスの世界』を出そうと決意した。
 その際、ベストセラーである五島勉『ノストラダムスの大予言』だけに絞りはしなかった。当時すでに氾濫していた大量のノストラダムス本(正確に言えば、ノストラダムスの詩から勝手に未来に起きることを予言する本)をかたっぱしから読んで笑い飛ばした。
 当然、中には五島氏ほど売れていない人、abさんの言う「弱い者」もいた。だが僕は、売れているかどうかで区別しなかった。
 起きるかもしれないパニックを防ぐために、ノストラダムス本はどれもデタラメで、著者たちの主張は信用できるものではないことをはっきり示す必要があったからだ。こんなのは笑い飛ばすべきものなのだと。
 幸い、『トンデモノストラダムスの世界』はよく売れた。1999年7月が近づくにつれ、大手のメディアも危機感を覚えたらしく、メジャーな雑誌や新聞でもノストラダムスの予言を否定する記事が増えた。テレビでもやはりノストラダムス批判の番組が増え、僕もいくつか出演した。マスメディアのウォッチングを続けながら、「ノストラダムスの予言なんて信じちゃいけない」というムードが世間に形成されてゆくのを、確かに感じていた。
 そうして1999年7月は何事もなく過ぎ去った。
 パラレルワールドのことなんか分からない。でも、もし僕が『トンデモノストラダムス本の世界』を書かなかったら──abさんが言うように、「本人に直接言うなり手紙やメールを出すなり」で済ませ、広く世間に警告しようとしなかったらどうなっていたか……それはいつも考える。
 少なくとも僕は、災厄を防ぐために、自分がやるべきことをやったと、今でも誇りを持って言える。
  


2016年11月22日

と学会がやっていたことは「弱い者いじめ」だったのか?・2

 じゃあなぜ、単に間違いを指摘するだけでなく、笑い飛ばす必要があるのか?
 理由は簡単、その方がアピールするからだ。
 前にも書いたが、「どんなに栄養のある料理でも、不味ければ誰も食べない」というのが僕のポリシーである。
 ニセ科学やオカルトを批判している人は、と学会以前からいた。だが、大真面目な主張が多く、大衆にアピールしなかった。内容がいくら正しくても、読んで面白いものではなかったからだ。
 生涯をオカルトやニセ科学との戦いに捧げたアメリカのジャーナリスト、H・L・メンケンは、こんな言葉を残している。

「抱腹絶倒一回は三段論法千回に勝る」

 これは真理だと思う。
 数ヶ月前にもそんな体験をしたばかりだ。ある人が僕に「江戸しぐさ」について訊ねた。その人は「江戸しぐさ」がネットで話題になっていることや、問題のある内容であるらしいことは知っていたが、具体的に何が問題なのかはよく知らない様子だった。
 そこで僕は「江戸しぐさ」信者の主張の中で最も笑える箇所──「江戸っ子大虐殺」について説明した。その人は大笑いして、即座に「江戸しぐさ」は信じてはいけないものだと納得してくれた。
 これが「抱腹絶倒一回は三段論法千回に勝る」である。
 もちろん事実を論理的に説明して批判するのも大事だ。だが、「そんなの信じちゃだめだよ」とアピールするには、笑い飛ばすのが早道なのだ。実際、原田実氏はそうやっている。事実関係をきちんと調べたうえで、「江戸っ子大虐殺」のような笑える部分を指摘するのも忘れない。

 と学会の先輩とも言うべきマーチン・ガードナーの『奇妙な論理』(ハヤカワ文庫)にしても、バージェン・エヴァンズ『ナンセンスの博物誌』(大和書房)にしても、事実の羅列だけでなく、笑える部分にスポットを当てたり、随所に皮肉やウィットを混ぜたりして、読者を楽しませる工夫をしている。
 たとえば『ナンセンスの博物誌』は人種偏見に対する批判に多くのページを割いているのだが、その中で紹介されるレイシストたちの発言と、それに対するエヴァンズのツッコミがいちいち笑える。

(前略)ウェイン大学社会学科のA・M・リー教授が一九四三年のディトロイト人種暴動を調査した時、一人の証人は、映画館の灯がついて黒人の横にすわっていたことがわかった途端に気分が悪くなったと述べた。その男の説明では黒人は「常に悪臭を放つ」のだそうだが、彼の嗅覚は暗闇ではきかないものらしい。

 いかがだろう? こういう手法の方が、大真面目に「人種差別は良くない」と説くより効果的だと思わないか?

 もうひとつ、abさんが無視している(故意になのか、本当に気がついていないのかは不明だが)明白な事実がある。
 それは「トンデモの多くは危険」ということだ。
 たとえば、超能力、オカルト、UFO、予言などは、カルト宗教と親和性が高い。「うちの教団に入って修行すれば超能力が身につきます」とか「ノストラダムスはうちの教祖様のことを予言していた」とか「まもなく世界が滅亡するが、UFOに乗った異星人が私たちを助けに来てくださる」などと宣伝している団体は、いったいいくつあるか、多すぎて見当もつかない。
 そうした話に興味を持ち、真剣に耳を傾けていたら、いつのまにかカルト教団に入信していた……ということも、十分にある。
 ニセ科学も昔からよく詐欺の温床になっている。永久機関が本当にできると信じて出資し、金をどぶに捨てた人は大勢いる。トルマリン、タキオン、マイナスイオンなどのありもしない効果を信じて、どれだけの消費者が金を浪費したか。
 もちろんユダヤ陰謀論などは、特定の民族への憎悪を煽るヘイトスピーチだから、ストレートに危険である。
 だからこうした話題を笑って楽しむのはいいけど、真剣に聴かない方がいい。懐疑的に、笑いながら聴くのが一番である。

 abさんはこうも書いている。


単に書き手の無知や間違いを指摘したいだけなら、本人に直接言うなり手紙やメールを出すなりすれば済む事。

 abさんが本気でこんなことを信じておられるのだとしたら、「人がいい」「現実を見ていない」としか言いようがない。
 僕が『トンデモ本の世界』の、それも最初に紹介した矢追純一『ナチスがUFOを造っていた』の項で、こう書いていたのをお忘れなのだろうか。


 ベテランUFO研究家の高梨純一氏は、矢追スペシャルが放送されるたびに、内容の間違いを指摘した手紙をマスコミ各社に送りつけているという。その熱心さには頭が下がるが、効果があるようにはみえない。(後略)

 そう、どんなに間違いを指摘されても、矢追氏はデタラメな番組を作ることをやめはしなかった。
 矢追氏だけではない。『トンデモ本の世界』の「清家新一」「コンノケンイチ」などの項を読み直してほしい。彼らが批判に対して耳を傾けなかったことがお分かりだろう。僕も一度、清家新一氏に手紙を出し、間違いを指摘したことがあるが、無視された。小石泉氏に送った手紙は受け取り拒否されて戻ってきた。
 副島隆彦『人類の月面着陸は無かったろう論』という本もそうだ。僕は『人類の月面着陸はあったんだ論』の中で詳しく取り上げたし、他にも副島氏の説の間違いを指摘している人は大勢いた。だが、副島氏はそれらの膨大な反論をすべて無視した。
『人類の月面着陸は無かったろう論』の中にはこう書かれている。


 だからここではっきり書いておく。もし私の主張が明白に間違いで、アポロ11号の飛行士たちが月面に着陸していたことの明白な証拠が出てきたら、その時は私は筆を折る。もう二度と本を書いて出版することをしない。これだけの深い決意で私は本書を書いた。本当の人生の一本勝負である。(295ページ)

 しかし、副島氏は2016年現在、まだ本を出し続けている。してみると、いまだに自分の主張が間違いだとは認めていないのだろう。

 トンデモ本シリーズではないが、『“環境問題のウソ”のウソ』という本を書いたことがある。ベストセラーになった武田邦彦『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』の間違いを暴いた本である。武田氏が本に載せたグラフは捏造だった。本に書いてあるデータの多くも間違っているか、論理的におかしいものばかりだった。
 また武田氏は、1984年元旦の朝日新聞に「世界の平均気温が上昇すると南極や北極の氷が溶けて海水面が上昇する」という文章が載っていると主張し、「誤報」だと非難していた。だが実際にはそんな文章は存在しなかった。武田氏は僕とのメールのやり取りの中で、自分の間違いを認め、「ともかく修正の努力はします」と書いた。しかし、それから3ヶ月後に出た第10刷でも、依然として初版と同じく、「記事には『北極の氷が溶けて海水面が上がる』と書いてある」などというありもしないことが書かれていた。


 あすかあきお氏など、著書の中で批判した古関智也氏に対して訴訟を起こした。(でもって見事に敗訴)

http://www2.plala.or.jp/daisinjitu/
http://www2.plala.or.jp/daisinjitu/judg/index.html

 僕の知る限り、トンデモ本の著者で、間違いを指摘されて素直にそれを認め、自説を撤回した者は一人もいない。なぜなら──

①デタラメと知っていて商売で書いている。
②本人も完全に信じこんでいる。

 このどちらかだからだ。abさんが言うような、「本人に直接言うなり手紙やメールを出す」という行為は、無視されるだけ。まったく無駄なのである。
 もっときつい言葉で言わせてもらうなら、「本人に直接言うなり手紙やメールを出す」というのは、「間違った考えが世間に広まるのを知っていて、何もしないで見過ごす」のと同義語だ。
 著者だけに言うのではなく、もっと多くの人に、「これはおかしい」「信じちゃいけないぞ」と訴えなければいけないのだ。

 また、トンデモ説の中には、すでに害になっているものも多い。
 たとえば「東日本大震災は「ちきゅう」の起こした人工地震だ」という説は、「ちきゅう」で働いている真面目な研究者たちを「大量殺戮者だ」と言っているわけで、おぞましい誹謗中傷である。アポロ陰謀説だって、苦難を乗り越えて月着陸を達成した宇宙飛行士や、それを支えたNASAの人たちに対する中傷だ。また、「相対性理論は間違っている」という説は、素人でも気がつく間違いに科学者たちが気づいてないと主張している。つまり世界中の物理学者をマヌケだと中傷しているのだ。
 また『水からの伝言』や「江戸しぐさ」のように、教育の世界にまで食いこみ、子供たちに間違った知識を植えつけているものもある。最近では「胎内記憶」なども学校関係者の中に信奉者を広めており、不気味だ。
 abさんはこういう説に対しても、「本人に直接言うなり手紙やメールを出す」でいいと思っているのだろうか? 無辜の人に対する誹謗中傷が行なわれていても、学校で間違ったことが教えられていても、見て見ぬふりをするのが正しいと主張するのだろうか?

 また、僕は「言論弾圧をしてはいけない」と一貫して訴え続けている。たとえば『トンデモ本の世界』のあとがきではこう書いた。


 彼らの思想は間違いだらけだし、しばしば危険な内容を含んでいる。だが、決して彼らを弾圧すべきではない。弾圧は両刃の剣である。歴史を見ればわかるように、間違った思想が弾圧されるような時代では、正しい思想もまた弾圧されるのだ。言い換えれば、奇人たちがおおっぴらに活動できるということは、現代の日本がいかに自由な国であるかという証拠なのだ。

『トンデモ本の逆襲』(1996)のあとがきでは、

 トンデモ本が氾濫している状況に腹を立てる人もいる。だが、こうした本をやみくもに排斥しようとする態度は間違っている。弾圧などしてはならない。明白な実害のある場合を除いては、言論の自由は断固として保証されなければならない。
 無論、トンデモ本を批判する自由、好きな読み方で楽しむ自由もまた、保証されなければならない。それでこそ公平であり、真の言論の自曲である。

 あるいは『トンデモ本の世界T』(2004)のあとがき。

 僕は長いこと、トンデモ本の紹介を行なってきた。トンデモ本の著者の中には、ひどく間違ったことや不快なことを書く者が少なくない。しかし、僕は「彼らを世の中から排除しろ」とか「言論を規制しろ」とは言わない。たとえ自分にとって不快であっても、同じ世界に生きる以上、その存在は許容し合わないといけないと信じるからだ。「理解できない」「不快だ」というだけの理由で他人を排除し合っていたら、世界は滅びてしまう。
 例外は、人を殺したり、金を騙し取ったり、危険なデマをまき散らすなど、実際に他人に害を与えた場合である。そうした者が処罰されるのは当然だ。そうでないかぎり、彼らの言論の自由は保証されなければならない。
 もちろん、僕らが彼らを批判するのも言論の自由だし、たとえ彼らが僕らのことを不快に思ったとしても、それは許容してもらわねば困るのである。「俺は何を言ってもいいが、お前らが俺を批判するのは許さない」というのは公平ではない。
 本を書くという行為を軽く見てはいけない。僕はこうして文章を書きながらも、「間違ったことを書いて笑われるかも」という恐怖と常に背中合わせである(実際、マヌケなミスをやって笑われたことは何度もある)。冒頭の「僕はロリコンである」という文章にしてもそうで、笑われる覚悟をしたうえで、信念を持って書いている。批判されたり笑われたりするリスクを背負う覚悟のない者は、そもそも本を書くべきではない。

「撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだ」という言葉は、まことに正しいと思う。何か間違ったことを書いておいて、撃ち返されたら「撃たれた撃たれた」と騒ぐのは情けない。
  


2016年11月22日

と学会がやっていたことは「弱い者いじめ」だったのか?・1

 先日、このブログのコメント欄に、こんな書きこみがあった。

http://hirorin.otaden.jp/e437829.html


山本さん、ツイッターで「僕はいじめ被害者だから、いじめる側の心理はわからないし、わかりたくもない」と言ってましたよね?
では、私が教えてあげましょう。あなたが「と学会」でやってた事、それ自体が「いじめ」です。

「こいつ、こんな変な本を書いてるんだぜ!」「こんな変な説を唱えてるんだぜ!」と、わざわざ商業出版本やイベントであげつらってましたよね。
単に書き手の無知や間違いを指摘したいだけなら、本人に直接言うなり手紙やメールを出すなりすれば済む事。
なのにあなたはそうせず、不特定多数が読む本で「バカらしい」「アホかほんま?」「無知としか言いようが無い」って何回書きましたっけ?

それどころか、大賞をくれた事を本心から感謝して礼状をくれた三上晃さんのことも、その文面を晒しものにして更なる笑いものにしてましたよね。

断わっておきますが、私もいじめの被害にあった事はあります。重度知能障害者の妹をネタにされてね。
靴にガムを入れられるなんて生易しいぐらいのいじめにあいました。
とはいえ、私は山本さんと違って諦めたりせず、罵倒を録音したり証拠を揃えたりしてマスコミに送りつけ、いじめっ子をきっちり叩き潰しましたけど。

そんな私から見て、あなたがと学会でやってきた事は、立派に「いじめ」です。
相手に反撃できないところから、仲間内で「あいつ変なこと言ってるぜ!みんなも見ろよ、面白いぜ!」と騒ぐのは、普通にいじめですな。
それをネタに本を出して金稼ぎに利用してた分、下手ないじめっ子よりタチが悪いです。
相手から直接金を奪ってない分、カツアゲをするいじめっ子よりはマシですけど。

「違う、僕がやったのはいじめじゃない」なんて言っても無駄ですよ、いじめっ子は皆そう言い訳するものですからね。

いじめってものは、「自分達と違うものを排除したい」「群れで生きていく以上、弱い者は邪魔になる」という本能から来るものです。
いじめは正当なものでも不当なものでもありません。
いつでもどこでも誰でも、加害者にも被害者にもなり得るものに過ぎないのです。
山本さんだって私だって、いつまた被害者になるかも、逆に加害者になるかもわからないのです。

いい加減に「自分はいじめの被害者」といつまでも言い続けるのはおやめになる事です。
あなただって、似たような事をやってたんですから。

 ちょっと前にもツイッターで同じようなことを言っている人を見かけた。どうも、僕やと学会について同様のイメージを抱いている人は多いらしい。いい機会なので、そういう人たちにまとめて反論しておきたい。

 実は、「弱い者いじめはよくない」という批判は、1995年、最初の『トンデモ本の世界』を出した時からすでにあった。それに対し、僕は翌年(今から20年も前である)の『トンデモ本の逆襲』のあとがきで、こう反論している。


 第一に、トンデモの勢力は決して「弱い者」などではない。『トンデモ本の世界』でも紹介したように、宇野正美、深野一幸、五島勉といった人たちの本は、いずれも大手の出版社から発売され、何万部、時には何十万部も売れているのだ。すなわち、「世界はユダヤ秘密結社に支配されている」とか、「太陽は熱くない」とか、「一九九九年に人類は滅びる」などと信じる人が、現代の日本に、何万、何十万という単位で存在しているということなのである。
 物理を知らない素人が「相対性理論は間違っている」と主張する本が、何万部も売れている。それに対し、まともな物理学者が相対性理論の正しい解説書を書いても、その五分の一も売れるか怪しい。万葉集は朝鮮語で読めるとか、日本人の先祖はユダヤ人だといった本もよく売れるが、まともな言語学や歴史学の本がそんなに売れることはない。常識的な説よりも、奇説を唱える本のほうがよく売れる傾向がある。多くの大衆は明らかにトンデモ本のほうを支持しているのだ。
 いったいどっちが「弱い者」なのか?
 無論、小さな出版社から細々と本を出している人もいる。しかし、彼らも決して孤立しているわけではない。その思想は多くの場合、長い歴史を持つほかのトンデモ思想と密接に関連しており、いわば大きなトンデモ勢力の裾野に位置しているのである。
 第二に、我々はこうした本を弾圧しようなどと思っているのではない。憎んでいるのなら、こんなに情熱をこめて本を収集できるわけがない。むしろ逆で、こうした奇妙な本を愛し、その奇想を楽しんでいる。そして、この楽しさをもっと多くの人に知ってもらいたいと思っているのだ。世の中には、学校では教えてくれないこと、教科書や百科事典には救っていないことがたくさんある。大きな影響力を持ちながら、これまで注目されたことのなかったそうしたサブカルチャーにスポットを当て、その面白さを天下に知らしめたい──それが本書の意図である。

 ちなみに『トンデモ本の世界』で取り上げた本の著者には、他にも矢追純一、関英雄、竹内久美子、糸川英夫、あすかあきお、ドクター中松、大槻義彦などの有名人がいる。宇野正美氏のユダヤ陰謀本や川尻徹氏のノストラダムス本が、よく売れていて版を重ねていたのも事実だ。まして、古代帝國軍総統・万師露観氏など、誰がどう見ても「弱い者」ではあるまい。
 abさんがこうしたメジャーな人たちをみんな無視し、僕がいじめたという「弱い者」として、三上晃氏の名前しか挙げていないのは興味深い。五島勉氏や矢追純一氏らの名前を挙げたら、自らの論旨が崩壊してしまうことに気づいているのだろう。
 基本的な知識を解説しておく。本が出版された時に著者に入る印税は、定価×発行部数の10%が普通。つまり1000円の本が増刷を重ねて10万部出版されれば、著者には1000万円が支払われるわけである。(厳密には源泉徴収されるので、これよりも少し少ない)
 五島勉氏の『ノストラダムスの大予言』の公称発行部数は250万部、初版の定価は680円だったから、五島氏はこの1冊で約1億7000万円の収入を得たはずである。その後も『大予言』シリーズの続編やタイトルに『ノストラダムス』と書いている本を14冊も出していて、発行部数の総計は600万部を超えている。
 abさんは僕を「それをネタに本を出して金稼ぎに利用してた分、下手ないじめっ子よりタチが悪いです」と非難する。しかし、トンデモ本の著者たちがデタラメな内容の本を書いて大金を稼いでいることについては、なぜか目をそむけている。

「でも三上晃氏が弱者なのは事実だろう!?」と反論されるかもしれない。確かにその通り。しかし、僕らが弱者だけを狙って批判していたわけではないのも、明白な事実だ。
 僕は『トンデモ本』シリーズで取り上げる際、相手が有名人だろうと無名の人だろうと、金持ちだろうと貧乏だろうと区別しなかった。無名の人だから手を抜くなんてことはしたくなかった。
 また、abさんは僕がこういうことを書いていることは知らなかったようだ。『トンデモ本の逆襲』の「長いあとがき」である。(『逆襲』は読まなかったのかな?)


 どうか誤解なさらないように、催は三上氏が嫌いなわけではありません。それどころか、文章からにじみ出るお人柄にとても好感を抱いています。まだお会いしたことはありませんが、きっといい人に違いないと確信しています。実際、三上氏に会った人は口を揃えて「いい人だ」と言っておられます。
 三上氏を取材したある方の話によれば、三上氏はと学会が送った「日本トンデモ本大賞」の賞状をとても大事にされており、嬉しそうに見せびらかしておられたとのこと。お送りした甲斐があったと、僕は心の底から喜んでいます。
 ただ、「いい人」=「正しい人」とは限らないところが、世の中の悲しいところであり、面白いところでもあります。
 いくら三上氏がいい人であっても、「太陽黒点は大森林地帯だ」とか「原発から来た電気は放射能を帯びている」とかいう説に対しては、僕は「そりゃ違うよね」と言わざるを得ないのです。なぜなら、ここで「そのとおりです」と言ってしまったら、嘘をつくことになってしまうからです。三上氏がどれほど真剣に研究しようと、後援会のみなさんがいかに三上氏を崇拝しようと、太陽が熱いという事実は動かせないのです。
 三上氏の誤りを指摘することが三上氏に対する侮辱になるというのなら、「現代の天文学はすべて間違っている」と主張することは、まじめに研究している世界中の天文学者に対する侮辱になるということもお忘れなく。

 また、僕がトンデモさんたちに対してどんな感情を抱いているかも示しておく。『トンデモ本の世界V』(2007)のあとがきである。

 普通の人とトンデモさんの間に明確な境界線があるわけではない。人は誰でも(僕やあなたも)、根拠のないトンデモ説にハマってしまう可能性がある。僕自身、本やネットで勉強するうちに、これまで自分が信じていたことが間違いだと知らされて驚いた経験が何回もある。おそらくあなたも、気がつかないうちに、トンデモ説のひとつやふたつは信じてしまっているはずだ。
 言うならば、僕らはみなトンデモさん予備軍なのである。

 トンデモ本研究というのは、単に間違っている人を笑い飛ばすものではないと、僕は思っている。トンデモさんたちを自分とは違う人間だと思ってはいけない。自分も彼らと同じ人間であり、いつ同じような間違いを犯すかもしれないと常に警戒しなくてはいけない。
 他の人の間違いを参考にして、他山の石とすべきなのだ。

  
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2016年08月06日

「イルミナティカード」でテレビに出たのはいいけれど……

 これまでこのブログや本で何度も「イルミナティカード」(正式名称「Illuminati: New World Order」)の嘘を暴いてきた。

http://hirorin.otaden.jp/e164900.html
http://hirorin.otaden.jp/e175801.html
http://hirorin.otaden.jp/e258455.html
http://hirorin.otaden.jp/e261607.html

http://www.asios.org/books.html#b14


 こんなデマが広がったら危険だな……とは思っていたが、まさか大量虐殺をやる奴まで現れるとは、まったく予想外だった。
 この手紙のことが報じられたら、僕はすぐにツイッターでも情報を流した。

大量虐殺事件の容疑者が言及していた「イルミナティカード」とは何か?
http://togetter.com/li/1005428

 それを見たらしく、TBSから取材が来た。
 以下は7月29日放映のTBS『ニュース23』の内容。TBSの動画ニュースから引用させていただいた。(現在は掲載期間が終了したので削除)



障害者19人殺害 “犯行予告”に同封の紙入手

 植松容疑者が衆議院議長にあてた犯行予告ともとれる手紙には、7枚の紙が同封されていました。不可思議なカードが印刷されているものが5枚、イラストが2枚。「NEWS23」が独自に入手しました。
 障害者施設の入所者19人が殺害された事件で逮捕された植松容疑者。「イルミナティ」と書かれたカードにどんな意味が。

 「イルミナティが作られたイルミナティカードを勉強させていただきました」(植松容疑者が衆院議長に送った手紙より)

 イルミナティとは秘密結社の名称のこと。この「イルミナティ・カード」を持っている人物に私たちは接触することができました。SF作家でゲームに詳しい山本弘氏。アメリカで90年代に発売されたカードゲームで、秘密結社同士が組織の拡大を競い合うゲームだと説明します。しかし・・・

 「もう何年も前からカードが秘密結社の“陰謀の計画書”というばかな説が流れている」(SF作家 山本弘氏)

 きっかけは、2001年のアメリカ同時多発テロでした。

 「カードの中にニューヨークのツインタワーが爆発する絵がある。それを見た人が“現実の予言”と騒ぎ、注目を集めた。陰謀論者が“世界征服をたくらむ陰謀組織の計画書だ”と・・・ありえない」(SF作家 山本弘氏)

 植松容疑者が衆議院議長にあてた手紙。その中に、まさにそのカードのコピーも含まれていました。

 「隕石衝突、疫病、飢餓・・・あらゆる災害や事件のカードがある。現実と一致するのは当たり前」(SF作家 山本弘氏)

 一方、植松容疑者が議長にあてた手紙には、ゲームの中で“伝説の指導者”とされる人物のカードも。彼に自らを重ねたのか、指導者の名前「BOB」の文字を独自の解釈で「4013」と読み替えた上で、逆さから自分の名前と同じ「サ・ト・シ」と読んでいました。

 「私の名前はサトシです。2月15日に気が付き、愕然としました。今こそ革命を行い、全人類の為に必要不可欠である辛い決断をする時だと考えます」(植松容疑者が衆院議長に送った手紙より)

 植松容疑者は、イルミナティ・カードに勝手な解釈を加え、実際にはあり得ない陰謀論の世界に入り込んでいたのでしょうか。

 「陰謀論を信じると非常に都合がよい。自分に不利な情報が出てきても陰謀組織がばらまいたデマと言える。自分の世界が完全無欠になる」(SF作家 山本弘氏)

 背景を説明しておくと、「イルミナティカード」の件で『ニュース23』から急に取材の申し込みが来たのは、7月29日。
 その日は東京創元社「第7回創元SF短編賞贈呈式+トークイベント」のために東京に行っていた。イベント前に創元社の会議室で大森望氏らと雑談をしていたら、早川書房経由でTBSから電話がかかってきた。
 その日は、これもたまたま『SPA!』からも同じ件で問い合わせがあって、インタビューの予定があったもんで、実物を見せた方がいいだろうと、僕が所有しているINWOのスターター・キットを家から持っていっていた。(結局、『SPA!』は電話インタビューになったので、使わなかった)
 電話が来てから30分ほどして、TBSのスタッフが僕の泊まっているホテルにやってきて、ホテルの一室を借りて撮影を行なった。 インタビューのためにわざわざ部屋を借りるというのは初めて知った。

 けっこういろいろ喋ったんだけど、放映を見てがっかり。多少はカットされるのは覚悟してたけど、いちばん大事な部分がばっさり切られてる!

「これはスティーブ・ジャクソン・ゲームズが作った、陰謀論をパロディにしたトレーディング・カードゲームです」

 僕は何回も何回もそう説明したんだけどなあ。そこがいちばん重要だよねえ?
 あと、こうも言ったよ。

「こんな事件が起きたからって、ゲームをバッシングするのはやめてほしい。ゲーム会社も、ゲームで遊んでいる人たちも、これが冗談ゲームだと分かってて楽しんでるんですから。ゲームのことを何も知らない人間が勝手に騒いでるだけなんです」

 でも、そこもカット。
 これではたしてINWOについての正しい知識が視聴者に伝わったんだろうか? あの番組内容じゃ、TCGであることすら分からないんじゃないかと思うんだが。
 これを機会に、テレビを使って、INWOをめぐるデマを徹底的に潰したいと思ってたんだけど、これではちょっと難しいかも。

 なぜカットされたのか?
 実はディレクターさん自身が、TCGというものをまったく知らなかったんである。僕が「『ポケモンカードゲーム』とか『遊戯王』みたいなもんです」と説明しても、きょとんとしてた。
 どうも自分に理解できないから、視聴者にも理解できないと思ってカットしたんじゃないかと思う。
 そう言えば、フジテレビがこの植松容疑者の手紙のことをニュースで報じた時、なぜか「イルミナティ」「イルミナティカード」という箇所を黒く塗りつぶしてあったんだそうだ。なぜ塗りつぶしたのか? ネットではなんか深読みしている人が多かったけど、僕が思うに、理由は簡単。
 フジテレビのディレクターも、「イルミナティカード」って何なのかまったく理解できなかったんだと思う。それで万が一、登録商標か何かで抗議が来るとまずいと考えて消したんだろう。
 消すんだったら「フリーメーソン」の方だろって思うんだけど。イルミナティは実在しないけど、フリーメーソンは実在の団体だぞ!

 もちろん僕はTBSのディレクターに、TCGについて説明し、さらにスティーブ・ジャクソン・ゲームズの『トゥーン』とか『ニンジャバーガー』についても説明し、グループSNEにいた頃に『GURPS』関係の仕事をしてたから無関係というわけでもないと語った。

「そのがーぷすというのもカードゲームなんですか?」
「いや、これはテーブルトークRPGで……」

 そこから今度はテーブルトークRPGについても解説するはめに!(笑) あー、めんどくせえ! でも、もちろんそこもカットされた。

 他にも植松容疑者の手紙には、「18」という数字に注目してる箇所があった。僕が「ははあ、なるほど18ですね」と納得していたら、「18って何か意味があるんですか?」と訊かれた。「6+6+6。獣の数字666ですよ」と説明したんだけど……。

 ディレクター氏、「666」も知らない!

「ヨハネ黙示録の中に出てくる数字で……」と説明したけど、どうもヨハネ黙示録自体、分かってないみたい。
 まあ、しかたないなあ。オカルトとかゲームとかに興味のない一般人の知識ってこんなものか……。
 そう言えば思い出した。21年前のオウム事件の時、マスコミ関係者で「ハルマゲドン」という言葉を知らない人がいたという話を。『幻魔大戦』がアニメになった時、テレビでさんざん「ハルマゲドン接近」って言ってたはずなのに。

 もっとも、マスコミ関係者がみんな無知というわけじゃない。他にも取材してきた新聞記者の方の中には、僕が「トレーディング・カードゲームって分かります?」と言うと「『遊戯王』みたいなやつですよね」と即答された方もいた。
 だからマスコミ関係者の中にも、知識のある人とない人がいるんだろう。


 ちなみにニュースの中に出てきた「伝説の指導者」ボブというのは、亜天才教会(Church of the SubGenius)という冗談宗教の教祖とされる人物。そのBOBを数字に置き換えて13013になってるわけ。

 植松容疑者は最初の1と3を足して4にし、「4013」にして、それを逆から読んで「3 10 4」=「さとし」にしていた。
 もちろん、そんなこじつけに何の意味もないのは言うまでもない。
 亜天才教会については、解説するのは面倒だし僕も詳しくないんで、ウィキペディアを読んでほしい。

https://en.wikipedia.org/wiki/Church_of_the_SubGenius

 アメリカには他にもこういう冗談宗教がいくつもある。

http://www.h7.dion.ne.jp/~samwyn/parorels.htm

「空飛ぶスパゲッティ・モンスター教」は日本でも本が出ていて有名。他にもINWOには、不和の女神エリスをシンボルとする「ディスコルディアン」も出てくる。

https://en.wikipedia.org/wiki/Discordianism

 こういうものを知らない日本人が多いのはしかたないけど、検索すれば一発で出るからね? 分からなかったら検索しようね。

【8月11日追記】
 同じ7月29日に、『SPA!』からも電話で取材を受けたことは書いたけど、『SPA!』8月9日号に載った記事を見てびっくり。
 僕がこのゲームのことを「IWNO」と言ったことになってる! それも2回も!

 いや、確かにINWO(イルミナティ:ニュー・ワールド・オーダー)と言ったよ、何度も。これじゃまるで僕が間違えたように見えるじゃないか。
 それに僕の知識も正確とは限らないし、電話越しでは聞き取りミスもあるかもしれないと思って、「詳しいことはスティーブ・ジャクソン・ゲームズのサイトに行けば書いてありますから読んでください」とも言ったはず。
 でも、この記者、ゲームの名前なんて基本的なことも間違えるってことは、結局、スティーブ・ジャクソン・ゲームズのサイトも見ずに記事を書いたってことだろう。
 信じられない。
 何で記事を書く前にその程度の手間をかけないんだ?
  


2016年06月18日

『幻解!超常ファイル』裏話

幻解!超常ファイル17「超能力捜査の謎&究極UFO解析バトル」
http://www4.nhk.or.jp/darkside/5/

 9日に放送したこの番組の裏側を少し。
 スタッフが仕事場に来られて、僕の出演シーンを撮影したのは5月23日なんですが、実は本編収録前、4月にスタッフの方と東京でお会いして、打ち合わせをやってます。
 向こうは僕の『超能力番組を10倍楽しむ本』を読んでおられて、あの本の内容をベースに番組を作れないかという話でした。
 ただ問題は、さすがに『FBI超能力捜査官』や『TVのチカラ』といった民放の番組名を具体的に出すことができないということ。
 どうやって番組名を出すことなく嘘を暴けるのか……と悩んだあげくに僕が提案したのが、『超能力番組を10倍楽しむ本』の中でやった実験──ある場所で選んだ10個のターゲットを、別の場所で探してみるというのを、番組内でやってみたら、というもの。
 いちおうあの実験は実際に自分でやってみたんだけど、はたして他の人が再現してうまくいくかどうかは自信がなかったんですよね。でも、スタッフがやってみたら、かなり劇的な結果になったと分かってひと安心。

 なぜ、あの手の番組の中では、デタラメな透視の結果を元にして行方不明者が見つかるのか?
 収録の際には、「あの手の番組内で見つかる行方不明者の多くは、仮名で、顔にもモザイクがかかっているから、はたして実在の人物なのか分からない」という話もしたんですが、そこはカットされました。
 収録前に、「他局の番組がインチキをやっていると番組内で断言するのはまずいんじゃないか」という話がNHKの局内で出ているという話は聞いてたんで、まあカットされるのは予想の範囲内でしたが。

 実際、『TVのチカラ』の中では、探偵の調査や一般からの情報によって行方不明者が見つかった例はあるけど、超能力者の透視が役立ったことは一度もない。
『FBI超能力捜査官』の場合、たとえば2007年の『FBI超能力捜査官 第12弾』で、「麒麟」の田村裕の行方不明の父親を見つけているけど、これもかなりのインチキ。
 マクモニーグルが透視した、田村の父親の居場所は、

・大阪のなんば駅の近く。
・近くに丸いビルと地下街がある。
・ピーチカラーの建物の3階。

 でも、実際に田村の父親が住んでいたのは、

・なんば駅から10km以上離れており
・近くに丸いビルも地下街もなく
・古い木造アパートの2階

 つまりマクモニーグルの透視は見事にはずれていたんだけど、番組中では、あたかも透視によって見つかったように編集されていたんですな。
 さらにスタッフは、ベージュ色の建物を、画面上で色を変えて「ピーチカラー」に見せかけただけではなく、「ピーチ色の建物ってあれじゃないですか?」「ああーっ! あれかねー」というわざとらしい芝居までやってみせていました。

 なお、田村の父親発見の回について詳しく知りたい方は、『と学会年鑑BROWN』を参照してください。
https://www.amazon.co.jp/dp/4903063283


『幻解!超常ファイル』では、具体的に『FBI超能力捜査官』という番組名こそ出さなかったものの、『USO超能力捜査ファイル』という架空の超常番組を再現。その映像が見事に『FBI超能力捜査官』そのまんま!
 ナレーターの声や喋り方まで似せてるうえに、「あれじゃないですか、あれ?」「あれか」「クリーム色」というわざとらしい会話(これ、明らかに田村の父親の回のパロディだ!)、最後にモザイクのかかった依頼者が父親に手紙を書くところまで完璧!
 いやー、『幻解!超常ファイル』のスタッフの凝りように感心しましたわ。

 後半はUFO映像の話。
 あのロシアのUFO、僕は藤木文彦さんの分析で終わっちゃってると思うんですけどね。藤木さんの指摘の通り、目撃者が指している方向がUFOと一致していないのがおかしいし、撮影者が言っているように手持ちの携帯電話で撮影していたなら、移動するUFOを追ってパンしないって変。
  


2016年06月06日

また『幻解!超常ファイル』に出ます。

 BSプレミアム6月9日(木)放送です。
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http://www4.nhk.or.jp/darkside/
午後9時00分~ 午後10時00分
幻解!超常ファイル17「超能力捜査の謎&究極UFO解析バトル」
アメリカ直撃取材!未解決事件を解き明かす超能力捜査はホンモノか?全米の警察が証言した衝撃の実態とは?▽究極の映像分析バトル!未解明UFOにプロ解析チームが挑む!

“光と闇”の栗山千明が超常現象の謎に迫る、シリーズ最新作!▽「ターゲットはここにいる!」未解決事件の犯人や行方不明者を“遠隔透視”で探る超能力捜査。本場アメリカを緊急取材!超能力者は本当に事件を解決しているのか?刑事たちの衝撃証言で意外なからくりが明らかに!▽これは隠しておきたかった!番組スタッフが解明できなかったUFO映像に、究極解析チームが挑む!ホンモノかニセモノか?前代未聞の映像分析バトル!

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 今回、僕が出演するのは前半の「超能力捜査の謎」。
 テレビの超能力捜査番組がなぜ的中しているように見えるのかを検証するというものなんですが、スタッフの方は僕の著書『超能力番組を10倍楽しむ本』を参考にされていました。

 東京に行った時に、事前に打ち合わせしました。資料も提供したんですが、さすがに民放の番組名は具体的に出せないので、どう取り扱えばいいかと悩んでおられた様子。そこで僕が「こういう実験をやってみたら」と提案したところ、それが受け入れられて、やっていただけました。
 どんな実験かは観てのお楽しみに。正直、うまくいくかどうかあまり自信なかったんですが、結果はかなり劇的なものになりましたよ。