2017年09月17日

ASIOS「UFO事件クロニクル」出版記念トーク

ASIOS「UFO事件クロニクル」出版記念トーク

 子供の頃、少年雑誌に載っていたあの怪事件の真相は?
 テレビの特番でも紹介されたあの話って、結局、どうなったの?
 古今東西のUFO事件をまとめて紹介した『UFO事件クロニクル』(彩図社)を上梓したASIOS(超常現象の懐疑的調査のための会)が新宿に集結! 今だからこそ気になるUFOの謎や、UFOをめぐるロマンや思い入れをたっぷり語ります。

[出演] ASIOS(超常現象の懐疑的調査のための会) 山本弘、皆神龍太郎、本城達也
     小山田浩史

[日時] 2017年9月24日(日) 開場・19:00 開始・19:30 (約2時間を予定) 

[会場] Live Wire HIGH VOLTAGE CAFE
     東京都新宿区新宿5丁目12-1 新宿氷業ビル3F(1F割烹「いちりん」右階段上がる)
    ・都営新宿線「新宿3丁目」駅 C6~8出口から徒歩5分
    ・丸ノ内線・副都心線「新宿3丁目」駅 B2出口から徒歩8分
    ・JR線「新宿」駅 東口から徒歩12分
 
[料金] 1500円 (当日券500円up)

※終演後にフリーフード&フリードリンクの懇親会を開催します(約2時間を予定。出演者は参加できない場合があります)。参加費は3500円です。懇親会参加者には、入場時にウェルカムの1ドリンクをプレゼント。参加希望の方はオプションの「懇親会」の項目を「参加する」に変更してお申し込みください。参加費も一緒にお支払いただきます。

※懇親会に参加されない方は、当日受付時に別途1ドリンク代500円が必要となります。(2ドリンク購入の場合は100円引きの900円とお得です)
 
 ご予約はこちらへ
http://boutreview.shop-pro.jp/?pid=122245352

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 すみません、1週間後に迫った慌ただしい告知です。最近、仕事がめちゃくちゃ忙しくて、なかなかこのブログ、更新できないんですよね……。
 東京近郊でUFOに興味のある方、ぜひお越しください。本の中では書けなかった話もいろいろです。
 もっとも、「UFOに興味がある」といっても、僕らASIOSですからね。アダムスキー信者やラエリアンの方が来られても、あっさり論破しちゃうと思いますんで覚悟してください(^^;)。
 もちろん著書の販売なども行ないます。
  
タグ :PRASIOSUFO


Posted by 山本弘 at 20:19Comments(1)オカルトPR

2017年09月06日

『ビーバップ!ハイヒール』出演裏話

 番組の放映から1週間が経ったので、番組の裏側をお話ししましょう。

https://www.asahi.co.jp/be-bop/

「常識を超越している。科学的に説明不可能。そんな言葉に騙されてはいけません」
「超常現象の多くには、調べてみると意外な真相が隠されています」

 これは僕が考えたんじゃなく、台本に書いてあった台詞です。当たり前ですけど、こういう「かっこつけた台詞」は、あらかじめ台本で決められていて、出演者はその通りに喋ることを要求されるんです。もちろん、あまりにも自分の意図と違う場合は改変させてもらいますけど。
 この場合も、言い回しがなんか僕の言いたいことと違うので、何箇所か修正をお願いしましたが、だいたい台本通りに喋ってます。
 もっとも、トチって何度もリテイクしましたけどね(笑)。台本通りに喋るのってすごく苦手。あと、自分の演技力のなさにがっくりきます。まったく棒読みです。

 このシーンで画面にちらっと映る本の一冊は、ポピュラサイエンス臨時増刊、ジェラルド・ハードの『地球は狙われている』(講談社・1951)。〈BISビブリオバトル部〉の2巻『幽霊なんて怖くない』に出したので、ご存知の方も多いのでは?

 あと、パソコンのキーを叩いているシーンが映りますけど、実はあそこはテレビ局の会議室で撮影されています。ノートパソコンも僕のじゃなく、スタッフの私物。おまけにロックがかかっていて、キーを叩いても画面に文字は出ません(笑)。叩いてるふりをしてるだけです。
 小説家がこんな風にバラエティ番組に出演する時には、必ずと言っていいほど、パソコンで何かを打っているふりをさせられるんです。僕なんかもう何回やらされたことか。小説家の仕事風景のつもりなんでしょうが、当たり前ですけど、すべてヤラセです。TV局の取材が来てるのに、その前で仕事する小説家なんていません(笑)。
 学者の方の場合、分厚い本を読んでいるカットがよく映りますよね。こんな映像に何の意味があるのかなと、いつも疑問に思うんですが。

 たむらけんじがスペインで撮影したUFOの話。放映ではカットされてますけど、実は彼はかなりしつこかった!
 僕が「手ぶれでしょ?」と言うと、僕の席まで来て、スマホの画面を見せつけるんですよ。「これは絶対に手ぶれじゃありません」と、力強く。でも、僕は相手にしませんでした。
 というのも、その直前、「(手ぶれしないように)がっつりと脇を締めて」と撮影の模様を実演しているまさにその瞬間、彼の手が動いているのを目にしちゃったからです(笑)。でも、彼は自分の手が動いていたことにまったく気がついていませんでした。
 だからUFOを目撃した瞬間もそうだったんでしょう。本人は「スマホを固定していた」と思いこんでるけど、実際は興奮して揺れてたんじゃないかと。

 UFOの正体については、「凧じゃないですか」と推理を口にしました。海外にはLEDのついた凧があって、日本でも2011年に荒川で、それがUFOと誤認されて騒ぎになってるんです。それに似てるなと。でも、そこもカットです
https://www.youtube.com/watch?v=8754uaV_h_c
 あと、大晦日のカウントダウンの最中に撮影されたというのもひっかかります。カウントダウンの時には、他にも住民がいろんなものを飛ばしてるんじゃないでしょうか? 凧が飛んでいてもおかしくない気がします。
 まあ、正体が分からないという点では、まさにUFO(未確認飛行物体)ではあるんですが。

 お分かりでしょうけど、番組中で紹介されている謎解きは、ほとんど僕がやったものじゃありません。海外のニュースから拾ってきたネタや、ASIOSのメンバーが解明したやつばかりです。
 例外は最初から2番目の「トワイライト・フェノメノン」。あれはフジテレビの『ザ・ベストハウス123』で放映されたネタなんですが、当時、番組が終わった直後にすぐにインターネットで検索かけたら、2時間ほどで、日時や場所、原因から、なんというロケットかまで、すっかり特定できました。
 テレビでは「謎」と呼ばれていても、実はその程度の調査で真相が判明することが多いんです。ほとんどの人は、そんな調査をやらないだけで。

 三田光一の念写した「月の裏側」。
 僕はこの時、写真の背景の星空を指差して、江川達也氏に「これランダムじゃなく、手で打ってますよね?」と話を振りました。マンガでは星空を描く場合、黒いバックにブラシにつけたホワイトを散らすのが普通です。マンガ家さんならこの星の分布の不自然さにすぐ気がつくだろうと。
 実際、江川さんも「手で描いてますよね」と同意してくださったんですが、そこもカットされました。


 ノストラダムスの話だけは、僕の方からスタッフに、「このネタは受けるんじゃないんですか」と提案したもの。案の定、「五島勉」という人名は具体的に出せませんでしたし、構成は向こうにおまかせしたので、再現ドラマの考証がいろいろおかしいんですが、「実はインチキでした」というのは視聴者に伝わったと思います。
 オイルショックやトイレットペーパー騒ぎなんてものがあったことは、今の若い人は知らないでしょうし。

 ちなみに今発売中の『RikaTan(理科の探検)』という雑誌の10月号に、『ノストラダムスの大予言』という本のインチキを解説した記事を載せています。興味のある方はお読みいただければ幸いです。

 というわけで、どうにか本番は乗り切れた……思ってたんですが、最後の最後でハプニングが。「奥様は超常現象というのを信じておられるんですか」という質問を振られて、嘘をつくわけにもいかず、「我が家のトイレにドイツの幽霊がいる」という話をするはめになっちゃいました(笑)。
 前にも本に書きましたけど、妻は実は霊媒体質なんですよ。幽霊は見えないけど感じられるんだそうで。新婚直後、妻は友人たちとドイツに観光にいったんですが、帰ってからしばらくして「トイレに幽霊がいる」という話をしだしたんですよ。たぶん古城観光に行ったんで、その時についてきたらしいと。
 ドイツの古城の幽霊! それはかなり由緒正しい奴なんでは?
 妻の話によれば、特に悪い霊ではなかったらしく、お祓いをすることもなく、気がつくとどっかに行ったらしいんですけどね。

 その後、さらに放送ではカットされた部分があります。
「お子さんはどう思ってらっしゃるんですか?」と問われて、またも「娘も小さい頃は妖精さんや幽霊さんが見える子で……」という話をしちゃいました。
 いや、ほんと。小学校に入る前までは、当たり前のように妖精が見えてたり、亡くなったお祖父ちゃんが見えたりする子だったんですよ。今はもう大人になって、見えなくなってますけど。
 たぶん子供というのは誰でも、小さい頃は「見えない友達」がいるんじゃないかと思うんですよ。大きくなるにつれて見えなくなって、忘れてゆくだけで。

 というわけで、僕は家ではオカルトに関しては寛容なスタンスを貫いています。「そんなの見えたってたいしたことないよね」と。
 ですから我が家は、結婚以来20年以上、とても平和です。

  


2017年08月28日

テレビに出演します

 8月31日(木)にテレビに出演します。
 朝日放送の『ビーバップ・ハイヒール』という番組です。
 関西ローカルですが、放送から7日以内なら見逃し配信がありますので、他の地方の方でもご覧になれるはずです。
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2017年08月31日(木)よる11時17分
驚愕ミステリー~超常現象の謎を解け!
https://www.asahi.co.jp/be-bop/

UFOや呪い、超人など、不思議に満ちた“超常現象”の謎を解き、真相を解明する!
髪の毛が伸びる日本人形の真相とは!?衝撃の超常現象の謎を解く!
日本中を恐怖の渦に陥れた「ノストラダムスの大予言」!だが、外国人はほとんど知らなかった!なぜ、日本人だけが信じてしまったのか!?

(中略)

出演者

ハイヒール(リンゴ・モモコ)
筒井康隆、江川達也
たむらけんじ
大野聡美(ABCアナウンサー)
ブラックマヨネーズ(小杉・吉田)
女性ゲスト:岡田紗佳
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 最初にちょっと経緯を説明しておくと、朝日放送のスタッフは、僕も所属しているASIOSの『謎解き 超常現象』のシリーズを読んで、会に連絡を取って来られたんです。僕が関西在住ということで、ASIOSを代表して出演することになりました。
 ただ、番組の構成としては、毎回、一人の専門家をゲストに呼んで話を聞くというものなので、ASIOSについてほとんど触れられませんでした。なんか僕一人で調査してるかのように誤解されるかもしれませんけど、本当はみんなでやってるんですよ。

 あと、番組中で扱われる超常現象は、ASIOSの本の内容などを基に番組スタッフが選んだものです。だから僕が関わっていないエピソードもあります。
 あくまでバラエティ番組なので、現象を解明する再現ビデオなども、コント風に笑いを取れるように作られています。ご了承願います。

 僕の方から提供したネタは「ノストラダムスの大予言」です。
 さすがに五島勉氏の名前は出せませんでしたが、『ノストラダムスの大予言』という本の真相について、バラエティ番組の中で言及されることは珍しいんじゃないかと思います。90年代のテレビのバラエティ番組って、ノストラダムスの予言で視聴者を怖がらせるものばっかりでしたしね(笑)。
 ただ、「外国人はほとんど知らなかった!」「日本人だけが信じてしまった」というのはさすがに大げさです。日本ほどではないけど、海外でもけっこうノストラダムス本は出ていますから。僕は「ここは違うよな」と思ってスタッフにそう言ったんですが、すでに台本に書かれちゃってたんで(笑)。ただ、他の国と違い、日本でのブームが異常だったのは確かなんですが。
  


Posted by 山本弘 at 20:32Comments(5)オカルトPRテレビ番組

2017年08月24日

新刊『UFO事件クロニクル』

 ASIOS の新刊『UFO事件クロニクル』(彩図社)、そろそろ書店に並ぶ頃です。



 今回のテーマはズバリUFO! ケネス・アーノルド事件、ロズウェル事件、マンテル大尉事件、捕まった宇宙人の写真、フラットウッズ・モンスター、リンゴ送れシー事件、ヒル夫妻誘拐事件、ウンモ事件、ソコロ事件などなど、UFO史上の有名な事件を年代順に紹介。もちろんいつも通りのASIOSですから、時には身も蓋もない真相を暴いちゃいます(笑)。
  これまでのUFO本では触れられなかった、ASIOSのメンバーによる新発見の情報もいろいろ。介良事件(1972)で子供たちが捕まえた小型UFOにそっくりの鋳物の灰皿とか、甲府事件(1975)で子供たちが描いた宇宙人の絵に似た1974年の『少年マガジン』のイラストとか。
 その反面、不可解な事件については謎のままなんですけどね。

 今回の僕の原稿は少なめです。それも「イースタン航空機事件」は前に別の本で書いた原稿の流用です(苦笑)。でも、「円盤の出てくる活字SF」の項は、SF界とUFO界の関係がよく分かって、SFファンにとっては面白いはずと自負しております。

 他にも、UFO関係者の人名辞典、用語辞典、UFO年表など、これ一冊でUFOのことがたいてい分かるので、UFO入門書としては最適です。
  
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Posted by 山本弘 at 22:50Comments(1)オカルトPR

2017年03月06日

中学生の6割は「月は西からのぼる」と信じている。(3)

 他にもいくつか、ニセ科学関係の質問をした。

15. タバコをたくさん吸う人は肺がんになりやすい。
(回答者数387人)
信じている   301人(77.8%)
やや信じている43人(11.1%)
知らない・わからない 28人(7.2%)
やや疑っている8人(2.1%)
信じない   7人(1.8%)

 これ、実は武田邦彦教授(医学は専門ではない)が唱えるニセ科学「タバコ無害論」に関する質問である。NATROMさん(本物の内科医である)がきちんと反論しているので参照されたい。

「喫煙率が下がると肺がん死が増える」のはなぜか?
http://blogos.com/article/34288/

 こちらは村上義孝氏(保健学博士)による解説。

グラフによれば、たばこは無害?
http://www.asahi.com/articles/SDI201512104752.html
「たばこは有害」示したコホート研究
http://www.asahi.com/articles/SDI201512246051.html

 こんな珍説を信じたら、若い頃からタバコを吸いまくって、肺がんで死ぬ確率を増やしてしまうかもしれない。そう警戒してアンケートの中に入れたのだが、幸い、ほとんど浸透していないようなので、ほっとした。
「やや疑っている」「信じない」15人の子供については、きちんと指導する必要があるだろうが。


17. 血液型でその人の性格がわかる。
(回答者数387人)
信じている  107人(27.6%)
やや信じている83人(21.4%)
知らない・わからない 52人(13.4%)
やや疑っている49人(12.7%)
信じない    96人(24.8%)

 日本におけるニセ科学の定番、血液型性格判断。心理学者の研究によって否定されていることはかなり知られてきたはずなんだけど、それでも根強い人気があることが分かる。

19. 超能力は存在する。
(回答者数388人)
信じている  108人(27.8%)
やや信じている75人(19.3%)
知らない・わからない 74人(19.0%)
やや疑っている51人(13.1%)
信じない    80人(20.6%)

「超能力は存在する」というのは、ちょっと曖昧な質問である。というのも、世の中には、エコロケーションのように視覚に頼らずに周囲のものを知覚する能力を「超能力」と言ってしまう人や、ブレイン・マシン・インターフェースのことを「念力」と呼んでしまう人もいるからである。さすがに科学的に根拠のあることを「超能力」と呼ぶのは、拡大解釈のしすぎだと思う。厳密なアンケートにするには、「超能力」の定義を明らかにする必要があるだろう。
 そこで、一般に「超能力」と見なされているいくつかの事例についても質問した。

18. 人間の体から出ている「オーラ」を見ることのできる人がいる。
(回答者数386人)
信じている  79人(20.5%)
やや信じている55人(14.2%)
知らない・わからない 93人(24.1%)
やや疑っている54人(14.0%)
信じない  105人(27.2%)

11. 地震が起きることをふしぎな力で予知できる人がいる。
(回答者数386人)
信じている   78人(20.2%)
やや信じている58人(15.0%)
知らない・わからない 87人(25.5)
やや疑っている52人(13.5%)
信じない  111人(28.8%)

22. 超能力者は行方不明の人を見つけるのに役立っている。
(回答者数385人)
信じている  103人(26.8%)
やや信じている50人(13.0%)
知らない・わからない 108人(28.1%)
やや疑っている40人(10.4%)
信じない   84人(20.8%)

「オーラ」と「地震予知」のパーセンテージはほぼ同じ。超能力者による行方不明者探しは、それらより信じられている率がやや高いようだ。『TVのチカラ』も『FBI超能力捜査官』も、もう放送終了して何年にもなるのだが、まだ断続的に放送されているその手の類似番組の影響だろうか。

 さらにこんな質問も。

26. ピラミッドは宇宙人が作った。
(回答者数384人)
信じている   39人(10.2%)
やや信じている19人(4.9%)
知らない・わからない 100人(26.0%)
やや疑っている46人(12.0%)
信じない   180人(46.9%)

 1970年代に流行った話だが、今ではあまり信じられていないようである。

27. 太平洋には「ムー大陸」が存在した。
(回答者数386人)
信じている  62人(16.1%)
やや信じている24人(6.2%)
知らない・わからない 219人(56.7%)
やや疑っている30人(7.7%)
信じない    51人(13.2%)

「ムー大陸」の「知らない・わからない」の数字の大きさは異常である。すべての質問項目の中で最高値なのだ。最近の子供は聞いたことがないのかな……と思ったが、そうでもないようだ。

28. バミューダ海域では船や飛行機が消滅することがよくある。
(回答者数387人)
信じている  106人(27.4%)
やや信じている35人(9.0%)
知らない・わからない 179人(46.3%)
やや疑っている23人(5.9%)
信じない   44人(11.4%)

 バミューダ・トライアングルを信じてる子供がけっこう多い! これは意外だった。てっきり時代遅れのネタだと思っていたのだが。

 こういう調査、できればもっと詳しいデータが欲しい。中学生だけでなく、ぜひ高校生、大学生、社会人についてもやってほしいと願っている。
 いくつかの項目については、大人でも中学生と大差ない結果が出るのではないか予想している。

 参考資料。
 2010年、長崎大学で行われた科学リテラシー実態調査。
http://tech.edu.nagasaki-u.ac.jp/muto/ps_questionnaires.html
  

Posted by 山本弘 at 18:28Comments(18)サイエンスオカルト

2017年03月06日

中学生の6割は「月は西からのぼる」と信じている。(2)

7. 彗星は夜空を一瞬だけ流れて消える。
(回答者数 384人)
信じている   97人(25.3%)
やや信じている 51人(13.2%)
知らない・わからない153人(39.8%)
やや疑っている 26人(6.8%)
信じない    57人(14.8%)

 僕がこの質問を思いついたきっかけは、前に『トンデモ本の世界T』で紹介した妻のエピソードである。

> 僕の妻がまだ勤めていた時のこと。百武彗星がやって来たのだが、妻がそれを職場で話題にして、「今度の彗星って、ひと晩じゅう見えてるんやて」と言うと、その場にいた同僚たちが全員、「えっ、彗星って一瞬だけ流れるもんとちゃうの?」と驚いたという。みんな、彗星と流星の区別がついていなかったのだ。

 大人でも彗星と流星の区別のつかない人が多い。だったら中学生なら……と思ったら案の定で、1/3以上が「彗星は夜空を一瞬だけ流れて消える」と信じていた。それに対し、「やや疑っている」「信じない」子供の少ないこと!

8. 人工衛星が落ちてこないのは高すぎて地球の引力が届かないから。
(回答者数388人)
信じている   98人(25.3%)
やや信じている 53人(13.7%)
知らない・わからない157人(40.1%)
やや疑っている 28人(7.2%)
信じない    52人(13.4%)

 7とほとんど同じ結果になった。
 この質問は僕の高校時代(1973~74年ごろ)のエピソードがヒント。当時、アポロ計画が終了し、スカイラブ計画がスタートしていた。アポロを打ち上げたサターンⅤ型ロケットを改造した宇宙ステーション「スカイラブ」が打ち上げられていて、その内部の模様──無重力状態でふわふわ浮かんでいる宇宙飛行士の姿が、よくテレビで紹介されていた。
 その頃、工業高校の物理の時間に、教師がこう言ったのである。
「宇宙に行くと無重力になるやろ? あれは地球の引力が届かへんほど遠くまで行ったからや」
 僕はびっくりした。教師、それも物理の教師がこんなデタラメなことを言うなんて!
 でも、さすがに授業中に立ち上がって教師に抗議をするほどの度胸はなかった。そこで授業が終わるとすぐ教室を飛び出し、廊下を歩いていた教師をつかまえて、「自由落下」というものについて教えてやった。
 そもそも学校で使われている物理の教科書には、「引力は無限遠まで届く」とはっきり書いてある。「引力は距離の2乗に反比例して減少する」とも。
 地球の中心から地表までの距離は6378km。つまり地表から高度6378kmまで上昇すれば、地球の中心からの距離は2倍になり、引力は1/4になる。
 しかし、スカイラブが回っている高度は約440km。つまり地球の中心からの距離の1.1倍もない。その地点での引力の強さは、地表の引力とほとんど変わらないのである。
「引力は無限遠まで届く」「引力は距離の2乗に反比例して減少する」──こんなことは教師も当然、知っていたはずだ。だが、その知識を現実の人工衛星や宇宙ステーションにあてはめて考えることができなかったのだ。
 理科の知識は「知っている」だけではだめなのだ。その意味を理解していないと。

9. 恐竜が地上で栄えていたころ、人類はまだ存在しなかった。
(回答者数388人)
信じている   193人(49.7%)
やや信じている 50人(12.9%)
知らない・わからない65人(16.8%)
やや疑っている 40人(10.3%)
信じない    36人(7.4%)

 この質問については、アンケートを配布した後で、「まずかった」と気がついた。最近の学説では、「鳥は恐竜の一種」という説が有力になってきているのだ。恐竜は滅びたのではなく、鳥として今でも生き残っていると。だからそこまで知っている子供なら、今でも恐竜が栄えていると解釈し、「信じない」と答えるかもしれない。
 もっとも、結果はご覧通り、「信じない」子は7.4%。何にしてもそんなに多くない数字だった。



12. 50年前に比べて、日本の少年犯罪は大幅に増えている。
(回答者数385人)
信じている  145人(37.7%)
やや信じている76人(19.7%)
知らない・わからない  125人(32.5%)
やや疑っている14人(3.6%)
信じない   25人(6.5%)

 さあ、これも問題だ。少年犯罪が大幅に増えていると信じている子供が6割近くもいる! 「やや疑っている」「信じない」子供は約1割。
 データを見れば一発で嘘だって分かるんだけど。

http://kogoroy.tripod.com/hanzai.html
http://kangaeru.s59.xrea.com/G-Satujin.htm

 もちろんこんなことは学校では教えないはずなのだが、子供たちはどこで信じこまされたのだろうか?
 やはり「最近の子供は荒れている」といった言説があまりにもまかり通っているので、自然に「昔の方が犯罪は少なかった」と錯覚するようになったのかもしれない。

 他にも『ニセ科学を10倍楽しむ本』で取り上げたニセ科学について、いくつか質問してみた。

10. 大きな地震が起きる前には「地震雲」が発生する。
(回答者数385人)
信じている   95人(24.6%)
やや信じている55人(14.3%)
知らない・わからない  145人(37.7%)
やや疑っている34人(8.8%)
信じない   56人(14.5%)

 信じている子供が多いのではないかと予想していたのだが、最も多かったのは「知らない・わからない」で、思ったほど多くはなかった。でも、やはり4割近い子が信じているのは、やや問題かもしれない。

13. マイナスイオンは健康にいい。
(回答者数387人)
信じている   126人(32.6%)
やや信じている55人(14.2%)
知らない・わからない 143人(37.0%)
やや疑っている33人(8.5%)
信じない   30人(7.6%)

 マイナスイオンブームなんてとっくに終わってるから、信じている子供は少ないかと思っていたのだが、なかなかどうして。まだかなり信じられている。

14. 水素水は健康にいい。
(回答者数387)
信じている   128人(33.1%)
やや信じている57人(14.7%)
知らない・わからない 101人(26.1%)
やや疑っている40人(10.3%)
信じない   61人(15.8%)

 マイナスイオンと水素水、あまり違わない結果だった。

16. ゲームをやりすぎると「ゲーム脳」になる。
(回答者数386人)
信じている  118人(30.6%)
やや信じている 66人(17.1%)
知らない・わからない 117人(30.3%)
やや疑っている31人(8.3%)
信じない   54人(14.0%)

 あれだけ批判を受けたのに、まだ子供たちにはニセ科学だということがあまり浸透していない印象である。今でも親が「ゲームをやりすぎるとゲーム脳になるよ」と脅しているのかもしれない。

25. 水に「ありがとう」と声をかけるときれいな結晶ができる。
(回答者数387人)
信じている    100人(25.8%)
やや信じている  29人(7.5%)
知らない・わからない 94人(24.3%)
やや疑っている  34人(8.8%)
信じない     134人(34.6%)

 これも驚きだった。『ニセ科学を10倍楽しむ本』でも書いたけど、2006年の時点で『水からの伝言』は激しい批判を受け、TOSSランドからもリンクはすべて削除された。今、日本の小中学校で『水からの伝言』を授業に使っているところはほとんどないはずなのである。(この箕面市の2つの中学でも使われていないという)
 それでもまだ約1/3の子供が信じている。
 考えてみれば、『水からの伝言』は世界75カ国で出版され、シリーズ累計250万部以上というベストセラーだ。まだ日本のあちこちに何万人もの信者がいて、こっそり広め続けているのかもしれない。
  
タグ :ニセ科学


Posted by 山本弘 at 18:17Comments(15)サイエンスオカルト

2017年03月06日

中学生の6割は「月は西からのぼる」と信じている。(1)

 先月、大阪府箕面市の第3中学と第4中学で、ニセ科学についての講演をしてきた。

 もともと「箕面・世界子どもの本アカデミー賞」というイベントがあって、僕の書いた『ニセ科学を10倍楽しむ本』(筑摩書房)がヤングアダルト作品賞(中学生対象)部門でノミネートされていたのである。

https://www.city.minoh.lg.jp/library/katsudou/academy/academy2016.html

 僕の本は受賞しなかったんだけど、その代わり、受賞者やノミネートされた作家を招いて小学校や中学校で講演してもらうオーサービジットという制度があり、それに招かれて2つの中学で講演させていただいたわけである。
 僕はいいチャンスだと思った。この機会に、中学生の間にどれぐらいニセ科学が浸透しているか調査してみようと。
 そこで先生方や中央図書館のスタッフの方にご協力をいただき、こんなアンケートを配って、事前に子供たちに記入してもらった。


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科学に関する意識調査
  年  組
 以下の質問に対し、「信じている」「やや信じている」「知らない・わからない」「やや疑っている」「信じない」の5つから、あなたにあてはまるものに〇をつけてください。
 これはテストではありませんので、名前を書く必要はありません。正解かどうかを気にせず、あなたの信じていることを素直に書いてください。「地震雲」「ゲーム脳」「水素水」「ムー大陸」といった言葉を知らない場合は、Cの「知らない・わからない」に〇をつけてください。わからなくても、答えを書きこむ前にインターネットなどで正解を調べないでください。
A信じている Bやや信じている C知らない・わからない Dやや疑っている E信じない

1. 地球は太陽の周囲を回っている。A B C D E
2. 太陽は東からのぼり、月は西からのぼる。A B C D E
3. 月の表面には呼吸できるような空気はない。A B C D E
4. 月の表面は無重力である。   A B C D E
5. かつてアメリカの宇宙飛行士が月面に立ったことがある。A B C D E
6. カーナビなどに使われているGPSは、月面でも使える。A B C D E
7. 彗星は夜空を一瞬だけ流れて消える。   A B C D E
8. 人工衛星が落ちてこないのは高すぎて地球の引力が届かないから。A B C D E
9. 恐竜が地上で栄えていたころ、人類はまだ存在しなかった。A B C D E
10. 大きな地震が起きる前には「地震雲」が発生する。A B C D E
11. 地震が起きることをふしぎな力で予知できる人がいる。A B C D E
12. 50年前に比べて、日本の少年犯罪は大幅に増えている。A B C D E
13. マイナスイオンは健康にいい。   A B C D E
14. 水素水は健康にいい。   A B C D E
15. タバコをたくさん吸う人は肺がんになりやすい。A B C D E
16. ゲームをやりすぎると「ゲーム脳」になる。A B C D E
17. 血液型でその人の性格がわかる。A B C D E
18. 人間の体から出ている「オーラ」を見ることのできる人がいる。A B C D E
19. 超能力は存在する。A B C D E
20. 幽霊は存在する。   A B C D E
21. 人は死ぬと生まれ変わる。A B C D E
22. 超能力者は行方不明の人を見つけるのに役立っている。A B C D E
23. UFOには宇宙人が乗っている。   A B C D E
24. 微生物の力で放射能を消すことができる。A B C D E
25. 水に「ありがとう」と声をかけるときれいな結晶ができる。A B C D E
26. ピラミッドは宇宙人が作った。A B C D E
27. 太平洋には「ムー大陸」が存在した。A B C D E
28. バミューダ海域では船や飛行機が消滅することがよくある。A B C D E
---------------------------------

 両校の校長先生に許可を得たので、その結果の一部を発表したい。なお、人数は2つの中学の回答者を合わせたものである。
 最初の方の問題は、ニセ科学そのものではなく、基本的な科学知識を問うものだった。中学生にはどれぐらいの科学知識があるのか、まず知っておこうと思ったのだ。
 いや、この結果には驚いた。


1.地球は太陽の周囲を回っている。
(回答者数 387人)
信じている   275人(71.1%) 
やや信じている 43人(11.1%)
知らない・わからない 37人(9.6%)
やや疑っている 8人(2.1%)
信じない    24人(6.2%)

 この質問はほぼ100%の子供が正解するはずだと信じていた。地球が太陽の周囲を回ってるなんて常識だからと。
 そうじゃなかった。地球が太陽の周囲を回っていることは信じない子供が24人、6.2%もいたのだ! 「やや疑っている子」が2.1%、「知らない・わからない」子が9.6%。逆に「信じている」「やや信じている」子供は合計で82.2%でしかない。

 だが、これはまだ序の口だった。


2. 太陽は東からのぼり、月は西からのぼる。
(回答者数 388人)
信じている   177人(45.6%)
やや信じている 55人(14.2%)
知らない・わからない 83人(21.4%)
やや疑っている 11人(28.4%)
信じない    62人(16.0%)

 なんと約6割の子供が「月は西からのぼる」と信じているのだ! 「知らない・わからない」子も21.4%。はっきり「信じない」と答えた子は16.0%でしかなかった。
 ふざけてわざと間違ったことを書いた子がいたのかなとも疑ったが、さすがにふざける子供が6割もいたというのは、逆に信じがたい。この後のアンケート結果を見ても、だいたい子供の科学知識はこれぐらいだろうという気がするのだ。

 それで思い出したのは、小学校では地動説を教えておらず、地動説を元にした回答すると×をつけられるという話。

小3「まだ習ってない地球の自転の事をテストに書いたらバツをつけられた」
https://togetter.com/li/1060728

 学習したことを書かなくてはいけない……というんだけど、おそらくこの生徒はすでに地球が自転していることで見かけ上、太陽が天球上を移動していることを知っているんだから、それは「よく知ってるね」と褒めなくちゃいけないんじゃない?
 他にも似た体験をした人が何人も。

>当方成人ですが小学生の頃に実際にこの画像とまったく同じ問題でまったく同じ理由で✕をつけられたことがあります。10数年の間に教育は進歩していなく、カリキュラムや教師の都合に捕われて本質を見誤っているのを改めて感じました。

>こんにちは。私も小学校2年か3年生の時に同じ答えで×をもらい、しかも担任に全員の前で「地球が回るからって書いた人がいるんだよ、ははは」みたいな感じで言われた記憶がたった今蘇りました。

>僕の親父が小学生のころ、塩酸をかけたときに二酸化炭素を発生するもので炭酸水素ナトリウムと答えバツを貰ったという話を思い出しました(-_-;)(模範解答は貝殻とか卵の殻

>私も過去に水の体積は変わるのか?という設問に(温度によって膨張するから)変わると回答したら、習っていなく圧力による変化はない為×にされました。
>これもそうですが、太陽が動くからという言葉が記憶に残ってしまうとのちに混乱を起こす引き金になりかねないですよね。

>僕は小1の頃小数点を習っていない
>という理由で
>線の長さを定規で測ってみよう
>というプリントの答えに
>「1,2cm」と書いたら×をで
>「1cmとちょっと」と書いた友人が
>○を貰っていたことを今も根にもっていますw

「掛け算順序問題」とかもそうだけど、学校の役目は子供に正しい知識を伝えることのはず。正しいことを書いた子供に×をつけるなんて本末転倒だ。


3. 月の表面には呼吸できるような空気はない。
(回答者数 385人)
信じている  178人(46.2%)
やや信じている51人(13.2%)
知らない・わからない  103人(26.8%)
やや疑っている24人(6.2%)
信じない   29人(7.5%)

 こっちは逆に正解者が6割。先の答えを見た後では、少しほっとする。ふざけている子供が6割もいたなら、この設問も正解率が低くなるはずではないか?
 それでも「信じない」子供が7.5%というのは、やや不安になる数字なんだけど。

4. 月の表面は無重力である。
(回答者数 386人)
信じている   147人(38.1%)
やや信じている 53人(13.7%)
知らない・わからない 76人(19.7%)
やや疑っている 21人(5.4%)
信じない   89人(23.1%)

 さあ、これも驚きだ! 月の表面が無重力だと「信じている」「やや信じている」子供が約半数もいる!
 宇宙飛行士が月面に立っている映像や、月面車で走り回っている動画を見たことないのだろうか。あるいは、地球の1/6の重力しかないことを「無重力」と呼ぶと勘違いしているとか?

「今の中学生はこんなことも知らないのか!?」と早とちりしないでいただきたい。僕がこの質問を思いついたのは、前にブログでこんなことを書いたからである。


「月をなめるな」
http://hirorin.otaden.jp/e31205.html

アポロ陰謀論とかいう以前に
http://hirorin.otaden.jp/e50099.html

 いい歳をした大人でも、月面が無重力だとか、空気があるとか、月と太陽が同じものだと思っている人がいる。だったら中学生でも「月面は無重力」と思っている子が多いんじゃないかとにらんだのだ。
 僕の予想通りだったが、それでもこんなに多いとは思わなかった。

5. かつてアメリカの宇宙飛行士が月面に立ったことがある。
(回答者数 386人)
信じている   249人(64.5%)
やや信じている 45人(11.7%)
知らない・わからない 62人(16.1%)
やや疑っている 17人(4.4%)
信じない    13人(3.4%)

 これはストレートにアポロ陰謀説についての質問。これも信じてる子が多いんじゃないかと予想したのだが、意外に少なくてほっとした。
 考えてみれば、前にアポロ陰謀説が流行ったのは2002~2003年ごろ。今の中学生には生まれる前の話なんで知らないのかもしれない。(つづく)

  
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Posted by 山本弘 at 18:00Comments(10)サイエンスオカルト

2016年11月22日

と学会がやっていたことは「弱い者いじめ」だったのか?・4

 僕はもう、と学会を辞めている。
 http://hirorin.otaden.jp/e312496.html

 理由はいろいろあるが、ひとつの理由は「つまらなくなった」ということだ。
 トンデモ本が少なくなったわけではない。今も多くのトンデモ本が出版され続けている。ただ、新しいものが少なくなってきた。
 日本トンデモ本大賞の候補作は、毎年、僕が選んでいたのだが、ノミネート作のリストを見ても、バラエティが豊富だったのは『人類の月面着陸は無かったろう論』が受賞した2005年の第14回あたりがピークだった。

http://kokorohaitsumo15sai.la.coocan.jp/tondemotop.htm

 以後は、『富を「引き寄せる」科学的法則』のような1世紀も前のトンデモ本や、『新・知ってはいけない!?』のように前に出た本の続編、『秘伝ノストラダムス・コード』のような時代遅れのノストラダムス本、『超不都合な科学的真実』『小説911』『本当かデマか 3・11[人工地震説の根拠]衝撃検証』のように著者本人が唱えているのではなく世間にあふれている陰謀説を寄せ集めた本など、独創的なものが明らかに減ってきている。2012年の第21回、2013年の第22回などは、と学会の会員に呼びかけてもトンデモ本が集まらず、かなり苦しんだ。大川隆法、苫米地英人、中丸薫らの本が何度もノミネートされているのも、ノミネート作が揃わないための苦肉の策だった。
 おそらく僕らは、乱獲によってトンデモ資源を枯渇させたんじゃないかと思う。トンデモってもっと奥が深いかと思っていたら、意外に浅かったんだなと。
 1950年代に書かれたガードナーの『奇妙な論理』を読めばわかるように、現代のトンデモ説の多くは昔から存在しているものか、その焼き直しにすぎない。だからこれから出るトンデモ本の多くも、すでにある説の焼き直しにすぎないんじゃないだろうか。
 だからと学会をはじめた頃と比べて、トンデモ本への関心はひどく薄れている。

 もっとも僕はまったく関心をなくしたわけじゃない。ニセ科学やデマ関連のウォッチングはASIOSの本で続けている。と学会の本と違って、積極的に笑いを取りに行くことは控えるようになったが、それでも多くの人に読んでほしいから、「面白い」と感じさせる文章にする努力は怠っていない。
 世の中には、放置しておくのは危険なニセ情報がまだまだたくさんあるからだ。
 ほんの一例を挙げるなら、「阪神淡路大震災の時に強姦が多発した」というのは悪質なデマで、信じる人が増えたら危険だから、データを挙げて否定している。

http://hirorin.otaden.jp/e427750.html

 ネットの普及により、デマの拡散速度も飛躍的に速くなった。特に、見ず知らずの多くの人を傷つけたり、新たな災厄のタネになるかもしれないデマに対しては、見つけしだい大急ぎで否定する必要がある。だからこのブログでもデマの否定を頻繁にやっている。
本人に直接言うなり手紙やメールを出すなり」などと、のんびりしたことを言っていては手遅れになるかもしれないから。

  


2016年11月22日

と学会がやっていたことは「弱い者いじめ」だったのか?・3

 そもそも『トンデモ本の世界』が出版された1995年はどんな年だったか思い出してほしい。
 そう、地下鉄サリン事件のあった年だ。
 あの事件がどれほど日本を騒がせたか、ご記憶の方は多いはずだ。オウム真理教はオカルトや超能力、フリーメーソン陰謀説や、様々なニセ科学にハマっていた。それらは、マスメディアが無視していたか、あるいは逆に持ち上げていたものだった。(『超能力番組を10倍楽しむ本』でも書いたが、90年代前半まで、超能力を肯定的に扱う番組は実に多かったのだ)
 1995年のあの日まで、ほとんどの日本人はオカルトや超能力や陰謀論やニセ科学にさほど関心がなかったか、あっても「たいしたことじゃない」と侮っていたと思う。
 そこにあの事件が起きた。
 多くの人が存在に気がつかなかった、あるいは何もしないで見過ごしていたものが、気がついたら恐ろしい怪物に成長していた。
「あれはいったい何なんだ!?」と狼狽し、説明を求めていた人たちに、僕らがタイミングよく「トンデモ」という概念を提示した。だから『トンデモの世界』はベストセラーになったのだと思う。
 もちろん、オウム事件に便乗したわけじゃなく、出版予定は前から決まっていて、地下鉄サリン事件がたまたまそれに重なっただけなんだけど。

 これは『トンデモノストラダムスの世界』で書いたけど、僕は五島勉氏が『ノストラダムスの大予言』という本を書かなかったら、オウム事件は起こらなかったと思っている。
 無論、『ノストラダムスの大予言』を読んだ時点で、オウムの台頭を予想するのは誰にも無理だったろう。でも後知恵で見て、因果関係があるのは否定できない。
 言い換えれば、今はまだたいしたことがないように見えるトンデモ説でも、将来、怪物に成長する可能性があるということだ。
 今も日本には、多数のトンデモ説が乱れ飛んでいる。そのどれかが新たなオウム事件の萌芽になるのか、今の段階ではまったく予想できない。でも、常に誰かが目を光らせていなければいけないんじゃないだろうか?

 実際、僕も予想できなかったことがいくつもある。
 たとえば『トンデモ本の世界R』(2001)で、石橋輝勝『武器としての電波の悪用を糾弾する!』という本を紹介した。自分は世界を支配する組織から電波攻撃を受けていると主張する、典型的な関係妄想の本だった。だが、自費出版されたマイナーな本であり、大きな影響力などないと思っていた。
 まさか著者が2003年に民主党推薦で千葉県八街市議会議員選挙に立候補して当選したり、「テクノロジー犯罪被害ネットワーク」なんてものを結成したりするなんて、まったく予想していなかった。

 あるいは『トンデモ本1999』で取り上げた谷口裕司『宇宙からお母さんへのメッセージ』という本。著者は育児文化研究所という団体を主催しており、全国に10万人以上の会員がいるという。この本は、おなかの中の赤ちゃん、それどころかまだ妊娠さえしていない赤ちゃんがテレパシーで語りかけてくるという本だ。地球にはすでに大勢の宇宙人が来ていて、人類を指導しているとも書かれていた。
 僕は育児文化研究所という団体がUFOカルト化していることに漠然と不安は抱いた。
 だが、この時点で、すでに誤った指導のせいで犠牲者が出ていたなんて思いもしなかった。

http://www.jaog.or.jp/sep2012/JAPANESE/MEMBERS/TANPA/H12/000403.htm

『トンデモ本の世界R』(2001)では、谷口祐司氏の別の著書『緊急!マリア様からのメッセージ』を取り上げ、「しかし、笑ってばかりもいられない。この育児文化研究所をめぐって、実は悲惨な事件が起きていたことが明らかになったのだ」(89ページ)と書いて、事件に触れている。
 読み返していただければ、この文章の前後で、僕の文体ががらっと変わっていることに気づかれると思う。『緊急!マリア様からのメッセージ』は笑えるトンデモ本だが、両親が谷口氏の誤った指導を信じために赤ん坊が死んだという事実は、笑ってはいけないと思った。
 しかし、谷口氏の著書を「笑ってはいけない」とも言いたくなかった。むしろ、谷口氏の著書を読んだ人たちが、これがトンデモ本であることに気づかず、笑いもせずに信じこんでしまったことが、悲劇を招いたのだと思う。
 こんなのは笑い飛ばすべきだった!
 もっと早くみんながトンデモさに気がついて笑い飛ばしていれば、悲劇は阻止できたんじゃないだろうか。

 あるいは『トンデモ本の世界W』(2009)で取り上げた『胎内記憶』。胎内の赤ちゃんが母親のへそから外を見ているなどと主張するとびきりのトンデモ本だが、著者の池川明氏が当時よりさらに有名になって、各地で講演会を開いているばかりか、親学推進協会の特別委員や誕生学協会のサポーターをやっているという事実に、育児文化研究所の事件を連想し、軽く戦慄している。
 池川氏一人が信じているだけでなく、いい年した大人、しかも高い地位にある人たちまでもが大勢、「赤ちゃんが母親のへそから外を見ている」などという話を本気にしているらしいのだ。これは十分すぎるほど恐ろしいことではないだろうか?

 正直に言うと、僕もいつも笑っているわけではない。話があまりにもシリアスすぎて、矛先が鈍ることは何度もあった。
 たとえば『トンデモ本の世界U』(2007)で、小出エリーナ『アメリカのマインドコントロール・テクノロジーの進化』を紹介した時のこと。CIAの電波攻撃「マイクロウェーブ・ハラスメント」を受けている(と思いこんでいる)人たちについて、僕はこう書いた。


 どうやら苦しい体験をしている著者たちを支えているのは、自分と同じ体験をしている人が大勢いるという連帯感と安心感、そして巨大な悪と戦っているという怒りと使命感のようである。
(中略)
 だが、僕にはそれこそ「個人の一時的な解消でしかない」ようにしか見えない。ミもフタもないことを言わせてもらえば、「早く病院に行きなさい」と言いたい。現代では統合失調症に効く薬がいくつもある。それらで治癒できるか、症状が改善される可能性は高い。
 だが、マイハラ被害者同士の連帯は、適切な治療から彼らを遠ざけているように思われる。仲間の話を聴くことは、自分の体験が幻覚や妄想ではないと確信させてくれるし、中には「体内にインプラントを埋めこまれるから病院に行ってはいけない」とアドバイスする者もいるからだ。
 だから僕は、最初は笑って読んでいたものの、だんだん笑えなくなってきた。心の病気だからしかたがないとはいえ、治療を受ければ助かるかもしれない人が、自ら救いを拒否して苦しみ続ける姿は、胸が痛む。

 これは僕の嘘偽りない本音である。
 罪もない赤ん坊が愚かな指導のせいで死ぬなんてことはあってはいけない。
 病気に苦しんでいる人には、ぜひ良くなってほしい。
 そのためには、明らかに間違っていることに対して、誰かが「間違っている」と声を上げないといけないと思う。
本人に直接言うなり手紙やメールを出すなり」なんて甘っちょろいことを言っている間に、誰かが死ぬかもしれないのだ。

 最初の『トンデモ本の世界』を出した頃から、僕は『トンデモノストラダムスの世界』という本を必ず1998年に出そうと心に決めていて、ずっと資料の収集を続けていた。
 今の若い人にはピンとこないかもしれないけど、1990年代の日本人の中には、ノストラダムスの予言を信じこみ、「1999年に人類は滅亡する」と思っていた人間がかなり多かったのだ。彼らが1999年になったら、不安になってパニックを起こし、犯罪に走ったり自殺したりするかも……という懸念は、決して杞憂ではなく、当時としてはリアルな危機感があった。
 だから僕は、そうした事態を予防するために、1998年に『トンデモノストラダムスの世界』を出そうと決意した。
 その際、ベストセラーである五島勉『ノストラダムスの大予言』だけに絞りはしなかった。当時すでに氾濫していた大量のノストラダムス本(正確に言えば、ノストラダムスの詩から勝手に未来に起きることを予言する本)をかたっぱしから読んで笑い飛ばした。
 当然、中には五島氏ほど売れていない人、abさんの言う「弱い者」もいた。だが僕は、売れているかどうかで区別しなかった。
 起きるかもしれないパニックを防ぐために、ノストラダムス本はどれもデタラメで、著者たちの主張は信用できるものではないことをはっきり示す必要があったからだ。こんなのは笑い飛ばすべきものなのだと。
 幸い、『トンデモノストラダムスの世界』はよく売れた。1999年7月が近づくにつれ、大手のメディアも危機感を覚えたらしく、メジャーな雑誌や新聞でもノストラダムスの予言を否定する記事が増えた。テレビでもやはりノストラダムス批判の番組が増え、僕もいくつか出演した。マスメディアのウォッチングを続けながら、「ノストラダムスの予言なんて信じちゃいけない」というムードが世間に形成されてゆくのを、確かに感じていた。
 そうして1999年7月は何事もなく過ぎ去った。
 パラレルワールドのことなんか分からない。でも、もし僕が『トンデモノストラダムス本の世界』を書かなかったら──abさんが言うように、「本人に直接言うなり手紙やメールを出すなり」で済ませ、広く世間に警告しようとしなかったらどうなっていたか……それはいつも考える。
 少なくとも僕は、災厄を防ぐために、自分がやるべきことをやったと、今でも誇りを持って言える。
  


2016年11月22日

と学会がやっていたことは「弱い者いじめ」だったのか?・2

 じゃあなぜ、単に間違いを指摘するだけでなく、笑い飛ばす必要があるのか?
 理由は簡単、その方がアピールするからだ。
 前にも書いたが、「どんなに栄養のある料理でも、不味ければ誰も食べない」というのが僕のポリシーである。
 ニセ科学やオカルトを批判している人は、と学会以前からいた。だが、大真面目な主張が多く、大衆にアピールしなかった。内容がいくら正しくても、読んで面白いものではなかったからだ。
 生涯をオカルトやニセ科学との戦いに捧げたアメリカのジャーナリスト、H・L・メンケンは、こんな言葉を残している。

「抱腹絶倒一回は三段論法千回に勝る」

 これは真理だと思う。
 数ヶ月前にもそんな体験をしたばかりだ。ある人が僕に「江戸しぐさ」について訊ねた。その人は「江戸しぐさ」がネットで話題になっていることや、問題のある内容であるらしいことは知っていたが、具体的に何が問題なのかはよく知らない様子だった。
 そこで僕は「江戸しぐさ」信者の主張の中で最も笑える箇所──「江戸っ子大虐殺」について説明した。その人は大笑いして、即座に「江戸しぐさ」は信じてはいけないものだと納得してくれた。
 これが「抱腹絶倒一回は三段論法千回に勝る」である。
 もちろん事実を論理的に説明して批判するのも大事だ。だが、「そんなの信じちゃだめだよ」とアピールするには、笑い飛ばすのが早道なのだ。実際、原田実氏はそうやっている。事実関係をきちんと調べたうえで、「江戸っ子大虐殺」のような笑える部分を指摘するのも忘れない。

 と学会の先輩とも言うべきマーチン・ガードナーの『奇妙な論理』(ハヤカワ文庫)にしても、バージェン・エヴァンズ『ナンセンスの博物誌』(大和書房)にしても、事実の羅列だけでなく、笑える部分にスポットを当てたり、随所に皮肉やウィットを混ぜたりして、読者を楽しませる工夫をしている。
 たとえば『ナンセンスの博物誌』は人種偏見に対する批判に多くのページを割いているのだが、その中で紹介されるレイシストたちの発言と、それに対するエヴァンズのツッコミがいちいち笑える。

(前略)ウェイン大学社会学科のA・M・リー教授が一九四三年のディトロイト人種暴動を調査した時、一人の証人は、映画館の灯がついて黒人の横にすわっていたことがわかった途端に気分が悪くなったと述べた。その男の説明では黒人は「常に悪臭を放つ」のだそうだが、彼の嗅覚は暗闇ではきかないものらしい。

 いかがだろう? こういう手法の方が、大真面目に「人種差別は良くない」と説くより効果的だと思わないか?

 もうひとつ、abさんが無視している(故意になのか、本当に気がついていないのかは不明だが)明白な事実がある。
 それは「トンデモの多くは危険」ということだ。
 たとえば、超能力、オカルト、UFO、予言などは、カルト宗教と親和性が高い。「うちの教団に入って修行すれば超能力が身につきます」とか「ノストラダムスはうちの教祖様のことを予言していた」とか「まもなく世界が滅亡するが、UFOに乗った異星人が私たちを助けに来てくださる」などと宣伝している団体は、いったいいくつあるか、多すぎて見当もつかない。
 そうした話に興味を持ち、真剣に耳を傾けていたら、いつのまにかカルト教団に入信していた……ということも、十分にある。
 ニセ科学も昔からよく詐欺の温床になっている。永久機関が本当にできると信じて出資し、金をどぶに捨てた人は大勢いる。トルマリン、タキオン、マイナスイオンなどのありもしない効果を信じて、どれだけの消費者が金を浪費したか。
 もちろんユダヤ陰謀論などは、特定の民族への憎悪を煽るヘイトスピーチだから、ストレートに危険である。
 だからこうした話題を笑って楽しむのはいいけど、真剣に聴かない方がいい。懐疑的に、笑いながら聴くのが一番である。

 abさんはこうも書いている。


単に書き手の無知や間違いを指摘したいだけなら、本人に直接言うなり手紙やメールを出すなりすれば済む事。

 abさんが本気でこんなことを信じておられるのだとしたら、「人がいい」「現実を見ていない」としか言いようがない。
 僕が『トンデモ本の世界』の、それも最初に紹介した矢追純一『ナチスがUFOを造っていた』の項で、こう書いていたのをお忘れなのだろうか。


 ベテランUFO研究家の高梨純一氏は、矢追スペシャルが放送されるたびに、内容の間違いを指摘した手紙をマスコミ各社に送りつけているという。その熱心さには頭が下がるが、効果があるようにはみえない。(後略)

 そう、どんなに間違いを指摘されても、矢追氏はデタラメな番組を作ることをやめはしなかった。
 矢追氏だけではない。『トンデモ本の世界』の「清家新一」「コンノケンイチ」などの項を読み直してほしい。彼らが批判に対して耳を傾けなかったことがお分かりだろう。僕も一度、清家新一氏に手紙を出し、間違いを指摘したことがあるが、無視された。小石泉氏に送った手紙は受け取り拒否されて戻ってきた。
 副島隆彦『人類の月面着陸は無かったろう論』という本もそうだ。僕は『人類の月面着陸はあったんだ論』の中で詳しく取り上げたし、他にも副島氏の説の間違いを指摘している人は大勢いた。だが、副島氏はそれらの膨大な反論をすべて無視した。
『人類の月面着陸は無かったろう論』の中にはこう書かれている。


 だからここではっきり書いておく。もし私の主張が明白に間違いで、アポロ11号の飛行士たちが月面に着陸していたことの明白な証拠が出てきたら、その時は私は筆を折る。もう二度と本を書いて出版することをしない。これだけの深い決意で私は本書を書いた。本当の人生の一本勝負である。(295ページ)

 しかし、副島氏は2016年現在、まだ本を出し続けている。してみると、いまだに自分の主張が間違いだとは認めていないのだろう。

 トンデモ本シリーズではないが、『“環境問題のウソ”のウソ』という本を書いたことがある。ベストセラーになった武田邦彦『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』の間違いを暴いた本である。武田氏が本に載せたグラフは捏造だった。本に書いてあるデータの多くも間違っているか、論理的におかしいものばかりだった。
 また武田氏は、1984年元旦の朝日新聞に「世界の平均気温が上昇すると南極や北極の氷が溶けて海水面が上昇する」という文章が載っていると主張し、「誤報」だと非難していた。だが実際にはそんな文章は存在しなかった。武田氏は僕とのメールのやり取りの中で、自分の間違いを認め、「ともかく修正の努力はします」と書いた。しかし、それから3ヶ月後に出た第10刷でも、依然として初版と同じく、「記事には『北極の氷が溶けて海水面が上がる』と書いてある」などというありもしないことが書かれていた。


 あすかあきお氏など、著書の中で批判した古関智也氏に対して訴訟を起こした。(でもって見事に敗訴)

http://www2.plala.or.jp/daisinjitu/
http://www2.plala.or.jp/daisinjitu/judg/index.html

 僕の知る限り、トンデモ本の著者で、間違いを指摘されて素直にそれを認め、自説を撤回した者は一人もいない。なぜなら──

①デタラメと知っていて商売で書いている。
②本人も完全に信じこんでいる。

 このどちらかだからだ。abさんが言うような、「本人に直接言うなり手紙やメールを出す」という行為は、無視されるだけ。まったく無駄なのである。
 もっときつい言葉で言わせてもらうなら、「本人に直接言うなり手紙やメールを出す」というのは、「間違った考えが世間に広まるのを知っていて、何もしないで見過ごす」のと同義語だ。
 著者だけに言うのではなく、もっと多くの人に、「これはおかしい」「信じちゃいけないぞ」と訴えなければいけないのだ。

 また、トンデモ説の中には、すでに害になっているものも多い。
 たとえば「東日本大震災は「ちきゅう」の起こした人工地震だ」という説は、「ちきゅう」で働いている真面目な研究者たちを「大量殺戮者だ」と言っているわけで、おぞましい誹謗中傷である。アポロ陰謀説だって、苦難を乗り越えて月着陸を達成した宇宙飛行士や、それを支えたNASAの人たちに対する中傷だ。また、「相対性理論は間違っている」という説は、素人でも気がつく間違いに科学者たちが気づいてないと主張している。つまり世界中の物理学者をマヌケだと中傷しているのだ。
 また『水からの伝言』や「江戸しぐさ」のように、教育の世界にまで食いこみ、子供たちに間違った知識を植えつけているものもある。最近では「胎内記憶」なども学校関係者の中に信奉者を広めており、不気味だ。
 abさんはこういう説に対しても、「本人に直接言うなり手紙やメールを出す」でいいと思っているのだろうか? 無辜の人に対する誹謗中傷が行なわれていても、学校で間違ったことが教えられていても、見て見ぬふりをするのが正しいと主張するのだろうか?

 また、僕は「言論弾圧をしてはいけない」と一貫して訴え続けている。たとえば『トンデモ本の世界』のあとがきではこう書いた。


 彼らの思想は間違いだらけだし、しばしば危険な内容を含んでいる。だが、決して彼らを弾圧すべきではない。弾圧は両刃の剣である。歴史を見ればわかるように、間違った思想が弾圧されるような時代では、正しい思想もまた弾圧されるのだ。言い換えれば、奇人たちがおおっぴらに活動できるということは、現代の日本がいかに自由な国であるかという証拠なのだ。

『トンデモ本の逆襲』(1996)のあとがきでは、

 トンデモ本が氾濫している状況に腹を立てる人もいる。だが、こうした本をやみくもに排斥しようとする態度は間違っている。弾圧などしてはならない。明白な実害のある場合を除いては、言論の自由は断固として保証されなければならない。
 無論、トンデモ本を批判する自由、好きな読み方で楽しむ自由もまた、保証されなければならない。それでこそ公平であり、真の言論の自曲である。

 あるいは『トンデモ本の世界T』(2004)のあとがき。

 僕は長いこと、トンデモ本の紹介を行なってきた。トンデモ本の著者の中には、ひどく間違ったことや不快なことを書く者が少なくない。しかし、僕は「彼らを世の中から排除しろ」とか「言論を規制しろ」とは言わない。たとえ自分にとって不快であっても、同じ世界に生きる以上、その存在は許容し合わないといけないと信じるからだ。「理解できない」「不快だ」というだけの理由で他人を排除し合っていたら、世界は滅びてしまう。
 例外は、人を殺したり、金を騙し取ったり、危険なデマをまき散らすなど、実際に他人に害を与えた場合である。そうした者が処罰されるのは当然だ。そうでないかぎり、彼らの言論の自由は保証されなければならない。
 もちろん、僕らが彼らを批判するのも言論の自由だし、たとえ彼らが僕らのことを不快に思ったとしても、それは許容してもらわねば困るのである。「俺は何を言ってもいいが、お前らが俺を批判するのは許さない」というのは公平ではない。
 本を書くという行為を軽く見てはいけない。僕はこうして文章を書きながらも、「間違ったことを書いて笑われるかも」という恐怖と常に背中合わせである(実際、マヌケなミスをやって笑われたことは何度もある)。冒頭の「僕はロリコンである」という文章にしてもそうで、笑われる覚悟をしたうえで、信念を持って書いている。批判されたり笑われたりするリスクを背負う覚悟のない者は、そもそも本を書くべきではない。

「撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだ」という言葉は、まことに正しいと思う。何か間違ったことを書いておいて、撃ち返されたら「撃たれた撃たれた」と騒ぐのは情けない。