2016年12月26日

冬コミ直前情報

 どうも、長いことブログを放りっぱなしにしていて、申し訳ありません。今月はむちゃくちゃ忙しかったもので。昨日、ようやく今年最後のゲラと契約書その他もろもろを出版社に送って、一息つけました

 毎月、最終金曜は大阪で「山本弘のSF秘密基地LIVE」というイベントをやってるんですが、今月はお休みです。その日は昼間、コミケ会場におります(笑)。なお、次回の「山本弘のSF秘密基地LIVE」は2017年1月28日(土)を予定しています。いつものように金曜日じゃありませんので、お間違えなく。

 さて、冬コミの新刊はこれです。

 12月29日(木) 東ヒ-02a「心はいつも15才」
新刊『モーグリはパンツ穿いてない
40ページ・フルカラー


 僕が女ターザンものが好きなのは有名ですが、実は少年ターザンものも好きなんですよ。自分でも書いてます。『怪獣文藝の逆襲』に収録された「廃都の怪神」。ジャングルの奥地で少年が怪獣と戦う話。

 もちろん『ジャングル・ブック』も好きです。今年はディズニーの映画が公開されたし、ワーナー・ブラザースもアンディ・サーキス監督による『Jungle Book: Origins』を製作中(2018年10月公開予定)とのことなので、僕がずっと貯めてきた〈ジャングル・ブック〉フォルダを解放するのは今かなと思い、『ジャングル・ブック』資料本を出すことにしました。
 メインは、古今東西のイラストレーター(おそらく何百人という数)が、モーグリをどんな風に描いてきたかという話。僕がいちばん好きなのはフランスのピエール・ジュベールという人なんですが、他にもいろんなイラストレーターがいろんなイメージのモーグリを描いてるんですよ。ネットで検索しまくるうちに、恐竜の想像図で有名なチェコの画家ズデニェク・ブリアンの描くモーグリを見つけた時には「うわあ、ブリアンだ!」と感動しました。子供の頃、この人の描く恐竜にすっかり魅せられてたなあ……。
 映像化作品の紹介もいろいろ。もっとも、今年のディズニー映画についてはほとんど触れていません。最新の作品は資料が豊富だから、わざわざ同人誌で取り上げるまでもなかろうと。
 その代わり、1967年のソ連製アニメとか、1992年のベルギーのTVドラマとか、2010年のインド製のCGアニメとか、あまり知られていないものを取り上げてます。もちろん日本の『ジャングルブック・少年モーグリ』とかも。日本よりも海外で人気があるみたいなんです、あれ。
 日本の本では、昭和5年の菊池寛訳のバージョン、昭和27年の南洋一郎バージョンなども紹介。昭和21年に大佛次郎が訳したバージョンもあるらしいんですが、それは手に入れてません。

 今回は、30年以上も同人誌作ってきて、初めてフルカラー本に挑戦しました。当然、モーグリの裸の絵はいっぱい載ってますけど、児童書の表紙や挿絵ばっかりなので健全です。全年齢向け。

 あと、カタログには「『ミステリー・ゾーン』本在庫あります」と書いてありますが、『ミステリー・ゾーン』本と前に出した『世にも不思議な物語』本は、合本にして商業出版が決定していますので、今回は増刷しませんでした。悪しからず。現在、出版に向けて書き直し作業中です。もう少しお待ちください。
  


Posted by 山本弘 at 16:44Comments(7)PRコミケ

2016年08月11日

コミケ直前情報:『ミステリー・ゾーン』徹底解説

 今年の夏コミのブースは、土曜日(13日)東パ-21b「心はいつも15才」。
 新刊は

『ミステリー・ゾーン』徹底解説


 半世紀前に作られた伝説のSF・ホラー・ファンタジー番組。メイン・ライターのロッド・サーリングはもちろん、レイ・ブラッドベリ、リチャード・マシスン、チャールズ・ボーモントらが脚本を手がけた傑作アンソロジー・ドラマを徹底的に解説。
 全話ストーリー・ガイド(一部を除いてネタバレなし)はもちろん、脚本家と演出家のリスト、日本での放映リスト、翻訳のある原作リスト、幻のエピソード、特撮シーン、登場する怪人・宇宙人、評論「僕らはみんなメープル通りに住んでいる」など、マニアのための1冊!


 あとがきでも愚痴ったんだけど、今、海外ドラマに関する本は日本でたくさん出ているのに、そのどれも、『ミステリー・ゾーン』について、ほんの数行しか触れてないんですよ。まあ『スタートレック』や『謎の円盤UFO』あたりに負けるのはしかたないけど、『事件記者コルチャック』や『悪魔の手ざわり』よりも扱いが小さいなんて信じられない。
 だから今の日本人、プロの作家でさえ、『世にも奇妙な物語』は知っていても、その元ネタである『ミステリー・ゾーン』は知らない。

 あんなにすごい番組だったのに!
 あんなに大きな影響与えたのに!

 それが悔しくて、いったいどういう番組だったのか、その魅力や見どころを現代に語り継ぐ同人誌を作りました。
 B5判、180ページ!
 がんばりすぎだ自分!(笑)

 だって、好きなエピソードがいっぱいあるんだもの。
 ホラーなら「誰かが何処かで間違えた」「ヒッチハイカー」「めぐりあい」「マネキン」「遠来の客」「墓」「No.22の暗示」「亡き母の招き」「二万フィートの戦慄」などなど。
 泣ける感動作なら、「過去を求めて」「弱き者の聖夜」「縄」「遠い道」……もう「遠い道」なんて、何度見てもラストで泣けちゃうんですよ。
「沈黙の世界」「到着」「狂った太陽」「奇妙な奈落」あたりは、最後のすごいどんでん返しに仰天するし、逆に「みにくい顔」「合成人間の家」「生きている仮面」あたりは、オチが途中で読めるけどやっぱり衝撃的だし。
「子供の世界」なんて、原作(ジェローム・ビクスビイの「今日も上天気」)をよくぞここまで見事にアレンジしたなと感心するしかありません。クライマックスで悲鳴あげそうになりましたよ。
 あと、「疑惑」「生と死の世界」「亡霊裁判」「日本軍の洞窟」「暗闇の男」などにこめられた強烈な問題意識。今、こんな重いテーマで、なおかつ面白い話を書ける作家や脚本家が何人いるか。

 とにかく、半世紀前の番組とはいえ、とんでもなくレベルが高くて、今見ても古くない。十分すぎるほど面白いんですよ。
 こんな番組が忘れられるなんて、あってはならない──そう強く思います。

 執筆の途中、資料を調べていて、番組のトリビアもいろいろ知ったんだけど、どこまで入れるかは悩みましたね。やっぱりマニア的に見て面白いものに厳選しようと。
 たとえば演出陣。ドン・シーゲルやリチャード・ドナーやジャック・スマイトが演出してたのは知ってたけど、『キャット・ピープル』や『遊星よりの物体X』や『宇宙水爆戦』の監督がいたっていうのは、恥ずかしながら、今回初めて知りました。そう言えば『宇宙水爆戦』って特撮は注目してたけど監督の名前覚えてなかった(笑)。

 下は裏表紙。この意味、分かる人なら分かりますよね?

  


Posted by 山本弘 at 14:50Comments(13)SFPRコミケテレビ番組

2015年12月27日

コミケ直前情報:2015年冬コミの新刊

12月30日(水) 東 メ-36b
心はいつも15才

新刊『世界の怪獣119』

「ケイブンシャの大百科みたいに、映画に出てきたいろんな怪獣をカタログ的に紹介する本があったら楽しいだろうな」という軽い思いつきで書きはじめた本。最初は50ページ前後の薄めの本にするつもりだったんですが、調子に乗って書いてたら120ページ超えちゃいました(笑)。題名通り、119匹の怪獣を紹介しています。
 最初に出てくるのがレプティリカス、ゴルゴ、ヨンガリ、グワンジだと言えば、怪獣マニアの方ならだいたいどんな本か想像がつくと思います。有名な作品もある一方、よほどのマニアでも聞いたことのないようなマイナー怪獣もいろいろ。『原潜シービュー号』に出てきたメンフィッシュとか、『血に飢えた島』のシリケートとか。
『MM9』シリーズに名前だけ登場するイブ、ユージン、レイ、グレン、アリソン、アーノルドや、『トワイライト・テールズ』で語られる「一九五七年に南カリフォルニアのソルトン湖に出現した巨大カタツムリ」「一九七七年にオレゴン州のクレーター湖に出現した首長竜」「八二年のネス湖」などの事件の元ネタも、これ1冊ですべて分かります。

・日本の映画に登場する怪獣は取り上げておりません。
 外国映画や海外テレビドラマに絞っています。日本の特撮作品については、商業出版でも同人誌でも資料が山ほど出ていて、今さら僕が取り上げる必要もないと思ったからです。
 ただ、日本人のスタッフが特撮を担当していても、外国映画であれば取り上げています。『極底探検船ポーラボーラ』『バミューダの謎』『大蛇王』『北京原人の逆襲』『プルガサリ』など。

・CGを使用した怪獣は取り上げておりません。
 『ジュラシック・パーク』以降、CGが安く使えるようになった結果、巨大怪獣映画が増えすぎて、とてもフォローしきれないからです。ですからこの本で紹介する怪獣は、着ぐるみ、人形アニメ、ギニョール、マリオネットなど、非CGのものに限定させていただきました。
 ちなみにいちばん新しい怪獣は、90年代のザルコー、ガルガメス、グジラです。

・等身大で人間型の生物は「怪人」または「異星人」だと考え、この本には含めておりません。
 怪人や異星人まで入れたら、確実に厚さが3倍以上になりますので。

 また、なるべくいろいろな怪獣を入れたかったので、同じような姿の怪獣は省略させていただきました。たとえば恐竜映画の場合、やたらにティラノサウルスばかり出てくるのは面白くない。だから『最後の海底巨獣』あたりは省略してます。
 あと、向こうの映画、トカゲ恐竜とでっかいクモとゴリラ多すぎ(笑)。なので『紀元前百万年』『吸血原子蜘蛛』『巨大猿怪獣』あたりも省略しました。ラウレンティス版の『キングコング』とかも。
 それだけ削りに削って119匹。
 でもねえ、入れたかったけど入れられなかった怪獣もいるんですよ。『魔獣大陸』のダコへドラとか、資料が何もない。あと、印刷会社に原稿を送った後で、「しまった、ヴァーミスラックス忘れてた!」とか「『エクイノックス』がすっぽり抜けてる!」とか気がついて、頭抱えましたけどね。

 夏に出した『あなたの知らないマイナー特撮の世界』も残部あります。お越しをお待ちしております。
  


Posted by 山本弘 at 16:53Comments(10)特撮PRコミケ

2015年09月05日

この夏の総決算・その3

●8月14日(金) ~16(土)
コミックマーケット88

 今回の新刊『あなたの知らないマイナー特撮の世界』。タイトル通り、ものすごくマイナーなネタばっかりの本なんで、売れるかどうか危ぶんだんだけど、なんと100部持ちこんだのが午前中で完売! 来ていただいたみなさま、ありがとうございます。
 もうコミケ歴30年近くだけど、どんな本がどれぐらい売れるか読めない。これは売れるはずだと多めに刷ったけど、ぜんぜん売れなくて在庫抱えた経験も何度も。だから最近は、最大でも100部しか持ちこまないことにしてる。
 まだ仕事場に在庫あるので、冬コミでも売ります。

 コミケでの収穫をいくつか。

『AMECOMIX vol.1』(TEAM KAWAUSO)
 マーベルのキャラクターをモチーフにしたファッション・イラスト集。コスプレではなく、普通に街に着て歩けるデザインまで昇華されている。
 ほとんどは指摘されないと元のキャラクターが分からないんだけど、言われると「ああ、確かにスパイダーマンだ」とか「確かにソーだ」と分かる。このへんのさじ加減が絶妙。いいセンスです。
 スカーレットウィッチやヴィジョンもかわいい。コミケ初参加だそうだけど、今後が楽しみ。

『こだわり偉人伝』(タイムトンネル)
 NHKの番組のテキスト風に、SRIの牧史郎とSF作家・友野健二について語った本。
 特に秀逸なのは、友野健二の(架空の)作品の書影。ハヤカワSFシリーズ、鶴書房のSFベストセラーズ、桃源社、小学館、新潮文庫……いやあ、これはよく分かってる!
 万城目淳が語る友野健二の話もいいけど、牧史郎が解決した(番組中では語られなかった)事件や、「京都買います」の後日談とかも、いろんな新解釈を盛りこんでいて、想像力を刺激される。
 巻末の(架空の)近刊予告には「久里虫太郎 幻の怪奇マンガ家の妄執」「真船信三 恐龍は本当に生きていたのか?」「飛鳥五郎 強化スーツのひな形を作った男」なども。なんかすげー読みたいんですけど。

『補導聯盟通信』vol.7(国民補導聯盟)
 今回は「インディーズ候補関連特集」。2015年の統一地方選に立候補した候補者の中から、ぶっ飛んだ人たちを紹介。
 選挙公報に「大量虐殺」「皆殺し」などと書いてあったり、自分の免許証を載せてたり、他人の名刺を載せてたり、自分の名前と「ニート 25才」としか書いてなかったり、はたまた「たかゆき」としか書いてなかったり、「日本民族史上最高頭脳男」を自称してたり、昭和天皇ブランドの立ち上げを提唱してたり、「ドクター中松チルドレン」を名乗ってたり、公約が「口内炎にならない健康緑茶の栽培」だったり、選挙広報全体をわざと上下逆にしてたり、ポスターが自分の全裸写真だったり……いやあ、こんなにたくさんいたんだ、変な候補者!
 もちろん、ほとんどは落選(たいてい最下位)してるんだけど。

『硝子の屋上屋』(ドリヤス工場)
 どんなアニメもゲームもマンガも水木しげるタッチに改変してしまうドリヤス工場さん。今回の新刊『助太刀血風録』は、『刀剣乱舞』と『響け!ユーフォニウム』パロを収録。
 でも僕としては今年5月に出た前の本『硝子の屋上屋』をプッシュしたい。ネタは『アイドルマスター シンデレラガールズ』。水木しげるタッチのプロデューサーさんが違和感ない!  美波の顔が単純な線なのに特徴とらえてるのに感心した。あと、みくにゃんもそのまんまだ(笑)
 巻末には『私家版 暗殺教室』も収録。これも違和感ないね。

『シマライブ!』(ウラシマモト)
『逆境ナイン』風の『ラブライブ!』パロ。この2作品、実は共通点多くて、このネタを考えてた人は他に何人もいたはず。でも、島本和彦氏本人に描かれたら勝てねー(笑)。
「透明アイドル制!!」には笑った。『逆境ナイン』を知ってたら楽しめる。
 売り子さんの手際がいいのか、列がさくさく進み、そんなに長く並ばずに買えました。

 ちなみに娘は、企業ブースで、とうらぶの公式設定資料集が買えてご満悦。
  


Posted by 山本弘 at 19:48Comments(4)コミケ作家の日常

2015年08月07日

コミケ88の新刊

 夏コミの日程が近づきましたので、今年の新刊を告知します。

8月14日(金曜日)
東3ホール サ-19a
心はいつも15才
新刊『あなたの知らないマイナー特撮の世界』

(まえがきより)
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「特撮映画」というと、ヒーローものか怪獣映画、SF映画を連想する方が多いのではないでしょうか。あるいは、せいぜい円谷英二が特撮を担当した東宝の戦争映画か。
 しかし、怪獣や宇宙人は出てこなくても、すごい特撮シーンが堪能できる映画が、世界にはたくさんあるのです。
 この本では、従来の特撮映画紹介からは抜け落ちていた「知られざる特撮」、特に特撮ファンの方なら堪能できるを作品の数々を紹介しようと思います。
 取り上げる作品は、CGやデジタル合成が普及する前のものに限定しました。CGでどんな映像でも作れる今とは違い、限られた技術で創意工夫して作っていた時代。逆に「この時代の技術でどうやってこれ作ったんだ!?」と驚かされる、いわば「特撮のオーパーツ」とでも呼ぶべきものを再発見し、評価しようという試みです。

 ストーリーや演出や俳優の演技については無視、純粋に特撮の素晴らしさだけを基準に選びました。

 もちろん、特撮は動いてナンボのものなので、写真だけではイメージが伝わりにくいと思います。この本を読んで興味を抱かれた方は、ぜひ実物をご覧になってください。ソフトが発売されている作品も多いのですが、半世紀以上前のパブリックドメインになっている作品に関しては、YouTubeで検索するとたいていアップされています(僕もそれでたくさん視聴しました)。
 近年の作品については、ぜひDVDやブルーレイを購入して、著作権者に還元してくださるようお願いいたします。

 ここで取り上げた作品はまだ氷山の一角。他にもすごい特撮作品がいっぱい眠っているはずです。「こんな映画があるぞ」とお教えいただければ幸いです。
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 僕がもう長いこと「この特撮はすごい!」と騒いでいた『悪魔の人形』(1936)は昨年、『雨ぞ降る』(1939)は今年、日本でDVDが発売されました。どっちも英語版をVHSで持ってるのに買っちゃいました。

 これも待望の『透明光線』(1936)も、もうじき出るらしいです。

 でも、何が悔しいかって、日本でとっくにソフト化されてるのに、特撮ファンからぜんぜん注目されてない特撮映画が何本もあるってことなんですよ。
 いい例がこの本でプッシュしてる『タルサ』(1949)です。クライマックスの油田炎上シーンのミニチュアワークが大迫力なのに、怪獣も宇宙人も出てこない映画だから、特撮ファンから完全に無視されてきた。僕も存在を知ったのは、つい去年のことです。「何でこんなすごい特撮シーンのある映画を今まで知らなかったんだ!?」と不明を恥じましたね。

 あと、『フランケンシュタインの花嫁』(1935)。エルザ・ランチェスター演じる女人造人間ばかり話題になってて、前半のホムンクルスのシーンの特撮のすごさを誰も語ってくれないんですよね。観たら仰天しますよ。こんなすごい合成、80年も前にやってたんだって。
 他にも、有名な作品であっても、「ジェリー・アンダーソン作品はメカだけじゃなく爆発もすごい」といった話を論じてたりします。これまでの特撮関係の商業出版や同人誌ではあまり注目されなかった話題ばかりです。特撮ファンの方にはぜひ読んでいただきたいと思います。

 なおイベントのみで頒布します。一般書店での販売、通信販売の予定はありません。
  


Posted by 山本弘 at 15:29Comments(7)特撮PRコミケ

2015年06月12日

『BISビブリオバトル部』番外編「空の夏休み」



http://www.webmysteries.jp/special/biblio-01.html

 ミーナの頼みで、夏コミでサークルの手伝いをすることになった空。初めてのコミケ、初めてのコスプレでとまどうことばかり。さらには、特撮ファンのおじさんたちの二次会に参加することになり……。

 これまでコミケを題材にしたマンガや小説やアニメはたくさんあったけど、意外に知られていない部分がたくさんあるんじゃないかと思いつき、小説にしてみました。見本誌チェックとか一斉点検とかキャリーバッグのマナーとか森林保護募金とか、参加したことのある人なら常識だろうけど、コミケ体験のない人はたぶん知らないんじゃないかと思います。
 今回の前半の見せ場はコスプレです。空の人生初コスプレもいいんですけど、やっぱり、自分でもいいと思うのは銀くんのコスプレ! 版権にひっかかるから絵にはできませんけど(笑)、頭の中で思い描いていただきたいです。

 後半は居酒屋を舞台に、特撮ファンのおじさんたちによる特撮本をめぐるトークが展開します。今回はビブリオバトルをやらないので、番外編ということにして、サブタイトルにも「これはビブリオバトルではありません」と入れることにしました。
 ルールも何もないぐだぐだなおしゃべりですが、いろんな本や特撮作品の話題が出てきます。これ書くためにわざわざビデオで『さよならジュピター』観直しましたよ(笑)。

 このウェブ連載、登場する本や映像作品にリンクが貼られるんですが、今回は『マリみて』『ニンスレ』『ログホラ』『キャプスカ』『ギャレゴジ』などの略語に正確にリンク貼ってあるのに感心しました。編集さん、ご苦労様です。
  


Posted by 山本弘 at 15:26Comments(8)特撮PRコミケビブリオバトル

2015年01月21日

初めてマンガの中でコミケを描いた作品は?

 冬コミで『漫画の中の同人誌即売会』という同人誌を買ったのである。
 コミックマーケット、あるいはそれをモデルにした同人誌即売会が作中に出てくるマンガを集めたもので、80年代の『世紀末同人誌伝説』を筆頭に、『編集王』『コミックマスターJ』『こみっくパーティ』『まにぃロード』『げんしけん』『らき☆すた』『ドージンワーク』『まんが極道』などなど、メジャーな作品からかなりドマイナーなものまで、かなりの数の作品が紹介されていた。
 続編の『漫画の中の同人誌即売会plus』では、前の本で洩れていた『クロノアイズグランサー』などをはじめ、『コミケ中止命令』『人類は衰退しました』『ベン・トー』などの小説も取り上げられている。

 しかし。

 ものすごく大事な作品が抜けているのだ。

 吾妻ひでお『スクラップ学園』(秋田書店)である。

 その1巻に収録された「パトスってふんでも死なないのよね」が、同人誌即売会を題材にしているのだ。
『スクラップ学園』は〈プレイコミック〉に1980年1月から連載された作品。僕は当時、リアルタイムで読んでいた。
〈プレイコミック〉は月2回発売。「パトスってふんでも死なないのよね」は18話なので、掲載されたのは、80年の9月か10月頃のはずである(正確に何月何日号かまでは調べがつかなかった)。まず間違いなく、日本で初めて、商業出版物で同人誌即売会を扱った作品である。

 とある休日、公園でくつろいでいたおじさんが、やけに若者が多く通りかかるのに気づき、主人公のミャアちゃん(猫山美亜)に「今日は何かあるのかね」と訊ねる。「同人誌の即売会。あたしも本作ったから売りに行くの」と答えるミャアちゃん。
 若い頃は文学青年だったおじさん、「同人誌」と聞いて勘違いし、興味を抱いて、即売会に出かけてゆくが……という話である。
 即売会の名は〈第30回 ぬめぬめマーケット〉になっている。まだ川崎市民プラザで開催されていた頃、参加者7000人程度の規模の時代と推測される。

 すでにコスプレイヤーがいたことも分かる。一本木蛮さんの『同人少女JB』で描かれていたのが、だいたいこの時代である。

 もちろん吾妻マンガの中の話だから、まともな即売会であるわけがなく、シュールなギャグが続出し、コミケのカオスな雰囲気を戯画化しているのだが。


 この『スクラップ学園』、4話ですでに『ガンダム』ネタを出してきたり、コスプレを題材にした話があったりして、読み直してみるとあらためて、吾妻氏の先見性に驚かされる。
 ちなみに、ミャアちゃんのソックスがいつもよれよれなのは、わざとゴムをカッターでずたずたに切っているからだという設定がある。(『ミャアちゃん官能写真集Part1』参照)
 ずっと後になって、ルーズソックスが流行った時、「そんなのミャアちゃんはずっと前からやってたぞ!」と思ったもんである。

 ちなみにこの「パトスってふんでも死なないのよね」は、調べてみたら、今、山本直樹監修『21世紀のための吾妻ひでお』(河出書房新社)に収録されていることが分かった。やはり名作である「聞かせてよ、くぬやろの歌」とかも入ってるので、初心者にはおすすめである。


 吾妻作品からもう一本、紹介しておこう。
『ミニティー夜夢』(秋田書店)に収録された「愛なき世界」という短編。1984年頃の『マイアニメ』に掲載されたもの。

 ちなみに僕は「おたく」という言葉を、この作品で初めて知った。
 すでにコミケの開催場所は晴海に移っていて、参加者の数も万単位になってきた頃である。描写も『スクラップ学園』とはかなり違い、現在のコミケの雰囲気に近づいている。また、『うる星やつら』がブームだったことも分かる。

 言うまでもなく『コロコロポロン』は吾妻ひでお原作のアニメ。『ぐるぐるメダマン』と『好き好き魔女先生』は吾妻先生がコミカライズを手がけた特撮番組である。
 実際には、この時代にはまだ、こんなマイナー特撮番組の同人誌はなかったはずである。同人誌を作ろうにも資料がなかった。昔の番組が全話DVDになったりCSで放送されたりするような時代ではなかったからだ。
 だからこそ、「さすがにこんな同人誌あるわけない」というギャグが成立していたわけだが……いやー、今となってはギャグじゃないわ。『アステカイザー』とか『トリプルファイター』とか『ボーンフリー』とかの同人誌、普通にあるもんなあ。
 やはり吾妻先生の先見性、恐るべしである。

 ところで、読み返していて気がついたのだが、このシーン、これが同人誌即売会というもので……という基本的な説明がどこにもない。当時の『マイアニメ』の読者にはすでに、コミケというものが説明なしでも理解できたということか。

 そうそう、『漫画の中の同人誌即売会』を作ってる方、もし増補改訂版を出す予定があるなら、川上亮『コミケ襲撃』 と僕の『プロジェクトぴあの』も入れてくださいね(笑)。
  


Posted by 山本弘 at 17:08Comments(8)コミケ

2014年09月18日

遅れましたが夏コミの報告

 8月から9月にかけて、いろんな原稿がたてこんでて、なかなかブログ書いてる時間なかったんですが、ちょっと余裕ができたので、たまってた文章を一気に放出します。
 まずは夏コミの報告から。新刊『日本語版〈アメージング・ストーリーズ〉のすべて』、100部持ちこんだのが、1時15分に完売しました。お買い上げいただいたみなさま、ありがとうございます。
 とびきりマイナーな題材なんで、どれぐらいの人が買ってくださるか予想できなくて不安だったんですが、ほっとしました。ジャンルを「SF」に変えたのが良かったんですかね。冬に出した『世にも不思議な物語』の本の在庫も完売。
 反対に売れないのが『チャリス』の在庫。もう買う人はみんな買っちゃったんでしょうか。そろそろ仕事場にある在庫を処分することを考えないと。
 二時ごろには撤収開始。

 ちなみに娘は、企業ブースで『Free!』と『ヴァンガード』のグッズを入手して満足そう。
 今回は事情により、金・土の2日間しか参加できなかったけど、そこそこ楽しめました。

 毎度のことながら、本になってから読み返して気がつくミスがいくつか。
「誠文堂新光社」がなぜか「真文堂新光社」になってる箇所があったり、ラヴクラフト作品の邦題が「宇宙からの色」「異次元の色彩」と統一されてなかったり、桑田次郎「暗闇の目」が「闇の目」になってたり……。
 無知による間違いじゃなくタイプミスなんだけど、何で「誠文堂」が「真文堂」になったのかは、自分でも謎。
 あと、ジュール・ヴェルヌの『彗星飛行』のストーリーの説明を間違えていたことに、後になって気がつきました。だって読もうにも実物が手に入らなかったんですよ。先日、藤倉珊氏から譲っていただいて、ようやく読めました。科学的にはデタラメもいいとこだけど、いかにもヴェルヌという感じの話でした。

 まだ在庫が少しだけありますんで、冬コミで売ろうと思います。
  


Posted by 山本弘 at 18:56Comments(5)コミケ

2014年01月24日

コミケの困ったちゃんの話(後編)

 しかし、XXは3年前のことをまるで気にしている気配がない。僕を怒らせたことが記憶から抜け落ちているのか、まるで友人ででもあるかのように親しげに話しかけてくる。
 これがまた、実にしょーもない話題ばかり!

「『○○』というアニメ、ご覧になってました?」
「いえ、観てません。第一話だけ観て切りましたから」
 そんな話をする気はないから、わざと無愛想に突き放したのだが(第一話だけ観て切ったというのは事実)、XXは僕の返答をあっさり無視した。
「ネットであの作品について議論が起きてるんですけど、それについて山本先生の意見をうかがおうと……」
 と、そのアニメについての話題を強引に語りはじめる。
「ちょ、ちょっと待って」と僕は慌てて制止する。「僕はそのアニメを観てないって言ったでしょ?」
「いえ、でも……」
「観てないから分かりません。何も語れません」
 XXはちょっと残念な顔をしたが、すぐに別の話題――好きな映画の話題を振ってきた。
「『△△』の続編が製作中なんだそうですよ!」
「はあ、そうですか……」
「主演が『□□』の%%なんですよ! 今から期待しちゃいますよね!」
 このへん、どんな固有名詞が発せられたか、記憶から飛んでいる(笑)。
「『**』はご覧になりました?」
「はあ、まあ……」
「IMAXの3Dですか?」
「はあ……」
 本当はIMAXじゃなかったんだけど、いちいちそんなこと説明したくもない。
「あの冒頭のシーンが素晴らしかったですよね!」
 ああ、確かに素晴らしかったけど、お前とは語りたくないんだよ。それぐらい察しろよ。
 彼はそれからも次々に作品名を挙げて、あれが良かったとか、あの監督がどうとかいう話をえんえん続ける。終わる気配がない。
 つーか何でこいつ、僕が怒ってないと思ってるんだ?
 マジで、3年前のことを忘れてんじゃないのか?
「あのー、そんな話、僕はしたくないから」
 追い払いたくてそう言うと、
「そうですか。じゃあ今、どんなアニメをご覧になってるんですか?」
「何でそんなことをあなたに教えなくちゃいけないんですか?」
「あっ、この前、ブログで紹介されていた『++』はどうですか? 面白いですか?」
「あのねえ、そんなことを訊ねてどうするの? 僕から何を聞きたいの?」
「山本先生の感想を聞きたいんです!」

 嘘だ。

 お前、さっきから、僕の話、ぜんぜん聞いてないじゃん。僕の言葉が全部、頭の中をすり抜けてるじゃん。
 僕の話を聞く気なんてないだろ?
 僕と話したいんじゃなく、自分の好きな映画やアニメの話を一方的に語りたいだけなんだろ?
 悪いけど、そんなのにつき合う気、ないから。

 さて、コミケに行ったことのない方のために説明しておく。
 コミケのブースというのは、1つのテーブルを2つのサークルが使用する。1サークルあたりの幅は90cm。これは2人の人間が横に並ぶことしかできない幅である。
 この状態で、ずっとブースの前に立っておしゃべりをされたらどうなるか。
 ブースの半分をずっと占拠することになる。後から来るお客さんが、1人ずつしかサークルの前に立てないから、大変に迷惑である。
 それだけじゃない。参加者の中には、歩きながらふと目についた本に興味を抱いて、手に取る人もいる。でも、XXはずっと僕の新刊の前に居座って、通りかかる参加者たちの視線から、新刊を遮っている。つまり営業妨害。
 実際、XXがくだらないおしゃべりを続けている間にも、次々にお客さんがやってきてるんである。新刊を手に取るために、突っ立っているXXの脇から手を伸ばす人もいる。
 僕がたまりかねて、「お客さんのじゃまだからどいて!」と言うと、XXはちょっとだけ後ろに下がるが、お客さんがいなくなるとまた戻ってきて話をはじめる。
「そうじゃなくて、どっか移動して! そこに立たないで!」
 僕がそう言うと、XXはどうしたか?

 なんと、隣のブースの前に移動して、そこに立って話を続けるのだ!
 こいつ、隣のサークルさんにまで迷惑かけてやがる!
 これにはさすがにブチ切れた。
「どっか行け! 立ち去れ! お前とは二度と話したくないから!」
 そう言うと、XXはようやく去っていった。
 どっと疲れた。

 実は10何年か前にも、やっぱりブースの前で居座ってくだらない話をえんえん続ける奴がいた。それも本も買わずに。
「他のところも回って来られたら」と遠回しに追い払おうとするんだけど、ぜんぜん動かない。
 いいかげん不愉快になってきて、「本も買わないのに立ってられると迷惑なんですけど」と言ったら、「買いますよ、買えばいいんでしょう」と、へらへら笑う。
 さすがに切れて、「お前なんかに買ってほしくない! どっか行け!」と怒鳴りつけて追い払った。
 その時にもNくんがいて、「山本さんが怒ったところ、初めて見ました」と驚いていた。そりゃ僕だって、腹が立って誰かを面と向かって怒鳴りつけることなんて、10年に1度あるかないかだよ。
 ちょくちょく、よそのサークルでも、ブースの前に立って長話をしている人を見かけるけど、あれは本当にサークルの誰かの知り合いなのか、それとも無駄話で迷惑をかけてる困ったちゃんなのか。

 僕はコミケで同人誌を買う時、可能な限りブースの前に立つ時間を短くしている。
 内容を知っている本なら、「これ1冊ください」と言ってお金を出し、本とお釣りを受け取って、ただちに立ち去る。
 内容をよく知らない場合、ぺらぺらとめくって中を確認する。売り子の人と本の内容について話すこともある。「今回の新刊はどちらですか?」とか「妻から頼まれたんですけど」とか「これ、調べるの大変だったでしょう」とか「『RWBY』の本って、今日、ここだけなんですよねー」とか「がんばってください」とか言うこともある。
 必要最低限のことだけ喋って、本を買って立ち去る。長くても1~2分程度だ。

 親しい人が僕のブースに来る場合も同じ。あいさつをして、同人誌を買って、ちょっとした近況報告なんかもして、すぐ去ってゆく人が大半である。長い用件がある場合、その場では話さず、「後でメールでお送りしますから」と言われることもある。
 親しい人でさえそうなんである。まして親しくない人間が、しかも何ら重要性も緊急性もない用件で、なぜ長々と居座るのか。
 ブースの前に長時間居座るのは迷惑――それはコミケ参加者なら、誰かに教わるまでもなく、ごく普通に身につけるマナーだろう。

 その基本的なマナーがXXには分からない。
 なぜなら、彼は他人の心理が理解できないからだ。自分の行動が他人を不快にしているという意識がまったくない。僕の言葉も頭の中を素通りする。
 だから、いくら言っても態度を改めないし、僕に嫌われているということすら認識できないのだろう。
 だからXXでなくても、こういう迷惑な奴が来たら、きつい言葉で追い払っていいと思う。「それはマナー違反なんだ」ということを叩きこんでやらなくちゃ、今回の件のように、他のサークルさんにも迷惑をかけるかもしれないしね。
  


Posted by 山本弘 at 14:01Comments(16)コミケ

2014年01月24日

コミケの困ったちゃんの話(前編)

 12月30日はコミケのサークル参加。夏コミは申し込みの不備で落選したもので、1年ぶりのサークル参加である。
 新刊の『世にも不思議な物語』の資料本、60部持って行ったのが、昼頃には完売した。こんなマイナーな番組の本が売れるかどうか疑問だったので、持ち込み数を絞ったんだけど、その予想が裏目に出た形。嬉しい誤算というやつである。
 いつものことながら、同人誌の印刷部数には悩む。今回みたいに予想以上に売れることもあるが、「これはきっと売れる」と思ってたくさん刷った本がさっぱり売れなかったことも何度もある。こればっかりは晴海時代から四半世紀もコミケにサークル参加してても、いまだに読めない。
 まだ30部ぐらい家に余っているので、夏コミでまた売ろう。

 逆に、前年は売れた『チャリス』が今回はイマイチ。それでもちょくちょく、4冊まとめて買っていく方がおられて、嬉しくなる。
 ちなみに今回、娘は開田裕治さんのブース(壁際)で売り子をさせた。娘はまだ17歳。18禁の本を売らせるわけにはいかないからである。来年は18になるので、「これで18禁のBL同人誌が買える!」と本人も張り切っているのだが(笑)。
 今年の娘のコスプレは、キョウリュウグリーン=ソウジ。緑色の学生服は妻の力作である。ガブリボルバーを入れるホルスターは『てれびくん』の全プレだが、子供用なのでベルトの長さが腰周りに合わず、妻が大改造を施した。
 来年の夏コミは『Free!』の鮫柄学園水泳部のジャージの予定。もうすでにほぼ完成しているという恐るべき事実。

 さて、ブースにはたくさんのお客さんが来ていただいて、本当にありがたかった。
「新刊読みました」とか「ずっとファンです」とか言われると、やる気が湧いてくる。サインを求められることもある。もちろんサインぐらいいつでも喜んでする。
 しかし、不愉快な思いもしたことも報告しておかなくてはならない。

 開始早々、マイミクのNくんに店番を頼んで、一時間ほど買い物に行った。
 ブースに戻ってみると、客の相手をしていたNくんが、僕の接近に気づき、手の平をこっちに突き出して、「来るな」というサインを出している。
 これは……「厄介な客が来てる」というサインか!?
 事前にサインの取り決めをしていたわけではなかったが、僕はとっさにそう判断して、Nくんの後ろを素通りした。客が「あれ? 山本先生?」と声をかけたが、無視して歩み去った。
 遠くから様子を伺っていると、案の定、その客はなかなか立ち去らない。僕はしかたなく、会場を回って10分ほど時間を潰した。

 しばらくして戻ってみると、その客の姿はなかった。僕が「厄介な客だった?」と訊ねると、Nくんは「厄介な客でした」と苦笑する。それ以上、深くは訊ねなかった。
 とりあえずいなくなってくれてほっとした。今度はNくんが買い物に出ることになり、僕は売り子を交代した。
 ところが……。

 そこに戻ってきたのである、さっきの奴が!

「山本先生、私、XX(仮名)です」

 ああー! あいつかー!

 以下の文章を読んで、もしかして「山本弘はファンをこんな邪険に扱うのか」と誤解する人がいるかもしれないので、事前に説明しておく。
 こいつ、僕のファンなんかじゃねーから!
 いや僕も以前は、てっきり僕のファンだと思いこんでたんだよ。mixiで頻繁に長文のメッセージ送ってくるから、やけに熱心な人だなあと。
 そのメッセージの内容というのは、自分の好きな映画とかテレビ番組とかの話題を長々と書いて、最後の方にちょこっとだけ、「山本先生はどう思われますか?」とか書いてあるの。一度など、「お聞きしたいことがってメールをよこしました」(原文ママ)という出だしで、最後まで質問が書いてなかったことがあった(笑)。
「お気に入り映画20本を教えてくださりますと助かります」と書いてきたこともあった。「助かります」って何だよ? 僕が映画タイトルを20本挙げたら、君がどう助かるっちゅーの? だいたい、僕が見た何百本もの映画から、20本を選出するって大変な作業だよ。『映画秘宝』あたりから依頼されたら、丸一日考えちゃうよ。 君はなぜ僕にそんな作業を要求するの? 僕はなぜ原稿料ももらえないのにそんな作業しなきゃならんの?
 もちろんそんな要求、拒否したけど。
 あと、「お聞きしたいことがってメールをよこしました」でも分かるように、こいつの文章はデタラメである。「山本弘先生は西部劇だけどSFでもあるでというSF小説のは何所まであるんでしょうか?」(原文ママ)とか、平然と書いてくるの。
 不思議なことに、彼のmixiのコミュとかでの発言を見ると、その気になればきちんとした文章が書けるんである。僕に送ってくる時だけ「お聞きしたいことがってメールをよこしました」になるのだ。
 つまり、僕にメッセージを送信する前に、まったく推敲してないってことなんだよね。
 一度、いくらなんでもそれは失礼だと叱りつけた。そしたら、一時的は反省したんだけど、その後もぜんぜん直らない。あい変わらずのデタラメな文章でくだらないことをえんえんと書いてくる。
 しかも「文書にまとまりがなくてすいません」(原文ママ)なんて書いてあったりする。つまり自分の文章(「文書」ではない)にまとまりがないことを自覚してるんである。なのに「送信する前に直そう」とは思わないらしいのだ。

 ある時、彼からのメッセージを読んで愕然となった。
 彼が僕の小説をまったく読んでいない、それどころか『MM9』や『去年はいい年になるだろう』を書いていることも知らないということが、その文面から分かっちゃったのである。
 それでようやく気がついた。これまで、こいつからのメッセージには、自分の見た映画やテレビ番組の感想ばかりで、僕の小説の感想なんかまったく書かれてなかったということに。
 つまり「何だかよく知らないけど山本弘という作家がいて、僕の話を聞いてくれてる」という程度の認識だったのだ。
 その時の僕のショックと落胆をどう表現したものか。今までファンだと思っていたから返事を書いてやっていたのに、裏切られた気分だった。
 もう一度叱りつけたら、逆ギレしたメッセージが返ってきた。例によって「僕も本気呆れ返れました」(原文ママ)とか文法デタラメで支離滅裂だった(笑)。僕はもうこいつとのコミュニケーションは無理と判断して、メッセージを受信拒否に設定した。
 それが2010年4月のこと。あの時、僕はもう彼との関係は切れたと思ってたんだが……。
(つづく)
  


Posted by 山本弘 at 13:40Comments(2)コミケ